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システムインテ Research Memo(8):ストック売上比率を高め、安定性の高い収益構造への変革を図る

注目トピックス 日本株
■今後の見通し

(1)2017年2月期業績見通し

システムインテグレータ<3826>の2017年2月期の業績見通しは、売上高が前期比6.8%減の3,300百万円(期初計画3,600百万円)、営業利益が同43.7%減の250百万円(同500百万円)、経常利益が同43.4%減の253百万円(同503百万円)、当期純利益が同59.9%減の146百万円(同360百万円)と期初計画を下方修正している。これはERP事業の不採算プロジェクトの影響によるものである。下期も期初計画から見ると、下方修正した格好となるが、これはERP事業における今後の案件受注をより厳格に行う方針としたほか、「SOCS」や「OBDZ」などの販売拡大に向けてマーケティング費用を積み増すことが要因となっている。事業セグメント別の見通しは以下のとおり。

○Object Browser事業
Object Browser事業は「OBPM」が引き続きけん引役となり、通期でも2ケタ増収となる見通しだ。IT業界は繁忙状況が続くなかで慢性的に人手不足となっており、プロジェクト管理がより重要となってきている。こうしたなかで、プロジェクトの進捗管理や、品質管理、要員管理などを統合的に管理し、プロジェクト全体の進捗を可視化できる市販品は「OBPM」のほかに競合品が見当たらず、着実に導入社数を増やし続けている。最近ではIT企業だけでなく、他業界からの引き合いも増え始めており、こうした顧客の開拓を進めるため、「OBPM」の機能を一部絞ったライト版を、2017年にリリースする計画となっている。エンジニアリング業界における設計・施工管理や、製造業における製品開発分野での用途を狙っている。

また、中国市場では提携先のウィナーソフト社の営業活動が社内事情により遅れている。大型開発案件を抱え、その対応に少なくとも年内は掛かる見込みとなっている。このため、中国での営業強化策を再検討する考えだ。実際、「OBPM」に対する引き合いは来ている。中国のソフトウェア開発の市場規模は日本の10倍以上と大きく、「OBPM」が普及すれば業績に与えるインパクトも大きい。中国ではPMに対する意識も高く、これはプロジェクトマネジメントに関するアプローチ手法を体系化したPMBOK(ピンボック)※の国際資格であるPMPの有資格者数でも見てとれる。数年前の中国の資格取得者数は約3万人と日本並みの水準であったが、現在は約10万人と日本の3倍以上に増加している。中国ではExcelで自作してプロジェクト管理を行っており、PMの統合管理ツールの市販品はまだない状態にある。中国でも人件費の高騰により生産性向上が求められており、性能の良いPMツールがあれば導入が進む可能性が高く、今後の動向が注目される。なお、中国市場向けでは「SI Object Browser」も現地代理店を通じて販売しているが、こちらはフリーソフトの競合品やそのコピー品が出回っていることもあり、売上はほとんど伸びていない。

※PMBOK(Project Management Body of Knowledge)・・・米国のプロジェクトマネジメント協会が発行する「プロジェクトマネジメント知識体系ガイド」の略称。建設、製造、ソフトウェア開発など幅広いプロジェクトに適用可能なプロセスベースのアプローチ手法を体系的にまとめたもの。プロジェクトマネジメントを効果的に達成するためのアプローチ手法として、5個の基本的なプロセス群と10個の管理エリアに分類し、必要なプロセスがまとめられている。

○ERP事業
ERP事業の売上高は期初計画では前期比で2〜3%の増収を見込んでいたが、不採算プロジェクトの売上高が2018年2月期にずれ込むことで減収となる見通し。ただ、中堅企業からの需要は引き続き旺盛なことから、人員体制の強化や協力会社の開拓など引き続き開発能力の増強に取り組んでいく方針となっている。今春は採用がゼロだった新卒社員も、2017年春は11名が入社する予定となっており、2018年2月期以降は再び増収に転じるものと予想される。

