ブイキューブ Research Memo(7):潜在市場に開拓余地、業界特化型サービスやドローン活用など強化
[16/04/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中長期戦略(2016年中期経営計画)
ブイキューブ<3681>は今期に入り新しい中期経営計画を発表したが、そのビジョンは「アジアNo.1のビジュアルコミュニケーションプラットフォーム」であり、これは以前と変わっていない。
(1)位置付け、目標指標、重点施策
同社では今回の中期経営計画を「新たな成長ステージ」として、下図のような長期的な成長戦略の中での第三ステージ「飛躍に向けたジャンプ:収穫と成長」と位置付けている。
この中計の数値目標としては、2018年度に売上高13,900百万円、営業利益3,000百万円を掲げている。また2020年度の目標数値は正式には発表されていないが、会社資料によれば、売上高24,000百万円、営業利益9,000百万円くらいを考えているようである。
さらに今回の計画の重点施策として「ワークスタイル変革市場の深耕」、「社会インフラ化」、「アジアを中心とした海外での事業拡大」を掲げている。
(2)ワークスタイル変革分野における重点施策
●Web会議、テレビ会議分野でのシェア拡大
2004年にスタートしたワークスタイル変革のためのプラットフォームであるWeb会議の分野でのシェアをさらに拡大する。現在のWeb会議市場は約120億円だが将来的には1,000億円へ拡大すると予想されているが、この市場でのシェアを確実に高めていく。また2015年末には従来のWeb会議に加えて「V-CUBE Box」を投入してテレビ会議のマーケットにも展開を拡大した。これら両方の製品を提供することで、ビジュアルコミュニケーションで新しいワークスタイルを実現する。
●利用シーンの拡大
単なるWeb会議だけでなく、幅広い利用シーンに対応し、競合製品との差別化を図っていく。具体的には、テレビ会議と接続した経営会議、全国拠点への社内研修、遠隔地へのWeb営業/サポート、保守点検作業、現場同士の拠点間会議、パートナー向けセミナー、テレワーク、フィールドワーク等である。
また顧客のニーズに合わせて、「V-CUBEミーティング」、「V-CUBEドキュメント」、「V-CUBEセミナー」、「V-CUBEセールス&サポート」、「V-CUBEポータル」、「V-CUBE Gate」などを提供することでトータルでのVCソリューションを提供する。
●普及の加速と日常性の実現
具体的施策として、各種製品の普及を促進するため日本マイクロソフト(株)(以下、日本マイクロソフト)とクラウド分野で協業し、同社グループのシステム基盤を日本マイクロソフトが提供するAzureに移行、これにより認証基盤連携でシングルサインオンが可能になり両社のクラウドサービスがシームレスで利用可能になった。さらにこの連携によって海外での販売もし易くなる。
また2014年11月に「V-CUBE Gate」をリリースしたが、これは法人専用の無料テキストチャットサービスで、各種の設定を行うことで、契約法人内の誰もが無料で利用することができる。テキストチャットサービス自体は認知度が高いため、Web会議に比べ販売しやすいと考えられる。この「V-CUBE Gate」は同社のWeb会議と連携しているので、ワンクリックで他のサービスに入って利用することもできる。つまり、同社の主力サービスへの入口(Gate)となることから「V-CUBE Gate」と名付けられた。
●グループシナジーの最大化
オンデマンド中心のeラーニングにV-CUBEが持つリアルタイムサービスを組み合わせることで、市場での差別化とクロスセルによる売上拡大を図る。既存の同社グループ各社(ブイキューブ、PVC社、エムキューブ等)は5,000社以上の既存顧客を抱え、アイスタディの学習管理システム等のサービスを組み合わせることで、特に大手既存顧客で潜在化している研修ニーズに対応していく。また、アイスタディは大手金融機関を含む400社の既存顧客を抱え、V-CUBEのサービスを組み合わせることで、研修だけでなく社内インフラ領域への展開が可能になってくる。
(3)社会インフラ化
同社が提供するWeb会議やテレビ会議の利用は企業内に限らず今後は人々の様々な生活シーンで活用されるようになる、すなわち「社会インフラ」として組み込まれるとされ、同社では特に教育、医療、金融、ロボティクスを重点分野と考えている。
●規制緩和、ビジネスモデル
