アキテクツSJ Research Memo(3):家づくりの流れを変えたASJアカデミー
[16/07/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
(2)事業内容
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>が参照するアンケート調査の結果では、『現在検討している』から『今後ぜひ検討したい』までを含めると、建築家との家づくりを希望する人が全回答者の75%を占めた。個々人の思考や嗜好に合う多種多様な住まいに対するニーズは高まっており、単に住宅を取得するのではなく、共感と感動を建築家との家づくりに求める人が増えている。
従来のやり方では、施主は建築家に現地調査、法規制の確認、ヒアリングをしてもらう前に、建設費の約1割に相当する金額の設計契約を締結する必要があった。一旦プロジェクトが動き出すと、仮に建築家が提示するプランが気に入らなくても後戻りできないなどのリスクがある。建築家が高額物件を選好するため、ボリュームゾーンの価格帯を希望する施主との不具合が目立っていた。また、建築家と建設会社とのコミュニケーションが不十分なために、工事費に関する合意点が見出せない「コストクラッシュ」という問題も多々発生した。アベノミクス導入以降の建材費の高騰により、このリスクはますます高まっている。
同社は、これらの問題を解決するために、従来のフローとは異なるASJアカデミーの独自方式のプラットホームを構築した。ASJアカデミーの方式では、ASJアカデミー会員となった施主と登録建築家及び加盟建設会社が、最初から三位一体となって家づくりを進める。
ASJアカデミーには、全国各地で開催される「建築家展」などのイベントに参加した人が入会することが多い。イベント会場には建築家が8〜10人ほど待機しており、直接話ができ、建築家によるグループ向けのプレゼンテーションも受講できる。ASJアカデミー会員になるには入会金や年会費は必要ない。会員特典には、プランニングコースの利用、情報誌読み放題(バックナンバー含む)、各種セミナー・見学会への参加、会員専用サイトの利用、土地探しサービス、専門誌の貸出、スタジオ施設の利用などがある。
イベントを開催する加盟建設会社は、会員(施主)と建築家、自社の社員が打ち合わせをするスタジオを開設している。プランニングコースでは、イベントで知った建築家はもとより、日本全国の登録建築家から希望条件に合う建築家の紹介を受けることができ、通常1名を指名する。会員と指名された建築家、登録建設会社が仕様の仮決めやコストの確認をした後、建築家は、現地調査、法規制の確認、ヒアリングを終えた後、プレゼンテーションをする。仮に会員が建築家のプランが意に沿わない場合は、期間や回数の制限なしで何度でも繰り返すことができる。建築家の指名変更も可能だ。プランが気に入って設計契約に進んだ段階で、初めて設計料が発生する仕組みとなっている。
a) ASJアカデミー会員?今期末4万人を想定する
ASJアカデミーの会員数は、2016年3月期に7,266人の新規入会者を獲得し、累計で35,456人になった。2017年3月期末には4万人に達すると推定している。
b)プレーヤーがそれぞれの強みを発揮するスキーム
ASJアカデミーのプラットホームに関わるプレーヤーは、それぞれの強みを発揮する役割分担となっている。ASJアカデミー会員は、気に入ったプランに出会えるまで時間や費用を気にせず家づくりに励めるため、デザイナー建築への障壁が低くなる。
建築家にとっては、イベントなど発表の場が与えられ、自分のデザイン・コンセプトに賛同する見込み客との出会いが増えるというメリットがある。従来、建築家の活動範囲はアトリエ周辺に限定されがちだったが、全国に広がる可能性を得た。現場が遠隔地であっても、移動交通費はスタジオが負担する。
地方の建設会社には、施工能力が高いものの営業力が不足し差別化要因に欠けるといった弱点がある。加盟建設会社は、担当する地域であれば、地元はもとより、全国の登録建築家との家づくりに関わることができる。建築家が「最強の営業員」の役割を担ってくれることになる。ASJアカデミー上で進められた案件は、施主がプランを受け入れ建築が決まれば、入札なしに受注できる。さらにプランニングコースの打ち合わせには最初から参加しているため、施主、建築家との意思疎通がスムーズである。加えて、同社が開発した先進的な積算システムが利用できる。
c)売上高構成比?スタジオロイヤリティが約5割
2016年3月期の売上高は1,279百万円であった。売上高は4つの項目により構成される。すなわち、スタジオロイヤリティ(売上高構成比49.9%)、マーケティング(同30.6%)、建築家フィー(同9.6%)、その他(同9.9%)である。
売上高構成比が最も大きいスタジオロイヤリティは、スタジオ(加盟建設会社)の新規加盟契約時のスタジオ加盟金及び既存スタジオが支払う月額ロイヤリティ、請負契約ロイヤリティなどである。マーケティングは、スタジオ単位で開催されるイベントにかかる企画費及び販促物などのイベント関連売上高を内容とする。建築家フィーは、登録建築家の建築設計・監理業務委託契約に基づく設計料などに掛かるプロモーションフィーである。その他は、スタジオに対する各種書籍・情報誌及び建設資材・住宅設備などの販売による。
