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サン電子 Research Memo(4):17/3期2Qは減収、営業損失計上となったが期初予想よりも上回る

注目トピックス 日本株
■決算動向

(1) 2017年3月期上期決算の概要

サン電子<6736>の2017年3月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比1.4%減の11,274百万円、営業損失が65百万円(前年同期は147百万円の利益)、経常損失が190百万円(同45百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純損失が238百万円(同152百万円の利益)と減収となり、営業損失を計上した。ただ、期初予想に対しては、売上高、利益ともに上回っている。

売上高は、モバイルデータソリューション事業が為替換算レート(円高)の影響※により縮小(ただし、米ドルベースでは伸長)したことに加えて、厳しい市場環境が続いているエンターテインメント関連事業も減収となった。一方、その他事業については、M2M事業及びゲームコンテンツ事業がともに大きく伸びている。

※海外子会社の換算レートは1米ドル=102.91円(前年同期は122.45円)

損益面では、減収に伴い売上総利益が若干減益となったことに加えて、今後の成長に向けた先行費用(モバイルデータソリューション事業、M2M事業、AR事業等)などにより販管費が拡大したことにより営業損失となった。ただ、先行費用の拡大は想定の範囲内とみられる。また、営業外費用として、持分法適用会社3社※による持分投資損失(154百万円)を計上している。

※そのうち、CommuniTake.Ltdについては重要性の判断から持分法適用会社から除外しており、2017年3月期第2四半期末では2社になっている。

なお、上期実績が計画を上回ったのは、エンターテインメント関連事業における一部製品の前倒し販売によるものである。したがって、下期にはその反動があるため、通期業績には影響がない見通しである。

財務面では、為替換算レートの影響やのれんの償却、配当金の支払い等に伴い、総資産が前期末比6.9%減の24,439百万円に縮小した一方、自己資本も剰余金の配当や親会社株主に帰属する四半期純損失の計上により同13.6%減の13,072百万円に縮小したことから自己資本比率は53.5%(前期末は57.7%)に低下した。

以上から、上期決算のポイントをまとめると、1)エンターテインメント関連事業における一部製品の前倒し販売(推定15億円程度の増収要因)、2)モバイルデータソリューション事業における為替換算レートの影響(前期比で推定9.5億円程度の減収要因)の2つの特殊要因があったほか、3)エンターテインメント関連事業(ホールシステム)が想定よりも苦戦したことが挙げられるが、全体としてみればおおむね計画どおりに推移したものとみることができる(2)の影響を除けば、堅調であったとの見方もできる)。

なお、2)の為替換算レートの影響については、海外子会社の業績を円ベースに引き直すことにより発生するものであり、本来の業績の動きをゆがめる可能性があることに注意する必要がある。すなわち、海外子会社の業績が伸びたとしても、円高の進行度合いにより、売上高、利益ともに円換算上では縮小した形となってしまう(逆もしかり)。特に、海外子会社のセレブライトについては、同社の連結業績の伸びを大きくけん引しており、粗利益率も高い事業であることから、売上高の伸び(成長性)や収益性に及ぼす影響が大きい。したがって、為替相場の変動が激しい局面においては、為替相場の影響を割り引いて判断することや、後述するように、海外子会社の業績の推移(米ドルベース)もフォローする必要がある。

事業別の業績は以下のとおりである。

a)モバイルデータソリューション事業は、売上高が前年同期比5.2%減の5,475百万円、セグメント利益が同85.0%減の24百万円と減収減益となった。上期計画(売上高)に対する達成率も95.9%と未達であった。そのうち、MLCの売上高は1,235百万円(上期計画比69.4%)、フォレンジックの売上高が4,240百万円(上期計画比107.8%)となっており、フォレンジックが上振れした一方、MLCが大きく出遅れた。もっとも、前述したように、為替換算レートの影響が(会計上の)業績の縮小要因となっており、当事業を展開しているセレブライト単体の売上高(米ドルベース)では、前年同期比6.1%増の50,507千ドルとフォレンジックを軸に伸びていることに注目すべきである(ただ、MLCは米ドルベースでも減収)。

なお、MLCが低調であったのは、見込んでいた大手キャリア向けの案件が見送りになったことが大きく影響したようだ。一方、世界的に需要が拡大しているフォレンジックは、前期における拠点増設も奏功して大きく拡大した。南米が大きく伸びたことに加えて、安全保障等への関心が高まる欧州でも好調に推移している。

また、損益面では、販売拠点や研究開発人員の増加により固定費が増えたことで大きく減益となったが、固定費の増加は想定内とみられる。

b)エンターテインメント関連事業は、売上高が前年同期比3.8%減の4,826百万円、セグメント利益が同18.4%減の530百万円と減収減益となった。ただ、上期計画(売上高)に対する達成率では142.3%と大きく超過している。市場環境の低迷が続くなかで、パチンコホールの投資意欲の冷え込み等により、ホールシステムが想定以上に苦戦したが、遊技機部品の販売時期の変更(前倒し販売)により、全体としては大きく上振れた。また、前期に発生した貸倒引当済の債権の回収については、前期ほどの回収には至らず、それも減益要因となっている。

c)その他事業(M2M、ゲームコンテンツ、新規等)は、売上高が前年同期比50.4%増の972百万円、セグメント損失が238百万円(前年同期は241百万円の損失)と大幅な増収ながらわずかな損失幅の縮小にとどまった。上期計画(売上高)に対する達成率は108.4%と超過した。

M2M事業は、前期に買収したBacsoftが期初から寄与したことに加えて、M2M通信機器が施設管理向け及びセキュリティ向けに順調に伸びたことや販売前倒しの影響もあって大きく伸長した。ただ、Bacsoftが展開するIoTソリューションについては、まだ実証実験段階にあるものが多く、本格的な業績貢献には至っていないようだ。損益面では、Bacsoftの販管費の上乗せやのれん償却費(約100百万円)の発生により損失幅が拡大した。

ゲームコンテンツ事業は、前期販売を開始したタイトルの一部が好調に推移したことで増収を確保し、損益面でも改善(損失幅の縮小)を図った。

一方、AR、VR、新規等は、まだ設計・開発段階にあり、開発の本格化や組織強化などに向けた先行開発費用が膨らんだ。AR技術を生かしたソリューション開発やVR向けゲームコンテンツ開発などに取り組んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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