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ケネディクス Research Memo(5):2016年12月期の業績はほぼ計画どおりに堅調に推移

注目トピックス 日本株
■業績動向

1. 業績を見るためのポイント
一般の事業会社の売上高に当たるものが営業収益であり、保有物件を系列REITなどに売却することにより得られる売却収入が大部分を占めている。ただ、売却収入は売却するタイミングにより大きく増減する上、必ずしも利益の伸びと連動するものではないため、業績を見る指標としては適切とは言えない。本業(主に手数料収入で稼ぐ不動産ファンドビジネス)における業績指標としては、営業総利益に注目するのが妥当である。ただ、不動産投資事業における損益は、営業総利益として計上されるもののほかに、特別損益(有形固定資産の売却に伴う損益)として計上されるものがあるため、資金調達に係る支払金利(営業外費用)も合わせて総合的に判断することが必要となる。したがって、総合的な収益力を示す純利益の動きも重要であることは言うまでもない。

なお、ケネディクス<4321>では、アセットマネジメント事業と不動産関連事業の営業総利益を足し合わせたものから、販管費及び一般管理費を控除したものを「ベース利益」として重視しており、同社の安定的な収益力を示す指標となっている。また、不動産投資事業についても、総合的な指標である「不動産投資損益」を開示している。

2. 収益体系
a) アセットマネジメント事業
アセットマネジメント事業は4つの手数料が収益源となっている。特に、受託資産残高に対して毎期、安定的な収益が期待できるアセットマネジメントフィーが同社の収益基盤を支えている。

b) 不動産関連事業
不動産関連事業は、不動産管理業務(プロパティマネジメント等)や不動産を利用した運営業務(サービスオフィス等)による手数料収入が収益源となっている。

c) 不動産投資事業
自己勘定投資による賃貸事業損益や不動産売却損益のほか、匿名組合分配損益(自社運用するREIT投資口からの分配損益等)などが収益源となっている。特に、不動産売却損益は不動産市況の影響を直接受けやすいところに特徴がある。また、前述のとおり、不動産投資事業における損益は、営業総利益として計上されるもののほかに、特別損益として計上されるものがあるため、資金調達にかかる支払金利と合わせて総合的に判断する必要がある。

3. 2016年12月期決算の概要
2016年12月期の業績は、営業収益が前期比12.5%減の22,745百万円、営業利益が同5.8%減の9,530百万円、経常利益が同16.5%増の10,634百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同3.5%増の10,151百万円であった。REIT向けビジネスにより大きく業績を伸ばした前期との比較では、その反動もみられるが、ほぼ計画どおりに堅調に推移したと言える。また、受託資産残高(トータルAUM)も1兆7,030億円(前期末比3.6%増)と着実に伸びている。

営業収益の減収は連結対象不動産(棚卸資産)の売却が一巡したことによるものである。また、営業総利益については、不動産関連事業及び不動産投資事業が増益となったものの、主力のアセットマネジメント事業における物件取得(アクイジションフィー)の大幅な縮小が減益要因となった。もっとも、2つのJ-REITを上場させた2015年12月期のアクイジションフィーとの比較では縮小したものの、2014年12月期の水準は確保している。また、総合的な収益力を示す親会社株主に帰属する当期純利益については、営業外収益の増加(海外資産の連結化に伴う評価益の計上)、営業外費用の減少(ノンリコースローンの平残圧縮による支払金利の削減)、特別損失の縮小(過去投資案件の一掃)などにより増益となっており、同社業績は堅調に推移したと評価してよいだろう。同社が重視しているベース利益についても、アクイジションフィーの大幅な縮小により3,073百万円(前期比20.3%減)と一旦減益となったが、計画どおりの結果である。

一方、受託資産残高(トータルAUM)は、前述のとおり、1兆7,030億円(前期末比3.6%増)となったが、そのうち同社が重視しているベースAUM※の残高も1兆1,725億円(同4.1%増)に増加した。やや緩やかな伸びにとどまったのは、物件取得が難しくなっている外部要因のほか、不動産関連投資において時間を要する開発ファンド(商業施設、ホテル、物流)の比率が高まっていることも影響していると考えられる。また、私募ファンドはしばらく縮小傾向をたどってきたものの、足元では底打ちしており、新規分野(インフラ等)のパイプラインも順調に積み上がっていることから、今後は拡大に転じる可能性が高い。

※同社がメインスポンサーとなっているREIT及び私募ファンド。

財務面では、連結対象不動産の残高(棚卸資産と固定資産の合算)が93,963百万円(前期末比23.3%増)と積み上がったことから総資産が180,412百万円(同5.2%増)と拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより87,624百万円(同5.2%増)に増えたことから、自己資本比率は48.6%と横ばいで推移した。一方、有利子負債残高もノンリコースローン※の増加により76,021百万円(前期末比9.7%増)に膨らんでいるが、平残ベースでは縮小しており、支払金利の削減に寄与した。

※返済の原資となる資産を投資物件等に限定した借入方法である。

4. 2016年12月期における投資実績
不動産投資事業における自己勘定投資については、自己資本の範囲内という方針のもと、約340億円(前期は約376億円)の新規投資を実行した。特徴的と言えるのは、ヘルスケアや商業施設を対象としたREIT向けブリッジファンドやオフィス等を対象としたコアファンド※に加えて、商業施設やホテル、物流施設を対象とした開発ファンド、太陽光発電所を対象としたインフラファンドなど、新規分野への配分比率が高いところである。その結果、多様なアセットクラスによる分散が図られてきた。ただ、開発ファンドへの配分が増えたことで、想定投資期間は3.1年(前期は1.6年)に長期化している。

※安定的なインカムゲインの獲得を目的として長期的な運用を目指すファンドである。

一方、2016年12月末の投資金額総計(投資エクスポージャー)812億円の内訳を見ても、コアファンドやREIT向けブリッジファンドのほか、開発ファンドやインフラファンドの比率が高まっており、特に、開発ファンドの残高が大きく伸びている。なお、約340億円の新規投資を行った一方、既存投資からの回収が約250億円であったことから2016年12月末の投資用現金(投資余力)は約60億円となった。2017年12月期は約490億円の新規投資(回収が約430億円)を予定しており、引き続き、成長市場への重点投資を積極的に行う方針である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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