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電算システム Research Memo(3):収益構造転換にむけてクラウドサービスが極めて順調に成長

注目トピックス 日本株
■事業セグメント別動向

(1)情報サービスセグメント

a)事業のポイント
情報サービスセグメントは「SI・ソフト開発」、「情報処理サービス」及び「商品販売」の3つに細分される。このうちSI・ソフト開発は、顧客に注文に応じて業務システムやネットワークの構築、ソフトウェア開発等を行うものだ。また、電算システム<3630>が近年力を入れているクラウドサービスもSI・ソフト開発の中に含まれている。システム構築に際しては、コンピュータ端末やネットワーク機器の販売なども取り扱うことがあり、その売上高は商品販売として計上される。基本的にSI・ソフト開発の事業はフロー型ビジネスに分類されるが、そのなかでクラウドサービスについてはストック型ビジネスの性格を有している

情報処理サービスは、同社のデータセンターや情報処理技術を活用して、情報処理システムやそれに付随する役務・サービスを提供するものだ。具体的には、顧客データの管理や顧客データに基づいて商品の発送業務などを行うBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業務や、ホスティングサービスを中心としたデータセンターサービスの提供などがある。情報処理サービスは収入のタイプとしてはいわゆるストック型収入の事業となっている。

b)業績動向
情報サービスセグメントの2016年12月期第2四半期の業績は、前述したように、売上高7,362百万円(前年同期比0.3%減)、営業利益106百万円(同33.5%減)で、期初計画に対して未達となった。

売上高は計画に対して187百万円の未達となり、それが響いて前年同期比でも19百万円の減収となった。計画との差が大きかったのはSI・ソフト開発のサブセグメントだ。SI・ソフト開発の売上高が伸びなかった理由は、開発案件の検収が少なかったことと説明されている。その背景としては、検収のタイミングがずれこんだケースと、そもそも開発案件の受注が計画を下回ったケースが考えられる。その内訳は明示されていないが、弊社では2つの要因が組み合わさった結果だと推測している。

情報処理サービスは計画には若干未達だったものの、前年同期比では231百万円の増収となった。これは2015年下期から始まった大型BPO案件の事業の寄与分が大きく貢献している。情報処理サービスの中のもう1つの主力事業であるデータセンターサービスは、安定した収益が続いているもようだ。

情報サービスセグメントの営業利益は、計画に対して83百万円の未達となり、前年同期比でも53百万円の減益となった。営業利益が計画に対して未達となった理由について、同社は1)SI・ソフト開発で利益率の高い案件が少なかったこと、2)新規大型のBPO案件で想定以上に費用が膨らんだこと、3)保守サービスの案件で想定外の費用が発生して赤字になったこと、の3点を挙げている。

具体的な内容として、2)のBPO案件は、2015年下期に受注した大型BPO案件のことだが、同社は立ち上げ期のトラブル回避に向けて手厚い体制を敷いた結果、20百万円ほど費用が計画を上回ったとしている。3)の保守サービス案件は、従来からの継続案件であるが、システムの課題解決を従来の保守費用の中で対応することとし、顧客からの追加費用が出なかったことにより、約30百万円を将来分も含め受注損失金を引き当てた結果、赤字につながったとしている。2)と3)のケースはいずれも今第2四半期中に解決を見ており、今下期以降には影響が及ばない見通しだ。

弊社では2015年12月期にみられたSI・ソフト開発案件の赤字案件の動向に注目していたが、前述の3)の事案を除けば、今第2四半期においては赤字案件は発生していないもようだ。前期の反省を踏まえて見積もりや工程管理を強化してきた効果がきちんと表れていると言え、この点は評価できると考えている。

c)クラウドサービス
クラウドサービスはSI・ソフト開発のサブセグメントに含まれているが、収益構造としてはストック型ビジネスに属する。同社が全社で進めるフロー型からストック型への収益構造転換という施策にマッチすることもあり、近年、特に注力している分野だ。同社は2013年11月に東濃データセンターを完成させてクラウドサービスの提供のベース能力を高めると同時に、クラウドサービスのサービスラインアップを充実させて、営業強化に取り組んでいる。

同社のクラウドサービスの内訳としては、現状はGoogle関連サービスが中核を成している。また、Google関連以外のサービスとしては“AWS(Amazon Web Service)”や“Salesforce”がその取扱いサービスとなっている。

2016年12月期第2四半期は、クラウドサービスの売上高合計は1,115百万円(前年同期比35.6%増)に達した。内訳は、Google事業売上高が938百万円(同27.3%増)、Google以外のサービスの売上高が177百万円(同108.2%増)となっている。今第2四半期末時点のGoogleサービスの導入企業数は1,040社に達し、1年前に比べて26.8%、半年前に比べて17.9%、それぞれ増加した。

クラウドサービス売上高がSI・ソフト開発サブセグメントの売上高に占める割合は、今第2四半期実績ベースで25.5%に達した。前年同期の18.5%から7%ポイントも構成比が上昇しており、ストック型への収益構造転換にむけて、クラウドサービスが極めて順調に成長していることがうかがえる。

d) BPO事業
BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)業務は、顧客データの管理や顧客データに基づいて商品の発送業務の一部などを行うものだ。データの入力・集積・分析・加工という情報処理能力を活用した典型的な業務の1つで、同社の強みをもっともよく生かせる事業領域の1つと言える。典型的なサービスは、百貨店や小売業、メーカーなどの顧客データを管理・運用し、母の日や、お中元・お歳暮、クリスマスなどのシーズン毎のイベントでのギフト商品の受発注に際する申込伝票の入力・データクリーニング、配送ラベルデータ作成から、申込み内容についてのコールセンター業務など、顧客のバックヤードの業務を一手に引き受けるというものだ。

同社のBPO事業はその業容を着実に拡大してきており、2016年12月期第2四半期は売上高1,215百万円(前年同期比27.1%増)、処理件数22.4百万件(同52.9%増)に達した。売上高が前年同期比259百万円増加したうちのかなりの部分は、2015年12月期第4四半期に受注・開始した新規大型案件の寄与とみられる。

同社のBPO事業は、百貨店や食品会社など顧客数や属性では多岐にわたっているが、特定の大口顧客からの売上がBPO事業の売上の大部分を占めるという、特定顧客依存の傾向があった。しかし、2015年12月期第4四半期に受注した大型案件は、その依存度を引き下げ、収益を安定化させるという点では重要な意義を有する案件であった。同社はこの案件を長期的に良好な関係へと発展させるために、立ち上がり期において特に手厚い体制を敷いた。それが今第2四半期において予想以上の費用増加を招いて利益圧縮につながったのは前述のとおりだ。しかしながら、同社が目指す顧客の分散化とBPO事業自体の拡大は、同社にとって重要な経営課題であり、同社の当該新規顧客重視の姿勢は正しい判断であったと弊社では考えている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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