ウィルグループ Research Memo(5):17/3期通期は増収増益の見通し
[16/12/19]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
(1) 2017年3月期の業績見通し
ウィルグループ<6089>の2017年3月期の連結業績は、売上高が前期比26.6%増の57,000百万円、営業利益が同11.9%増の1,600百万円、経常利益が同9.6%増の1,610百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.8%増の850百万円と期初計画を据え置いており、連続で過去最高を更新する見通しとなっている。
第2四半期までの進捗率を見ると、売上高で48.9%、営業利益で36.9%となっている。営業利益の進捗率が低いように見えるが、既述のように第1四半期は教育研修費や採用費などの費用が偏り、利益水準が低くなるためであり、第2四半期の収益水準が第3四半期以降も続けば計画の達成は十分可能な水準となっている。足元の市場環境に関しては、上期からの旺盛な需要が継続しており、今後市場環境が急変しない限りは会社計画の達成は十分可能と弊社では見ている。
なお、通期の営業利益率は前期の3.2%から2.8%に、EBITDAも3.8%から3.6%にそれぞれ低下するが、これは人材投資や情報化投資を積極的に進めており、固定費が前期よりも増加することに加えて、収益性がまだ低いその他の事業の売上構成比が介護人材派遣事業を中心として上昇することが要因となっている。
(2)事業セグメント別見通し
a)セールスアウトソーシング事業
セールスアウトソーシング事業の売上高は前期比13.5%増の19,700百万円を見込む。携帯ショップや家電量販店では、新規商材の増加や料金プランの多様化などにより、ショップ店員の販売スキルが今まで以上に求められるようになっており、「ハイブリッド派遣」を強みとした同社のインストアシェアもさらに拡大するものと予想される。また、第4四半期には前々期に獲得したような高採算の業務請負案件を受注できる可能性もある。同案件については計画に織り込んでいないため、受注が獲得できれば上乗せ要因となる。また、アパレル業界や官公庁向けなどの市場開拓についても継続して進めていく予定となっており、人材サービス事業だけで前期比10%程度の増収を見込んでいる。クリエイティブバンクについてはIT系企業からの家電量販店などでのプロモーションイベントや法人向けソリューションセミナーなどの受注が堅調に推移する見込みであり、増収増益に寄与するものと予想される。
b)コールセンターアウトソーシング事業
コールセンターアウトソーシング事業の売上高は前期比15.4%増の11,470百万円を見込む。スマートフォンなどの操作説明、サービス説明を行うコールセンターのオペレーター需要が堅調に推移するなかで、インストアシェアの拡大を進めていく。また、信託銀行やクレジットカード会社など金融業界向けの受注獲得も強化していく。同事業に占める金融業界向けの売上比率はまだ数%程度にとどまるが、直接受注案件となるため収益性も高く、今後、売上構成比が上昇してくれば収益率も向上していくものと予想される。
c)ファクトリーアウトソーシング事業
ファクトリーアウトソーシング事業の売上高は前期比20.4%増の12,460百万円を見込む。事業拠点拡大による既存顧客との取引拡大、新規顧客開拓の効果が下期も続く見通しで、食品業界や物流業界向けをけん引役として高成長が見込まれる。なお、営業拠点については既存顧客の横展開が進むことから、前期の16拠点から今期は19拠点、来期は25拠点と積極的に拡大していく計画となっている。
d)その他の事業
その他の事業の売上高は前期比81.0%増の13,360百万円を見込んでいる。増収額としては約60億円となる。介護人材派遣事業の高成長が見込まれるほか、オフィス派遣やNET jinzai bankサービス、ALT派遣なども増収が続く見通し。また、海外事業もOriental Aviation International Pte.Ltd.他2社の業績フル寄与で高成長が見込まれる。
(3)中期経営計画について
