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日本調剤 Research Memo(4):調剤報酬及び薬価改定のマイナス影響をどこまで押し戻せるかに注目(2)

注目トピックス 日本株
■各事業セグメント別動向

4)調剤薬局事業の業績推移
前述のように、2017年3月期第2四半期において、調剤薬局事業は前年同期比で増収減益となった。減益となったことに失望を感じる向きもあるかもしれないが、弊社では今第2四半期の調剤薬局事業の業績について、ポジティブに評価してよいと考えている。

上記で説明したように、調剤報酬改定に対して日本調剤<3341>は、調剤技術料における加算獲得や、薬剤管理料における“かかりつけ薬剤師指導料”算定の数を増加させることで対応した。そうした改定のマイナス影響を押し戻すにはある程度の時間を要するため、効果が出てくるのは今下期からになると弊社では考えていたが、実際には第2四半期単独期間(7月−9月期)においてマイナス幅が縮小し始め、9月時点では実質的に改定の影響を完全に拭い去るに至った。

このことは四半期ベースの営業利益の推移に明確に現れている。今第1四半期のセグメント営業利益は1,475百万円で前年同期から26.8%の大幅減となった。しかしながら第2四半期単独期間においては営業利益が2,589百万円に達し、前年同期比伸び率は15.7%増となった。今期は調剤報酬・薬価の改定年ということで、調剤薬局業界各社の業績を懸念する投資家も多いと考えられるが、同社については改定影響を完全に吸収し、これまでの成長ラインの線上に復帰したと考えて良いであろう。

今下期以降で弊社が注目するのは、かかりつけ薬剤師指導料算定件数の伸びだ。前述のように、この算定要件には患者の同意獲得が要件となっているが、一方で、ストック型収入の性格を有するものだ。今四半期に獲得した患者の同意は、翌四半期のかかりつけ薬剤師指導料算定件数に反映され、そのサイクルが繰り返される。今第2四半期累計期間では20万件超の算定件数だったが、今下期は40万件〜50万件に飛躍的に増大する可能性がある。この業績インパクトは売上高及び利益において280百万円〜350百万円に相当すると弊社では試算している。

c)日本調剤の出店戦略
1)店舗戦略の基本的な考え方
同社はこれまでオーガニック出店、すなわち自社による新規出店を中心に店舗網を拡大してきた。その結果、M&Aによる店舗網拡大には積極的ではないというイメージを持つ向きもあるが、決してそうではない。

同社の出店戦略及び出店に際してのM&A活用に対する考え方は一貫している。同社は調剤薬局店舗のあるべき姿について、社内基準を設定しており、その基準にかなうかどうかで判断している。同社が他社と異なるとすれば、その基準の順守を極めて厳格に行っているということだ。

同社がそこまで基準にこだわる背景・理由はいくつかある。厚労省が薬局に対して薬局が果たす“機能”をより重視しているのは前述のとおりだ。同社はそれに沿った店舗づくりをすることを目指しているが、そのために必要な店舗面積、薬剤師の員数といったものはおのずと決まってくる。そうした一定規模を有する店舗が軌道に乗ってくると、おのずと一定規模の売上高が計上されてくることになる。

上場する大手調剤薬局チェーンの調剤薬局1店舗当たりの売上高を比較すると、同社のそれが抜きん出ていることは明白だ。2017年3月期第2四半期は1店舗当たり売上高(年間ベース)が345百万円となり、アインホールディングス<9627>の251百万円(2017年4月期予想ベース)以下を大きく引き離している。

しかし重要なことは、この売上高の数値が、店づくりに対する姿勢の結果であるということだ。前述のように、同社が考える“理想的な店舗”が軌道に乗ってくれば店舗当たり売上高はこのような値になるということだ。1店舗当たり売上高は同社にとっては結果に過ぎない。

そうした同社の店舗戦略を正しく評価するうえで重要な指標は、1店舗当たり売上高の推移だ。同社の1店舗当たり売上高は年々上昇してきている。2016年3月期はC型肝炎治療薬の影響で大きく押し上げられたため、2017年3月期第2四半期(数値は第2四半期実績を2倍して年度換算したもの)には低下しているように見えるが、実質的には増加トレンドが続いている。

この増加トレンドは、同社が調剤薬局の機能を着実に強化してきており、より高機能・高効率な調剤店舗の構成比が上昇したことを表している、というのが弊社の解釈だ。同社が店舗数ではなく店舗の質にこだわった出店の結果でもある。

2) 2017年3月期の進捗と今後の見通し
2017年3月期第2四半期は、上述の同社の出店戦略に変化が見られた。同社は今第2四半期累計期間において、23店舗を新規出店したが、その内訳はオーガニック出店が12、M&Aによる出店が11となっている。なお、同期間に5店舗を閉鎖した結果、総店舗数は半年前に比較して18店舗増加し545店舗(うち1店舗は物販専門店)となった。

今第2四半期のM&A店舗数が11店と急伸した背景には、同社の基準に適うM&A案件の数が増加してきていることがある。その典型的なケースが、同社が2016年10月に実現した水野の子会社化だ。水野は日本最初の調剤薬局として知られる「水野薬局」を経営している。東京大学医学部付属病院と日本医科大学付属病院の門前に2店舗を構え、2015年11月期の売上高は2,788百万円、経常利益は79百万円という業績だ。1店舗当たりの売上高が14億円近いという点でも別格の存在だが、それにも増して、ビデオカメラを活用した安全管理システム(“調レコ”)やISO認証取得に象徴される徹底した品質管理や、業界最先端のICT(業務システム)などに特徴がある。同社は、高度薬学管理機能の強化や次世代業務システムの開発、水野薬局のブランド価値の活用などで様々なシナジー効果が見込めると期待している。

弊社では、水野の子会社化に関して、業績インパクトや店舗数増加にも増して、水野側が同社を選んだという点に意義深さを感じている。水野側が同社を譲渡先として選んだ背景には、同社の経営理念やガバナンス、運営のノウハウや業務システムなど総合的な判断があったと推察される。水野薬局のブランド力は業界内では非常に高く、水野薬局に続く案件が出てくることを弊社では期待している。仮にそうなれば、それこそブランド価値のシナジーということができるだろう。

調剤薬局店舗数544店(2016年9月末現在)というのは、店舗数首位のアインホールディングス(2017年4月末計画:1,001店)やウエルシアホールディングス<3141>(2016年8月末実績:919店)に水をあけられている。しかしこの点おいて同社には焦りはない。同社は、質を優先した店舗という点に関しては、まったくぶれはない。一方で、同社の基準に適うM&A案件が増加してきたこともあり、店舗の拡大ペースを加速させる環境が整いつつあるとの認識を示している。2017年3月期は通期で50店の出店を計画しており、第2四半期において23の新規出店を実行した。下期についてもオーガニックとM&Aの両面で新規出店が順調に進捗しているもようで、通期目標の達成に自信を見せている。来期以降も積極的な出店策を継続するとみられ、上位チェーンとしての足場を固めて中小チェーンとの差を拡大していくものとみられる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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