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テクマトリックス Research Memo(6):労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造、提供

注目トピックス 日本株
■中期経営計画

テクマトリックス<3762>が2016年3月期に発表した中期経営計画「TMX3.0」では、3ヶ年計画の基本方針として「従来のIT産業の労働集約的な請負型ビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する『次世代のITサービスクリエーター』、『次世代のITサービスプロバイダー』への変貌を継続する」としている。以下、その事業戦略とオペレーション戦略について、2017年3月期第2四半期の進捗を検証する。

(1)事業戦略

1)クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進
同社では、クラウド事業領域として、既にリリースから数年を経過し黒字化したCRM分野と、医療分野、及びインターネットサービス分野に集中し、クラウドサービス化を進めている。

以下、同社クラウド関連の個別戦略における進捗を検証する。

・クラウド事業による収益貢献(医療クラウドの黒字化実現)
中期計画期間中は医療クラウドの黒字化を目標としている。第1四半期において「NOBORI」の受注が遅れ、売上計上が計画値を下回った。しかし、「NOBORI」の契約施設数は9月末時点で累計約510施設となり、期末時点目標の600施設は達成可能としている。期末時点の施設数が目標を達成すれば、おのずと2017年3月期のブレークイーブン達成、2018年3月期以降も黒字化が続くものと思われる。なお、CRM分野の「FastCloud」は過去数年を経過し、現在は順調に利益貢献している。インターネットサービス分野では、まだクラウドサービス化の規模が小さく影響度が少ない。

・クラウド事業のプラットフォーム化(多角化)
「NOBORI」を医療分野向けサービス提供のプラットフォームとした「NOBORI-PAL」で、一般患者を最終顧客と想定したBtoBtoC(Business to Business to Consumer:企業の対個人消費者ビジネスを手伝うビジネス)へ向けたサービス(検査予約サービスなど)の拡充を図っており、順調な進捗である。「NOBORI-PAL」サービスについては、周辺領域のパートナー各社からサービス提供が増加している。前記「NOBORI」契約施設数の拡大と相まって、多くの中小医療機関ユーザーを獲得して医療クラウドへの参入障壁を確立できれば、同社の大きな収益源になることが期待できる。

・海外(アジア)でのクラウド事業の確立
医療分野で中国に合弁会社を設立し、北京大学と病理分野で提携した。CRM分野でもASEANトランス・コスモス(タイ)との協業を開始。アジアを中心とした海外でのクラウド事業展開をスタートしているが、いずれも事業として実を得るまでには、まだ多少は時間を要するものと思われる。

・その他
クラウド運用の安定化、設備投資の継続により、運用技術は飛躍的に向上・高品質化している。ハイパーコンバージドソリューション「VCE VxRail」、最新ユニファイドストレージ「Unity(ユニティ)」、沖縄クロス・ヘッドの「nas2cloud Plus」など、各種仮想化技術の戦略的応用(クラウド・ファーストの実践)についても順調に成果を出している。

2)セキュリティ&セイフティの追求
セキュリティ&セイフティサービスの強化は、クラウドサービスと表裏一体である。クラウドは、クライアントにとっては、大切なデータを他人に預けるという不安もある。そこで、クライアントの情報の漏えいを防ぎ、適切に管理する「セキュリティ&セイフティ」が必要になる。クラウドサービスの受注が拡大すれば、セキュリティ&セイフティサービスも拡大するというビジネスモデルと考えられる。

以下、セキュリティ&セイフティに関連する個別戦略の進捗を検証する。

・サイバーセキュリティ対策の高度化対応とワンストップ・サービス化
「Swivel PINsafe」(英国Swivel Secure Ltd.のトークン不要二要素認証ソリューション)、「ProofPoint」(米国Proofpoint Inc.の次世代型メールセキュリティソリューション)、「Tanium Endpoint Platform」(米国Tanium Inc.のネットワーク端末脅威対策プラットフォーム製品)、「∴TRINITY(トリニティ)for BIG-IP マネージドサービス」(ネットワーク運用・監視サービス)の各ソリューション・サービスの販売・提供を開始し、サイバーセキュリティ対策におけるサービスラインナップが拡充した。前述のように、政府・自治体のセキュリティ強靭化対策などが追い風となって、今後は大いに拡販が期待される。

