IXナレッジ Research Memo(5):17/3期2Qは減収ながら営業増益を確保
[16/12/21]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
(1) 2017年3月期第2四半期業績の概要
アイエックス・ナレッジ<9753>の2017年3月期第2四半期累計期間(2016年4−9月)の業績は、売上高が前年同期比1.5%減の8,632百万円、営業利益は同7.7%増の222百万円、四半期純利益は同1.7%減の162百万円となり、減収ながら営業増益を確保し、売上高、各利益ともに会社計画(売上高8,492百万円、営業利益129百万円、四半期純利益103百万円)を上回った。
売上高が前年同期比で1.5%減の微減収になったのは、前期から継続しているメガバンク向け次期システム開発がピークアウトしたことと、大容量ストレージ向け組込開発の案件縮小などのマイナス要因があったことが主要因。売上原価は売上高の減少に伴い外注費が減少したことなどから、同2.2%減の7,234百万円へ減少した。対照的に、売上総利益は同2.3%増の1,398百万円と増益、売上総利益率は、前年同期に比べ0.6ポイント上昇し16.2%となった。これは、担当取締役直轄のPMO室の設置しプロジェクト支援や見積り審査のチェック強化などにより不採算案件が大幅に減少※したことや収益構造を変革するという経営方針のもとで選別受注を推進したことにより収益性が改善したことがプラス寄与したためだ。一方、販管費は1,175百万円(同1.3%増)とほぼ前年並みの水準に抑えることに成功した。これらの結果、営業利益は増益を確保し、営業利益率は前年同期の2.4%から2.6%へ0.2ポイント改善した。
※2015年9月期上期の不採算案件数は26件で42百万円の赤字であったが、今上期は14件2百万円の赤字へ減少、実質的に赤字ゼロとなった。
会社計画対比でみると、売上高が計画を139百万円上回ったのは、メガバンク向けの開発案件が想定していたほど減少しなかったことに加えて、証券、保険向けの受注が好調に推移したことが要因。一方、営業利益が93百万円計画を上回った要因として、1)売上高の上振れに伴う利益増と、前期に発生した不採算案件が想定の範囲内で収まったために、売上総利益が39百万円計画を上回ったこと、2)販管費が、経費から資産計上への変更、販管部門要員によるトラブル案件支援、上期から下期への時期ズレ、などの要因により計画を53百万円下回ったことを挙げることができる。
(2)サービス品目別及び主要ユーザー別の動向
サービス品目別の売上高の状況をみると、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスでは、前期から継続しているメガバンク向け次期システム開発がピークアウトしたことや、大容量ストレージ向け組込開発の案件縮小などのマイナス要因があったものの、証券や生命保険向けの受注が堅調に推移した。これらのことから、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスの売上高は前年同期比0.2%減の7,384百万円となりほぼ横ばいに止まった。内訳をみると、コンサルティングサービスが同86百万円増の501百万円へ増加した一方で、システム開発は同100百万円減の6,883百万円となった。
一方、システムの保守・運用のシステムマネージメントサービスは、銀行システムにおける基盤・環境構築の受注が減少したことなどにより、同8.1%減の1,240百万円へ減少を余儀なくされた。また、商品販売の売上高も同59.0%減の6百万円と低調であった。
受注動向についてみると、商品他を除いた受注高は前年同期比8.2%減の8,249百万円へ減少。内訳をみると、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスの受注高は同8.9%減の7,129百万円となったほか、システムマネージメントサービスの受注高も同3.3%減の1,119百万円へ減少した。2016年9月末の受注残高は、前年同期末比13.2%減の4,234百万円(コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービス:3,513百万円[同13.3%減]、システムマネージメントサービス:718百万円[同11.1%減])となった。
主要顧客の動向をみると、NTTデータグループのほか、フコクグループやソニー損害保険などの生損保の売上高が拡大した。一方、みずほフィナンシャルグループ<8411>向けの売上高は次期システムの開発がピークアウトしたことで減少に転じたほか、日立グループ向けも大容量ストレージ向け組込開発の案件縮小により減少を余儀なくされた。
