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ダイナムジャパンHD Research Memo(3):厳しい経営環境は業界再編を通じたシェア拡大と成長のチャンス

注目トピックス 日本株
■ダイナムグループの強みと成長戦略

パチンコホール市場が全体として右肩下がりのトレンドを歩んでいるなかにあっても、個々の企業ベースでは成長を達成することは可能だと弊社では考えている。パチンコホールの店舗数が全国に11,310店ある中で、店舗数トップのダイナムジャパンホールディングス<06889/HK>でもシェアがわずか約4%という、非常に細分化された業界であるからだ。業界全体の経営環境が厳しい状況は、各社を生き残り競争へ追い詰めることになる。しかしそれは、力のある企業にとっては、業界再編を通じたシェア拡大と成長のチャンスでもある。

パチンコ市場の縮小トレンドは今に始まったことではなく、遅くとも10年から15年ほど前には認識されていたことだ。同社はパチンコ市場の長期的な縮小を早くから認識し、自社の強みを生かして店舗網を拡大し、シェアを伸ばすことで成長する戦略を追求してきた。

それを実現するに足る強みを同社は有していると、弊社では考えている。最も根本的な強みはチェーンストア理論に基づくローコストオペレーション(事業運営)だ。この強みを生かして同社は、低貸玉営業の強化・推進や大規模リニューアルなどの、店舗の魅力度向上策を行ってきている。

また、同社は上場企業であることを生かして、株式交換により夢コーポレーションを傘下に収めた。これは、同社の今後の成長モデルの1つを表象する事象であると弊社では考えている(グループ化の詳細は後述)。

パチンコホール業界の市場は、縮小したとはいえ依然として25兆円前後の巨大市場だ。仮に今後も縮小が続くとしても、同社を含めた経営力のある複数の有力企業が成長を実現するのには十分な大きさのパイだと言える。弊社では、同社が上述の強みを生かして成長軌道に回帰することは十分に可能だと考えている。以下では、同社の強みの主要ポイントについて詳述する。

(1)チェーンストア理論に基づくローコストオペレーション

同社の前取締役会議長であった佐藤洋治(さとうようじ)氏は大学卒業後、当時日本に入ってきて日が浅かった「チェーンストア理論」に感銘を受け、(株)ダイエーに入社した。その後、同社創業者である父の後を継いで同社の経営を行ってきたが、その間、一貫してチェーンストア理論をパチンコホールの経営に応用し、同社を業界トップクラスの企業へと成長させた。また、チェーンストア理論をパチンコホールの経営に生かすという志を同じくする同業者と、業界団体「パチンコ・チェーンストア協会(PCSA)」を設立した。

業界再編で勝ち抜くためのベースはローコストオペレーションにあると弊社では考えている。この能力がないと集客のための施策について思うような手を打てない事態や、規制の強化などの突発的な事態に遭遇した際の抵抗力を持てない事態に陥る可能性があると考えられるためだ。同社はこの点で、チェーンストア理論に基づき、パチンコホール経営におけるローコストオペレーションを追求してきた。

同社のローコストオペレーションは、既存店と新規出店の両方に対して適用されている。まず、新規出店については、低貸玉営業のロードサイド店舗を基本とし、木造の標準建屋モデルを確立している。機械の設置台数や店内のレイアウトも標準化・共通化し、部材費・建築費等の削減と工期短縮を図り、初期投資額の圧縮につなげている。

既存店舗のオペレーションでは、人件費の削減が重要な要素だ。店舗運営費用の中では人件費と機械費が占める割合が大きいが、機械費については顧客の嗜好に合わせる必要があるために、各社とも人気機種を導入せざるを得ず、企業間で大きな差別化は難しいからだ。人件費について同社は、“パーソナルシステム(各台計数機)”の導入と情報システムを活用した一元管理によって、1店舗当たりのスタッフ数を削減することに成功している。

パーソナルシステムとは、客が勝った分の玉(メダル)についてカードに記録して管理するシステムだ。箱を積み上げて通路に置いたり、景品交換のために台車で運んだりといった必要がなくなる。通常、1つのホールは正社員6,7人とアルバイト20名で、3交代で運営されている。パーソナルシステムは、アルバイト6〜7人(1シフト当たり2名)を削減する効果があると試算されている。パーソナルシステムの導入率は、低貸玉店舗においては90%近いと弊社では推測している。

(2)低貸玉営業

ローコストオペレーションは事業運営の“守り”の面で重要なポイントだが、“攻め”という意味ではトップライングロース、すなわち売上高の成長が不可欠だ。トップライングロースのために同社が採用する戦略が「低貸玉営業」だ。

パチンコは玉を借りて遊ぶという形態となっており、その際の玉を借りる(店側からは玉を貸す)料金が貸玉料で、従来は1玉4円が基本だった。すなわち、客は1,000円で250玉を借りることができる。同社が進める低貸玉営業戦略というのは、この貸玉料を1円あるいは2円に引き下げるというものだ。1円の場合、客は1,000円で1,000玉を借りることができ、それだけ長時間遊ぶことができるため、これが集客につながるという構図だ。

低貸玉営業は高貸玉営業に比べて集客力があることは明白にデータに現れている。貸玉収入、営業収入ともに、ここ数年の間は総額ベースでは高貸玉店舗がマイナス成長、低貸玉店舗はプラス成長と明暗が分かれている。店舗数の増減の影響を除くため1店舗当たりの数値で比較しても傾向は同じだ。高貸玉店舗が大きくマイナスとなっているのに対して、低貸玉店舗はプラスもしくは小幅なマイナスで踏みとどまっている。

もう1つの注目点はネット売上高とも言える営業収入だ。1店舗平均営業収入の額は、高貸玉店舗が低貸玉店舗を大きく上回っている。スーパーで言えば同じものを2倍〜4倍の値段で売っていることになるので、当然の帰結だ。1店舗当たりの営業費用は高貸玉店舗も低貸玉店舗もほぼ同じであるため、営業利益率は低貸玉店舗が低くなってしまう。ここにジレンマが生じる原因がある。集客力を取るか利益(率)を取るかの判断を迫られることになる。

低貸玉営業は業界全体に急速に普及しつつある。しかしこの戦略を採用するには、相応の企業体力が必要だ。店舗数での成長がなければ、企業業績としては確実に減益となってしまうためだ。そこで各社は、利益を稼げる高貸玉店舗と低貸玉店舗のバランスをどう取っていくかが問われることになる。

同社の低貸玉機割合は、パチンコ及びパチスロの両方において業界平均値を大きく上回っている。ローコストオペレーションや店舗数、上場企業としての資金調達力など、企業の総合力を生かして低貸玉営業を推進し他社を突き放そうという戦略だ。企業の総合力は後述する射幸性の規制問題においてもポジティブに働くと期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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