アキュセラ Research Memo(1):エミクススタトの臨床第2b/3相試験のトップラインデータに注目
[16/04/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
アキュセラ・インク(Acucela Inc.)<4589>は眼科領域に特化したバイオベンチャーで、2002年に米国で創業、2014年2月に東証マザーズ市場に上場した。眼の「アルツハイマー病」とも言われる加齢黄斑変性の中でも地図状萎縮を伴うドライ型に向けた治療薬「emixustat hydrochloride:エミクススタト塩酸塩(以下、エミクススタト)」の開発を行っている。同領域には承認された治療薬がまだないため、2016年6月頃に発表が予定されている臨床第2b/3相試験のトップラインデータが注目されている。エミクススタトは、糖尿病網膜症や糖尿病黄斑浮腫などにも適応領域を広げ開発を進めていく方針となっており、売上規模で現在眼科領域トップの「ルセンティス(Lucentis)」(ウェット型加齢黄斑変性治療薬で年間売上高は42億ドル超※)を上回ることも十分考えられる。
※Visiongain, Macular Degeneration (AMD) and Other Retical Diseases: World Drug Industry and Market 2015 - 2025, p33
同社は2016年3月に新たな開発パイプラインとして、米バイオベンチャーのYouHealth Eyetech Inc.(以下、YouHealth)から、YouHealthがカリフォルニア大学サンディエゴ校と契約する非外科的治療法に基づき研究開発した白内障の薬剤候補となるラノステロールの開発に関わる独占契約の権利を取得したと発表した。白内障の進行予防及び根治療法の開発を進めていく。白内障は失明原因の51%※1を占める眼科領域の主要疾患で、世界で9億人の罹患者がいると言われている。まだ薬剤による根治療法は無く、侵襲性の低い薬物療法が開発されれば社会的意義は極めて大きいものとなろう。同社では、2017年にも軽度の白内障患者を対象に臨床第1/2相試験を開始し、開発が順調に進めば将来的には中等度・重度の白内障患者のほか、老視(老眼)などにも適応範囲を拡大してくことを視野に入れている。また、4月には英国マンチェスター大学と、網膜色素変性症を含む網膜変性疾患の治療に向けた、オプトジェネティクス治療(光遺伝子療法)※2の開発並びに販売を目的とする独占契約も締結するなど、パイプラインの拡充を進めている。
※1 Visiongain, Ophthalmic Drugs Market Forecast, 2015-2025;World Health Organizationより2015年データ参照
※2オプトジェネティクス(光遺伝学)に基づき、光感受性がない細胞に光によって活性化されるタンパク質を発現させることにより、光感受性を持たせる治療法
2016年12月期(2016年1月−12月)の業績は、営業損失が前期の26百万ドルから36〜37百万ドルに拡大する見通しとなっている。研究開発費を前期の22百万ドルから44〜46百万ドルに増額することが主因だ。エミクススタトの臨床第3相試験に向けた費用や、ラノステロール等の新規開発、糖尿病網膜症やその他パイプラインの開発費の増加を見込んでいる。手元資金は2015年12月末時点で166百万ドルと潤沢にあり、当面は財務面でのリスクはないものと考えられる。
なお、同社株式は米国に本社があるため外国株扱いとなっているが、2015年12月に設立した日本法人を持株会社として、2016年9月に内国株として改めて上場する予定となっている。株式の割当比率は1:1となるため、現在の株価に影響はないが、国内株式扱いとなることで、国内投資家に向けた情報発信の媒体が広がり認知度の向上が進むこと、外国株式に投資できなかった機関投資家の投資機会が増すことなどから、株主価値の増大につながるものとして期待される。
■Check Point
・世界の眼科医薬品規模は2023年には3.5兆円、年率6%成長の予測
・加齢黄斑変性の患者数は全世界で1億3500万人と推定
・上場による資金調達で当面の事業活動資金は十分な備蓄がある
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YF>
※Visiongain, Macular Degeneration (AMD) and Other Retical Diseases: World Drug Industry and Market 2015 - 2025, p33
同社は2016年3月に新たな開発パイプラインとして、米バイオベンチャーのYouHealth Eyetech Inc.(以下、YouHealth)から、YouHealthがカリフォルニア大学サンディエゴ校と契約する非外科的治療法に基づき研究開発した白内障の薬剤候補となるラノステロールの開発に関わる独占契約の権利を取得したと発表した。白内障の進行予防及び根治療法の開発を進めていく。白内障は失明原因の51%※1を占める眼科領域の主要疾患で、世界で9億人の罹患者がいると言われている。まだ薬剤による根治療法は無く、侵襲性の低い薬物療法が開発されれば社会的意義は極めて大きいものとなろう。同社では、2017年にも軽度の白内障患者を対象に臨床第1/2相試験を開始し、開発が順調に進めば将来的には中等度・重度の白内障患者のほか、老視(老眼)などにも適応範囲を拡大してくことを視野に入れている。また、4月には英国マンチェスター大学と、網膜色素変性症を含む網膜変性疾患の治療に向けた、オプトジェネティクス治療(光遺伝子療法)※2の開発並びに販売を目的とする独占契約も締結するなど、パイプラインの拡充を進めている。
※1 Visiongain, Ophthalmic Drugs Market Forecast, 2015-2025;World Health Organizationより2015年データ参照
※2オプトジェネティクス(光遺伝学)に基づき、光感受性がない細胞に光によって活性化されるタンパク質を発現させることにより、光感受性を持たせる治療法
2016年12月期(2016年1月−12月)の業績は、営業損失が前期の26百万ドルから36〜37百万ドルに拡大する見通しとなっている。研究開発費を前期の22百万ドルから44〜46百万ドルに増額することが主因だ。エミクススタトの臨床第3相試験に向けた費用や、ラノステロール等の新規開発、糖尿病網膜症やその他パイプラインの開発費の増加を見込んでいる。手元資金は2015年12月末時点で166百万ドルと潤沢にあり、当面は財務面でのリスクはないものと考えられる。
なお、同社株式は米国に本社があるため外国株扱いとなっているが、2015年12月に設立した日本法人を持株会社として、2016年9月に内国株として改めて上場する予定となっている。株式の割当比率は1:1となるため、現在の株価に影響はないが、国内株式扱いとなることで、国内投資家に向けた情報発信の媒体が広がり認知度の向上が進むこと、外国株式に投資できなかった機関投資家の投資機会が増すことなどから、株主価値の増大につながるものとして期待される。
■Check Point
・世界の眼科医薬品規模は2023年には3.5兆円、年率6%成長の予測
・加齢黄斑変性の患者数は全世界で1億3500万人と推定
・上場による資金調達で当面の事業活動資金は十分な備蓄がある
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<YF>