【FISCOソーシャルレポーター】個人投資家ちゃる: PPMによるファクター分析
[16/10/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
以下は、フィスコソーシャルレポーターの個人投資家ちゃる氏(ブログ「ちゃーりーと投資力工場」を運営)が執筆したコメントです。フィスコでは、情報を積極的に発信する個人の方と連携し、より多様な情報を投資家の皆様に向けて発信することに努めております。
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※2016年10月22日12時 に執筆
なぜ割安に見える企業の株価が今の価格なのか。
ファンダンメンタル投資では、現在株価と理論価値とのギャップから利益を得ようとするケースが多いです。その場合、今の値段がついている理由を知ることは、理論価値を見極めるのと同じぐらい重要です。というのも、現在株価のバリュエーション付与のされ方が明らかでないと、いつどういったきっかけで株価が理論価値に収斂していくかの見当が全くつけられないからです。
しかし、これを知るためにはとてつもない時間と能力が求められます。現在株価をDCF法で分解して変数をリバースエンジニアリングするか、あるいはマルチプル法を精緻に用いて企業間の比較を行う必要があります。
本記事のテーマは、現在株価に影響を与えているファクターの構成を簡略的にでも知る術はないか、少なくとも知るための端緒を掴むことはできないか、です。
私は、経営学の「PPM」が一つの手立てになるのではないかと考えています。
〈1.PPMとは〉
「PPM(Product Portfolio Management)」は、一企業が抱えている製品・事業群に対して、戦略的な資金配分を考えるために使われる枠組みです。
PPMでは、市場成長率、相対市場シェアの二本の軸で四象限のグラフを作り、各製品・事業をプロットして分析を行います。
各象限の製品・事業は、それぞれ異なる特徴を持ちます。成長率が低く、シェアが高い製品・事業は一番多くのキャッシュを生むため「金の生る木」と、成長率、シェアともに高い製品・事業はこの先の主軸になるため「花形」と呼ばれます。成長率は高いがシェアが低い製品・事業は、キャッシュフローこそマイナスだが将来的に「花形」に成長しうるため「問題児」とされます。成長率、シェアともに低い製品・事業は、キャッシュをほとんど生まずジリ貧であるため「負け犬」と呼ばれます。
PPMから導出される基本原則は、「金のなる木」で生まれたキャッシュはその中で留保・再投資せず、他の製品・事業群に回すべきというものです。
「金のなる木」は成長率が低く一層の売上拡大が難しいです。ゆえに、そこで生じた潤沢なキャッシュは成長性が高い「花形」や「問題児」に回したほうが、企業の持続的な成長が期待できるというわけです。
〈2.PPMの含意〉
先項の通り、PPMは、製品・事業ポートフォリオの現状分析、戦略的な資金計画策定のために用いられます。
しかし一方で、PPMは現状分析だけでなく、過去分析においても強力だと私は考えています。ポートフォリオを時間軸に沿って複数作成して見比べることで、過去にどのような意図で資金が動かされてきたかを分析・検証できるということです。特徴的な資金の動きはないかを考えることで、経営戦略の変遷を垣間見ることができるのです。
このPPMの特徴を投資に用いれば、バリュエーションの動きを可視化できると考えています。
複数の企業を一つの枠組みにプロットすることで、投資資金の動きが図示できます。もし仮に、企業の業績の変化によらない特異な資金動向があれば、そこではバリュエーション尺度の変化があった可能性が高いです。変化があった時点を特定できれば、その前後の定量・定性分析をすることで評価ファクターを絞ることができるのではないかと考えます。
〈3.分析の流れ〉
PPMによる投資分析の主な狙いは、株式の評価ファクターの構成がいつ変わったのかを特定することです。具体的には以下の流れで行います。
1.ある業種や企業群に属する全企業について、「売上高成長率」・「相対時価総額シェア」・「ROE」の三本の軸、および「PER」の円の大きさで三次元のバブルグラフを作りプロットする。
*現時点と過去の時点におけるデータで複数のグラフを作成
2.特異な投資資金の動きはないかを検討する。成長率・ROEの変化に比して円の大きさ(PER)が過大・過小に動いている企業はないかを見る。特に、相対的に外れたPERを持つ企業がどう動いているのかに注目する。
3.特異な動きの起点となった企業にどのような定量・定性変化があったのかを調査し、評価ファクターを絞り込む。
4.特定したファクター構成を他企業に対して用いて検証する。
上記の通り、グラフの軸は「売上高成長率」、「相対時価総額シェア」、「ROE」の三つです。元のPPMから一つ増やしています。
「売上高成長率」、「ROE」には、直近1年間の実績値と2ヵ年先までのコンセンサス予想値(計3年間)の平均値を取ります。「相対時価総額シェア」は当該企業時価総額÷業種全体時価総額です。また、株価の高低を追うためにPERの値を円の大きさで表します。PERは今期のコンセンサス利益で算出します。
〈まとめ〉
PPMでは、過去の資金動向から企業の経営戦略の変遷を知ることができます。PPMによる投資分析でもこの発想を用います。投資資金の動きを見ることで、株式の評価ファクターの変遷を考える起点にしようという試みです
ところが、実際使う上では課題が山積みです。例えば、対象の企業群の境界をどう定義するか、売上高成長率をどう取るかで「”特異な”投資資金の動き」に対する解釈は変わってしまいます。
当面は参考程度での利用に留まってしまいそうです。
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執筆者名:ちゃる
ブログ名:ちゃーりーと投資力工場
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