各種の規制緩和・規制強化・国策もビジュアルコミュニケーションの利用シーンを拡大すると予想される。具体例としては、国策としての地方創生、一億総活躍社会の実現、テレワークなどは働き方を多様化するであろうし、教育分野における高校遠隔教育解禁、公設民営学校、校務情報化、ICT教育の普及、大学入試改革などもプラス材料だ。さらに医療分野における遠隔医療の解禁、特区でのオンラインによる薬の処方許可、製薬業界自主規制、メンタルヘルスの義務化、金融分野における金融自由化、不動産契約時の重要事項説明のオンライン化、保険業法改正、ロボティクス分野ではドローン規制施行、航空法改正、電波法改正などが同社事業に追い風となりそうだ。
またビジネスモデルとしても、単なるシステム利用料だけでなく、各種サービスと連携させることでインフラ利用料として事業パートナーと利益をシェアする事業モデルも可能となってくる。すなわち、BtoBtoCとして、授業料、研修費用、医療費(診療報酬)、介護費用、契約手数料、仲介手数料の一部から同社が収益を得るようなモデルである。
●教育
教育のICT化、遠隔教育、研修オンライン化、eラーニングなどをカバーする。同社に加えてグループ会社としてアイスタディ、Wizlearn社、PVC社が担うが、2020年における各市場規模は、電子黒板を中心としたアクティブラーニングが120億円、学校における遠隔教育/eラーニングが533億円、校務情報化/学務支援システムが185億円、教育産業市場(学習塾、通信教育等)における活用が1,730億円と予想されている。
また将来のインドの教育市場での展開の布石として、子会社アイスタディがインドで教育プラットフォームを提供するFliplearn Education Private Limited(フリップラーン社、所在地インド・ニューデリー市)と業務提携を行い、インド市場での事業展開を開始している。
●医療
エムスリー(株)との合弁会社のエムキューブが主に担うが、医療分野においてもビジュアルコミュニケーションの需要は拡大が見込まれている。具体的には製薬業界のマーケティングに加えて遠隔医療、遠隔介護、遠隔処方などで可能性が高い。
●金融
金融もまた同社のビジュアルコミュニケーションサービスにとって有望な市場である。具体的には、主要金融機関(メガバンク、地銀、信金、信託銀行、その他金融機関等)におけるオムニチャネル化(遠隔窓口業務、資産運用相談、相続相談、外交員支援、遠隔セミナーによる商品紹介、遠隔営業等)であるが、加えて遠隔金銭消費貸借契約(要するにローン契約)の締結や乗り合い保険代理店向け内部監査等でも可能性は高い。さらにIT不動産重要事項説明・IT接客など不動産市場でも活用される可能性が高い。
●ロボティクス
もう一つ同社が重点分野と位置付けているのが、ドローンを中心としたロボティクス分野だ。業務用ドローン関連の市場は、地方自治体における災害対策、警察、消防での利用、橋梁やダムなどのインフラ点検、工場・大規模施設のメンテナンスなどを含めて将来的には1,000億円に達すると予想されている。
同社は既に(株)ブイキューブロボティクス・ジャパンを設立し、クラウド型ドローンによる遠隔監視ソリューションを展開しており、2018年から本格的に立ち上がることが期待されている。
●ビッグデータ
今後は社会インフラにおける人々の行動履歴、テキストデータ、音声データ、映像データなど様々なデータが蓄積されビッグデータ化し、各種の分析利用・活用されていくことが予想されるが、これらの基となるデータ収集において同社の各種サービス(ビジュアルコミュニケーション)が重要な役割を果たすことになる。そのため同社でも、現在は直接収益に影響はないが、このビッグデータ市場にも着目している。
(4)アジアを中心とした海外事業
上記のような「ワークスタイル変革」も「社会インフラ化」も日本だけの可能性ではなく、アジア市場でも同様である。したがって今後も引続きアジア市場でも拡大に注力し、海外売上高比率(2016年目標26%)を出来るだけ早く40%まで引き上げる計画だ。主に中国、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、台湾、インドで事業展開を図るが、中国とインドが拡大の中心となる見込みだ。
特に今期から本格的に注力していくのがインド市場だ。記述のように子会社アイスタディがフリップラーン社と業務提携を行いインドでの教育市場に参入していくことに加え、同社自身がインド最大手のWeb会議サービス事業者であるINTELLISYS Technorogies & Research Pvt. Ltd.(インテリシス社)とビジュアルコミュニケーション分野で提携することを発表した。インテリシス社は、自社がインドで提供している「Vennfer」がこれまで対応出来なかったインドの市場ニーズを充足するため、同社の「V-CUBE」をインド国内で販売開始する。インド市場での展開がどの程度今期の業績に寄与するかはまだ不明ではあるが、有望な市場であるのは間違いなく、今後の動向には注目する必要がありそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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ブイキューブ<3681>は今期に入り新しい中期経営計画を発表したが、そのビジョンは「アジアNo.1のビジュアルコミュニケーションプラットフォーム」であり、これは以前と変わっていない。
