インテリックス Research Memo(5):17/5期はアセットシェアリング事業の拡大などで2ケタの増収
[16/08/12]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(1) 2017年5月期の業績見通し
インテリックス<8940>の2017年5月期の連結業績は売上高が前期比16.4%増の45,351百万円、営業利益が同4.3%減の1,683百万円、経常利益が同21.8%減の1,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.7%減の795百万円と増収減益を見込んでいる。売上高はリノヴェックスマンションやアセットシェアリング事業の拡大により2ケタ増収となるが、その他不動産事業の粗利益率低下(2016年5月期23.9%→2017年5月期予15.4%)を見込んでいるほか、地方店の増床移転や人員増強による販管費の増加が減益要因となる。人員については業容拡大に伴い、2016年5月期に41名増員したのに続き今期も45名の増員を計画している。営業外収支が悪化するが、これは2016年5月期に計上した違約金収入や補助金収入など一時的な収益160百万円を今期は見込んでいないことによる。また、半期ベースで見ると今期は下期偏重型の計画となっている。これは今期に計画している3つのアセットシェアリング案件25億円が、すべて下期に販売する計画となっていることが主因となる。
売上高の内訳を見ると、主力のリノヴェックスマンションは販売件数が前期比19.9%増の1,670件、売上高が同16.0%増の37,856百万円、平均販売価格は同3.2%減の22.6百万円を見込んでいる。2017年5月期も引き続き地方拠点での販売増がけん引役となる。粗利益率は前期とほぼ同水準となる12.2%を見込んでいる。
その他不動産の物件販売に関しては、前期比20.5%増の5,417百万円となる見通し。このうちアセットシェアリングについては3案件で前期比3.2倍増の2,500百万円を見込む。同社ではアセットシェアリングの需要が旺盛なことから、仕入活動に注力している。中古物件であれば比較的短期間で商品を組成し販売が可能となるため、対象物件を仕入れることができれば、2017年5月期中に追加で販売できる可能性もある。なお、アセットシェアリング以外ではオフィスビルや賃貸マンション等の販売で2,900百万円の売上高を見込んでいる。粗利益率の低下要因は前期に好採算案件が寄与したことに加えて、今期はアセットシェアリング事業の認知度向上に向けてセミナー等を積極的に開催していく予定にしており、広告宣伝費用等を見込んでいることが要因となっている。
その他収入に関しては前期比17.5%増の1,403百万円を見込んでいる。同業他社や個人向けのリノベーション内装請負事業が前期比約30%増の1,200百万円に拡大することが要因だ。
なお、同社は2017年5月期より戸建リノベーション再販事業も新たに開始することを打ち出している。7月より仕入活動をスタートしているが、今期はトライアルを実施しながら事業基盤を固めていく期間であると位置付けており、業績計画には織り込んでいないが、販売状況によっては業績の上積み要因となる可能性がある。
(2) 2017年5月期の重点施策
同社は2017年5月期の重点施策として、地方主要都市への事業展開による業容拡大、不動産特定共同事業法による事業の推進、戸建リノベーション再販事業への参入、施工力の強化による内装事業の拡充の4点を挙げている。
a)地方主要都市への事業展開による業容拡大
2013年以降、地方主要都市部へ展開し、取扱件数を拡大してきたが、2017年5月期についてもさらに地方拠点での人員増員や内装施工の協力会社の拡充、認知度向上などに注力していく方針となっている。仕入件数ベースでは前期実績で月平均123件中47件、構成比で38%を地方拠点で占めるまでになったが、中期的には月間200件を仕入れ、うち半分の100件を地方店で仕入れる体制にすることを目標としている。
b)不動産特定共同事業法による事業の推進
同社は今後アセットシェアリング事業を積極的に拡大していく方針を打ち出している。2017年5月期は2016年5月期に分譲マンションとして販売した「リシャール横濱元町」のテナント部分(地下1階〜地上3階)に加えて、横浜・関内の商業ビル、博多の中古マンション(100戸の賃貸マンション)をそれぞれリノベーション後に販売する予定となっている。いずれの案件も立地場所が良いことから、早期完売が見込まれる。このうち、博多の案件についてはシェアハウスや宿泊施設などに衣替えする可能性もある。
