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イグニス Research Memo(6):「世界にインパクトを与えなければ、気がすまない」が経営理念

注目トピックス 日本株
■沿革及び業績推移

(1)沿革

イグニス<3689>は、2010 年5 月、東京都渋谷区において代表取締役社長の銭こん(金へんに昆)(せんこん)氏によりスマートフォンネイティブアプリの企画・開発・運営・販売を目的として設立された。「世界にインパクトを与えなければ、気がすまない」を経営理念に掲げている。2010 年12 月に提供を開始した「妄想電話」のヒットを皮切りに、「サクサクfor iPhone HD」や「節電♪長持ちバッテリー」など無料ツール系アプリを中心として数々のヒットアプリを生み出し、ダウンロード数やMAUの拡大とともに事業基盤を確立してきた。

特に、2012年5月に1年以上かけて開発を進めてきたチャットアプリ「peep」を休止したことをきっかけに、現在の「小さく産んで大きく育てる」開発方針に切り替え、無料ネイティブアプリに本格的に参入したことが転機となった。特にその時期はスマートフォンアプリの黎明期であり、そこに特化した企業がなかったことや使い勝手のよいアプリが少なかったことも、同社が他社に先駆けて事業基盤を拡大する好機となったと考えられる。

また、代表取締役である銭氏及び代表取締役CTOである鈴木貴明(すずきたかあき)氏による2人体制が、それぞれプロデューサー及びエンジニアとして最前線の現場力を発揮し、素早く的確な経営判断や社員の最大パフォーマンスを引き出すマネジメントを可能としたことも成功した要因に挙げられる。

2013年5月にソーシャルゲーム「神姫覚醒!! メルティメイデン」の提供を開始(2014年9月に売却) すると、同年9月には全巻無料型ハイブリッドアプリの提供も開始し、ゲーム及び非ゲームの領域で広告収入及び課金収入の両方の収益モデルを手掛ける独自のポジショニングを構築した。

2014年2月には、ソーシャルゲームの開発及び運営を目的としてスタジオキングを設立。2014年10月には、次世代SNSの開発を手掛けるALTR THINKを買収するなど、今後の成長戦略の軸となるゲーム及びコミュニケーション分野の強化を図った。

東証マザーズには2014年7月に上場を果たしたが、設立後4年2ヶ月でのスピード上場となった。

(2)過去の業績推移

過去の業績を振り返ると、本格的な業績拡大が始まったのは、「無料ネイティブアプリ」が軌道に乗り始めた2013年9月期からである。「サクサクfor iPhone HD」などのツール系を中心として順調にダウンロード数やMAUを拡大したことで広告収入が大きく伸長した。2014年9月期には「全巻無料型ハイブリッドアプリ」※や「ネイティブソーシャルゲーム」による業績貢献が上乗せされ、成長に拍車がかかった。2015年9月期は、「ぼくとドラゴン」の順調な立ち上がりにより「ネイティブソーシャルゲーム」が大きく伸びたことで増収を確保したが、これまでの小規模アプリ中心から中・大規模アプリの開発への移行を進めるなかで、環境変化の影響が重なったことにより、主力の「無料ネイティブアプリ」が大幅に落ち込んだことから売上構成比が大きく変化した。2016年9月期は、「ネイティブソーシャルゲーム」の更なる拡大により大幅な増収となった。

損益面では、2012年9月期まではチャットアプリ「peep」の開発コストが先行していたことなどが響いて営業赤字が続いていたものの、2013年9月期に無料ネイティブアプリ(広告収入)の拡大により営業黒字に転換すると、限界利益率が極めて高い収益モデル(※14)であることから一気に利益水準が高まった。2014年9月期は株式上場や人員拡充に伴う費用増などにより販管費が増加したものの、売上高の拡大とともに営業利益も大きく伸びた。2015年9月期は、人件費や地代家賃等の固定費が増加するなかで、「無料ネイティブアプリ」や「全巻無料型ハイブリッドアプリ」の売上高が大幅に落ち込んだことから営業損失に陥ったが、2016年9月期は「ネイティブソーシャルゲーム」の拡大により黒字転換を果たした。

財務面では、創業後3期目となる2012年9月期までは債務超過の状況であったが、2013年9月期に営業黒字に転換すると財務基盤も一気に健全化し、2014年9月期には新株発行及び内部留保の積み上げから自己資本比率は74.0%の高い水準へ改善された。2015年9月期は当期純損失の計上、2016年9月期は子会社の買収や開発投資(ソフトウェアの増加)に伴う総資産の増加より低下傾向にあるものの、依然高い水準を維持している。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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