(3)財務状態
・貸借対照表関係
貸借対照表をみると、2016年9月末における総資産は8,342百万円となり、前期末に比べ477百万円減少した。これは流動資産が前期末に比べ479百万円減少したことが主要因。現金及び預金が334百万円増加したプラス要因があったものの、有価証券の減少290百万円、受取手形及び売掛金の減少250百万円、仕掛品の減少241百万円をといったマイナス要因をカバーできなかったためだ。
負債合計は前期末に比べ460百万円減少して4,636百万円となった。内訳をみると、流動負債は、主に受注損失引当金が310百万円減少したことにより、前期末に比べ386百万円減少した。一方、固定負債も同74百万円減少したが、これは主として長期未払金の減少45百万円と長期借入金の減少30百万円による。
純資産は3,705百万円となり、前期末に比べ16百万円減少した。これは、自己株式の減少による増加295百万円、当期純利益計上による利益剰余金の増加55百万円のプラス要因があったものの、資本剰余金の減少376百万円があったためだ。
・キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フローの状況をみると、2016年9月末における現金及び現金同等物は前期末に比べ44百万円増加し3,245百万円となった。営業キャッシュ・フローは、受注損失引当金の減少310百万円、法人税等の支払121百万円のマイナス要因があったものの、税引前四半期純利益の計上242百万円、売上債権の減少250百万円、たな卸資産の減少241百万円等のプラス要因でカバーし、290百万円の収入となった。一方、投資キャッシュ・フローは26百万円支出となった。投資事業組合からの分配による収入6百万円があったものの、有価証券の取得による支出21百万円、固定資産の取得による支出12百万円があったことによる。また、財務キャッシュ・フローも218百万円の支出となった。これは、主に配当金の支払額106百万円、自己株式の取得による支出80百万円、長期借入金の返済による支出30百万円によるものだ。
・経営指標
健全性をあらわす自己資本比率は44.4%となり、前期末に比べ2.2ポイント上昇したほか、流動比率も前期末の274.0%から301.7%へ上昇した。一方、収益性をあらわす営業利益率は不採算案件の減少により2.6%と前年同期に比べ0.2ポイント改善した。
(4) 2017年3月期見通し
2017年3月期業績については、第2四半期累計業績が売上高、利益ともに計画を上回ったものの、受注高、受注残高が前年同期に比べ減少していることを踏まえて期初計画(売上高18,016百万円、営業利益656百万円、当期純利益475百万円)を据え置いた。
同社では下期の重要取り組み事項として、1)上期に減少したストレージ開発に代わる車載、映像センサーなど組込み市場の新規案件の開拓を図る、2)足元受注が好調となっている生損保、第三者検証サービスへシフトする、3)4月に設置したPMO室によるチェック強化とプロジェクト支援を行うことで大型不採算案件ゼロに向けての体制を徹底する、4)受注拡大の体制の構築を図るためにキーマンとなるプロジェクトマネジャークラスの人材を育成することの4点を挙げており、注力する方針。
サービス品目別の見通しについてみると、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスでは、メガバンク向けは次期システムの開発がピークアウトしたものの、課題は山積みとなっているため、上期に見られたような大きなマイナスはなく、堅調に推移する見込み。一方、上期に受注好調であった生保、損保向けは好調が続くと予想される。ただ、上期に減少を余儀なくされた組込み開発については、車載関連へのシフトが進むかどうかがポイントで、今後の受注動向次第の状況であるようだ。
システムマネージメントサービスは、上期と同様に2016年4月の組織改革の効果により、新たなサービス領域を含めた受注の獲得、売上高の拡大を目指す計画で、今後の受注動向次第である。
弊社では2017年3月期業績の会社計画達成可否について、売上高は上期の受注残高がコンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービス、システムマネージメントサービスの両方が減少していることを考慮すると、下期の受注動向次第であるものの、ややハードルが高いと見る。対照的に、営業利益については前年下期に不採算案件が発生し受注損失引当金を積み増したマイナス影響があったことと、今上期はPMO室が機能して不採算案件を実質的にゼロにコントロールできたこととを考慮すると、計画達成の可能性は高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )
