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神戸物産 Research Memo(4):営業利益は業務スーパーの好調により期初計画を上回る見通し

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

(1) 2016年10月期の業績見通し

神戸物産<3038>の2016年10月期の連結業績は、売上高が前期比5.7%増の241,600百万円、営業利益が同36.7%増の9,300百万円、経常利益が同28.0%減の6,100百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同49.7%減の2,100百万円となる見通し。営業利益は業務スーパーの好調により期初計画を上回るものの、経常利益は円高に伴う為替差損やデリバティブ評価損の発生により、下方修正している。

なお、営業段階までの為替前提レートは期初と変わらず120円/ドルとしており、現在の為替水準で推移すれば、コスト低減効果が見込めることになる。下期の輸入額は1億ドル強程度を見込まれ、1円/ドルの円高で1億円強の増益要因となる計算だ。業務スーパーへの卸価格改定も一定のタイムラグを置いて実施することから、単純に利益増要因となるわけではないが、現在の102円/ドルの為替水準が続いたとすれば、営業利益の増額要因となる。一方、営業外の為替関連商品については期末レート105円/ドルを前提とし、下期も8〜9億円の評価差損を想定しているものと見られる。デリバティブ商品については1円/ドルの円高で1億円の減益要因となるため、現在の為替水準が期末まで続けば差損がさらに拡大するリスクがあることには留意する必要がある。セグメント別の見通しは以下のとおり。

a)業務スーパー事業
主力の業務スーパー事業では、店舗数を前期末比25店舗増の738店舗まで拡大する計画となっている。新規出店で35店舗、老朽化した店舗の移設・退店で10店舗程度を予定している。新規出店に関しては首都圏エリアを中心に増やしていく方針だ。4月末までに純増数で17店舗と進捗率が約70%に達しており、6月も新たに4店舗の新規出店と1店舗のリニューアル出店を行っており、現在のペースでいけば店舗数は計画を上回る可能性が大きいと言える。

2016年4月末の店舗数のエリア別構成比で見ると関西エリアが31%、その他地方エリアが42%となっているのに対して、首都圏エリアは25%にとどまっており、首都圏エリアの出店余地は依然大きく、「業務スーパー」の成長余地も大きいと言える。

売上高としては既存店ベースで1〜2%増収を見込んでいる。5月は前年同期比1.8%増とほぼ想定どおりの滑り出しとなっている。国内消費動向において景気の先行き不透明感から、ややデフレ傾向に回帰していることもあり、同社にとっては強みを活かせる状況になってきていると言える。同社では引き続き店舗数の拡大と自社開発商品の強化や新たな販促施策への取り組みによって、収益拡大を目指していく方針だ。

なお、2016年4月には「業務スーパー」として初めての海外店舗をシンガポールにオープンした。フランチャイジーの(株) G-7スーパーマートのグループ会社と現地企業の合弁会社が運営する。また、米国でもJPN Mart Inc.が運営する日系のスーパーマーケット「Seiwa Market」(カリフォルニア州)内に業務スーパーエリアを設け、冷凍讃岐うどんや鮭フレーク、和風調味料など約500アイテムのオリジナル商品の販売を開始している。米国ではその他のエリアでも数ヶ所で出店準備を進めており、今後の販売状況をにらみながら出店を拡大していく計画となっている。業績への寄与は軽微なものの、アジア、米国市場での開拓に成功すれば、大きな成長ポテンシャルとなるだけに、今後の動向が注目される。

また、国内では養鶏事業において鶏舎の増設と鶏肉加工工場の増強を群馬県、岡山県で計画しており、業務スーパーへの鶏肉の供給能力を拡大する。群馬県では既に設備を発注し、2017年10月期に稼働する予定となっている。群馬県の鶏肉では初めてスキンパックを導入し、トレーパックで小口販売することによって一般消費者が購入しやすくなる。従来は2kgの袋詰め商品の販売のみであった。同設備が稼働すれば、現在首都圏の一部店舗への供給にとどまっていた新鮮な鶏肉の販売を首都圏全店舗に供給することが可能となり、売上増に寄与することが期待される。

b)神戸クック事業
神戸クック事業は前期に続き、各業態におけるフォーマットの見直し及び体制強化による収益体質の改善に取り組んでいく方針で、利益面では国内の改善に加えて、米国での損失が無くなることもあって若干の黒字転換を見込んでいる。なお、「神戸クックワールドビュッフェ」については今期に黒字化する見込みで、今期よりFC募集を再開している。

c)クックイノベンチャー事業
クックイノベンチャー事業は、(株)ジー・コミュニケーショングループの見通しをそのまま業績計画に織り込んでいる。主要子会社であるジー・テイストの2016年3月期の業績計画が売上高、営業利益ともに前期並みの水準を計画していることから、ほぼ横ばい水準を想定していると見られる。

d)エコ再生エネルギー事業
エコ再生エネルギー事業は太陽光発電事業の計画が遅延しており、売上高、営業利益ともに前期比で若干の増加にとどまる見通しだ。太陽光発電事業では下期に大阪、徳島、滋賀で合わせて8MW(設備投資25億円)の発電所の稼働を計画していたが、行政機関との協議が長引いており、今期中に稼働するのは滋賀県にある子会社の秦食品(株)の敷地内に設置する0.5MW(年間売上規模15百万円)の設備だけとなる。大阪、徳島の発電所については2017年10月期の前半に稼働する予定となっている。

また、大分県九重町で事業化を進めている地熱発電プロジェクトについても、掘削中の複数の井戸のうち、1本で蒸気の自噴が確認され、30kW程度の小型発電設備を整備した。日中は2016年にオープン予定の温浴施設「ホットラグーン大分」への給電に、夜間は九州電力に売電する予定となっている。発電規模が小さいこともあり今期の業績への影響は軽微と見られる。また、もう1本の自噴も確認されており、同様に1MW以下の発電能力となる見通しだ。北海道で進めている木質バイオマス発電に関しては、2017年後半から発電を開始できる予定だが、こちらも発電能力としては小規模であり業績への影響は軽微となる。

観光事業に関しては大分県の温浴施設に加えて、日本最大級の観光農園・果樹園となる北海道の「函館観光果樹園(仮称)」を2017年秋以降にオープンする予定となっている。当初は2016年のオープンを予定していたが、環境整備に時間がかかっており、オープン予定時期がずれ込んでいる。いずれも地熱エネルギーを活用した観光事業で、地域活性化、雇用創出などの社会貢献を目的とした事業であり、業績面での寄与は織り込んでいない。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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