ケアネット Research Memo(6):国内No.1の臨床医学教育メディアとして企業価値向上を目指す
[17/04/03]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
2. 成長戦略について
ケアネット<2150>は2016年3月に中期経営ビジョンを発表している。医師・製薬企業から求められる治療情報の交換の場とソリューションを提供していくことで、「No.1の臨床医学教育メディア」として企業価値の向上を目指していくことを経営ビジョンとして掲げている。また、経営数値目標としては、2019年12月期に売上高で3,500百万円(2015年12月期比で1.8倍増)を目指していく。既存事業については環境変化に対応しながら、サービス内容を改良していくことで年率5%の売上成長を目指し、また、今後新たに生まれる市場に対して新規サービスを投入していくことで、更なる売上拡大を図る戦略だ。新規事業の売上高は2019年12月期で1,000百万円を目指す。
(1) 市場環境
製薬業界で今後発売される医薬品は、対象患者数の多い生活習慣病治療薬から、患者数の少ない希少性疾患や専門性の高いがんなどのスペシャリティ医薬品にシフトしていくことが予見されている。現在、臨床第2相、第3相試験並びに承認申請中の医薬品候補のうち8割以上がスペシャリティ医薬品で占められているためだ。
このため、製薬企業の販売プロモーション活動も今後は生活習慣病治療薬からスペシャリティ医薬品に軸足がシフトしていくものと予想される。生活習慣病治療薬とスペシャリティ医薬品では対象となる患者数も異なるため、販促手法もまったく異なるアプローチが必要となってくる。生活習慣病治療薬では、処方する医師が多く、さらに類似薬も多く存在することから、大量のMR(医薬情報担当者)を動員し、医師に対してFace to Faceによる営業活動を行うことが重要であったが、スペシャリティ医薬品では処方医師は専門医に限られ、薬自体の専門性も高いため、MRについても高い専門知識を持つ人材が求められる。また、新薬発売前から当該医薬品に関連する疾患についての学術情報などを専門医に理解してもらい、発売後にスムーズに処方することができるような準備を整えていくことも重要となる。このため、スペシャリティ医薬品では従来のようなMRによる人海戦術の効果は薄く、専門性の高い疾患情報などの教育コンテンツの提供が重要となってくる。
実際、欧米では新薬に占めるスペシャリティ薬の比率が上昇したことや、大型医薬品の特許が相次いで切れたこと、後発医薬品の普及などにより、2010年を契機に製薬企業のMRの人員は減少に転じ、現在は6万人とピーク時の半分以下の水準となっている。代わりに、スペシャリティ医薬品を専門に扱う部署としてメディカル・アフェアーズ部門が整備されている。同部門では医師資格を持った人材が、上市後の新薬についての医療現場での臨床実績を調査し、論文発表や適応拡大の検討を行うほか、販売先の医師に対して新薬や適用疾患の情報に関しての教育を行う役割を果たしており、大手企業では100人以上の人員をそろえている。
一方、日本ではまだ米国ほど後発医薬品の普及が進んでいないこともあり、MRの人員はピーク時の6万人から5%程度減少した水準に過ぎない。ただ、政府主導による後発医薬品の普及策や生活習慣病治療薬での特許切れが相次ぐことから、米国同様、MR人員が減少に向かうものと予想される。一方で、国内でもメディカル・アフェアーズ部門の整備が進んでおり、大手企業に関しては2016年までにほぼ整備された状況になってきている。
(2) 事業戦略
同社では中期ビジョンにおいて強化するターゲット領域をスペシャリティ医薬品と生活習慣病治療薬系に分け、また上市前と市販後に分けて、各領域において新規サービスを提供し、事業を拡大していく戦略となっている。
a) 既存事業
既存事業については大きくデジタル広告市場とWebセミナー市場とがある。デジタル広告市場は同社の主力サービスの1つであるMRPlusのサービス領域となり、現在の国内市場規模は約100億円程度となっている。前述したように、同領域においては今後MRの人員減少が見込まれるなかで、プロモーション活動の生産性向上に寄与する2つのサービスを展開していく予定となっている。
1つ目が「MRPlus+リモートDTLセンター」となる。今後、製薬企業がMR人員を見直しすることによって、MR人員を十分に投入できない医薬品が増加することが予想される。こうした市場環境の変化を見据えて、同社では、MRの営業活動を支援するサービスであるMRPlusを現行のMR連動型と一部MR活動と切り離したnon-MR型に分け、サービス価値の向上を図っていく戦略だ。このうちnon-MR型には、リモートディテーリングサービスを付加することを予定している。リモートディテールサービスとは、専門知識を持ったスタッフがMRに代わって医師からの医薬品に関する問い合わせに対応すると同時に医師への情報提供を電話にて行うサービスのことを言う。同社では2016年より、「MRPlus+リモートDTLセンター」のサービスを試験的に開始している。2017年についても運用ノウハウを蓄積する1年と位置付けており、本格的なサービス展開は2018年以降となる見通しだ。
