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ハウスドゥ Research Memo(8):ストック型収益事業を拡大し、全天候型経営への移行を加速

注目トピックス 日本株
■ハウスドゥ<3457>の中長期の成長戦略

日銀による超金融緩和や資材価格の高騰、人手不足などを背景に、東京の不動産価格は上昇し、一部に過熱感が出ている。2016年の首都圏のマンション平均単価は5,490万円と3年連続して5千万円台となった。5千万円を超えたのは、1992年のバブル期以来である。一般世帯の購入可能な単価を4割弱上回っている。不動産研究所調べによると、2016年における首都圏の新築マンション供給戸数は前年比11.6%減の3万5,772戸となった。供給戸数が減少したにもかかわらず、契約率は68.8%と好不調の境目となる70%を下回った。年末の在庫数は、前年比729戸増の7,160戸になり、市況低迷を表す6千戸を上回った。しかし、超低金利のため、値下げなどの売り急ぎは発生していないようだ。

新築マンションが高嶺の花になったことから、需要は中古マンションにシフトした。2016年の首都圏の中古マンションの成約戸数は、前年比6.9%増の3万7,186戸となり、比較可能な1996年以来で初めて中古マンションの成約戸数が新築マンションの供給戸数を上回った。東京23区における新築マンションの分譲価格が6,629万円、前年比1.5%減であったのに対し、中古マンションの価格は10.6%増の5,249万円に上昇した。

日本の人口は、2008年にピークを打ち、減少傾向にある。2016年は、出生数の100万人強に対し死亡数は130万人を超えた。一方、2016年の新設住宅着工は前年比6.4%増の96万7千戸と2年連続して増加した。市場のけん引役は、貸家になる。貸家の新設着工数は、2010年の28万6千戸をボトムに2016年は41万9千戸と8年ぶりに40万戸を超えた。その背景には、2015年1月から始まった相続税の課税強化がある。貸家を建てると土地の評価額が下がり、相続税の節税対策となる。住宅メーカーが営業を活発化しているほか、企業向けの融資が低迷している地銀や信用金庫が低金利でアパートローンの貸出し競争をしている。2016年度の上期(4月−9月)の金融機関による不動産業界向け新規融資額は、前年比16%増の5兆8,943億円とバブル期の1989年度上期の水準を超え、過去最高となった。貸家ブームは三大都市圏だけでなく、地方圏にも広がっている。不動産調査会社(株)タスの調査によると、2016年6月時点のアパートの空室率は、東京23区で約34%、神奈川県では35%を超えた。供給過剰感が高まり、競争力が高いはずの新築アパートでも全室が埋まらない状況がみられる。

不動産市場の活況は、2020年の東京五輪まで続くと予想されていたが、2016年1〜9月の外国人投資家による不動産の売買額は過去最大の5,950億円の売り越しを記録した。価格上昇と円高が、割高感を引き起こしたようだ。

● 新中期経営計画
2016年8月に、同社は2017年6月期を初年度とする新3ヶ年中期経営計画を発表した。ちょうど1年前にも中期経営計画を発表しており、短期間での計画見直しとなった。前中期経営計画の1年目となる2016年6月期の業績は、売上高が前期比18.5%増、経常利益が同2.3倍、期初予想比では売上高が5.6%増、経常利益が47.0%増と計画を大幅に上回った。利益への貢献度で筆頭のフランチャイズ事業は着実な伸びを見せたが、想定以上に好調だったのが不動産売買事業や住宅・リフォーム事業であった。この好業績が、かえって同社に不動産市場の先行きに対する懸念を強める結果となった。前中期経営計画では3年間で経営資源を労働集約型の不動産流通事業、住宅・リフォーム事業、不動産売買事業からストック型ビジネスであるフランチャイズ事業とハウス・リースバック事業にシフトすることを計画していた。新中期経営計画ではこの収益構造改革を加速し、不動産市場が変調をきたしても持続的な成長を可能とする全天候型経営への移行を急ぐ。

新中期経営計画では、最終年度の2019年6月期までの3ヶ年のCAGR(年平均成長率)を、売上高で-2.1%、経常利益で12.9%としている。2017年6月期は、前期の急伸の反動とハウス・リースバック事業の先行投資を強化するため、6〜7%の減収減益を予想している。安定的に積み上がるストックビジネスが事業規模を大きくするに従い、2018年6月期以降は増益傾向に戻ると計画している。売上高経常利益率は、利益が倍増以上となった2016年6月期の6.8%を超え、2019年6月期には10.5%を想定している。

今後3ヶ年で売上高の総額の変動は小さいが、事業別構成比は大きく変わることになる。ストック型ビジネスの構成比は、2016年6月期の17.4%から2017年6月期に21.4%、2018年6月期に31.5%、2019年6月期に38.5%へ上がると想定している。利益面では、2016年6月期の43.4%から3期間で56.6%→71.7%→78.0%と推移する計画でいる。一方、在庫を抱えるリスクが高まる不動産売買事業は物件を厳選し、直営エリアでの堅実な仕入れに徹する。住宅・リフォーム事業は、リフォーム事業に傾斜する。

ハウス・リースバック事業は、2016年6月期時点では収支トントンであったのが、2019年6月期では営業利益の4分の1弱を占める計画である。ビジネスモデルがほぼ固まり、それらを前提に新中期経営計画が作成された。年間物件取得数は、2017年6月期に288件、2018年6月期に420件、2019年6月期に480件と増やす。同期間の累計保有件数は、522件→867件→1,229件と増加することになる。年間売却件数は、期首累計保有件数に期中の取得数を加えたものの1割弱と想定すると、35件→75件→118件で推移するとみられる。

2019年6月期の予想値を2016年6月期の実績と比較すると、年間物件取得件数は2.2倍だが、累計保有件数は4.5倍になる。収入は累計保有件数をベースに生まれるため、増収率が販管費の伸び率を上回ることになり、収益性が急カーブで上昇することになるだろう。それに売却売上高が加わる。2016年6月期は、同事業の売上高764百万円、営業利益が6百万円とようやく水面下から脱出した。新中計の3ヶ年では、売上高が1,269百万円→2,195百万円→3,227百万円へ、営業利益が160百万円→467百万円→828百万円との展開を計画している。最終年度の売上高利益率は25.7%の高収益となり、利益貢献度はフランチャイズ事業の52.3%に次ぐ23.5%を見込んでいる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)



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