IXナレッジ Research Memo(6):不採算案件の発生により2016年3月期は大幅な減益に(2)
[16/07/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
(3)財務状態
アイエックス・ナレッジ<9753>の2016年3月期末の総資産は8,819百万円となり、前期末比346百万円減少した。内訳を見ると、流動資産は同298百万円減少したほか、固定資産も同47百万円減少した。流動資産の減少は主に、有価証券の増加290百万円、仕掛品の増加248百万円があったものの、現金及び預金の減少676百万円と売上債権の減少137百万円によるものだ。一方、固定資産に関しては、投資その他の資産が40百万円減少したことによるところが大きい。
負債は前期末に比べ26百万円減少し5,097百万円となった。流動負債が同61百万円増加したものの、固定負債が88百万円減少したことによる。流動負債が増加したのは、受注損失引当金の増加293百万円があったことが主要因。一方、固定負債の減少は、長期借入金の減少60百万円による。また、純資産は前期に比べ319百万円減少し3,722百万円となった。これは、利益剰余金の増加126百万円が増加要因となったものの、自己株式の増加391百万円がマイナス要因として働いたことによる。
キャッシュ・フローの状況について見ると、2016年3月期末の現金及び現金同等物の残高は3,201百万円となり、前期末に比べ385百万円減少した。営業キャッシュ・フローは377百万円の収入となった。棚卸資産の増加244百万円、未払消費税等の減少228百万円がマイナス要因となったが、税引前当期純利益の計上416百万円、受注損失引当金の増加293百万円がプラス要因として働いたことによる。投資キャッシュ・フローは92百万円の支出となった。これは、投資事業組合からの分配による収入27百万円、有価証券の売却による収入18百万円があったものの、有価証券の取得による支出76百万円、固定資産の取得による支出64百万円があったことによる。また、財務キャッシュ・フローも、長期借入金の返済による支出194百万円、自己株式の取得による支出391百万円、配当金の支払額81百万円などにより、670百万円の支出となった。
経営指標を見ると、健全性を表す流動比率は一般に望ましい水準とされる200%を超えているほか、自己資本比率も40%台で安定している。また、D/Eレシオは借入金の返済により着実に低下しており、大きな問題点はない。一方、収益性を表す指標に関しては、不採算案件発生による業績悪化により数値はいずれも悪化した。特に営業利益率に関しては、売上高100〜200億円規模の中堅情報サービス企業と比べると、不採算案件の影響を考慮しても低い状態にあると考えられ、不採算案件の撲滅は当然として、全体のプロジェクトの収益性を高めることが大きな課題となっている。
(4) 2017年3月期業績
2017年3月期は、売上高が同2.9%増の18,016百万円、営業利益は同81.9%増の656百万円、当期純利益は同128.6%増の475百万円と増収増益を見込む会社計画となっている。
売上高が3%弱の低い伸びにとどまるのは、証券、生損保などの金融向けを中心に受注拡大が見込まれるものの、銀行向けの大型統合案件が収束した反動減を見込むことによる。対照的に、売上総利益が同17.0%増の2,968百万円と大幅増益(売上総利益率は前期に比べ2.0ポイント改善、16.5%を予想)になるのは、前期に発生した不採算案件に関しては受注損失引当金を計上して対応済であることに加えて、新たな不採算案件の発生を見込まないためだ。一方、販管費はPMO室設置や営業強化などの費用増により同6.2%増の2,312百万円となる計画。これらの結果、営業利益は大幅増益となり、営業利益率は3.6%と前期に比べ1.5ポイントの改善を見込んでいる。
同社では4月1日付で顧客のビジネス上の課題解決に寄与するため市場環境や技術革新の動向に的確に対応できる体制を構築するとともに、事業の選択と集中を進め収益力を高めていくことを目的として、組織変更を行った。その具体的な内容は、1)金融分野での受注体制を強化するため、事業部を跨ぐ部門の再編を実施した、2)システムの運用サービスとシステム基盤の構築に係るサポートサービスを担う3部門を1つの事業部に統合した、3)安定した収益を確保することを目的に、経営戦略の最適かつ確実な実現に向けたサポート機能を有する社長直轄の経営企画室と、プロジェクトマネジメント力の向上を担う担当取締役直轄のPMO室をそれぞれ新設した。特に、PMO室は、受注審査からプロジェクトの立上げ、モニタリング等の支援強化を行い、迅速なフォロー体制を構築するのが狙い。過去の不採算案件においてその掌握、対応が遅れた問題点を解決できる体制となっている。
サービス品目別の見通しについては以下のとおり。
a)コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービス
銀行向けの一部の大型案件が収束したものの、既存の主力案件については継続的な受注が期待できる状況にあると見ている。加えて、証券業向けの移行案件や生損保業務における新たな開発案件の引き合いもあることから、証券、生損保等の金融分野を中心に堅調に推移すると見ているようだ。
b)システムマネージメントサービス
今年4月の組織改革の効果により、新たなサービス領域を含めた受注の獲得、売上高の拡大を目指す計画となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )
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(3)財務状態
アイエックス・ナレッジ<9753>の2016年3月期末の総資産は8,819百万円となり、前期末比346百万円減少した。内訳を見ると、流動資産は同298百万円減少したほか、固定資産も同47百万円減少した。流動資産の減少は主に、有価証券の増加290百万円、仕掛品の増加248百万円があったものの、現金及び預金の減少676百万円と売上債権の減少137百万円によるものだ。一方、固定資産に関しては、投資その他の資産が40百万円減少したことによるところが大きい。
負債は前期末に比べ26百万円減少し5,097百万円となった。流動負債が同61百万円増加したものの、固定負債が88百万円減少したことによる。流動負債が増加したのは、受注損失引当金の増加293百万円があったことが主要因。一方、固定負債の減少は、長期借入金の減少60百万円による。また、純資産は前期に比べ319百万円減少し3,722百万円となった。これは、利益剰余金の増加126百万円が増加要因となったものの、自己株式の増加391百万円がマイナス要因として働いたことによる。
キャッシュ・フローの状況について見ると、2016年3月期末の現金及び現金同等物の残高は3,201百万円となり、前期末に比べ385百万円減少した。営業キャッシュ・フローは377百万円の収入となった。棚卸資産の増加244百万円、未払消費税等の減少228百万円がマイナス要因となったが、税引前当期純利益の計上416百万円、受注損失引当金の増加293百万円がプラス要因として働いたことによる。投資キャッシュ・フローは92百万円の支出となった。これは、投資事業組合からの分配による収入27百万円、有価証券の売却による収入18百万円があったものの、有価証券の取得による支出76百万円、固定資産の取得による支出64百万円があったことによる。また、財務キャッシュ・フローも、長期借入金の返済による支出194百万円、自己株式の取得による支出391百万円、配当金の支払額81百万円などにより、670百万円の支出となった。
経営指標を見ると、健全性を表す流動比率は一般に望ましい水準とされる200%を超えているほか、自己資本比率も40%台で安定している。また、D/Eレシオは借入金の返済により着実に低下しており、大きな問題点はない。一方、収益性を表す指標に関しては、不採算案件発生による業績悪化により数値はいずれも悪化した。特に営業利益率に関しては、売上高100〜200億円規模の中堅情報サービス企業と比べると、不採算案件の影響を考慮しても低い状態にあると考えられ、不採算案件の撲滅は当然として、全体のプロジェクトの収益性を高めることが大きな課題となっている。
(4) 2017年3月期業績
2017年3月期は、売上高が同2.9%増の18,016百万円、営業利益は同81.9%増の656百万円、当期純利益は同128.6%増の475百万円と増収増益を見込む会社計画となっている。
売上高が3%弱の低い伸びにとどまるのは、証券、生損保などの金融向けを中心に受注拡大が見込まれるものの、銀行向けの大型統合案件が収束した反動減を見込むことによる。対照的に、売上総利益が同17.0%増の2,968百万円と大幅増益(売上総利益率は前期に比べ2.0ポイント改善、16.5%を予想)になるのは、前期に発生した不採算案件に関しては受注損失引当金を計上して対応済であることに加えて、新たな不採算案件の発生を見込まないためだ。一方、販管費はPMO室設置や営業強化などの費用増により同6.2%増の2,312百万円となる計画。これらの結果、営業利益は大幅増益となり、営業利益率は3.6%と前期に比べ1.5ポイントの改善を見込んでいる。
同社では4月1日付で顧客のビジネス上の課題解決に寄与するため市場環境や技術革新の動向に的確に対応できる体制を構築するとともに、事業の選択と集中を進め収益力を高めていくことを目的として、組織変更を行った。その具体的な内容は、1)金融分野での受注体制を強化するため、事業部を跨ぐ部門の再編を実施した、2)システムの運用サービスとシステム基盤の構築に係るサポートサービスを担う3部門を1つの事業部に統合した、3)安定した収益を確保することを目的に、経営戦略の最適かつ確実な実現に向けたサポート機能を有する社長直轄の経営企画室と、プロジェクトマネジメント力の向上を担う担当取締役直轄のPMO室をそれぞれ新設した。特に、PMO室は、受注審査からプロジェクトの立上げ、モニタリング等の支援強化を行い、迅速なフォロー体制を構築するのが狙い。過去の不採算案件においてその掌握、対応が遅れた問題点を解決できる体制となっている。
サービス品目別の見通しについては以下のとおり。
a)コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービス
銀行向けの一部の大型案件が収束したものの、既存の主力案件については継続的な受注が期待できる状況にあると見ている。加えて、証券業向けの移行案件や生損保業務における新たな開発案件の引き合いもあることから、証券、生損保等の金融分野を中心に堅調に推移すると見ているようだ。
b)システムマネージメントサービス
今年4月の組織改革の効果により、新たなサービス領域を含めた受注の獲得、売上高の拡大を目指す計画となっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )
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