2つ目がデジタルMR代行サービスとなる。同サービスは製薬メーカーがMRを配置しないプロジェクトに関して同社が受託する完全請負型のサービスとなる。同社が抱える13.2万人の会員医師に向けてインターネットを通じて、処方維持やブランドスイッチ防止に必要な情報の提供活動、患者発掘活動などMRではコストと手間のかかる活動をインターネット経由で提供していく。また、必要に応じて、リモートディテーリングサービスも活用する。需要が立ち上がるのは製薬企業のMR人材が一定水準まで減少してからとなるため、本格的に立ち上がるにはしばらく時間が掛かる見通しだ。
また、製薬企業が医師に対して行う新薬に関する講演会は80億円程度の市場規模となっている。その新薬に関する講演会の中で、場所と時間を選ばないWeb上で行う講演会の需要が近年、伸びており、大きく成長している。Web上での講演会は、費用面でもリアルの講演会より低く抑えることができるため、今後もWeb講演会の市場が拡大していく見通しで、同社でもこれら需要を取り込んでいく方針だ。
b) 新規事業(スペシャリティ医薬品、上市前)
2016年7月にオープンした臨床医学動画メディア「MEDuLiTe」を活用した新サービスを2016年度から開始している。滑り出しは順調で顧客企業からの評価も高く、今後、制作・編集体制を強化して、更なる受注拡大を目指していく考えだ。教育用コンテンツに関しては、2015年に業務提携したWebMDのコンテンツの2次活用も行っていく。WebMDは世界最大級の医療情報サイト「Medscape」(世界245ヶ国、400万人以上の医師にリーチ)の運営会社で、医師・医療従事者向け教育コンテンツの市場シェアは欧米で約40%、売上規模で年間300億円規模となっている。医師・医療従事者向け教育サービスの市場規模は大学やアカデミアも含めると年間2,000億円規模となっており、一般企業が提供するサービスとしては800億円程度となっている。
前述したように欧米市場では日本より先行してスペシャリティ医薬品の比重が高くなっており、WebMDも製薬企業からの収入では、スペシャリティ医薬品が圧倒的に多くなっている。日本でも今後5年間で200品以上のスペシャリティ医薬品が上市すると言われるなかで、医師向け教育サービスの市場も本格的に拡大していくものと予想される。こうしたなかで、WebMDと提携し、かつ自社でも国内トップの教育用コンテンツの制作能力を有する同社にとっては、業績を拡大していく好機となる。
c) 新規事業(スペシャリティ医薬品、市販後)
スペシャリティ医薬品に関しては、市販後の初期段階において、医師の治療を支援するデータが十分でないことが多い。このため、導入を検討する医師などから臨床データの収集・分析ニーズが高く、製薬企業でもこうした情報を提供していくことが販売促進につながると見ている。特にオンコロジー分野では免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬等の登場によって市場が様変わりしており、こうしたニーズが特に強い。
同社で運営する「CareNet.com」の登録会員の中にもオンコロジー分野の専門医師を多く抱えていることから、これら専門医師の治療実態・活動実態をインターネット経由で収集・分析し、その解析結果を製薬企業に提供するサービス(「登録支援・臨床研究支援」サービス)を2017年度より開始する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 成長戦略について
ケアネット<2150>は2016年3月に中期経営ビジョンを発表している。医師・製薬企業から求められる治療情報の交換の場とソリューションを提供していくことで、「No.1の臨床医学教育メディア」として企業価値の向上を目指していくことを経営ビジョンとして掲げている。また、経営数値目標としては、2019年12月期に売上高で3,500百万円(2015年12月期比で1.8倍増)を目指していく。既存事業については環境変化に対応しながら、サービス内容を改良していくことで年率5%の売上成長を目指し、また、今後新たに生まれる市場に対して新規サービスを投入していくことで、更なる売上拡大を図る戦略だ。新規事業の売上高は2019年12月期で1,000百万円を目指す。
(1) 市場環境
製薬業界で今後発売される医薬品は、対象患者数の多い生活習慣病治療薬から、患者数の少ない希少性疾患や専門性の高いがんなどのスペシャリティ医薬品にシフトしていくことが予見されている。現在、臨床第2相、第3相試験並びに承認申請中の医薬品候補のうち8割以上がスペシャリティ医薬品で占められているためだ。
このため、製薬企業の販売プロモーション活動も今後は生活習慣病治療薬からスペシャリティ医薬品に軸足がシフトしていくものと予想される。生活習慣病治療薬とスペシャリティ医薬品では対象となる患者数も異なるため、販促手法もまったく異なるアプローチが必要となってくる。生活習慣病治療薬では、処方する医師が多く、さらに類似薬も多く存在することから、大量のMR(医薬情報担当者)を動員し、医師に対してFace to Faceによる営業活動を行うことが重要であったが、スペシャリティ医薬品では処方医師は専門医に限られ、薬自体の専門性も高いため、MRについても高い専門知識を持つ人材が求められる。また、新薬発売前から当該医薬品に関連する疾患についての学術情報などを専門医に理解してもらい、発売後にスムーズに処方することができるような準備を整えていくことも重要となる。このため、スペシャリティ医薬品では従来のようなMRによる人海戦術の効果は薄く、専門性の高い疾患情報などの教育コンテンツの提供が重要となってくる。