(1)位置付け、目標指標、重点施策
同社では今回の中期経営計画を「新たな成長ステージ」として、下図のような長期的な成長戦略の中での第三ステージ「飛躍に向けたジャンプ:収穫と成長」と位置付けている。
この中計の数値目標としては、2018年度に売上高13,900百万円、営業利益3,000百万円を掲げている。また2020年度の目標数値は正式には発表されていないが、会社資料によれば、売上高24,000百万円、営業利益9,000百万円くらいを考えているようである。
さらに今回の計画の重点施策として「ワークスタイル変革市場の深耕」、「社会インフラ化」、「アジアを中心とした海外での事業拡大」を掲げている。
(2)ワークスタイル変革分野における重点施策
●Web会議、テレビ会議分野でのシェア拡大
2004年にスタートしたワークスタイル変革のためのプラットフォームであるWeb会議の分野でのシェアをさらに拡大する。現在のWeb会議市場は約120億円だが将来的には1,000億円へ拡大すると予想されているが、この市場でのシェアを確実に高めていく。また2015年末には従来のWeb会議に加えて「V-CUBE Box」を投入してテレビ会議のマーケットにも展開を拡大した。これら両方の製品を提供することで、ビジュアルコミュニケーションで新しいワークスタイルを実現する。
●利用シーンの拡大
単なるWeb会議だけでなく、幅広い利用シーンに対応し、競合製品との差別化を図っていく。具体的には、テレビ会議と接続した経営会議、全国拠点への社内研修、遠隔地へのWeb営業/サポート、保守点検作業、現場同士の拠点間会議、パートナー向けセミナー、テレワーク、フィールドワーク等である。
また顧客のニーズに合わせて、「V-CUBEミーティング」、「V-CUBEドキュメント」、「V-CUBEセミナー」、「V-CUBEセールス&サポート」、「V-CUBEポータル」、「V-CUBE Gate」などを提供することでトータルでのVCソリューションを提供する。
●普及の加速と日常性の実現
具体的施策として、各種製品の普及を促進するため日本マイクロソフト(株)(以下、日本マイクロソフト)とクラウド分野で協業し、同社グループのシステム基盤を日本マイクロソフトが提供するAzureに移行、これにより認証基盤連携でシングルサインオンが可能になり両社のクラウドサービスがシームレスで利用可能になった。さらにこの連携によって海外での販売もし易くなる。
また2014年11月に「V-CUBE Gate」をリリースしたが、これは法人専用の無料テキストチャットサービスで、各種の設定を行うことで、契約法人内の誰もが無料で利用することができる。テキストチャットサービス自体は認知度が高いため、Web会議に比べ販売しやすいと考えられる。この「V-CUBE Gate」は同社のWeb会議と連携しているので、ワンクリックで他のサービスに入って利用することもできる。つまり、同社の主力サービスへの入口(Gate)となることから「V-CUBE Gate」と名付けられた。
●グループシナジーの最大化
オンデマンド中心のeラーニングにV-CUBEが持つリアルタイムサービスを組み合わせることで、市場での差別化とクロスセルによる売上拡大を図る。既存の同社グループ各社(ブイキューブ、PVC社、エムキューブ等)は5,000社以上の既存顧客を抱え、アイスタディの学習管理システム等のサービスを組み合わせることで、特に大手既存顧客で潜在化している研修ニーズに対応していく。また、アイスタディは大手金融機関を含む400社の既存顧客を抱え、V-CUBEのサービスを組み合わせることで、研修だけでなく社内インフラ領域への展開が可能になってくる。
(3)社会インフラ化
同社が提供するWeb会議やテレビ会議の利用は企業内に限らず今後は人々の様々な生活シーンで活用されるようになる、すなわち「社会インフラ」として組み込まれるとされ、同社では特に教育、医療、金融、ロボティクスを重点分野と考えている。
●規制緩和、ビジネスモデル
各種の規制緩和・規制強化・国策もビジュアルコミュニケーションの利用シーンを拡大すると予想される。具体例としては、国策としての地方創生、一億総活躍社会の実現、テレワークなどは働き方を多様化するであろうし、教育分野における高校遠隔教育解禁、公設民営学校、校務情報化、ICT教育の普及、大学入試改革などもプラス材料だ。さらに医療分野における遠隔医療の解禁、特区でのオンラインによる薬の処方許可、製薬業界自主規制、メンタルヘルスの義務化、金融分野における金融自由化、不動産契約時の重要事項説明のオンライン化、保険業法改正、ロボティクス分野ではドローン規制施行、航空法改正、電波法改正などが同社事業に追い風となりそうだ。
