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日本調剤 Research Memo(3):調剤報酬及び薬価改定のマイナス影響をどこまで押し戻せるかに注目(1)

注目トピックス 日本株
■各事業セグメント別動向

(1)調剤薬局事業

a)全体像
2年に1度の調剤報酬及び薬価の改定が2016年4月に実施された。2017年3月期を見るうえでの最大のポイントは、今回の改定のマイナス影響をどこまで押し返すことができるかという点だ。これは日本調剤<3341>のみならず調剤薬局業界共通のテーマと言える。詳細は後述するが、調剤報酬改定のマイナスを取り戻すことはとりもなおさず、調剤店舗の運営上求められている各種の制度対応への進捗状況、さらに言うならば、国(厚労省)が目指す“患者のための薬局ビジョン”にかなった店づくりの進捗状況を意味する。

同社にとってのもう1つの注目点は出店戦略における、M&Aによる出店数の変化だ。M&Aに対する同社のスタンスにはいささかの変化もないが、外部環境が変わった結果、今第2四半期は、同社の出店戦略においてM&Aの比重が高まってくると予感される動きが見られた。以下ではこれら2点について詳述する。

b)調剤報酬改定の影響と同社の対応状況
1)調剤薬局の収入構造と改定の影響
調剤薬局は基本的に、病院(医師)とともに国の健康保険制度に組み込まれている。保険薬局の報酬(収入)は健康保険制度で定められた収入算定の基礎となる点数(診療報酬)によって決まってくる。国(厚労省)はこの診療報酬を変更・調整することで、医療費の抑制や国の医療政策の実現の動機付けへとつなげるべく、2年に1度、見直しを行っている。2016年度は2年に1度の診療報酬改定年度に当たり、その一環として調剤報酬点数表も改定された。

改定の主な内容は後に詳述するが、その理解のためには調剤薬局の基本的な収入構造を理解しておく必要がある。処方せん1枚当たりの調剤報酬は「調剤技術料」、「薬学管理料」及び「薬剤料」の3本柱から成っている。このうち薬剤料については薬剤師・薬局の手が及ばない部分だ。

残り2本の柱のうち、調剤技術料は「調剤基本料及びその加算項目」+「調剤料及びその加算項目」という構造となっている。このうち「調剤料」の基本部分は薬剤の種類や処方日数で変わり、ここもまた薬剤師・薬局の手が及ばない部分だ。したがって、調剤報酬の改定は、詰まるところ、「調剤基本料」と「基準調剤加算」、「後発医薬品調剤体制加算」などの各種加算項目、及び「薬学管理料」についての改定が中心となってくる。

2016年4月の改定では、調剤基本料について、大型門前薬局チェーンの調剤基本料収入を大きく引き下げる内容の改定が行われた。個人経営のような小規模店舗であれば通常の調剤基本料として41点(1点=約10円)が得られるところを、規模に応じて低い調剤基本料が適用されるような特例が定められているが、その特例の適用が、同社を始めとする大型門前薬局チェーンの店舗にはより厳しくなるような改定が行われた。

同社の場合、改定前は総店舗の89%が満額の調剤基本料1を適用され、41点を獲得できていたが、改定後はそれが70%に減少することとなった。反対に、新設の調剤基本料3(20点)の適用店舗の割合が23%にも及び、収入のベースが大きく切り下がることが懸念された。

各種加算は、例えば「後発医薬品調剤体制加算」は後発(ジェネリック)医薬品の処方状況に応じて点数が18点もしくは22点加算される仕組みだ。調剤基本料の点数が下がった分はこうした加算を獲得することで埋め合わせることは可能だが、その加算獲得の基準もまた、改定ごとに厳しくなりつつある。

2)日本調剤の対応状況
調剤報酬改定に対する同社の対応は、結論から言うと計画以上の成功を収めた。調剤技術料単価について、改定直前の2016年3月を基準としてその後の月別推移を見ると、4月〜6月は-1%〜-2.3%と大きく調剤技術料単価が下落したが、6月を底にマイナス幅は縮小し、9月には-0.5%にまでマイナス幅が縮小した。

前述のように、調剤技術料には、薬剤の種類や処方日数で決まる(すなわち調剤薬局の手が届かない)調剤料が含まれる。同社によれば、この調剤料を除いたベースでの調剤技術料単価は、9月には3月対比でプラスに転じたということだ。したがって、同社は今回の改定によるマイナス影響を完全に吸収したと評価できるだろう。