アセットシェアリングについては新築・中古物件を問わず、またレジデンス、商業ビル、ビジネスホテル等の物件を対象に今後も積極的に仕入活動を行っていく方針だ。相続・贈与税対策向けの投資商品として注目度が高まっていることもあり、仕入れが順調に進めば今後5年内に100億円規模まで成長する可能性があると弊社では見ている。特に、中古物件に関しては、リノベーションのノウハウを持つ同社が強みを発揮できる領域でもあることから、今後の成長が期待される。
c)戸建リノベーション再販事業への参入
同社は、2017年5月期より戸建リノベーション再販事業に参入することを打ち出した。中古マンション市場におけるリノベーションの業界パイオニアとして培ってきたノウハウと実績に加えて、地方への営業展開により、仕入ネットワークが構築されてきたこと、戸建市場におけるインスペクション(建物検査)、瑕疵保険の整備が進むなど、新規参入するに当たっての環境が整ったことが背景にある。
同社は戸建リノベーション再販事業参入に向けて、社内にプロジェクトチームを発足し、仕入ガイドラインの制定やインスペクション・設計・施工体制の構築に着手している。マンションとの大きな違いは、インスペクションにおいてシロアリや雨漏り等の検査が必要になること、また、外壁工事など屋外での作業も加わるため、天候によって施工期間も変わってくることが挙げられる。対象とする物件は1983年以降の耐震評価基準をクリアした物件となり、施工についてはリノヴェックスマンションと同様、協力会社で行うこととなる。
戸建の中古販売市場については正確な統計がないものの、年間販売戸数は中古マンションとほぼ同水準で約6万戸と見られており、同社にとって開拓余地は大きいと言える。戸建再販市場の再大手は(株)カチタスで全国に100ヶ所の営業拠点を有し、年間3,000戸弱の戸建販売を行っている。ただ、それでも全国シェアでは5%程度であり、大半は各地域の不動産会社が工務店を使って再販している。同社ではこうした市場をリノヴェックスマンションで培ってきたノウハウを生かすことで開拓していく考えだ。特に、地方ではマンションよりも戸建の比率が高いことから、地方での伸びが期待される。従来は、中古マンションを対象としてきた同社だが、新たに戸建リノベーション再販市場に参入したことで、対象市場が2倍に拡大したことになり、成長ポテンシャルも一気に高まったと言え、今後の取り組み状況が注目される。
d)施行力の強化による内装事業の拡充
同社では内装施工の請負事業にも注力していく。今まで蓄積してきたノウハウを生かして、個人向けや同業他社向けに設計・施工を行っていく。マンションの内装施工において高品質なレベルで任せられる業者が少ないことが背景にある。また、中長期的な視点で、職人不足が予見されるなかにおいて、社内で施工チームを立ち上げ、将来的に業界屈指のリノベーション専門の施工会社を目指していく構想を描いている。
このため、2017年5月期よりマルチリノベーター(多能工)の育成プロジェクトをスタートさせる。マルチリノベーターとは、リノベーションで必要となる大工・水道・電気工事等の複数の作業をこなせる人材を指す。研修プログラムとして社内、社外研修含めて5年間をかけて一人前のマルチリノベーターを育成していくこととなる。
(3)リノベーション市場の見通し
同社が主戦場とする首都圏のマンション販売動向について見ると、2015年後半以降、新築マンションの供給戸数が大きく落ち込んでいる一方で、中古マンションの販売戸数は堅調に推移している。新築マンションについては建築費高騰の影響により、採算が合わないことからデベロッパーの開発意欲が冷え込んだことが減少要因となっている。新築マンションの供給戸数が減少していることもあって、中古マンションの需要が底堅く推移しているとも言える。特に都心エリアやタワー型マンションなどに人気が集中しており、価格も高水準で推移している。ただ、直近ではこうした人気物件に関しても割高感が強まり手控えムードも出てきている。このため、2016年は販売戸数こそ堅調な推移が見込まれるものの、販売価格に関しては前年比で若干低下する可能性があると見られる。
中古マンションのストック数は2013年で603万戸あり、このうちリノベーションが必要となる築20年以上の物件が300万戸あるが、これが2030年には2倍弱の577万戸まで拡大するとみられている。このため、リノベーション市場に関しては今後も着実に拡大していくことが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1) 2017年5月期の業績見通し
