日本調剤 Research Memo(4):薬局が患者情報をしっかり把握することが重要な要素になる状況
[16/06/07]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■2016年度調剤報酬改定の主な内容
(2)「調剤基本料」の改定
2016年度調剤報酬改定では、調剤基本料において、日本調剤<3341>を含む大手調剤薬局チェーンを対象とした改定が行われた。従来は、調剤基本料は「調剤基本料1(41点)」を基本とし、特例に該当する店舗に対しては「調剤基本料2(25点)」を算定するというものであった。特例の該当要件は“処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率※70%超の薬局、または2,500回超かつ90%超の薬局”というものであった(このうち2,500回かつ90%超の要件については24時間開局という特例除外規定があった)。
※集中率とは特定の保健医療機関にかかる処方せんによる調剤の割合を言う
この16点の差は当該店舗で取り扱うすべての処方せんに適用されるため、店舗収入に与える影響は大きい。1日に平均200枚の処方せんを取り扱う店舗の場合、「200枚×16点×22日(週休2日と仮定)×12ヶ月×10円/点=8,448,000円」となり、それだけ年商が減るということだ。
2016年度改定では、大型門前薬局チェーンを対象とした「調剤基本料3(20点)」が追加された。この特例の条件は“同一法人グループ内の処方せん受付回数が月40,000回を超える法人グループに属する保険薬局のうち、集中率95%超の場合、もしくは特定の保健医療機関と不動産賃貸借関係にある場合”※というものだ。これにより、調剤基本料1もしくは2だった店舗が調剤基本料3へと区分が変更されるケースが出てくると想定される。
※“特定の保健医療機関と不動産賃貸借関係にある場合”とは、医療モールへ出店した店舗が典型的な例
また、前述の調剤基本料2の該当条件に“処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超”、並びに“特定の医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超(集中率はかかわらない)”という条件が新設されたことにより、従来は調剤基本料1と算定された店舗が今期から調剤基本料2へと変更されるケースも出てくる見込みだ。
なお、調剤基本料4、5及び特別調剤基本料については薬価の仕入価格について医薬品メーカーとの交渉が妥結していない店舗に対する点数減算の特例であり、同社には該当店舗はない。
調剤基本料改定による同社への影響は上図のようになる。改定前は全店舗(526店舗)のうち89%が調剤基本料1で算定されたが改定後の基準を当てはめると調剤基本料1が算定される店舗の割合は70%に低下する。一方で調剤基本料3に変更される店舗が23%となる。
調剤基本料そのものについては、都市部においては医療機関の密度が濃いため、大手病院の前に門前薬局を構えても、その周辺には診療所・クリニックが多数点在していることが多い。同社はそうした周辺の診療所等からの処方せん応需を増やす営業努力を強化し、処方せん応需枚数の総数を増加させると同時に、結果的に集中率の低下につなげていくとしている。
弊社では、一定の規模を持ち、かかりつけ薬局としての機能を重視した出店を維持するという同社の出店戦略には説得力があると考えている。詳細は後述するが、国が推進し、同社自身も目指す方向にあるのは、薬剤師業務の質が対人業務へと変貌し、薬局が患者の情報をしっかり把握することが重要な要素となる状況だ。薬局がどこに立地しているかが重要なのではなく、薬局がどのような役割、機能を果たすことができるのかが重要ということであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<YF>
(2)「調剤基本料」の改定
2016年度調剤報酬改定では、調剤基本料において、日本調剤<3341>を含む大手調剤薬局チェーンを対象とした改定が行われた。従来は、調剤基本料は「調剤基本料1(41点)」を基本とし、特例に該当する店舗に対しては「調剤基本料2(25点)」を算定するというものであった。特例の該当要件は“処方せん受付回数月4,000回超かつ集中率※70%超の薬局、または2,500回超かつ90%超の薬局”というものであった(このうち2,500回かつ90%超の要件については24時間開局という特例除外規定があった)。
※集中率とは特定の保健医療機関にかかる処方せんによる調剤の割合を言う
この16点の差は当該店舗で取り扱うすべての処方せんに適用されるため、店舗収入に与える影響は大きい。1日に平均200枚の処方せんを取り扱う店舗の場合、「200枚×16点×22日(週休2日と仮定)×12ヶ月×10円/点=8,448,000円」となり、それだけ年商が減るということだ。
2016年度改定では、大型門前薬局チェーンを対象とした「調剤基本料3(20点)」が追加された。この特例の条件は“同一法人グループ内の処方せん受付回数が月40,000回を超える法人グループに属する保険薬局のうち、集中率95%超の場合、もしくは特定の保健医療機関と不動産賃貸借関係にある場合”※というものだ。これにより、調剤基本料1もしくは2だった店舗が調剤基本料3へと区分が変更されるケースが出てくると想定される。
※“特定の保健医療機関と不動産賃貸借関係にある場合”とは、医療モールへ出店した店舗が典型的な例
また、前述の調剤基本料2の該当条件に“処方せん受付回数月2,000回超かつ集中率90%超”、並びに“特定の医療機関からの処方せん受付回数月4,000回超(集中率はかかわらない)”という条件が新設されたことにより、従来は調剤基本料1と算定された店舗が今期から調剤基本料2へと変更されるケースも出てくる見込みだ。
なお、調剤基本料4、5及び特別調剤基本料については薬価の仕入価格について医薬品メーカーとの交渉が妥結していない店舗に対する点数減算の特例であり、同社には該当店舗はない。
調剤基本料改定による同社への影響は上図のようになる。改定前は全店舗(526店舗)のうち89%が調剤基本料1で算定されたが改定後の基準を当てはめると調剤基本料1が算定される店舗の割合は70%に低下する。一方で調剤基本料3に変更される店舗が23%となる。
調剤基本料そのものについては、都市部においては医療機関の密度が濃いため、大手病院の前に門前薬局を構えても、その周辺には診療所・クリニックが多数点在していることが多い。同社はそうした周辺の診療所等からの処方せん応需を増やす営業努力を強化し、処方せん応需枚数の総数を増加させると同時に、結果的に集中率の低下につなげていくとしている。
弊社では、一定の規模を持ち、かかりつけ薬局としての機能を重視した出店を維持するという同社の出店戦略には説得力があると考えている。詳細は後述するが、国が推進し、同社自身も目指す方向にあるのは、薬剤師業務の質が対人業務へと変貌し、薬局が患者の情報をしっかり把握することが重要な要素となる状況だ。薬局がどこに立地しているかが重要なのではなく、薬局がどのような役割、機能を果たすことができるのかが重要ということであろう。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<YF>