翻訳センター Research Memo(5):医薬、工業・ローカライゼーション、特許、金融・法務の翻訳に注力
[16/06/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
(1)沿革
翻訳センター<2483>は、1986年に医薬専門の翻訳会社として大阪で設立された。その後、工業、特許、金融・法務分野などに翻訳の専門領域を拡大し、2006年には翻訳会社で初の株式上場を果たす。その後も海外及び専門分野の子会社の設立により業容を拡大。2012年には(株)アイ・エス・エスをグループ会社化し、通訳事業、派遣事業、コンベンション事業などを加え、フルラインのランゲージサービスを提供するに至っている。2015年3月に人材紹介事業を行う(株)アイ・エス・エス・コンサルティングを売却し、現在グループ会社は海外を含めて6社である。
(2)事業概要
翻訳事業は、売上高構成の73.2%(2016年3月期)を占め、同社の大黒柱である。翻訳事業はさらに顧客業種別に分かれ、医薬(売上構成比25.8%)、工業・ローカライゼーション(同20.8%)、特許(同19.6%)、金融・法務(同6.8%)に分類される。ちなみに取引会社数は約4,400社、年間受注件数は約64,000件である。約80%は日本語と英語間での翻訳であるが多言語の翻訳も伸びている。
翻訳事業以外では、派遣事業(売上構成比9%)、通訳事業(同6%)、コンベンション事業(同5%)、語学教育事業(同2%)とランゲージサービスを総合的に展開する。派遣事業において2015年3月期に子会社を売却した影響で、売上は減少したが、位置付けは依然大きい。
(3)事業環境
翻訳・通訳を合わせた推計でも、市場規模は2,577億円(2015年、矢野経済研究所調査)と、着実に成長している。その中で国内の翻訳市場規模は2,000億円前後、グローバル化の流れのなかで安定成長をしている(ヒアリングベース)。産業翻訳が市場の大半を占め、医薬、金融、自動車、電機、エネルギー、IT通信、小売業などの国内企業のグローバル展開や外資系企業の日本進出が需要発生のドライバーだ。また、外国人観光客は国土交通省による訪日旅行促進政策「ビジットジャパン」の取り組み開始年には521万人(2003年)であったが、2014年には1,341万人まで増え、2015年に1973万人に達している。訪日や在住の外国人によるインバウンド需要も増えており、企業や自治体の外国語対応も今後さらに進むと予想される。
産業翻訳ニーズの最近の特徴として「多言語化」「スピード化」「プロジェクトの大型化」が挙げられる。同社の納入事例でも、“自動車のナビゲーションシステムを全世界同時展開するうえで30言語以上に翻訳する業務”などは翻訳大手にしか受注できないタイプだ。医薬業界の例では、世界の大手製薬会社は外注する翻訳会社を絞る傾向にあり、プリファードベンダー(優先調達先)になれないと取引できない場合も増える。同社では実績と知名度を背景に、世界の大手製薬会社30社中20社以上と取引実績があり、有利な市場環境は今後も続くものと想定される。現在国内1位とはいえ、市場シェアは3.6%に過ぎず、拡大余地は十分あると言えるだろう。ちなみに、世界に目を向けると欧米にはより規模の大きな語学サービス企業(翻訳・通訳を含む)が存在し、2015年調査で同社は世界14位、アジアでは4年連続1位である。
(4)ビジネスモデルの特徴
同社のビジネスモデル上の特徴は、「組織化・システム化された営業機能・制作機能」である。これにより、要求の厳しい産業翻訳顧客に対して、バランスの良い価値(品質、スピード、コスト)を提供でき、かつ大規模案件や多言語案件にも機動的に対応できる。営業機能に関しては、1)専門特化によるノウハウ蓄積、2)信頼されるコミュニケーション、顧客社内他部門への展開、3)大型受注を可能にする機動的チーム組成ノウハウ、4)ICTによる登録者マッチングシステムなどが強みとなっている。制作機能に関しては、1)4,000人を超える翻訳・通訳登録者、2)翻訳支援ツールの活用、3)70言語以上に対応、4)専門特化した子会社(メディカルライティング、海外への特許出願支援等)などが強みとなっており、両機能は相互に影響し合い、好循環を生んでいる。これらの強みは、当然顧客満足にもつながっており、リピートオーダーが7割を超えるというのもうなずける。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
