カイオム Research Memo(1):完全ヒトADLib® システムを用いた抗体作製プロジェクトの継続に注力
[16/09/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
カイオム・バイオサイエンス<4583>は、国立研究開発法人理化学研究所(以下、理研)発の創薬基盤技術型バイオベンチャーで、独自の創薬基盤技術であるADLib®システムを核とした抗体医薬品の創薬事業および創薬支援事業等を行っている。ADLib®システムの特徴は、従来の抗体作製技術と比較して「多様性」「迅速性」「困難抗原への対応」に優れていることにあり、従来方式では作製が困難な抗体を中心に研究開発を進めている。
2016年12月期第2四半期累計(2016年1月−6月)の業績は売上高で130百万円、営業損失で582百万円となった。前年同期の連結ベースでの売上高が133百万円、営業損失が722百万円だったので、損失額がやや縮小した格好となっている。研究開発費の絞り込みを行ったことが要因だ。事業の進捗について、第2四半期は大きな進展が見られなかったものの、引き続きADLib®システムの技術改良や完全ヒトADLib®システムを用いた抗体作製プロジェクトを推進しているほか、パイプラインの導出活動に取り組んだ。また、オプションライセンス契約先であるスイスのADC Therapeutics社(以下、ADCT社)における抗体の評価も進んでいるようだ。
同社はパイプラインの価値を高めるため、初期臨床段階(臨床前期第2相試験)までの開発を自社で行っていく方針を打ち出した。具体的には、がん治療用抗体として「LIV-1205」※の臨床第1相試験を2018年内に開始すべく準備を進めていく。初期臨床段階までの開発費として1,300百万円程度を計画しており、そのための資金調達として第三者割当(メリルリンチ日本証券(株))による新株予約権を9月に発行した。当初行使価額は519円で、下限行使価額を312円に設定している。当初行使価額で100%行使されれば約2,894百万円を調達できることになる(株式希薄化率は約25%)。調達した残りの資金については、ADLib®システムの価値向上につながる技術を持つ企業へのM&A資金や、新規パイプラインの創製及び導入費用に充当することになる。
※LIV-1205:肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「DLK-1」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体。
2016年12月期の業績見通しは、創薬事業での合理的な業績予想の算定が困難なことから非開示となっているが、創薬支援事業の売上高は227百万円と前期比で若干の減収を見込んでいる。今期は収益体質を筋肉質なものとするため、希望退職による社員数の適正化を実施したほか、研究開発費もプロジェクトの選択と集中を行い抑制していることから、営業損失額は前期から縮小することが予想される。今後は、現在保有しているパイプラインのライセンス契約動向や、完全ヒトADLib®システムによる抗体作製の開発状況などが注目ポイントとなる。
■Check Point
・開発プロジェクトの選択と集中を行ったことにより、研究開発費が大幅に減少
・導出活動と同時に、自社で初期臨床試験段階までの開発を行い、パイプラインの価値を高める
・「戦略的アライアンスの推進による創薬基盤技術の強化」と「パイプラインの拡充」に注力していく
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
2016年12月期第2四半期累計(2016年1月−6月)の業績は売上高で130百万円、営業損失で582百万円となった。前年同期の連結ベースでの売上高が133百万円、営業損失が722百万円だったので、損失額がやや縮小した格好となっている。研究開発費の絞り込みを行ったことが要因だ。事業の進捗について、第2四半期は大きな進展が見られなかったものの、引き続きADLib®システムの技術改良や完全ヒトADLib®システムを用いた抗体作製プロジェクトを推進しているほか、パイプラインの導出活動に取り組んだ。また、オプションライセンス契約先であるスイスのADC Therapeutics社(以下、ADCT社)における抗体の評価も進んでいるようだ。
同社はパイプラインの価値を高めるため、初期臨床段階(臨床前期第2相試験)までの開発を自社で行っていく方針を打ち出した。具体的には、がん治療用抗体として「LIV-1205」※の臨床第1相試験を2018年内に開始すべく準備を進めていく。初期臨床段階までの開発費として1,300百万円程度を計画しており、そのための資金調達として第三者割当(メリルリンチ日本証券(株))による新株予約権を9月に発行した。当初行使価額は519円で、下限行使価額を312円に設定している。当初行使価額で100%行使されれば約2,894百万円を調達できることになる(株式希薄化率は約25%)。調達した残りの資金については、ADLib®システムの価値向上につながる技術を持つ企業へのM&A資金や、新規パイプラインの創製及び導入費用に充当することになる。
※LIV-1205:肝臓がんを中心とする固形がんの細胞表面に発現する抗原(標的分子)「DLK-1」に結合し、がんの増殖活性を阻害するヒト化モノクローナル抗体。
2016年12月期の業績見通しは、創薬事業での合理的な業績予想の算定が困難なことから非開示となっているが、創薬支援事業の売上高は227百万円と前期比で若干の減収を見込んでいる。今期は収益体質を筋肉質なものとするため、希望退職による社員数の適正化を実施したほか、研究開発費もプロジェクトの選択と集中を行い抑制していることから、営業損失額は前期から縮小することが予想される。今後は、現在保有しているパイプラインのライセンス契約動向や、完全ヒトADLib®システムによる抗体作製の開発状況などが注目ポイントとなる。
■Check Point
・開発プロジェクトの選択と集中を行ったことにより、研究開発費が大幅に減少
・導出活動と同時に、自社で初期臨床試験段階までの開発を行い、パイプラインの価値を高める
・「戦略的アライアンスの推進による創薬基盤技術の強化」と「パイプラインの拡充」に注力していく
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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