同社は今期の業績計画において、調剤技術料単価を、3月比-2%が通年続くという前提を置いている。それが9月時点で-0.5%に縮小し、実質ベースではプラスに転換したということで、これは業績の上振れ要因となっている。

同社が調剤技術料単価の改善に成功した要因は、大きく3点だ。すなわち、調剤基本料の改善、基準調剤加算の獲得、及び後発医薬品調剤体制加算の獲得、の3点だ。

前述のように、調剤基本料は大型門前薬局に厳しい改定の結果、41点店舗の割合が70%に下がり20店の店舗が23%になるなど、点数別店舗構成が大きく悪化した。9月末の点数別店舗構成は、表面上は3月末時点から変化はない。しかしながら同社は、調剤基本料の点数を引き下げるという“特例”の適用を解除する(すなわち、41点が適用される)ことに、3店舗で成功した。544店(9月末現在。調剤店舗のみ)のうち3店舗において特例解除ができたことは、一見すると影響はほとんどないように思えるが決してそうではない。

今第2四半期中において特例解除を果たした店舗はいずれも大型店舗だ。仮に月間5,000枚を扱うとすると、調剤基本料が20点から41点に21点改善したことで、5,000枚×210円《21点×10円》×12ヶ月=12.6百万円の収益増となる。また、後述するように、特例解除の条件にはかかりつけ薬剤師服薬指導実績が含まれている。特例解除に成功した店舗では、かかりつけ薬剤師指導料の算定件数が増加していると推測され、これも収益押し上げ要因だ。特例解除を勝ち取る基準は非常に厳しいが、同社は今期中に10店舗以上の特例解除を目指している。

基準調剤加算は店舗の“体制”に対して調剤基本料に加算される性質のものだ。今回の改定で、調剤基本料が41点店舗でありかつ一定の体制を整えた店舗に対して32点が加算されることとなった。前述の特例解除推進の必要性はここにもある。また“体制”についてのチェック項目には店舗の開局時間、備蓄品目数、24時間体制、在宅業務などがある。加算を獲得するためにクリアすべき水準が全般に引き上げられたものの、同社は加算あり店舗の割合を3月末の38%から9月末には41%へと3%ポイント引き上げることに成功した。

後発医薬品調剤体制加算の獲得、すなわちジェネリック医薬品の使用率向上は、同社にとって最も得意とするところであり、同社の基本理念として推進している施策だ。今回の改定では加算を獲得する基準が引き上げられたが、それを乗り越えて加算2(22点)の獲得店舗割合を71%から78%に引き上げ、加算なし店舗の割合を9%から4%に引き下げることに成功した。全社ベースでは、同社は国が最終目標とする80%の基準を2016年4月の段階ですでに達成した。

3)「かかりつけ薬剤師」への対応
厚労省が考える調剤薬局の変化の方向性は「門前薬局からかかりつけ薬局へ」というものだ。すなわち、薬局に求められるものが“立地”ではなく“機能”へと変化しつつあるということだ。2016年度の調剤報酬改定は、この基本方針に沿ったものとなっている。

この一環として新設されたのが“かかりつけ薬剤師指導料”だ。薬剤師と患者が信頼関係に立って“かかりつけ薬剤師”の立場になり、その上で薬剤管理指導を行うことに対して、より多くの薬学管理料を算定する仕組みだ。算定要件を満たした場合には薬学管理料として70点が算定される。前述したように、調剤基本料は“薬局であること”で算定できる点数だが、ここは削減ペースが急だ。反対にかかりつけ薬剤師指導料は “薬局がどんな役割・機能を果たしているか”によって算定されるもので、70点という点数の高さに、厚労省の「推進しよう」という強い意思が表れている。したがって、ここは今後の収益源になると期待される領域だ。

かかりつけ薬剤師指導料の算定要件は、患者個人の同意書の獲得など、厳しく設定されている。それに対して同社は、2017年3月期第2四半期において、患者同意数約12万件、かかりつけ薬剤師指導料の算定件数が20万件超と、大きく実績を伸ばした。かかりつけ薬剤師指導料の算定件数は、前述の調剤基本料の改定における大型門前薬局を対象とした特例の除外要件となっており、特例除外店舗の数を増加させるうえでも重要な意味を持っている。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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