<YF>
(1)沿革
翻訳センター<2483>は、1986年に医薬専門の翻訳会社として大阪で設立された。その後、工業、特許、金融・法務分野などに翻訳の専門領域を拡大し、2006年には翻訳会社で初の株式上場を果たす。その後も海外及び専門分野の子会社の設立により業容を拡大。2012年には(株)アイ・エス・エスをグループ会社化し、通訳事業、派遣事業、コンベンション事業などを加え、フルラインのランゲージサービスを提供するに至っている。2015年3月に人材紹介事業を行う(株)アイ・エス・エス・コンサルティングを売却し、現在グループ会社は海外を含めて6社である。
(2)事業概要
翻訳事業は、売上高構成の73.2%(2016年3月期)を占め、同社の大黒柱である。翻訳事業はさらに顧客業種別に分かれ、医薬(売上構成比25.8%)、工業・ローカライゼーション(同20.8%)、特許(同19.6%)、金融・法務(同6.8%)に分類される。ちなみに取引会社数は約4,400社、年間受注件数は約64,000件である。約80%は日本語と英語間での翻訳であるが多言語の翻訳も伸びている。
翻訳事業以外では、派遣事業(売上構成比9%)、通訳事業(同6%)、コンベンション事業(同5%)、語学教育事業(同2%)とランゲージサービスを総合的に展開する。派遣事業において2015年3月期に子会社を売却した影響で、売上は減少したが、位置付けは依然大きい。
(3)事業環境
翻訳・通訳を合わせた推計でも、市場規模は2,577億円(2015年、矢野経済研究所調査)と、着実に成長している。その中で国内の翻訳市場規模は2,000億円前後、グローバル化の流れのなかで安定成長をしている(ヒアリングベース)。産業翻訳が市場の大半を占め、医薬、金融、自動車、電機、エネルギー、IT通信、小売業などの国内企業のグローバル展開や外資系企業の日本進出が需要発生のドライバーだ。また、外国人観光客は国土交通省による訪日旅行促進政策「ビジットジャパン」の取り組み開始年には521万人(2003年)であったが、2014年には1,341万人まで増え、2015年に1973万人に達している。訪日や在住の外国人によるインバウンド需要も増えており、企業や自治体の外国語対応も今後さらに進むと予想される。
産業翻訳ニーズの最近の特徴として「多言語化」「スピード化」「プロジェクトの大型化」が挙げられる。同社の納入事例でも、“自動車のナビゲーションシステムを全世界同時展開するうえで30言語以上に翻訳する業務”などは翻訳大手にしか受注できないタイプだ。医薬業界の例では、世界の大手製薬会社は外注する翻訳会社を絞る傾向にあり、プリファードベンダー(優先調達先)になれないと取引できない場合も増える。同社では実績と知名度を背景に、世界の大手製薬会社30社中20社以上と取引実績があり、有利な市場環境は今後も続くものと想定される。現在国内1位とはいえ、市場シェアは3.6%に過ぎず、拡大余地は十分あると言えるだろう。ちなみに、世界に目を向けると欧米にはより規模の大きな語学サービス企業(翻訳・通訳を含む)が存在し、2015年調査で同社は世界14位、アジアでは4年連続1位である。
(4)ビジネスモデルの特徴
同社のビジネスモデル上の特徴は、「組織化・システム化された営業機能・制作機能」である。これにより、要求の厳しい産業翻訳顧客に対して、バランスの良い価値(品質、スピード、コスト)を提供でき、かつ大規模案件や多言語案件にも機動的に対応できる。営業機能に関しては、1)専門特化によるノウハウ蓄積、2)信頼されるコミュニケーション、顧客社内他部門への展開、3)大型受注を可能にする機動的チーム組成ノウハウ、4)ICTによる登録者マッチングシステムなどが強みとなっている。制作機能に関しては、1)4,000人を超える翻訳・通訳登録者、2)翻訳支援ツールの活用、3)70言語以上に対応、4)専門特化した子会社(メディカルライティング、海外への特許出願支援等)などが強みとなっており、両機能は相互に影響し合い、好循環を生んでいる。これらの強みは、当然顧客満足にもつながっており、リピートオーダーが7割を超えるというのもうなずける。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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