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アイナボHD Research Memo(2):タイル工事以外にも各種建材・住設機器の卸売も拡大

注目トピックス 日本株
■会社概要

(1)沿革

現代表取締役社長の阿部一成(あべかずなり)氏の祖父でレンガ職人であった阿部梅吉(あべうめきち)氏が1924年に創業した阿部梅吉商店がアイナボホールディングス<7539>の源流。戦後になりRC構造(鉄筋コンクリート造)が主流になるに伴いレンガ造と似た雰囲気を持つタイル張りが普及し、同社もタイル工事にシフトした。高度成長期にタイル需要が急増したことを受け、1961年に株式会社三和商会を設立し卸売業を本格化した。その後バブル崩壊後の住宅着工戸数の減少や工法の変化などによりタイル需要が縮小、それに合わせて住設機器の比重を高めた。現在では工事請負の比率が高くなっており、タイル工事以外にもサイディングの外壁工事や水回りの住設機器の工事、さらに各種建材・住設機器の卸売も拡大している。株式は1997年に日本証券業協会に店頭登録され、その後ジャスダック証券取引所と大阪証券取引所の合併に伴い、現在はJASDAQ市場に上場されている。2013年には持株会社体制へ移行し株式会社アイナボホールディングスに商号変更した。

(2)事業内容

2016年5月末現在、純粋持株会社である同社の下に連結子会社3社、非連結子会社1社を擁してグループを形成している。事業セグメントは、戸建住宅事業と大型物件事業に分けられており、各セグメントの売上高(2016年9月期第2四半期)は、戸建住宅事業27,943百万円(売上高比率89.2%)、大型物件事業3,394百万円(同10.8%)、また営業利益は、戸建住宅事業1,327百万円、大型物件事業203百万円となっている。ただしこれらのセグメントは受注先(受注金額)の大小によって分けられているだけであって工事内容は同じである。前者は主に一般住宅用の工事であり中小ゼネコンや一般工務店などからの受注であるのに対して、後者は主に大手ゼネコン等からの受注となっている。

さらに戸建住宅事業は外壁工事、住設工事、建材及び関連商品販売、住設機器販売のサブセグメントに、大型物件事業はタイル工事、住設工事のサブセグメントに分けられている。それぞれのサブセグメントの総売上高に対する比率(2016年9月期第2四半期)は下図のように戸建住宅事業の外壁工事が22.5%、同住設工事が39.3%、同建材販売が15.7%、同住設販売が11.5%、大型物件事業のタイル工事が4.6%、同住設工事が6.2%となっている。

a)戸建住宅事業
主に地場の中小ゼネコンや工務店、ハウスメーカーやビルダーから受注する案件。施主からの直接受注は少ない。

1)外壁工事(2016年9月期第2四半期総売上高に占める比率22.5%):一般住宅や小型マンション、店舗等の内外装タイル、床タイル、エクステリア等の工事を行うもの。タイルだけでなくサイディング(外壁材)など様々な素材に対応している。
2)住設工事(同39.3%):主にシステムキッチン、バス、トイレ等の水回りや各種リフォーム工事、太陽光発電システムの設置工事等を行うもの。基本的には外壁工事とは別受注だが案件によっては同時受注の場合もある。バスルームの工事件数は年間2万件近くに上り、業界では最大手クラスである。
3)建材販売(同15.7%):一般住宅、店舗、中小マンション向けの各種建材の卸売。比較的タイル建材の販売が多い。主な販売先は工務店や地場のハウスビルダーなどで、二次卸業者への販売はない。
4)住設販売(同11.5%):建材販売と同様に工務店や地場のハウスビルダーなどへ住設機器の販売を行うもの。

(注:工事に伴うタイル資材や住設機器の販売高はそれぞれの工事部門に含まれている。)

b)大型物件事業
工事内容は戸建住宅事業と同じであるが、受注先が大手ゼネコンからの大型物件(ビル、マンション等)をこのセグメントに入れている。大林組<1802>、(株)鴻池組、長谷工コーポレーション<1808>などからの受注が比較的多い。

1)タイル工事(同4.6%):内外装タイル、床タイル、石材の工事など。
2)住設工事(同6.2%):システムキッチン等の住宅設備や空調設備などの工事。主にビル、マンション向け。

(3)主な仕入先と販売先

同社の得意先は大手ゼネコンを筆頭に約7,000社に上る。これらの顧客が常に稼動しているわけではなく、また1件当たりの金額も数百万円から1億円以上と様々であるため、下記に述べるように売掛金の回収が経営上の重要な要素となる。

一方で主な仕入先は、建材や住設機器ではLIXILグループ<5938>が最も多く、その他にTOTO<5332>、リンナイ<5947>、クリナップ<7955>、大建工業<7905>などからの仕入れが多い。

また工事を行う下請け業者は大小合わせて2,000社近くになるが、この中の半数近くは同社専業の下請け業者である。下記に述べる保険制度などにより同社との信頼関係は厚く長い付き合いが続いている。

(4)競合、特色、強み

同社のような外壁工事や建材・住設機器の販売を行っている企業は数多あり、それぞれの分野で多くの競合会社が存在する。事業全体において特にこれといった競合会社を探すのは簡単ではないが、あえて競合会社を挙げれば、(株)小泉、渡辺パイプ(株)などである。ただし外壁工事の分野では、近年は施工会社が減る傾向にあり競合会社は少なくなっている。このような業界の中で同社は、以下のような特色を活かして同業他社との差別化を図っている。

同社の特色の1つは総合技術研修センターを有していることで、ここで多くの下請け会社に対して専門性の高い技術研修を行い施工をサポートしている。また同社が研修を行うことで様々な工種への対応が可能になっている。さらにこの技術センターで各現場の施工が正しく実施されているかを半年に1回必ずチェックしており、これによって個人差による工事仕上がりのバラツキを減らしている。

自家保険制度を設けていることも同社の特色だ。これは下請け業者から出来高に応じて徴収し、これを協力会にプールして、万が一下請け業者(作業員)が事故等で業務を行えなくなった場合には、休業期間分の所得を補償するものだ。この制度によって同社と下請け業者との信頼関係は厚くなると同時に、職人の定着率が高まり、工事仕上がりの精度が高まっている。

売上管理、原価管理や工事進捗管理はどの企業でも行っていることだが、同社の場合はこれに加えて請求管理、入金管理、その結果としての未収金管理を徹底して行っている。具体的には各案件において仕入れと売上を少額であっても行単位で管理し、PL上の管理だけでなくBS上の管理(チェック)も行っている。このようなBS上の管理は工事の進捗状況を見ながら見極める能力が重要であり容易なことではない。近年、建材販売を行っている同業他社が工事施工分野に進出するケースは多いが、この未収金管理が複雑で手間がかかる(非効率な)ため多くの競合他社は工事事業から徹退している。ある意味でこの未収入金の管理が「見えない参入障壁」になっており同社の特色であり強みとも言えるだろう。その結果として、同社の2016年9月期第2四半期末のネットキャッシュ(現金及び預金-借入金)は6,725百万円(対総資産比21.2%)と豊富であり、財務的には強固である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)



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