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KYB Research Memo(4):17年3月期は売上高3,420億円、営業利益130億円の見通し

注目トピックス 日本株
■業績動向

(2) 2017年3月期通期予想

KYB<7242>の2017年3月期通期の業績※を、売上高で342,000百万円(前期比3.8%減)、営業利益で13,000百万円(同16.7%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益で7,900百万円(前期は2,237百万円の損失)と予想している。為替レートについては、ドルは105.00円(同120.15円)、ユーロは120.00円(同132.57円)と円高を前提としている。売上高は前期比で13,384百万円の減収を予想しているが、現地通貨ベースでは約11,000百万円の増加を予想しており、為替の影響により約24,000百万円の減収を見込んでいる。

※同社は2017年3月期からIFRS会計基準の導入を決定しているため、日本基準の前期との比較を正式には発表しておらず、また経常利益も表記されていないが、参考として日本基準の前期数値との増減率を表記している。またサブセグメントとして、航空機用油圧機器は2017年3月期からそれまでのHC事業から特装システム等に組み換えられている。

航空機用油圧機器は売上高では16年3月期、17年3月期予想ともに「特装システム等」に組み換えられているが、同利益では、16年3月期は「HC事業」に、17年3月期予想では「特装システム等」に含まれている。

各セグメント別の予想及び主な施策は以下のようになっている。

a) AC事業
●業績予想
主力の四輪車用緩衝器では、世界の自動車生産が2016年は約9,200万台(前年比3.4%増)、国内は900万台(同0.0%)と予想されていることから、販売数量が大きく増加することは期待できない。加えて為替が円高になるとの前提から、四輪車用緩衝器の売上高は146,800百万円(同9.7%減)と予想されている。また二輪車用緩衝器も中国やASEAN地区で販売台数減が予想され供給能力の過剰が懸念されていることから売上高は24,100百万円(同8.5%減)と予想されている。この結果、AC事業全体の売上高は223,200百万円(同7.4%減)が見込まれている。為替(円安)を主要因として売上高の減収が見込まれることから営業利益は8,500百万円(同40.6%減)と大幅減益を予想している。

●重要施策
同社は2017年3月期の重要施策として「付加価値商品開発」、「革新的モノ作り」、「市販製品の拡販による利益拡大」を掲げている。また二輪車用・EPSにおいても課題に対する施策を実行する予定だ。

・付加価値商品開発
特に重点課題としているのが、「電子制御サスペンション」と「軽量化」だ。

世界の電子制御サスペンションにおいては開発は欧州勢が先行しており、ボリュームゾーンは日系以外が占めている。このため、日系顧客との強固な基盤を生かして日系メーカーとの先行共同開発を行うと同時に、欧州の主要既存顧客との関係を生かして欧州での拡販を図る。また小型車への対応も進める。具体的目標としては、2016年度中に量産を開始、2020年度に売上高6,000百万円を目指す。

また軽量化においても欧州が先行しているが、日系顧客からも環境適応車を中心に軽量化要求が本格化してきている。そのため、この分野でも日系顧客との基盤を生かして先行共同開発を進める。欧州においては、現地の開発拠点による先端技術開発・導入を行う。実績として2015年にトヨタのプリウスで中空ロッドが採用されており、これを生かして他製品含めて随時顧客への提案を実施していく。

・革新的モノ作り
これまでの生産は、「大ロット生産」、「手動生産」、「拠点別ライン投入」であったが、今後はこれを以下のように変えていく。

1)小ロット生産:急激な量変動・少量多品種生産への柔軟な対応
2)自動化:ヒューマンエラー排除による品質向上・コスト競争力向上を図る
3)全世界対応ライン:仕様統一化によるライン・製品開発スピードの向上を目指す

この目標に沿って、2016年度に日本で新SAラインを立ち上げる計画で、自動溶接・組立・検査やコンパクト塗装設備が導入される見込み。生産性25%アップ、自動化率75%が見込まれており、今後このような新ラインを順次全拠点へ展開する計画だ。

・市販製品の拡販による利益拡大
世界のSA市販市場は2015年の125百万本から2025年には164百万本(2015年比31%増)と高い伸びが予想されている。この市場において同社が持つ強み(世界市場での高いカバレッジ率(93%)やグローバルの生産販売ネットワーク網)を生かして利益率の高い市販製品の拡販を図り、利益を拡大させる。戦略として「本数重視から利益重視へ」、「世界最適供給体制の拡充」を掲げて、以下のような施策を進める計画だ。

1)北米新ジャンルへの参入によるビジネス純増
2)高付加価値製品の拡販
3)メキシコ・ブラジルでの販売ネットワーク拡大
4)欧州域の倉庫合理化による経費削減
5)アフリカ市場での拡販
6) ASEANのトラック市場への参入
7)中国・オーストラリア・メコン市場での日本車・欧米車のアプリの拡充・拡販
8)グローバルに配置した12の生産拠点を活用した最適調達
9)為替変動を踏まえた柔軟な調達体制