またビジネスモデルとしても、単なるシステム利用料だけでなく、各種サービスと連携させることでインフラ利用料として事業パートナーと利益をシェアする事業モデルも可能となってくる。すなわち、BtoBtoCとして、授業料、研修費用、医療費(診療報酬)、介護費用、契約手数料、仲介手数料の一部から同社が収益を得るようなモデルである。
●教育
教育のICT化、遠隔教育、研修オンライン化、eラーニングなどをカバーする。同社に加えてグループ会社としてアイスタディ、Wizlearn社、PVC社が担うが、2020年における各市場規模は、電子黒板を中心としたアクティブラーニングが120億円、学校における遠隔教育/eラーニングが533億円、校務情報化/学務支援システムが185億円、教育産業市場(学習塾、通信教育等)における活用が1,730億円と予想されている。
また将来のインドの教育市場での展開の布石として、子会社アイスタディがインドで教育プラットフォームを提供するFliplearn Education Private Limited(フリップラーン社、所在地インド・ニューデリー市)と業務提携を行い、インド市場での事業展開を開始している。
●医療
エムスリー(株)との合弁会社のエムキューブが主に担うが、医療分野においてもビジュアルコミュニケーションの需要は拡大が見込まれている。具体的には製薬業界のマーケティングに加えて遠隔医療、遠隔介護、遠隔処方などで可能性が高い。
●金融
金融もまた同社のビジュアルコミュニケーションサービスにとって有望な市場である。具体的には、主要金融機関(メガバンク、地銀、信金、信託銀行、その他金融機関等)におけるオムニチャネル化(遠隔窓口業務、資産運用相談、相続相談、外交員支援、遠隔セミナーによる商品紹介、遠隔営業等)であるが、加えて遠隔金銭消費貸借契約(要するにローン契約)の締結や乗り合い保険代理店向け内部監査等でも可能性は高い。さらにIT不動産重要事項説明・IT接客など不動産市場でも活用される可能性が高い。
●ロボティクス
もう一つ同社が重点分野と位置付けているのが、ドローンを中心としたロボティクス分野だ。業務用ドローン関連の市場は、地方自治体における災害対策、警察、消防での利用、橋梁やダムなどのインフラ点検、工場・大規模施設のメンテナンスなどを含めて将来的には1,000億円に達すると予想されている。
同社は既に(株)ブイキューブロボティクス・ジャパンを設立し、クラウド型ドローンによる遠隔監視ソリューションを展開しており、2018年から本格的に立ち上がることが期待されている。
●ビッグデータ
今後は社会インフラにおける人々の行動履歴、テキストデータ、音声データ、映像データなど様々なデータが蓄積されビッグデータ化し、各種の分析利用・活用されていくことが予想されるが、これらの基となるデータ収集において同社の各種サービス(ビジュアルコミュニケーション)が重要な役割を果たすことになる。そのため同社でも、現在は直接収益に影響はないが、このビッグデータ市場にも着目している。
(4)アジアを中心とした海外事業
上記のような「ワークスタイル変革」も「社会インフラ化」も日本だけの可能性ではなく、アジア市場でも同様である。したがって今後も引続きアジア市場でも拡大に注力し、海外売上高比率(2016年目標26%)を出来るだけ早く40%まで引き上げる計画だ。主に中国、シンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、台湾、インドで事業展開を図るが、中国とインドが拡大の中心となる見込みだ。
特に今期から本格的に注力していくのがインド市場だ。記述のように子会社アイスタディがフリップラーン社と業務提携を行いインドでの教育市場に参入していくことに加え、同社自身がインド最大手のWeb会議サービス事業者であるINTELLISYS Technorogies & Research Pvt. Ltd.(インテリシス社)とビジュアルコミュニケーション分野で提携することを発表した。インテリシス社は、自社がインドで提供している「Vennfer」がこれまで対応出来なかったインドの市場ニーズを充足するため、同社の「V-CUBE」をインド国内で販売開始する。インド市場での展開がどの程度今期の業績に寄与するかはまだ不明ではあるが、有望な市場であるのは間違いなく、今後の動向には注目する必要がありそうだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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