同社は、期初に2017年3月期を初年度とする4ヶ年の中期経営計画「Will Vision 2020」を発表した。基本方針としては、2020年3月期に向けて「WILLビジョン」の達成を目指していく。「WILLビジョン」とは、「Working(働く)」「Interesting(遊ぶ)」「Learning(学ぶ)」「Life(暮らす)」の各事業領域において、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になることを指している。
2020年3月期の業績目標としては、売上高で1,000億円、営業利益で40億円を掲げた。2016年3月期実績と比較すると売上高で約2.2倍、営業利益で約2.8倍となり、年平均成長率で見れば売上高で22%増、営業利益で29%増となり、意欲的な目標となっている。
同社では中期経営計画においての重点戦略目標として、以下の3点を挙げている。
a)現時点の主要3事業で業界No.1を目指す
セールスアウトソーシング事業、コールセンターアウトソーシング事業、ファクトリーアウトソーシング事業において、それぞれ業界No.1の売上規模を目指していく。ファクトリーアウトソーシング事業に関しては市場の裾野が広いため、食品製造業分野でNo.1を目指す格好となる。目標を実現するための戦略としては、同社グループの強みであるハイブリッド派遣による「インストアシェア拡大」、営業拠点の拡大や未開拓エリアへの進出による「エリア拡大」、アパレル、金融及び物流業界への進出、RPO(採用代行)事業の展開並びにM&Aによる「関連事業領域の多角化」の3つの施策を推進していく方針だ。営業拠点に関しては、前期末の63拠点から2020年3月期に105拠点まで拡大する計画となっている。
b)新たに3つの事業を柱として確立
主要3事業に加えて、今後大きな成長が見込まれる3つの事業を拡大していく。具体的には「介護人材派遣事業」「インターネット・IoT分野における経営幹部の人材紹介事業(NET jinzai bankサービス)」「海外の人材サービス事業」となる。
なかでも、介護人材派遣事業については潜在需要が旺盛なこともあり、今後積極的に拡大していく方針となっている。厚生労働省の推計によれば、介護市場における人材の需給ギャップは年々拡大し、2025年度には37.7万人の人材が不足する。これは業務内容と比較して得られる報酬が少ないことが要因の1つと考えられている。介護施設などの現場では介護士や介護ヘルパーの離職率も高く、新たな人材を採用するための穴埋め期間として、あるいは介護士等の業務負担を軽減するためのサポートスタッフとして、介護人材派遣サービスの需要が拡大していくと予想されており、同社では未経験者も含めて人材を集め、介護施設等にサービス提供していく考えだ。
同社では今後2〜3年かけて営業拠点網を現状の30拠点から50拠点まで拡大し、その後に拠点ごとの稼働率を高め、収益性を向上していく戦略だ。収益性向上のポイントとなるのは、稼働率の上昇と派遣スタッフの定着率向上の2点となる。このうち定着率向上については、ハイブリッド派遣の強みが生かせると同社では考えている。フィールドサポーターを置くことで、派遣スタッフのフォローアップも常時可能となるためだ。当面は先行投資期間となるため、利益面での寄与は期待できないものの、50拠点を超えてからは収益性が向上し、利益貢献度も大きくなると予想される。
また、「NET jinzai bank」サービスについては、インターネット、IoT分野のベンチャー企業が増加し、IPOを目指す企業が増えるなかで、経営幹部の人材紹介ニーズも増加傾向にあるなど市場は追い風が吹いている。同事業に関しては、業界に精通するキャリアコンサルタントの育成が重要と考えており、同人材の育成を進めながら事業を拡大していく考えだ。
海外の人材サービス事業に関しては、2011年に初進出して以降、M&Aによる展開を進めている。今後も、ASEAN地域での市場拡大を目指すため、M&Aを活用した事業規模の拡大を目指していく方針となっている。
c)人材サービス以外の事業分野で一定規模の事業を創出
中期経営計画後の成長を見据えて、人材サービス事業と親和性のある周辺事業領域において、ベンチャーキャピタル「ウィルグループファンド投資事業有限責任組合」を通じたベンチャー投資を行っていくほか、M&Aやマイナー出資、アライアンス、社内発の新規事業の創出などに取り組んでいく。なお、「ウィルグループファンド投資事業有限責任組合」での投資額の上限は3億円としており、2016年9月までに8社に対して投資を実行している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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(1) 2017年3月期の業績見通し
