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千葉銀 Research Memo(5):年金保険手数料や法人ソリューション関連取引収益が好調

注目トピックス 日本株
■決算動向

(2) 2016年3月期決算の概要

千葉銀行<8331>の2016年3月期の連結業績は、経常収益が前期比1.9%増の2,286億円、経常利益が同1.5%増の855億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同2.7%減の554億円と増収及び経常増益となった。なお、親会社株主に帰属する当期純利益が減益となったのは、2015年3月期に計上した子会社株式の取得に伴う「負ののれん発生益等」(70億円)がはく落したことによる影響であり、その特殊要因を除けば、同行の連結業績は好調に推移したものと捉えることができる。

特に銀行単体の業績についても、経常収益が前期比4.2%増の2,053億円、経常利益が同7.3%増の796億円、当期純利益が同14.6%増の525億円と順調に拡大した。

a)銀行単体の損益の状況
「業務粗利益」は1,500億円(前期比17億円減)と計画を下回る減益となった。その要因の1つは、最も重要性の大きい「資金利益」が、市中金利の低下等に伴う貸出金利息の減少により落ち込んだ(前期比5億円減)ことである。もっとも、貸出金利息の減少はほぼ想定の範囲内(貸出金利回りはマイナス金利政策の影響等※により想定を下回ったものの、貸出金残高が順調に拡大したことでカバーすることができた)であり、有価証券利息配当金等が低調であったことが想定外であったもようである。一方、「役務取引等利益」については、相場低迷に伴う投信手数料の落ち込みや費用の増加(ローン支払保険料及び保証料)によりわずかに減益となったものの、年金保険手数料や法人ソリューション関連取引収益(私募債やシンジケートローン、ビジネスマッチングに係る手数料等)が好調であったことからおおむね堅調に推移したと言える。また、トレーディング損益による「特定取引利益」は計画を上回る増益、「その他業務利益」はデリバティブ取引費用の計上等により大きく減益となった。

※ただ、貸出金利息の減少(前期比37億円の減少)分のうち、2016年2月から施行されたマイナス金利政策による影響は約1億円分の減少と分析しており、2016年3月期における影響は限定的であった。したがって、2017年3月期決算からの影響が大きいとみるのが妥当である。

一方、経費については820億円(前期比5億円減)に減少した。預金保険料率の引き下げに伴い、預金保険料が大幅に減少(前期比25億円減)した一方、注力する無担保ローン(カードローン)等の広告宣伝費や提携行との基幹系システムの共同化「TSUBASAプロジェクト」にかかる費用(前期比5億円増)のほか、外形標準課税の引き上げ(前期比4億円増)等により前期比5億円の減少にとどまった。なお、OHR※は55.06%(前期比0.30ポイント減)に低下している。

※OHRとは、経費を(業務純利益−債券関係損益等+一般貸倒引当金純繰入額+経費)で除した数値であり、低い水準ほど効率性が高い。

以上の結果、コア業務純益が657億円(前期比13億円減)、業務純益も679億円(同11億円減)とそれぞれ減益となった。

ただ、経常利益は、与信関係費用の大幅な減少(貸倒引当金戻入益が前期比12億円増)や資本効率の向上を目的とした株式等関係損益の増加(前期比15億円増)等により前期比7.3%増の796億円(前期比54億円増)となり、総合的な収益力を示す当期純利益も同14.6%増の525億円(前期比67億円増)と2ケタの増益を達成した。

したがって、損益面を総括すると、市中金利の低下(マイナス金利政策の影響を含む)による貸出金利息の減少や有価証券利息配当金等の伸び悩みがマイナス要因となった一方、与信関係費用の改善(貸倒引当金戻入益の増加)と株式等関係損益の増加が大きくプラス要因として働いたことで計画を上回る経常増益を確保したものと言える。また、注目すべきところは、国内貸出金利回りが1.26%(前期は1.35%)に大きく低下した影響を貸出金残高の拡大(前期比3.9%増)である程度カバーしたことや、法人ソリューション関連取引収益が順調に拡大しているところである。

b)銀行単体の運用及び調達の状況
預貸金残高(末残)の状況については、預金が前期末比3.7%増の11兆1,402億円、貸出金が同3.9%増の8兆7,974億円とともに順調に拡大した。特に貸出金については、中小企業向けが前期末比5.6%増の3兆7,866億円、住宅ローンが同4.1%増の3兆1,405億円、無担保ローンが同20.3%増の1,078億円と注力する3つのカテゴリーで伸ばすことができた。

また、預貸ギャップ(2兆3,427億円)の運用については、有価証券残高が前期末比5.5%増の2兆3,088億円に増加した。運用の多様化により、国債を前期末比5.8%減の8,211億円に減少させた一方、社債等(地方債を含む)を前期末比10.4%増の6,466億円に大きく拡大させた。また、投資信託(為替リスクをヘッジした外貨建債券を組み入れたものなど)も前期末比44.7%増の1,721億円、外貨建有価証券も同12.4%増の5,494億円に増やしている。その結果、2016年3月期末の有価証券残高の内訳は、「国債・社債等」が約37%、「外貨建有価証券」が約29%、「株式・投信等」が約34%というポートフォリオとなっている。同行は、円債の利回りが低下する中、外債、株式関連投資などへの分散運用を継続する方針である。

c)グループ会社の状況
連結業績における連単差は、経常収益が233億円(前期が272億円)、経常利益が58億円(同100億円)、親会社株主に帰属する当期純利益が29億円(同112億円)と総じて縮小した。特に中核を担う「ちばぎん証券」の営業収益が50億円(前期比10億円減)、経常利益が10億円(同8億円減)、当期純利益が7億円(同5億円減)と、厳しい事業環境(株式相場の低迷等)の中で健闘はしたものの、低調に推移したことが要因となったものとみられる。ただ、「ちばぎん保証」や「ちばぎんアセットマネジメント」のほか、カード事業(ちばぎんジェーシービーカード、ちばぎんディーシーカード)などは順調に業容を拡大しているようだ。

d)財務の状況
財務の健全性を示す総自己資本比率(バーセルIII基準)は、単体が13.26%(前期は13.84%)、連結が13.79%(同14.66%)、「普通株式等Tier1比率」も単体が12.25%(同12.44%)、連結が12.74%(同13.17%)と若干低下した。内部留保の積み上げ等により中核的自己資本(Tier1)が増加したものの、貸出金の増加等に伴いリスク・アセットが拡大したこと等が総自己資本比率及び普通株式等Tier1比率の低下を招いた。ただ、国際統一基準の最低所要水準※は大きく上回っており、財務の健全性の懸念はない。また、不良債権比率(単体)も、金融再生法開示債権(破産更生債権等)の減少により1.70%(前期末比0.16ポイント減)に改善している。

※「連結総自己資本比率」は8%、「連結普通株式等Tier1」は7.0%(資本保全バッファーを含む)

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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