・二輪車用及びEPS
二輪車用緩衝器では中国、ASEAN地区の販売台数減少により供給能力過剰が顕在化している。また国内市場では生産の海外移管が進み、収益性が低下している。このような状況に対応するため、ベトナム・インドへ生産を集約させ、その他拠点は縮小・再編を図る。これにより生産能力を1,100万本から700万本へ削減する。ASEAN向けの原価低減モデルの開発を進める。国内においては、電子制御サスペンションの開発を急ぐ。

EPSにおいては、自動運転の進展により技術開発は高度化しており、EPSの普及が進むことで市場価格が低下、収益性は悪化している。このような現状に対応するため、電子技術開発体制の充実、外部リソースの有効活用、原価低減EPSモデルの設計、ATV(全地形対応車)・UTV(多用途バギー車)や建機・農産機へのEPSの拡販に注力していく。

b)HC事業
●業績予想
主力の産業用油圧機器は中国市場の低迷は長期化が予想されるが、底打ちの気配はあり今期は若干の戻りを見込んでいる。一方ASEANではインドネシアで800百万円ほどの増収が期待できることから産業用油圧機器は前期比1,746百万円増の81,600百万円を予想している。その他製品はほぼ前期並みであることから、HC事業全体の売上高は89,600百万円(前期比1.8%増)が予想されている。

利益面では増収効果に加えて構造改革(拠点の統合や減損処理)の効果により営業利益は2,600百万円(前期は49百万円の損失)に回復すると予想※されている。

※既述のようにセグメントの変更に伴い、航空機用油圧機器の利益は今期のHC事業の予想に含まれていない。

●重要施策
主な需要先であるショベル市場では、大型(6トン以上)は2010年をピークに需要の減少が続いているが、中国は低迷が長期化すると予想され、米国市場も資源開発向けの需要は低調が見込まれる。一方で6トン未満の小型については、都市化の進展により都市型建機としてのミニショベルは成長市場であり、今後も需要は緩やかに増加することが期待されている。このような環境下で同社は、「構造改革の完遂」と「非ショベル比率の拡大」を重点取り組みとしている。

・構造改革の完遂
既に昨年度から既存枠組みを超えた再編・統合を進めてきたが、これを完遂する。既に中国製造2拠点の統合、中国販売2拠点の統合、国内製造2拠点の統合を2016年4月に完了した。これによる人件費減、業務委託費減などが見込まれるが、特に中国では約700百万円の経費削減効果が見込まれる。

また、需要予測見直しに伴う生産ラインのスリム化としてシリンダ生産ラインの削減(日本は月産15,000本から12,000本へ、中国は12,000本から6,000本へ)を進めてきたが、これも既に完了した。また中国ではさらなる人員の整理・再配置を実施中で今後2年間で200名ほどを削減する予定だ。

・非ショベルの拡大
その他建機ではショベル用シリンダ生産設備を活用し、サスペンション・ホイスト用シリンダを開発する。これはサスペンション技術とシリンダ技術の融合によって可能になるもので、複数の要素技術を要する同社だからできるものである。農機では高効率・電子制御製品を先進国に拡販する一方で、実績のある普及品を新興国で拡販する。鉄道関連機器では、新製品投入により日本でのシェアアップを狙う一方で海外顧客へも拡販をする。

c)特装システム等
●業績予想
特装車両、装置・電子機器及び今期からこのセグメントに移管された航空機用油圧機器ともに底堅い伸びを見込んでおり、売上高は29,200百万円(前期比10.6%増)を予想している。営業利益は1,900百万円(同43.9%増)が見込まれている。セグメントの組み替えにより前期の利益には航空機用油圧機器の利益は含まれていないため、利益の伸び率が高くなっている。

●重要施策
航空機器事業では、民需において既存顧客への販売拡大を図ると同時に新規顧客の開拓を進める。具体策として北米シアトル(ボーイング社の本拠地)に駐在員事務所を再開し、北米事業を強化する。また官需では、新規プログラムへの参画、修理事業の拡大活動を続ける。

特装車両事業では、国内の市場動向に即応出来る生販技体制を確立する。特に成長市場であるインドで生産体制強化プロジェクトを立ち上げ、同地でのシェアを2015年度の4.5%から2016度年には15.0%へ高める。また免制震装置市場は国内4社(同社シェア約50%)に集約されつつあるが、スーパーゼネコン各社は長周期地震動対策に注力しており、こちらへの対策を喫緊の課題として開発を進め、競合他社に対して差別化を図る。また営業面においても待ちの営業ではなく、提案型営業への転換を図る。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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