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(1) 2017年3月期第2四半期業績の概要
アイエックス・ナレッジ<9753>の2017年3月期第2四半期累計期間(2016年4−9月)の業績は、売上高が前年同期比1.5%減の8,632百万円、営業利益は同7.7%増の222百万円、四半期純利益は同1.7%減の162百万円となり、減収ながら営業増益を確保し、売上高、各利益ともに会社計画(売上高8,492百万円、営業利益129百万円、四半期純利益103百万円)を上回った。
売上高が前年同期比で1.5%減の微減収になったのは、前期から継続しているメガバンク向け次期システム開発がピークアウトしたことと、大容量ストレージ向け組込開発の案件縮小などのマイナス要因があったことが主要因。売上原価は売上高の減少に伴い外注費が減少したことなどから、同2.2%減の7,234百万円へ減少した。対照的に、売上総利益は同2.3%増の1,398百万円と増益、売上総利益率は、前年同期に比べ0.6ポイント上昇し16.2%となった。これは、担当取締役直轄のPMO室の設置しプロジェクト支援や見積り審査のチェック強化などにより不採算案件が大幅に減少※したことや収益構造を変革するという経営方針のもとで選別受注を推進したことにより収益性が改善したことがプラス寄与したためだ。一方、販管費は1,175百万円(同1.3%増)とほぼ前年並みの水準に抑えることに成功した。これらの結果、営業利益は増益を確保し、営業利益率は前年同期の2.4%から2.6%へ0.2ポイント改善した。
※2015年9月期上期の不採算案件数は26件で42百万円の赤字であったが、今上期は14件2百万円の赤字へ減少、実質的に赤字ゼロとなった。
会社計画対比でみると、売上高が計画を139百万円上回ったのは、メガバンク向けの開発案件が想定していたほど減少しなかったことに加えて、証券、保険向けの受注が好調に推移したことが要因。一方、営業利益が93百万円計画を上回った要因として、1)売上高の上振れに伴う利益増と、前期に発生した不採算案件が想定の範囲内で収まったために、売上総利益が39百万円計画を上回ったこと、2)販管費が、経費から資産計上への変更、販管部門要員によるトラブル案件支援、上期から下期への時期ズレ、などの要因により計画を53百万円下回ったことを挙げることができる。
(2)サービス品目別及び主要ユーザー別の動向
サービス品目別の売上高の状況をみると、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスでは、前期から継続しているメガバンク向け次期システム開発がピークアウトしたことや、大容量ストレージ向け組込開発の案件縮小などのマイナス要因があったものの、証券や生命保険向けの受注が堅調に推移した。これらのことから、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスの売上高は前年同期比0.2%減の7,384百万円となりほぼ横ばいに止まった。内訳をみると、コンサルティングサービスが同86百万円増の501百万円へ増加した一方で、システム開発は同100百万円減の6,883百万円となった。
一方、システムの保守・運用のシステムマネージメントサービスは、銀行システムにおける基盤・環境構築の受注が減少したことなどにより、同8.1%減の1,240百万円へ減少を余儀なくされた。また、商品販売の売上高も同59.0%減の6百万円と低調であった。
受注動向についてみると、商品他を除いた受注高は前年同期比8.2%減の8,249百万円へ減少。内訳をみると、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスの受注高は同8.9%減の7,129百万円となったほか、システムマネージメントサービスの受注高も同3.3%減の1,119百万円へ減少した。2016年9月末の受注残高は、前年同期末比13.2%減の4,234百万円(コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービス:3,513百万円[同13.3%減]、システムマネージメントサービス:718百万円[同11.1%減])となった。
主要顧客の動向をみると、NTTデータグループのほか、フコクグループやソニー損害保険などの生損保の売上高が拡大した。一方、みずほフィナンシャルグループ<8411>向けの売上高は次期システムの開発がピークアウトしたことで減少に転じたほか、日立グループ向けも大容量ストレージ向け組込開発の案件縮小により減少を余儀なくされた。
(3)財務状態
・貸借対照表関係
