ムサシ Research Memo(5):紙文書をデジタルデータ化する事業に注力
[16/07/07]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■中期的注目事業:メディアコンバート事業
(1)事業の概要
ムサシ<7521>は昭和30年代から紙文書をマイクロフィルム化する事業を手掛けているが、その経験・技術を生かして紙文書をデジタルデータ化する事業に注力している。同社はこのメディアコンバート事業(「文書デジタル化事業」と称することもある)を選挙システム機材部門と並ぶ収益の柱に育成することを目指している。
メディアコンバート事業は、会計上は、情報・印刷・産業システム機材セグメントの中に含まれている。データのデジタル加工及び入力は、ムサシ・イメージ情報(株)(江東区)、(株)ムサシ・エービーシー(茨城県つくば市)及びムサシ・アイ・テクノ(株)(東大阪市)の3子会社が担当している。
メディアコンバート事業の収益規模は、2010年3月期に売上高が121億17百万円のピークを付けた後は、東日本大震災の影響もあって市場が縮小し、同社の売上高も急減した。この大きな要因は、当時の顧客が官公庁中心であったことにある。数年間の低迷期を経て、2015年3月期から市場構造に明確な変化が見られるようになった。それは、民需が動意づいてきたということだ。この背景には、文書保管コストに対する意識の高まりや、規制緩和の一環で法定保存文書について、一部、電子データでの保存が認められるようになったことなどがある。
(2)収益動向と成長シナリオ
前出のグラフにあるように、メディアコンバート事業の売上高は、2014年3月期に36億77百万円と直近の底を付けた後、2015年3月期から増収に転じた。そのけん引役は民間企業からの需要だ。この基調は2016年3月期入ってもさらに強まり、2016年3月期は民需対官需の売上構成比が65対35となった。
同社は、売上高の増大のみならず、収益性の確保にも力点を置いている。2015年10月には、実際にデータ加工を行う子会社も交えた「ムサシグループ・アウトソーシングマネジメント委員会」を設置した。これは、大口案件について採算性の観点から受託の可否を審査・検討するための機関だ。真に持続的な事業とするためには、採算性をきちんと確保することが必要だという考えからこの組織が設置された。
足元及び今後の市場環境について同社では、民需を中心に順調に推移するとの感触を得ているようだ。必ずしも大口案件ばかりではないようだが、同社の強みである万全のセキュリティ体制や作業の正確性などが評価され、単価の改定も進みつつある模様だ。
中期的にも民間分野での案件は豊富にあると期待される。例えば、金融機関において文書デジタル化の潜在的需要はまだかなり存在するとみられる。製造業においてもCADが普及する以前の古い図面などはそのまま残っているケースが多いもようで、こちらでも事業チャンスは大きいとみている。デジタルデータ化するメリットの1つに検索機能の付加がある。例えば古い構造物(橋梁、トンネルなど)に緊急の補修の必要性が生じた場合に、すばやく過去の技術資料を閲覧できる体制を整えることの意義は大きいと言える。
昨年に期待が膨らんだマイナンバー関連需要については、足元は一時的に停滞している状況だ。総務省側のシステムトラブルによってマイナンバーカードの発行が大きく停滞しているため、マイナンバー制度の運用そのものが計画から大きくずれ込んでいることが背景にある。弊社では、いずれトラブルが解決してマイナンバー制度が当初予定どおりに運用されてくれば、同社のマイナンバー関連ビジネスも動きが出てくると期待している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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(1)事業の概要
ムサシ<7521>は昭和30年代から紙文書をマイクロフィルム化する事業を手掛けているが、その経験・技術を生かして紙文書をデジタルデータ化する事業に注力している。同社はこのメディアコンバート事業(「文書デジタル化事業」と称することもある)を選挙システム機材部門と並ぶ収益の柱に育成することを目指している。
メディアコンバート事業は、会計上は、情報・印刷・産業システム機材セグメントの中に含まれている。データのデジタル加工及び入力は、ムサシ・イメージ情報(株)(江東区)、(株)ムサシ・エービーシー(茨城県つくば市)及びムサシ・アイ・テクノ(株)(東大阪市)の3子会社が担当している。
メディアコンバート事業の収益規模は、2010年3月期に売上高が121億17百万円のピークを付けた後は、東日本大震災の影響もあって市場が縮小し、同社の売上高も急減した。この大きな要因は、当時の顧客が官公庁中心であったことにある。数年間の低迷期を経て、2015年3月期から市場構造に明確な変化が見られるようになった。それは、民需が動意づいてきたということだ。この背景には、文書保管コストに対する意識の高まりや、規制緩和の一環で法定保存文書について、一部、電子データでの保存が認められるようになったことなどがある。
(2)収益動向と成長シナリオ
前出のグラフにあるように、メディアコンバート事業の売上高は、2014年3月期に36億77百万円と直近の底を付けた後、2015年3月期から増収に転じた。そのけん引役は民間企業からの需要だ。この基調は2016年3月期入ってもさらに強まり、2016年3月期は民需対官需の売上構成比が65対35となった。
同社は、売上高の増大のみならず、収益性の確保にも力点を置いている。2015年10月には、実際にデータ加工を行う子会社も交えた「ムサシグループ・アウトソーシングマネジメント委員会」を設置した。これは、大口案件について採算性の観点から受託の可否を審査・検討するための機関だ。真に持続的な事業とするためには、採算性をきちんと確保することが必要だという考えからこの組織が設置された。
足元及び今後の市場環境について同社では、民需を中心に順調に推移するとの感触を得ているようだ。必ずしも大口案件ばかりではないようだが、同社の強みである万全のセキュリティ体制や作業の正確性などが評価され、単価の改定も進みつつある模様だ。
中期的にも民間分野での案件は豊富にあると期待される。例えば、金融機関において文書デジタル化の潜在的需要はまだかなり存在するとみられる。製造業においてもCADが普及する以前の古い図面などはそのまま残っているケースが多いもようで、こちらでも事業チャンスは大きいとみている。デジタルデータ化するメリットの1つに検索機能の付加がある。例えば古い構造物(橋梁、トンネルなど)に緊急の補修の必要性が生じた場合に、すばやく過去の技術資料を閲覧できる体制を整えることの意義は大きいと言える。
昨年に期待が膨らんだマイナンバー関連需要については、足元は一時的に停滞している状況だ。総務省側のシステムトラブルによってマイナンバーカードの発行が大きく停滞しているため、マイナンバー制度の運用そのものが計画から大きくずれ込んでいることが背景にある。弊社では、いずれトラブルが解決してマイナンバー制度が当初予定どおりに運用されてくれば、同社のマイナンバー関連ビジネスも動きが出てくると期待している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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