・設計、構築、保守、運用・監視サービス、自動化のバリューチェーン実現
NOC(ネットワークオペレーションセンター)/SOC(セキュリティオペレーションセンター)による保守・運用で、製品販売に加えた保守・運用サービス体制の拡充を行い、獲得案件に対する一気通貫のバリューチェーンが確立した。

・IoT(Internet of Things)時代における組込みソフトウェアの機能安全実現
円高による投資意欲の陰りが懸念されるが、あくまで一時的なものであり、長期的にはテストツール・分析ツールなどの拡販は伸長するものと予想される。今日、組込みソフトウェアと言えば、情報家電、カーナビ、OA機器やスマートフォンなどだけでなく、自動車、医療機器、ロボットなど、より高度な安全性やセキュリティが求められる機器が急増している。各業界における規格準拠(自動車ISO26262、電気・電子機器関連IEC61508、医療機器IEC62304、など)のコンサルティングのニーズもある。

(2)オペレーション戦略

上記の中核的事業戦略を効果的に実現するために、以下の定性的なオペレーション戦略を策定し推進している。直ちに売上高や利益などの業績に直結する事業戦略だけでなく、長期的な事業推進を行っていく基盤づくりを行うという点で、同社の堅実性が表れている。以下、個別戦略の進捗を検証する。

1)コストダウンによる高収益化
オフショア開発の積極的活用による原価低減については、従来から実施していたベトナムでのオフショア開発の取組みに加え、中国でのオフショア開発も開始した。本社機能の集約によるオペレーションの効率化については、本社統合、名古屋営業所、仙台営業所の移転、大阪支店を西日本支店と改称して移転することで実現した。人員の単調増加を要求しないビジネスモデルへの転換については、ストックビジネスの拡大(前記ストック比率の向上)で進捗している。

2)パートナーとのアライアンス強化
CRM分野で、日本ユニシスとFastシリーズの販売代理店契約を締結した。

医療分野では、ソフトバンク(株)と提携し、遠隔病理プラットフォームの提供を開始。加えて、北京大学とも病理分野で業務連携を実現した。海外事業に関しては、まだ業績に貢献するまでは多少時間を要するかもしれないが、将来的な可能性を探るスタートとなった。なお、これは第3四半期のトピックスであるが、同社はインドのDocsApp社に資本参加したことを発表した。DocsApp社は、インド国内でスマートフォン等によるオンラインの医療診療サービス(自動問診、医療相談など)を低価格で提供するベンチャー企業である。この事業連携は、日本国内でのスマートフォン活用の医療領域でのビジネス展開や、優秀なIT人材を擁するインドのITサービス産業との関係づくりなど、将来的に大きな可能性を秘めている。

3)直販力強化、官公庁需要の深耕
自治体向けセキュリティ関連案件は大手システム・インテグレーター等経由の間接受注で案件獲得できているが、直接入札は対前期比で減少した。しかし同社は、今後とも直接受注を拡大すべく、体制面での強化を図るとしている。

4)ダイバーシティの推進による戦力強化
同社は人数の公表はしていないが、新卒採用で女性、外国籍者、および障害者の採用拡大を行い、多様な人材によって社内の活性化を推進するとしている。

5)企業集団としてのブランドの強化
9月に同社Webサイトのリニューアルを実施し、会社紹介映像などを作成している。また、泉岳寺の駅構内に同社広告を掲載している。同社の事業は、基本的にはBtoB(Business to Business:企業間の取引関係)の形態が主体である。しかし、今後の事業拡大には、知名度及び企業イメージ向上も必須として広告宣伝によるブランド強化を図っている。

(3)トピックス

2017年3月期第2四半期決算説明会では、「テクマトリックス CRM FORUM 2017」が 2017年2月24日(金)に東京、同3月3日(金)に大阪で開催されることが発表された。これは、日本最大級のコンタクトセンター関係者向けのイベントで、同社のCRMソリューション技術が紹介される。今回で11回目となり、2,000人以上の来場を見込んでいる。このイベントは、クライアントの獲得はもとより、新しいアライアンス先の発掘にもつながっているようだ。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)



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