d)登録建築家?全建築家の半数以上が登録
2016年3月末の登録建築家は2,713名となり、国内外で有名な建築家から新進気鋭の若手まで、日本の建築家の約半数以上が登録されている。デザインは、和風、モダン、カジュアルなど多彩であり、価格も高額からボリュームゾーンまでと幅広い。建築物も、戸建て新築住宅に限定されず、増改築・リフォーム、医療施設、マンション・収益物件、店舗・商業施設、高齢者住宅、セカンドハウス・別荘、エコ住宅と多種多様である。
ホームページ上で、登録建築家の受賞歴や雑誌への掲載、テレビ番組出演の紹介をしている。国内外の建築に関する賞の受賞者やテレビ番組に登場した建築家が登録している。
e)スタジオ?全国195ヶ所
2016年3月末のスタジオ数は、195ヶ所ある。スタジオは、会員、登録建築家及び加盟建設会社の相談・打ち合わせスペースであり、登録建築家との個別相談、各種セミナーなどの開催にも利用される情報サロンである。プランニングコースを遂行する場所でもある。設計契約(建築家フィー)や建設工事請負契約(スタジオロイヤリティ)、イベント開催(マーケティング)と、同社の主要な収益を生む重要な拠点になる。加盟建設会社は、原則として20万〜30万世帯の商圏を1エリアとしてスタジオを開設する。北は北海道から南は沖縄までをカバーしているが、ASJアカデミーは、注文建築が盛んな沖縄でのプレゼンスが高いのが特徴である。
2016年3月期における期末稼働スタジオ数は、前期から3つ減って195ヶ所となった。イベント開催回数は、前期比8.0%減の561回となった。イベントは、スタジオ単位で行われる。加盟建設会社は、地元の公営施設などを利用して、年3〜4回、土曜日と日曜日などの2〜3日間にわたり開催する。同社担当者は、イベントの開催時期・内容を精査して、登録建築家に開催の告知をする。参加を希望する建築家と協議の上、1イベント当たり8〜10人に絞り込む。集客には、営業エリア内で新聞の折り込みチラシなどを利用している。
イベントなどの費用は、年3棟の施工で回収できる。同社としては、1スタジオ当たり年10棟の規模に拡大することを望んでいる。
2016年3月期の建設工事請負契約の平均単価は、3,553万円であった。ただしこれには大型物件が含まれており、2,000万円から3,000万円のボリュームゾーンが件数ベースで全体の約7割を占める。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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(2)事業内容
アーキテクツ・スタジオ・ジャパン<6085>が参照するアンケート調査の結果では、『現在検討している』から『今後ぜひ検討したい』までを含めると、建築家との家づくりを希望する人が全回答者の75%を占めた。個々人の思考や嗜好に合う多種多様な住まいに対するニーズは高まっており、単に住宅を取得するのではなく、共感と感動を建築家との家づくりに求める人が増えている。
従来のやり方では、施主は建築家に現地調査、法規制の確認、ヒアリングをしてもらう前に、建設費の約1割に相当する金額の設計契約を締結する必要があった。一旦プロジェクトが動き出すと、仮に建築家が提示するプランが気に入らなくても後戻りできないなどのリスクがある。建築家が高額物件を選好するため、ボリュームゾーンの価格帯を希望する施主との不具合が目立っていた。また、建築家と建設会社とのコミュニケーションが不十分なために、工事費に関する合意点が見出せない「コストクラッシュ」という問題も多々発生した。アベノミクス導入以降の建材費の高騰により、このリスクはますます高まっている。
同社は、これらの問題を解決するために、従来のフローとは異なるASJアカデミーの独自方式のプラットホームを構築した。ASJアカデミーの方式では、ASJアカデミー会員となった施主と登録建築家及び加盟建設会社が、最初から三位一体となって家づくりを進める。
ASJアカデミーには、全国各地で開催される「建築家展」などのイベントに参加した人が入会することが多い。イベント会場には建築家が8〜10人ほど待機しており、直接話ができ、建築家によるグループ向けのプレゼンテーションも受講できる。ASJアカデミー会員になるには入会金や年会費は必要ない。会員特典には、プランニングコースの利用、情報誌読み放題(バックナンバー含む)、各種セミナー・見学会への参加、会員専用サイトの利用、土地探しサービス、専門誌の貸出、スタジオ施設の利用などがある。
イベントを開催する加盟建設会社は、会員(施主)と建築家、自社の社員が打ち合わせをするスタジオを開設している。プランニングコースでは、イベントで知った建築家はもとより、日本全国の登録建築家から希望条件に合う建築家の紹介を受けることができ、通常1名を指名する。会員と指名された建築家、登録建設会社が仕様の仮決めやコストの確認をした後、建築家は、現地調査、法規制の確認、ヒアリングを終えた後、プレゼンテーションをする。仮に会員が建築家のプランが意に沿わない場合は、期間や回数の制限なしで何度でも繰り返すことができる。建築家の指名変更も可能だ。プランが気に入って設計契約に進んだ段階で、初めて設計料が発生する仕組みとなっている。
