オンコリスバイ Research Memo(5):がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルス
[16/09/26]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■開発パイプラインについて
(1)テロメライシン
a)概要
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖して、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に感染することでテロメライシンを複製させ、自己増殖的に増加してがん細胞を破壊していくことにある。このため、テロメライシンは局所的ながん細胞だけでなく、周辺のがん細胞まで破壊することが可能で治療効果の高いウイルス製剤とされている。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るが、軽度なものであり人体の安全性に問題はないとされている。また、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、副作用も少ない。オンコリスバイオファーマ<4588>では食道がんやメラノーマなど固形がんを対象疾患として、開発を進めている。
b)開発状況
岡山大学にて2013年より医師主導の臨床研究が進んでいる。手術不能な末期の食道がん患者を対象に、テロメライシンと放射線治療との併用治療で最大24例の組入れを予定している。これまでに最低用量群7例の投与において中間成績が報告され、5例で腫瘍の縮小が認められている。この結果を受け、2016年上期より新たに中用量群での投与を開始(1例)している。
また、米国でも末期の各種固形がんを対象に、2006年より第1相臨床試験を22症例実施し、メラノーマ患者を含む7例で腫瘍の縮小が確認されている。特に、メラノーマ患者に対しては局所投与にも関わらず、転移したがん細胞の縮小も認められている。また、2016年7月からは名古屋大学の研究グループと、免疫チェックポイント阻害剤との併用による共同研究も進めている。
その他、台湾の提携先であるMedigen社と共同で2014年より、肝細胞がんを対象とした第1/2相臨床試験を韓国・台湾で進めている。2016年上期までに低用量から中用量、最大容量群と各3例の投与を完了し、現在まで安全性が確認されている。
c)ウイルス製剤の競合
腫瘍溶解性ウイルス製剤では2016年8月時点で2つの製剤が上市されている。1つは中国のShanghai Sunway Biotech Co.,Ltd.が米バイオベンチャーからライセンス導入した遺伝子改変型アデノウイルス製剤で、頭頸部がんを対象に中国で上市されている。ただ、同製剤が実際に実用化されているかどうかは不明だ。もう1つは、米国で2015年10月に承認取得された米Amgen社のヘルペスウイルス製剤「T-VEC」で、対象疾患はメラノーマとなる。また、その他にもタカラバイオ<4974>のヘルペスウイルス製剤「HF10」など複数の開発プロジェクトが国内外で進んでおり、腫瘍溶解ウイルスへの関心が高まっていることがうかがえる。
こうしたなかで、同社のアデノウイルス製剤については他のウイルス製剤と比較していくつかの長所がある。第1に、安全性で優れており、品質管理など規制上のハードルが低いこと、第2に、がんの転移原因ともなるがん幹細胞に対しても効果があること、第3に、放射線療法との親和性が高いことが挙げられる。
放射線療法はがん細胞の遺伝子を破壊することで、がん細胞を死滅させる治療法となるが、放射線照射後のがん細胞の表面が、アデノウイルスを付着しやすくなるよう改質されること、また、がん細胞の遺伝子修復機能を抑制する働きを持つ「E1B遺伝子」をアデノウイルスのみが持っていることなどが、放射性療法との親和性が高い理由となっている。
同社では今後の開発方針として、放射線治療のほか、チェックポイント阻害剤など他の治療法との併用が効果的であると考えており、臨床試験についてもまずは単剤として安全性や有効性を確認した後に、併用療法での開発を進めていくことを考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1)テロメライシン
a)概要
テロメライシンは、テロメラーゼ活性の高いがん細胞で特異的に増殖して、がん細胞を破壊する遺伝子改変型アデノウイルスのことで、腫瘍溶解性ウイルス製剤の一種である。テロメライシンの特徴は、テロメラーゼ活性の高いがん細胞に感染することでテロメライシンを複製させ、自己増殖的に増加してがん細胞を破壊していくことにある。このため、テロメライシンは局所的ながん細胞だけでなく、周辺のがん細胞まで破壊することが可能で治療効果の高いウイルス製剤とされている。アデノウイルス自体は自然界の空気中に存在し、風邪の症状を引き起こすウイルスのため、ヒトに投与すると発熱等の症状が出るが、軽度なものであり人体の安全性に問題はないとされている。また、正常な細胞の中では増殖能力が極めて低いため、副作用も少ない。オンコリスバイオファーマ<4588>では食道がんやメラノーマなど固形がんを対象疾患として、開発を進めている。
b)開発状況
岡山大学にて2013年より医師主導の臨床研究が進んでいる。手術不能な末期の食道がん患者を対象に、テロメライシンと放射線治療との併用治療で最大24例の組入れを予定している。これまでに最低用量群7例の投与において中間成績が報告され、5例で腫瘍の縮小が認められている。この結果を受け、2016年上期より新たに中用量群での投与を開始(1例)している。
また、米国でも末期の各種固形がんを対象に、2006年より第1相臨床試験を22症例実施し、メラノーマ患者を含む7例で腫瘍の縮小が確認されている。特に、メラノーマ患者に対しては局所投与にも関わらず、転移したがん細胞の縮小も認められている。また、2016年7月からは名古屋大学の研究グループと、免疫チェックポイント阻害剤との併用による共同研究も進めている。
その他、台湾の提携先であるMedigen社と共同で2014年より、肝細胞がんを対象とした第1/2相臨床試験を韓国・台湾で進めている。2016年上期までに低用量から中用量、最大容量群と各3例の投与を完了し、現在まで安全性が確認されている。
c)ウイルス製剤の競合
腫瘍溶解性ウイルス製剤では2016年8月時点で2つの製剤が上市されている。1つは中国のShanghai Sunway Biotech Co.,Ltd.が米バイオベンチャーからライセンス導入した遺伝子改変型アデノウイルス製剤で、頭頸部がんを対象に中国で上市されている。ただ、同製剤が実際に実用化されているかどうかは不明だ。もう1つは、米国で2015年10月に承認取得された米Amgen社のヘルペスウイルス製剤「T-VEC」で、対象疾患はメラノーマとなる。また、その他にもタカラバイオ<4974>のヘルペスウイルス製剤「HF10」など複数の開発プロジェクトが国内外で進んでおり、腫瘍溶解ウイルスへの関心が高まっていることがうかがえる。
こうしたなかで、同社のアデノウイルス製剤については他のウイルス製剤と比較していくつかの長所がある。第1に、安全性で優れており、品質管理など規制上のハードルが低いこと、第2に、がんの転移原因ともなるがん幹細胞に対しても効果があること、第3に、放射線療法との親和性が高いことが挙げられる。
放射線療法はがん細胞の遺伝子を破壊することで、がん細胞を死滅させる治療法となるが、放射線照射後のがん細胞の表面が、アデノウイルスを付着しやすくなるよう改質されること、また、がん細胞の遺伝子修復機能を抑制する働きを持つ「E1B遺伝子」をアデノウイルスのみが持っていることなどが、放射性療法との親和性が高い理由となっている。
同社では今後の開発方針として、放射線治療のほか、チェックポイント阻害剤など他の治療法との併用が効果的であると考えており、臨床試験についてもまずは単剤として安全性や有効性を確認した後に、併用療法での開発を進めていくことを考えている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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