カイオム Research Memo(4):開発プロジェクトの選択と集中を行ったことにより、研究開発費が大幅に減少
[16/09/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
(1) 2016年12月期第2四半期累計の業績概要
8月12日付で発表されたカイオム・バイオサイエンス<4583>の2016年12月期第2四半期累計の業績は、売上高が130百万円、営業損失が582百万円、経常損失が580百万円、四半期純損失が711百万円となった。前年同期の連結ベースとの比較で見ると、売上高は3百万円減少し、営業損失は139百万円縮小した。開発プロジェクトの選択と集中を行ったことで研究開発費が107百万円減少したことが主因となっている。なお、特別損失として(株)イーベックに係る投資有価証券評価損105百万円、及び希望退職者の募集に伴う特別退職金24百万円(8名)を計上した結果、四半期純利益は前年同期よりも9百万円拡大した。イーベックは血液Bリンパ球から完全ヒト抗体を作製する独自プラットフォーム技術を有するバイオベンチャーで、技術的なシナジーが見込めると判断し、2015年10月に株式を取得(114百万円)していたが、今回投資有価証券の評価額の見直しを行った。事業セグメント別の動向は以下のとおり。
a)創薬事業
創薬事業の売上高は14百万円、セグメント利益(売上総利益)は11百万円となった。主にADCT社との「LIV-2008b」にかかるADC開発用途でのオプションライセンス契約締結に伴う契約一時金を売上高として計上している。ADCT社とは2015年も「LIV-1205」のADC(抗体薬物複合体)抗体についての開発オプションライセンス契約を締結しており、現在は両抗体の評価を行っている段階にある。評価期間についての目安は「LIV-1205」のADC抗体が2017年前半、「LIV-2008b」が2018年前半頃まで掛かるものと見られ、その後に独占的開発販売権の許諾契約を締結するかどうか判断することになる。
また、同社では「LIV-1205」のnaked抗体、「LIV-2008」及び「抗セマフォリン3A抗体」についてのライセンス契約獲得に向けた活動も積極的に行っている。
b)創薬支援事業
創薬支援事業の売上高は116百万円、セグメント利益は42百万円となった。このうちオリジナルADLib®システムの技術導出先である富士レビオからのライセンス料及び「ビタミンD測定用の抗体を含む診断キット」の販売に伴うロイヤルティ収入は約16百万円と前年同期並みの水準だったと見られる。富士レビオではADLib®システムを用いた新たな製品創出に向けた研究開発を実施している。
一方、中外製薬<4519>グループ向けを中心としたADLib®システム技術を用いた創薬支援サービスについては約100百万円となった。当期は他の製薬企業等とアライアンスを締結し、抗体作製プロジェクトもスタートさせている。
c) ADLib®システムの研究開発状況
研究開発の状況としては、開発パイプラインの増大に向けて、ADLib®システムや他の抗体作製技術等も活用しながら、医療用抗体の作製プロジェクトを進め、抗体作製実績の蓄積を継続している。なお、完全ヒトADLib®システムの開発状況としては、機能性(薬効を持っているかどうか)や安定性も併せ持った抗体の作製実績を積み重ねることが課題のようで、今後、臨床開発で使用可能な実用化レベルでの抗体開発を進めていく考えだ。
抗体作製に関してはここ最近、アジア企業の台頭もあって既存技術でのコモディティ化が急速に進んでおり、比較的安価なコストで行われるようになってきている。こうした市場環境の変化により、製薬企業もADLib®システムのような新技術の導入には慎重になっており、技術導出が進まない要因の1つになっていると考えられる。このため、技術導出を実現するためには、困難抗原での治療薬候補抗体としてポテンシャルを持った抗体を作製することが求められている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1) 2016年12月期第2四半期累計の業績概要
8月12日付で発表されたカイオム・バイオサイエンス<4583>の2016年12月期第2四半期累計の業績は、売上高が130百万円、営業損失が582百万円、経常損失が580百万円、四半期純損失が711百万円となった。前年同期の連結ベースとの比較で見ると、売上高は3百万円減少し、営業損失は139百万円縮小した。開発プロジェクトの選択と集中を行ったことで研究開発費が107百万円減少したことが主因となっている。なお、特別損失として(株)イーベックに係る投資有価証券評価損105百万円、及び希望退職者の募集に伴う特別退職金24百万円(8名)を計上した結果、四半期純利益は前年同期よりも9百万円拡大した。イーベックは血液Bリンパ球から完全ヒト抗体を作製する独自プラットフォーム技術を有するバイオベンチャーで、技術的なシナジーが見込めると判断し、2015年10月に株式を取得(114百万円)していたが、今回投資有価証券の評価額の見直しを行った。事業セグメント別の動向は以下のとおり。
a)創薬事業
創薬事業の売上高は14百万円、セグメント利益(売上総利益)は11百万円となった。主にADCT社との「LIV-2008b」にかかるADC開発用途でのオプションライセンス契約締結に伴う契約一時金を売上高として計上している。ADCT社とは2015年も「LIV-1205」のADC(抗体薬物複合体)抗体についての開発オプションライセンス契約を締結しており、現在は両抗体の評価を行っている段階にある。評価期間についての目安は「LIV-1205」のADC抗体が2017年前半、「LIV-2008b」が2018年前半頃まで掛かるものと見られ、その後に独占的開発販売権の許諾契約を締結するかどうか判断することになる。
また、同社では「LIV-1205」のnaked抗体、「LIV-2008」及び「抗セマフォリン3A抗体」についてのライセンス契約獲得に向けた活動も積極的に行っている。
b)創薬支援事業
創薬支援事業の売上高は116百万円、セグメント利益は42百万円となった。このうちオリジナルADLib®システムの技術導出先である富士レビオからのライセンス料及び「ビタミンD測定用の抗体を含む診断キット」の販売に伴うロイヤルティ収入は約16百万円と前年同期並みの水準だったと見られる。富士レビオではADLib®システムを用いた新たな製品創出に向けた研究開発を実施している。
一方、中外製薬<4519>グループ向けを中心としたADLib®システム技術を用いた創薬支援サービスについては約100百万円となった。当期は他の製薬企業等とアライアンスを締結し、抗体作製プロジェクトもスタートさせている。
c) ADLib®システムの研究開発状況
研究開発の状況としては、開発パイプラインの増大に向けて、ADLib®システムや他の抗体作製技術等も活用しながら、医療用抗体の作製プロジェクトを進め、抗体作製実績の蓄積を継続している。なお、完全ヒトADLib®システムの開発状況としては、機能性(薬効を持っているかどうか)や安定性も併せ持った抗体の作製実績を積み重ねることが課題のようで、今後、臨床開発で使用可能な実用化レベルでの抗体開発を進めていく考えだ。
抗体作製に関してはここ最近、アジア企業の台頭もあって既存技術でのコモディティ化が急速に進んでおり、比較的安価なコストで行われるようになってきている。こうした市場環境の変化により、製薬企業もADLib®システムのような新技術の導入には慎重になっており、技術導出が進まない要因の1つになっていると考えられる。このため、技術導出を実現するためには、困難抗原での治療薬候補抗体としてポテンシャルを持った抗体を作製することが求められている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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