インテリックス<8940>の2017年5月期の連結業績は売上高が前期比16.4%増の45,351百万円、営業利益が同4.3%減の1,683百万円、経常利益が同21.8%減の1,150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同18.7%減の795百万円と増収減益を見込んでいる。売上高はリノヴェックスマンションやアセットシェアリング事業の拡大により2ケタ増収となるが、その他不動産事業の粗利益率低下(2016年5月期23.9%→2017年5月期予15.4%)を見込んでいるほか、地方店の増床移転や人員増強による販管費の増加が減益要因となる。人員については業容拡大に伴い、2016年5月期に41名増員したのに続き今期も45名の増員を計画している。営業外収支が悪化するが、これは2016年5月期に計上した違約金収入や補助金収入など一時的な収益160百万円を今期は見込んでいないことによる。また、半期ベースで見ると今期は下期偏重型の計画となっている。これは今期に計画している3つのアセットシェアリング案件25億円が、すべて下期に販売する計画となっていることが主因となる。
売上高の内訳を見ると、主力のリノヴェックスマンションは販売件数が前期比19.9%増の1,670件、売上高が同16.0%増の37,856百万円、平均販売価格は同3.2%減の22.6百万円を見込んでいる。2017年5月期も引き続き地方拠点での販売増がけん引役となる。粗利益率は前期とほぼ同水準となる12.2%を見込んでいる。
その他不動産の物件販売に関しては、前期比20.5%増の5,417百万円となる見通し。このうちアセットシェアリングについては3案件で前期比3.2倍増の2,500百万円を見込む。同社ではアセットシェアリングの需要が旺盛なことから、仕入活動に注力している。中古物件であれば比較的短期間で商品を組成し販売が可能となるため、対象物件を仕入れることができれば、2017年5月期中に追加で販売できる可能性もある。なお、アセットシェアリング以外ではオフィスビルや賃貸マンション等の販売で2,900百万円の売上高を見込んでいる。粗利益率の低下要因は前期に好採算案件が寄与したことに加えて、今期はアセットシェアリング事業の認知度向上に向けてセミナー等を積極的に開催していく予定にしており、広告宣伝費用等を見込んでいることが要因となっている。
その他収入に関しては前期比17.5%増の1,403百万円を見込んでいる。同業他社や個人向けのリノベーション内装請負事業が前期比約30%増の1,200百万円に拡大することが要因だ。
なお、同社は2017年5月期より戸建リノベーション再販事業も新たに開始することを打ち出している。7月より仕入活動をスタートしているが、今期はトライアルを実施しながら事業基盤を固めていく期間であると位置付けており、業績計画には織り込んでいないが、販売状況によっては業績の上積み要因となる可能性がある。
(2) 2017年5月期の重点施策
同社は2017年5月期の重点施策として、地方主要都市への事業展開による業容拡大、不動産特定共同事業法による事業の推進、戸建リノベーション再販事業への参入、施工力の強化による内装事業の拡充の4点を挙げている。
a)地方主要都市への事業展開による業容拡大
2013年以降、地方主要都市部へ展開し、取扱件数を拡大してきたが、2017年5月期についてもさらに地方拠点での人員増員や内装施工の協力会社の拡充、認知度向上などに注力していく方針となっている。仕入件数ベースでは前期実績で月平均123件中47件、構成比で38%を地方拠点で占めるまでになったが、中期的には月間200件を仕入れ、うち半分の100件を地方店で仕入れる体制にすることを目標としている。
b)不動産特定共同事業法による事業の推進
同社は今後アセットシェアリング事業を積極的に拡大していく方針を打ち出している。2017年5月期は2016年5月期に分譲マンションとして販売した「リシャール横濱元町」のテナント部分(地下1階〜地上3階)に加えて、横浜・関内の商業ビル、博多の中古マンション(100戸の賃貸マンション)をそれぞれリノベーション後に販売する予定となっている。いずれの案件も立地場所が良いことから、早期完売が見込まれる。このうち、博多の案件についてはシェアハウスや宿泊施設などに衣替えする可能性もある。