ウィルグループ<6089>の2017年3月期の連結業績は、売上高が前期比26.6%増の57,000百万円、営業利益が同11.9%増の1,600百万円、経常利益が同9.6%増の1,610百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同22.8%増の850百万円と期初計画を据え置いており、連続で過去最高を更新する見通しとなっている。
第2四半期までの進捗率を見ると、売上高で48.9%、営業利益で36.9%となっている。営業利益の進捗率が低いように見えるが、既述のように第1四半期は教育研修費や採用費などの費用が偏り、利益水準が低くなるためであり、第2四半期の収益水準が第3四半期以降も続けば計画の達成は十分可能な水準となっている。足元の市場環境に関しては、上期からの旺盛な需要が継続しており、今後市場環境が急変しない限りは会社計画の達成は十分可能と弊社では見ている。
なお、通期の営業利益率は前期の3.2%から2.8%に、EBITDAも3.8%から3.6%にそれぞれ低下するが、これは人材投資や情報化投資を積極的に進めており、固定費が前期よりも増加することに加えて、収益性がまだ低いその他の事業の売上構成比が介護人材派遣事業を中心として上昇することが要因となっている。
(2)事業セグメント別見通し
a)セールスアウトソーシング事業
セールスアウトソーシング事業の売上高は前期比13.5%増の19,700百万円を見込む。携帯ショップや家電量販店では、新規商材の増加や料金プランの多様化などにより、ショップ店員の販売スキルが今まで以上に求められるようになっており、「ハイブリッド派遣」を強みとした同社のインストアシェアもさらに拡大するものと予想される。また、第4四半期には前々期に獲得したような高採算の業務請負案件を受注できる可能性もある。同案件については計画に織り込んでいないため、受注が獲得できれば上乗せ要因となる。また、アパレル業界や官公庁向けなどの市場開拓についても継続して進めていく予定となっており、人材サービス事業だけで前期比10%程度の増収を見込んでいる。クリエイティブバンクについてはIT系企業からの家電量販店などでのプロモーションイベントや法人向けソリューションセミナーなどの受注が堅調に推移する見込みであり、増収増益に寄与するものと予想される。
b)コールセンターアウトソーシング事業
コールセンターアウトソーシング事業の売上高は前期比15.4%増の11,470百万円を見込む。スマートフォンなどの操作説明、サービス説明を行うコールセンターのオペレーター需要が堅調に推移するなかで、インストアシェアの拡大を進めていく。また、信託銀行やクレジットカード会社など金融業界向けの受注獲得も強化していく。同事業に占める金融業界向けの売上比率はまだ数%程度にとどまるが、直接受注案件となるため収益性も高く、今後、売上構成比が上昇してくれば収益率も向上していくものと予想される。
c)ファクトリーアウトソーシング事業
ファクトリーアウトソーシング事業の売上高は前期比20.4%増の12,460百万円を見込む。事業拠点拡大による既存顧客との取引拡大、新規顧客開拓の効果が下期も続く見通しで、食品業界や物流業界向けをけん引役として高成長が見込まれる。なお、営業拠点については既存顧客の横展開が進むことから、前期の16拠点から今期は19拠点、来期は25拠点と積極的に拡大していく計画となっている。
d)その他の事業
その他の事業の売上高は前期比81.0%増の13,360百万円を見込んでいる。増収額としては約60億円となる。介護人材派遣事業の高成長が見込まれるほか、オフィス派遣やNET jinzai bankサービス、ALT派遣なども増収が続く見通し。また、海外事業もOriental Aviation International Pte.Ltd.他2社の業績フル寄与で高成長が見込まれる。
(3)中期経営計画について
同社は、期初に2017年3月期を初年度とする4ヶ年の中期経営計画「Will Vision 2020」を発表した。基本方針としては、2020年3月期に向けて「WILLビジョン」の達成を目指していく。「WILLビジョン」とは、「Working(働く)」「Interesting(遊ぶ)」「Learning(学ぶ)」「Life(暮らす)」の各事業領域において、期待価値の高いブランディングカンパニーを創出し、各領域においてNo.1の存在になることを指している。
