ラクオリア創薬 Research Memo(2):国内バイオベンチャーの中でもトップクラスの創薬インフラを有する
[16/08/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■ラクオリア創薬<4579>への投資視点
2008年に米ファイザーからスピンアウトして誕生した同社は、豊富な化合物ライブラリーを承継し、国内のバイオベンチャーの中でもトップクラスの創薬インフラを有している。そこから生み出される医薬品候補化合物の創出力が、同社の強み・魅力であると同時に、同社に投資する最大の動機付けでもある。
ここ数年、同社は業績予想に対して未達が続いてきた。これは、同社が開発した化合物の医薬品メーカーへの導出(ライセンスアウト)が計画したとおりに進まなかったことが原因だ。2014年から2015年にかけて、同社はカリウムイオン競合型アシッドブロッカー/P-CAB(RQ-4/tegoprazan)や5-HT4部分作動薬(RQ-10)などの導出を予定し、それに伴う契約一時金収入を事業計画の中に織り込んでいた。これが期待どおりに進展しなかったということだ。ライセンスディールにおいては、導出先の医薬品メーカーの薬品ポートフォリオの現況や将来計画など、導出の相手方の事情が大きく影響を及ぼす。RQ-4やRQ-10などの導出候補化合物自体に対する評価は従来からまったく変更はないものの、そうした相手方事情によって導出が遅れて未達が続いたのがここ数年の同社の実績だ。
しかしながら、2016年の現在、同社は大きな転換点を迎えている。ライセンスアウトに伴う契約一時金という、同社がコントロールできないリスクを抱えた収入を排除し、既に導出済みの化合物の開発進展に伴うマイルストーン収入と、共同研究の相手からの研究協力金、そして医薬品として上市された後の売上高の一定割合であるロイヤリティ収入という、獲得の蓋然性の高い収入項目だけを積み上げるだけで、収益均衡から黒字転換が視野に入ってきている状況となってきた。
不安定要素を抱える契約一時金収入を織り込まずに黒字化に向けた収益計画を立てられるようになった背景には、開発の進展がある。詳細は後述するが、今春、動物薬が2剤、米FDAから相次いで認可を受け、2016年後半と2017年前半に米国で発売される予定となっている。また、複数の導出済み化合物の臨床試験が順調に進捗しており、そこからのマイルストーン収入も得られる見通しだ。共同研究では、同社が有する豊富な化合物ライブラリーと高い新規合成能力を活用することで、成果を実現し、研究協力金収入を獲得できると期待されている。
契約一時金収入の獲得もこれまで同様に目指していくが、それは現在の中期経営計画においては純粋な上積み要因となる。すなわち、同社の安定収益実現の可能性が大きく高まった状況にあるだけでなく、収益計画に対して上振れの可能性も出てきているということだ。
以上のように、同社の業績安定性が今後は大きく改善するとみられること、及び、状況によっては計画に対して上振れも期待できる状況になっていること、さらには後述する産学連携によって将来の飛躍のためのシーズを生み出す舞台装置が完成したこと、などの要因から、同社に対する投資を改めて検討する余地は十分にあるのではないかと弊社では考えている。
投資視点という意味では、知財戦略やライフサイクルマネジメントもまた重要なポイントだ。新薬候補化合物の権利をライセンスアウトして収入を得るという事業モデルを採用する同社にとって、充実したポートフォリオを収益に確実につなげるために、知的財産は商品そのものであり、同社の本質であるからだ。同社は各ポートフォリオについて、主要市場である日・米・欧・中国などで、物質特許や用途特許の取得を進めている。また、後発品の参入を阻止し、ロイヤルティ収入の期間を最大限に延ばし、継続的に収益を確保するため、知財のライフサイクルマネジメントを展開している。こうした、知財戦略・ライフサイクルマネジメントの安定・充実ぶりは、同社への投資の安心感につながると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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2008年に米ファイザーからスピンアウトして誕生した同社は、豊富な化合物ライブラリーを承継し、国内のバイオベンチャーの中でもトップクラスの創薬インフラを有している。そこから生み出される医薬品候補化合物の創出力が、同社の強み・魅力であると同時に、同社に投資する最大の動機付けでもある。
ここ数年、同社は業績予想に対して未達が続いてきた。これは、同社が開発した化合物の医薬品メーカーへの導出(ライセンスアウト)が計画したとおりに進まなかったことが原因だ。2014年から2015年にかけて、同社はカリウムイオン競合型アシッドブロッカー/P-CAB(RQ-4/tegoprazan)や5-HT4部分作動薬(RQ-10)などの導出を予定し、それに伴う契約一時金収入を事業計画の中に織り込んでいた。これが期待どおりに進展しなかったということだ。ライセンスディールにおいては、導出先の医薬品メーカーの薬品ポートフォリオの現況や将来計画など、導出の相手方の事情が大きく影響を及ぼす。RQ-4やRQ-10などの導出候補化合物自体に対する評価は従来からまったく変更はないものの、そうした相手方事情によって導出が遅れて未達が続いたのがここ数年の同社の実績だ。
しかしながら、2016年の現在、同社は大きな転換点を迎えている。ライセンスアウトに伴う契約一時金という、同社がコントロールできないリスクを抱えた収入を排除し、既に導出済みの化合物の開発進展に伴うマイルストーン収入と、共同研究の相手からの研究協力金、そして医薬品として上市された後の売上高の一定割合であるロイヤリティ収入という、獲得の蓋然性の高い収入項目だけを積み上げるだけで、収益均衡から黒字転換が視野に入ってきている状況となってきた。
不安定要素を抱える契約一時金収入を織り込まずに黒字化に向けた収益計画を立てられるようになった背景には、開発の進展がある。詳細は後述するが、今春、動物薬が2剤、米FDAから相次いで認可を受け、2016年後半と2017年前半に米国で発売される予定となっている。また、複数の導出済み化合物の臨床試験が順調に進捗しており、そこからのマイルストーン収入も得られる見通しだ。共同研究では、同社が有する豊富な化合物ライブラリーと高い新規合成能力を活用することで、成果を実現し、研究協力金収入を獲得できると期待されている。
契約一時金収入の獲得もこれまで同様に目指していくが、それは現在の中期経営計画においては純粋な上積み要因となる。すなわち、同社の安定収益実現の可能性が大きく高まった状況にあるだけでなく、収益計画に対して上振れの可能性も出てきているということだ。
以上のように、同社の業績安定性が今後は大きく改善するとみられること、及び、状況によっては計画に対して上振れも期待できる状況になっていること、さらには後述する産学連携によって将来の飛躍のためのシーズを生み出す舞台装置が完成したこと、などの要因から、同社に対する投資を改めて検討する余地は十分にあるのではないかと弊社では考えている。
投資視点という意味では、知財戦略やライフサイクルマネジメントもまた重要なポイントだ。新薬候補化合物の権利をライセンスアウトして収入を得るという事業モデルを採用する同社にとって、充実したポートフォリオを収益に確実につなげるために、知的財産は商品そのものであり、同社の本質であるからだ。同社は各ポートフォリオについて、主要市場である日・米・欧・中国などで、物質特許や用途特許の取得を進めている。また、後発品の参入を阻止し、ロイヤルティ収入の期間を最大限に延ばし、継続的に収益を確保するため、知財のライフサイクルマネジメントを展開している。こうした、知財戦略・ライフサイクルマネジメントの安定・充実ぶりは、同社への投資の安心感につながると見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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