アセットシェアリングについては新築・中古物件を問わず、またレジデンス、商業ビル、ビジネスホテル等の物件を対象に今後も積極的に仕入活動を行っていく方針だ。相続・贈与税対策向けの投資商品として注目度が高まっていることもあり、仕入れが順調に進めば今後5年内に100億円規模まで成長する可能性があると弊社では見ている。特に、中古物件に関しては、リノベーションのノウハウを持つ同社が強みを発揮できる領域でもあることから、今後の成長が期待される。
c)戸建リノベーション再販事業への参入
同社は、2017年5月期より戸建リノベーション再販事業に参入することを打ち出した。中古マンション市場におけるリノベーションの業界パイオニアとして培ってきたノウハウと実績に加えて、地方への営業展開により、仕入ネットワークが構築されてきたこと、戸建市場におけるインスペクション(建物検査)、瑕疵保険の整備が進むなど、新規参入するに当たっての環境が整ったことが背景にある。
同社は戸建リノベーション再販事業参入に向けて、社内にプロジェクトチームを発足し、仕入ガイドラインの制定やインスペクション・設計・施工体制の構築に着手している。マンションとの大きな違いは、インスペクションにおいてシロアリや雨漏り等の検査が必要になること、また、外壁工事など屋外での作業も加わるため、天候によって施工期間も変わってくることが挙げられる。対象とする物件は1983年以降の耐震評価基準をクリアした物件となり、施工についてはリノヴェックスマンションと同様、協力会社で行うこととなる。
戸建の中古販売市場については正確な統計がないものの、年間販売戸数は中古マンションとほぼ同水準で約6万戸と見られており、同社にとって開拓余地は大きいと言える。戸建再販市場の再大手は(株)カチタスで全国に100ヶ所の営業拠点を有し、年間3,000戸弱の戸建販売を行っている。ただ、それでも全国シェアでは5%程度であり、大半は各地域の不動産会社が工務店を使って再販している。同社ではこうした市場をリノヴェックスマンションで培ってきたノウハウを生かすことで開拓していく考えだ。特に、地方ではマンションよりも戸建の比率が高いことから、地方での伸びが期待される。従来は、中古マンションを対象としてきた同社だが、新たに戸建リノベーション再販市場に参入したことで、対象市場が2倍に拡大したことになり、成長ポテンシャルも一気に高まったと言え、今後の取り組み状況が注目される。
d)施行力の強化による内装事業の拡充
同社では内装施工の請負事業にも注力していく。今まで蓄積してきたノウハウを生かして、個人向けや同業他社向けに設計・施工を行っていく。マンションの内装施工において高品質なレベルで任せられる業者が少ないことが背景にある。また、中長期的な視点で、職人不足が予見されるなかにおいて、社内で施工チームを立ち上げ、将来的に業界屈指のリノベーション専門の施工会社を目指していく構想を描いている。
このため、2017年5月期よりマルチリノベーター(多能工)の育成プロジェクトをスタートさせる。マルチリノベーターとは、リノベーションで必要となる大工・水道・電気工事等の複数の作業をこなせる人材を指す。研修プログラムとして社内、社外研修含めて5年間をかけて一人前のマルチリノベーターを育成していくこととなる。
(3)リノベーション市場の見通し
同社が主戦場とする首都圏のマンション販売動向について見ると、2015年後半以降、新築マンションの供給戸数が大きく落ち込んでいる一方で、中古マンションの販売戸数は堅調に推移している。新築マンションについては建築費高騰の影響により、採算が合わないことからデベロッパーの開発意欲が冷え込んだことが減少要因となっている。新築マンションの供給戸数が減少していることもあって、中古マンションの需要が底堅く推移しているとも言える。特に都心エリアやタワー型マンションなどに人気が集中しており、価格も高水準で推移している。ただ、直近ではこうした人気物件に関しても割高感が強まり手控えムードも出てきている。このため、2016年は販売戸数こそ堅調な推移が見込まれるものの、販売価格に関しては前年比で若干低下する可能性があると見られる。
中古マンションのストック数は2013年で603万戸あり、このうちリノベーションが必要となる築20年以上の物件が300万戸あるが、これが2030年には2倍弱の577万戸まで拡大するとみられている。このため、リノベーション市場に関しては今後も着実に拡大していくことが予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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