2020年3月期の業績目標としては、売上高で1,000億円、営業利益で40億円を掲げた。2016年3月期実績と比較すると売上高で約2.2倍、営業利益で約2.8倍となり、年平均成長率で見れば売上高で22%増、営業利益で29%増となり、意欲的な目標となっている。
同社では中期経営計画においての重点戦略目標として、以下の3点を挙げている。
a)現時点の主要3事業で業界No.1を目指す
セールスアウトソーシング事業、コールセンターアウトソーシング事業、ファクトリーアウトソーシング事業において、それぞれ業界No.1の売上規模を目指していく。ファクトリーアウトソーシング事業に関しては市場の裾野が広いため、食品製造業分野でNo.1を目指す格好となる。目標を実現するための戦略としては、同社グループの強みであるハイブリッド派遣による「インストアシェア拡大」、営業拠点の拡大や未開拓エリアへの進出による「エリア拡大」、アパレル、金融及び物流業界への進出、RPO(採用代行)事業の展開並びにM&Aによる「関連事業領域の多角化」の3つの施策を推進していく方針だ。営業拠点に関しては、前期末の63拠点から2020年3月期に105拠点まで拡大する計画となっている。
b)新たに3つの事業を柱として確立
主要3事業に加えて、今後大きな成長が見込まれる3つの事業を拡大していく。具体的には「介護人材派遣事業」「インターネット・IoT分野における経営幹部の人材紹介事業(NET jinzai bankサービス)」「海外の人材サービス事業」となる。
なかでも、介護人材派遣事業については潜在需要が旺盛なこともあり、今後積極的に拡大していく方針となっている。厚生労働省の推計によれば、介護市場における人材の需給ギャップは年々拡大し、2025年度には37.7万人の人材が不足する。これは業務内容と比較して得られる報酬が少ないことが要因の1つと考えられている。介護施設などの現場では介護士や介護ヘルパーの離職率も高く、新たな人材を採用するための穴埋め期間として、あるいは介護士等の業務負担を軽減するためのサポートスタッフとして、介護人材派遣サービスの需要が拡大していくと予想されており、同社では未経験者も含めて人材を集め、介護施設等にサービス提供していく考えだ。
同社では今後2〜3年かけて営業拠点網を現状の30拠点から50拠点まで拡大し、その後に拠点ごとの稼働率を高め、収益性を向上していく戦略だ。収益性向上のポイントとなるのは、稼働率の上昇と派遣スタッフの定着率向上の2点となる。このうち定着率向上については、ハイブリッド派遣の強みが生かせると同社では考えている。フィールドサポーターを置くことで、派遣スタッフのフォローアップも常時可能となるためだ。当面は先行投資期間となるため、利益面での寄与は期待できないものの、50拠点を超えてからは収益性が向上し、利益貢献度も大きくなると予想される。
また、「NET jinzai bank」サービスについては、インターネット、IoT分野のベンチャー企業が増加し、IPOを目指す企業が増えるなかで、経営幹部の人材紹介ニーズも増加傾向にあるなど市場は追い風が吹いている。同事業に関しては、業界に精通するキャリアコンサルタントの育成が重要と考えており、同人材の育成を進めながら事業を拡大していく考えだ。
海外の人材サービス事業に関しては、2011年に初進出して以降、M&Aによる展開を進めている。今後も、ASEAN地域での市場拡大を目指すため、M&Aを活用した事業規模の拡大を目指していく方針となっている。
c)人材サービス以外の事業分野で一定規模の事業を創出
中期経営計画後の成長を見据えて、人材サービス事業と親和性のある周辺事業領域において、ベンチャーキャピタル「ウィルグループファンド投資事業有限責任組合」を通じたベンチャー投資を行っていくほか、M&Aやマイナー出資、アライアンス、社内発の新規事業の創出などに取り組んでいく。なお、「ウィルグループファンド投資事業有限責任組合」での投資額の上限は3億円としており、2016年9月までに8社に対して投資を実行している。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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