a) ASJアカデミー会員?今期末4万人を想定する
ASJアカデミーの会員数は、2016年3月期に7,266人の新規入会者を獲得し、累計で35,456人になった。2017年3月期末には4万人に達すると推定している。
b)プレーヤーがそれぞれの強みを発揮するスキーム
ASJアカデミーのプラットホームに関わるプレーヤーは、それぞれの強みを発揮する役割分担となっている。ASJアカデミー会員は、気に入ったプランに出会えるまで時間や費用を気にせず家づくりに励めるため、デザイナー建築への障壁が低くなる。
建築家にとっては、イベントなど発表の場が与えられ、自分のデザイン・コンセプトに賛同する見込み客との出会いが増えるというメリットがある。従来、建築家の活動範囲はアトリエ周辺に限定されがちだったが、全国に広がる可能性を得た。現場が遠隔地であっても、移動交通費はスタジオが負担する。
地方の建設会社には、施工能力が高いものの営業力が不足し差別化要因に欠けるといった弱点がある。加盟建設会社は、担当する地域であれば、地元はもとより、全国の登録建築家との家づくりに関わることができる。建築家が「最強の営業員」の役割を担ってくれることになる。ASJアカデミー上で進められた案件は、施主がプランを受け入れ建築が決まれば、入札なしに受注できる。さらにプランニングコースの打ち合わせには最初から参加しているため、施主、建築家との意思疎通がスムーズである。加えて、同社が開発した先進的な積算システムが利用できる。
c)売上高構成比?スタジオロイヤリティが約5割
2016年3月期の売上高は1,279百万円であった。売上高は4つの項目により構成される。すなわち、スタジオロイヤリティ(売上高構成比49.9%)、マーケティング(同30.6%)、建築家フィー(同9.6%)、その他(同9.9%)である。
売上高構成比が最も大きいスタジオロイヤリティは、スタジオ(加盟建設会社)の新規加盟契約時のスタジオ加盟金及び既存スタジオが支払う月額ロイヤリティ、請負契約ロイヤリティなどである。マーケティングは、スタジオ単位で開催されるイベントにかかる企画費及び販促物などのイベント関連売上高を内容とする。建築家フィーは、登録建築家の建築設計・監理業務委託契約に基づく設計料などに掛かるプロモーションフィーである。その他は、スタジオに対する各種書籍・情報誌及び建設資材・住宅設備などの販売による。
d)登録建築家?全建築家の半数以上が登録
2016年3月末の登録建築家は2,713名となり、国内外で有名な建築家から新進気鋭の若手まで、日本の建築家の約半数以上が登録されている。デザインは、和風、モダン、カジュアルなど多彩であり、価格も高額からボリュームゾーンまでと幅広い。建築物も、戸建て新築住宅に限定されず、増改築・リフォーム、医療施設、マンション・収益物件、店舗・商業施設、高齢者住宅、セカンドハウス・別荘、エコ住宅と多種多様である。
ホームページ上で、登録建築家の受賞歴や雑誌への掲載、テレビ番組出演の紹介をしている。国内外の建築に関する賞の受賞者やテレビ番組に登場した建築家が登録している。
e)スタジオ?全国195ヶ所
2016年3月末のスタジオ数は、195ヶ所ある。スタジオは、会員、登録建築家及び加盟建設会社の相談・打ち合わせスペースであり、登録建築家との個別相談、各種セミナーなどの開催にも利用される情報サロンである。プランニングコースを遂行する場所でもある。設計契約(建築家フィー)や建設工事請負契約(スタジオロイヤリティ)、イベント開催(マーケティング)と、同社の主要な収益を生む重要な拠点になる。加盟建設会社は、原則として20万〜30万世帯の商圏を1エリアとしてスタジオを開設する。北は北海道から南は沖縄までをカバーしているが、ASJアカデミーは、注文建築が盛んな沖縄でのプレゼンスが高いのが特徴である。
2016年3月期における期末稼働スタジオ数は、前期から3つ減って195ヶ所となった。イベント開催回数は、前期比8.0%減の561回となった。イベントは、スタジオ単位で行われる。加盟建設会社は、地元の公営施設などを利用して、年3〜4回、土曜日と日曜日などの2〜3日間にわたり開催する。同社担当者は、イベントの開催時期・内容を精査して、登録建築家に開催の告知をする。参加を希望する建築家と協議の上、1イベント当たり8〜10人に絞り込む。集客には、営業エリア内で新聞の折り込みチラシなどを利用している。
イベントなどの費用は、年3棟の施工で回収できる。同社としては、1スタジオ当たり年10棟の規模に拡大することを望んでいる。
2016年3月期の建設工事請負契約の平均単価は、3,553万円であった。ただしこれには大型物件が含まれており、2,000万円から3,000万円のボリュームゾーンが件数ベースで全体の約7割を占める。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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