貸借対照表をみると、2016年9月末における総資産は8,342百万円となり、前期末に比べ477百万円減少した。これは流動資産が前期末に比べ479百万円減少したことが主要因。現金及び預金が334百万円増加したプラス要因があったものの、有価証券の減少290百万円、受取手形及び売掛金の減少250百万円、仕掛品の減少241百万円をといったマイナス要因をカバーできなかったためだ。
負債合計は前期末に比べ460百万円減少して4,636百万円となった。内訳をみると、流動負債は、主に受注損失引当金が310百万円減少したことにより、前期末に比べ386百万円減少した。一方、固定負債も同74百万円減少したが、これは主として長期未払金の減少45百万円と長期借入金の減少30百万円による。
純資産は3,705百万円となり、前期末に比べ16百万円減少した。これは、自己株式の減少による増加295百万円、当期純利益計上による利益剰余金の増加55百万円のプラス要因があったものの、資本剰余金の減少376百万円があったためだ。
・キャッシュ・フロー計算書
キャッシュ・フローの状況をみると、2016年9月末における現金及び現金同等物は前期末に比べ44百万円増加し3,245百万円となった。営業キャッシュ・フローは、受注損失引当金の減少310百万円、法人税等の支払121百万円のマイナス要因があったものの、税引前四半期純利益の計上242百万円、売上債権の減少250百万円、たな卸資産の減少241百万円等のプラス要因でカバーし、290百万円の収入となった。一方、投資キャッシュ・フローは26百万円支出となった。投資事業組合からの分配による収入6百万円があったものの、有価証券の取得による支出21百万円、固定資産の取得による支出12百万円があったことによる。また、財務キャッシュ・フローも218百万円の支出となった。これは、主に配当金の支払額106百万円、自己株式の取得による支出80百万円、長期借入金の返済による支出30百万円によるものだ。
・経営指標
健全性をあらわす自己資本比率は44.4%となり、前期末に比べ2.2ポイント上昇したほか、流動比率も前期末の274.0%から301.7%へ上昇した。一方、収益性をあらわす営業利益率は不採算案件の減少により2.6%と前年同期に比べ0.2ポイント改善した。
(4) 2017年3月期見通し
2017年3月期業績については、第2四半期累計業績が売上高、利益ともに計画を上回ったものの、受注高、受注残高が前年同期に比べ減少していることを踏まえて期初計画(売上高18,016百万円、営業利益656百万円、当期純利益475百万円)を据え置いた。
同社では下期の重要取り組み事項として、1)上期に減少したストレージ開発に代わる車載、映像センサーなど組込み市場の新規案件の開拓を図る、2)足元受注が好調となっている生損保、第三者検証サービスへシフトする、3)4月に設置したPMO室によるチェック強化とプロジェクト支援を行うことで大型不採算案件ゼロに向けての体制を徹底する、4)受注拡大の体制の構築を図るためにキーマンとなるプロジェクトマネジャークラスの人材を育成することの4点を挙げており、注力する方針。
サービス品目別の見通しについてみると、コンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービスでは、メガバンク向けは次期システムの開発がピークアウトしたものの、課題は山積みとなっているため、上期に見られたような大きなマイナスはなく、堅調に推移する見込み。一方、上期に受注好調であった生保、損保向けは好調が続くと予想される。ただ、上期に減少を余儀なくされた組込み開発については、車載関連へのシフトが進むかどうかがポイントで、今後の受注動向次第の状況であるようだ。
システムマネージメントサービスは、上期と同様に2016年4月の組織改革の効果により、新たなサービス領域を含めた受注の獲得、売上高の拡大を目指す計画で、今後の受注動向次第である。
弊社では2017年3月期業績の会社計画達成可否について、売上高は上期の受注残高がコンサルティング及びシステム・インテグレーション・サービス、システムマネージメントサービスの両方が減少していることを考慮すると、下期の受注動向次第であるものの、ややハードルが高いと見る。対照的に、営業利益については前年下期に不採算案件が発生し受注損失引当金を積み増したマイナス影響があったことと、今上期はPMO室が機能して不採算案件を実質的にゼロにコントロールできたこととを考慮すると、計画達成の可能性は高いと見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 森本 展正 )
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