また、「GRANDIT」でもクラウド対応を前期末より開始しており、既に数社で稼働している。ネットワークはAWS(アマゾン ウェブ サービス)を利用する。ERPを導入する企業の中には、ハードウェアとソフトの一括導入を希望する企業もあるが、同社はハードウェアを扱わないため、今まではこうした企業の受注を取り逃すケースもあった。しかし、クラウドではハードウェアやネットワークをクラウド事業者が用意するため同社の負担は掛からずに、受注獲得の機会が増すことになる。「GRANDIT」の料金プランは従来と変わりないが、システム構築だけでなく運用も含めてワンストップでサービスを提供するため、クラウドのサポートフィー(ネットワーク料金、ハードウェア利用料等)が毎月の収入として入ってくるだけでなく、顧客の囲い込み効果も期待できる。

○EC・オムニチャネル事業
EC・オムニチャネル事業の売上高は期初計画では前期比微増収を見込んでいたが、ECサイト構築パッケージの低迷が続いていることもあり、減収に見直している。市場競争の激化が続くなかで、「SI Web Shopping」については他社との連携による+αの機能を提案することで、新規顧客の開拓を進めていく考えだ。2016年7月にはコンクリートファイブジャパン(株)の開発したオープンソースCMS※「concrete5」を搭載し、ユーザー自身がECサイトのデザインを自由に変更・改修できるECサイト構築ソフト「SI Web Shopping CMS」をリリースした。販売価格は1サイト当たり100万円(別途、「SI Web Shopping」の購入が必要)で、今後3年間で約20本の販売を見込んでいる。

※CMS(Content Management System):Webコンテンツを構成するテキストや画像、レイアウト情報などのデジタルコンテンツを一元的に保存・管理し、サイトを構築したり編集するためのソフトウェア。

また、同年8月には(株)フィードフォースが提供する、企業が保有する自社の商材データを多様な配信先に最適な形で変換・配信を行うサービス「DF PLUS」との商品データ連携機能を「SI Web Shopping」に追加した。これにより、「SI Web Shopping」の利用ユーザーは、自社の商品データをスムーズにダイナミック広告出稿に活用することが可能となった。同社ではこのように「SI Web Shopping」の製品力強化につながるような機能を、他社との連携を進めながら今後も追加していく予定となっており、こうした取り組みにより新規顧客を開拓し、同製品の売上高を拡大していく方針となっている。

一方、「SOCS」は前述したように4月に「名寄せ機能」を追加し、ユーザーインターフェースを改良した新バージョンをリリースし、見込み顧客からの注目度も高まっている。オムニチャネルの普及がまだこれからということもあり、導入社数は3社にとどまっているが、多くのサービス機能を装備しており、機能面で競合他社よりも先行しているだけに、今後の成長が期待される。同社では、セミナー開催などマーケティングを強化して、認知度の向上を図りながら受注を獲得していく考えで、販売計画として今後の3年間で500百万円を計画している。

(2)中期経営計画について

同社は、2015年4月に中期経営計画「Core2015」を発表している。基本方針としては、同社の強みであるコア製品・事業に経営リソースを集中し、同時に低コスト・高収益体質を取り戻すことで、早期に業績を回復軌道にのせることを掲げていた。また、クラウドサービスの強化により、ストック売上比率を高め、安定性の高い収益構造に変革していく方針に変わりない。

今回、2017年2月期の業績を下方修正したものの、最終年度である2018年2月期の業績目標値(売上高4,000百万円、経常利益600百万円)に変更はなく、同社では達成可能な水準と見ている。国内の景況感がやや悪化していることが懸念要因ではあるものの、企業の生産性向上に向けたIT投資は堅調な推移が予想されること、また、流通業界においてはオムニチャネル体制の構築に向けた投資が、活発化することが予想されることなどが背景にある。また、国内だけでなく、中国においても「OBPM」が普及拡大するようであれば、業績面でプラスに寄与することが予想される。

リスク要因としては、大型案件での不採算プロジェクトの発生が挙げられる。大型案件で不採算案件が発生すれば、事業規模がまだ小さいだけに業績面に与える影響も大きくなる。同社では「OBPM」を導入したことで、不採算案件の発生率は導入前と比較して低下したものの、それでも管理を行うのは最終的にヒトに依存するため、教育の再徹底を行い不採算案件の発生率をさらに引き下げていくことを目指している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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