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アデランス Research Memo(5):海外事業は中長期的成長のための成長エンジン

注目トピックス 日本株
■海外事業の現状

(1)概況

海外事業は同社にとって中長期的成長のための2つの成長エンジンの1つである。その海外事業は、全般的には着実に進捗しているというのが弊社の評価だ。

アデランス<8170>の海外事業は、事業セグメント上はアメリカの連結子会社・ボズレー社が担うボズレー事業と、北米・欧州・アジアの3地域でウィッグを販売する海外ウィッグ事業の2つに分けられている。両社の違いは、ボズレー事業が医療行為である植毛であるということだ。海外ウィッグ事業は各地域の連結子会社によって構成されているが、中核は米国子会社のヘアクラブ社だ。ボズレー、ヘアクラブ両社については後に詳述する。

同社は2015年12月末現在で海外に242店舗を擁している。このうち、ボズレーは提携クリニックの施術室数となっている。またヘアクラブ社はFC展開を行っているため86店に加えてFC店も存在している。欧州は各国の小規模ながら有力なウィッグメーカー、販売店の買収を重ねて業容を拡大してきた。2016年2月期は小売店を買収したほか、病院内サロンや直営店を効率的に出店して店舗数を増やした。アジアでは女性向けレディメイド・ウィッグ取扱店舗を、百貨店中心に出店している。

収益面では、ボズレー社とヘアクラブ社の米国2社の影響度が圧倒的に大きい。欧州事業は2016年2月期の売上高は5,136百万円で営業利益は損益トントン程度とみられる。アジア地域の2016年2月期の売上高は856百万円で、利益面では営業損失が続いていると弊社ではみている。アジアの事業においては、製造拠点をフィリピンとタイ、ラオスに有している点も留意すべきポイントだ。

(2)ボズレー事業

ボズレー社は同社が2001年に買収した、植毛事業を展開する子会社だ。米国の植毛市場は約1,000億円市場とも言われており、その中でボズレー社は年商100億円規模で、約10%の市場シェアを占めるポジションにある。

ボズレー社が手掛ける植毛は医師による医療行為に属する。同社はFUTと呼ばれる世界標準となっている移植法を採用してきた。これは毛髪が残っている箇所(例えば後頭部)の皮膚を切除し、それを1本1本切り分けて移植株を作成して頭皮に埋め込むというものだ。したがって植毛施術の回数には自ずと限界があるため、事業の持続的成長のためには新規顧客の獲得が極めて重要だ。

ボズレー社は従来のFUTに加え、2014年からFUEの本格的採用を開始した。これは皮膚切除をせずに毛髪を1本ずつくりぬき、それをそのまま移植するという手法だ。FUTに比べて高価ではあるが、患者側の肉体的・心理的負担が軽いのがメリットだ。競合企業の多くは既にFUEを採用していたが、今回ボズレーがFUEを採用したことで同社の競争力が増し、業績拡大に弾みがつくと期待される。

2016年2月期は、ボズレー事業の業績は悪化した。売上高は前期比13.2%増収の11,897百万円となったが、営業利益は同69.5%減の141百万円にとどまった。減益の理由はシステムトラブルだ。同社は反響営業を採用しており、コールセンターを設置して顧客対応を行っている。2015年に新システムを導入にした際に、通話の不意の切断や通話記録不備などが発生し、多くの機会損失を招いたというのがその内容だ。現時点ではトラブルは解消されている。

(3)ヘアクラブ社

ヘアクラブ社は同社が2013年4月に買収した、男性用のオーダーメイド・ウィッグの北米最大手企業だ。同社は北米においてアデランスヘアグッズ(AHG)社など、かつて買収した企業を再編してレディメイド・ウィッグの製造・販売などを営んでいたが、事業拡大に苦戦していた。そこにヘアクラブ社を買収したことで業容が一気に拡大した。事業セグメントとしての海外ウィッグ事業の2016年2月期売上高は28,388百万円だが、その中の約7割に相当する20,345百万円がヘアクラブ社の売上高だ。

ヘアクラブ社は北米最大手ということもあり、順調に業績拡大が続いている。同社はヘアクラブ社買収後、出店加速(新規出店に加えFC店舗の直営化も含む)と女性用オーダーメイド・ウィッグへの進出を成長戦略の柱と位置付けて着実に業績を伸長させてきている。さらに、北米市場にはなかった増毛商品も投入して商品ラインアップの拡充を図っている。

2016年2月期はドル建て売上高が前期比7.7%増の168.1百万ドル、円建て売上高は同22.5%増の20,345百万円となった。利益面ではのれんの償却負担が重く営業損失が続いているが、その損失額は着実に縮小してきている。ヘアクラブ社の収益力を図るうえではEBITDA(営業利益+減価償却費・のれん償却費)がより適当と弊社では考えているが、その値は着実に伸長している状況だ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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