実際、欧米では新薬に占めるスペシャリティ薬の比率が上昇したことや、大型医薬品の特許が相次いで切れたこと、後発医薬品の普及などにより、2010年を契機に製薬企業のMRの人員は減少に転じ、現在は6万人とピーク時の半分以下の水準となっている。代わりに、スペシャリティ医薬品を専門に扱う部署としてメディカル・アフェアーズ部門が整備されている。同部門では医師資格を持った人材が、上市後の新薬についての医療現場での臨床実績を調査し、論文発表や適応拡大の検討を行うほか、販売先の医師に対して新薬や適用疾患の情報に関しての教育を行う役割を果たしており、大手企業では100人以上の人員をそろえている。
一方、日本ではまだ米国ほど後発医薬品の普及が進んでいないこともあり、MRの人員はピーク時の6万人から5%程度減少した水準に過ぎない。ただ、政府主導による後発医薬品の普及策や生活習慣病治療薬での特許切れが相次ぐことから、米国同様、MR人員が減少に向かうものと予想される。一方で、国内でもメディカル・アフェアーズ部門の整備が進んでおり、大手企業に関しては2016年までにほぼ整備された状況になってきている。
(2) 事業戦略
同社では中期ビジョンにおいて強化するターゲット領域をスペシャリティ医薬品と生活習慣病治療薬系に分け、また上市前と市販後に分けて、各領域において新規サービスを提供し、事業を拡大していく戦略となっている。
a) 既存事業
既存事業については大きくデジタル広告市場とWebセミナー市場とがある。デジタル広告市場は同社の主力サービスの1つであるMRPlusのサービス領域となり、現在の国内市場規模は約100億円程度となっている。前述したように、同領域においては今後MRの人員減少が見込まれるなかで、プロモーション活動の生産性向上に寄与する2つのサービスを展開していく予定となっている。
1つ目が「MRPlus+リモートDTLセンター」となる。今後、製薬企業がMR人員を見直しすることによって、MR人員を十分に投入できない医薬品が増加することが予想される。こうした市場環境の変化を見据えて、同社では、MRの営業活動を支援するサービスであるMRPlusを現行のMR連動型と一部MR活動と切り離したnon-MR型に分け、サービス価値の向上を図っていく戦略だ。このうちnon-MR型には、リモートディテーリングサービスを付加することを予定している。リモートディテールサービスとは、専門知識を持ったスタッフがMRに代わって医師からの医薬品に関する問い合わせに対応すると同時に医師への情報提供を電話にて行うサービスのことを言う。同社では2016年より、「MRPlus+リモートDTLセンター」のサービスを試験的に開始している。2017年についても運用ノウハウを蓄積する1年と位置付けており、本格的なサービス展開は2018年以降となる見通しだ。
2つ目がデジタルMR代行サービスとなる。同サービスは製薬メーカーがMRを配置しないプロジェクトに関して同社が受託する完全請負型のサービスとなる。同社が抱える13.2万人の会員医師に向けてインターネットを通じて、処方維持やブランドスイッチ防止に必要な情報の提供活動、患者発掘活動などMRではコストと手間のかかる活動をインターネット経由で提供していく。また、必要に応じて、リモートディテーリングサービスも活用する。需要が立ち上がるのは製薬企業のMR人材が一定水準まで減少してからとなるため、本格的に立ち上がるにはしばらく時間が掛かる見通しだ。
また、製薬企業が医師に対して行う新薬に関する講演会は80億円程度の市場規模となっている。その新薬に関する講演会の中で、場所と時間を選ばないWeb上で行う講演会の需要が近年、伸びており、大きく成長している。Web上での講演会は、費用面でもリアルの講演会より低く抑えることができるため、今後もWeb講演会の市場が拡大していく見通しで、同社でもこれら需要を取り込んでいく方針だ。
b) 新規事業(スペシャリティ医薬品、上市前)
2016年7月にオープンした臨床医学動画メディア「MEDuLiTe」を活用した新サービスを2016年度から開始している。滑り出しは順調で顧客企業からの評価も高く、今後、制作・編集体制を強化して、更なる受注拡大を目指していく考えだ。教育用コンテンツに関しては、2015年に業務提携したWebMDのコンテンツの2次活用も行っていく。WebMDは世界最大級の医療情報サイト「Medscape」(世界245ヶ国、400万人以上の医師にリーチ)の運営会社で、医師・医療従事者向け教育コンテンツの市場シェアは欧米で約40%、売上規模で年間300億円規模となっている。医師・医療従事者向け教育サービスの市場規模は大学やアカデミアも含めると年間2,000億円規模となっており、一般企業が提供するサービスとしては800億円程度となっている。
前述したように欧米市場では日本より先行してスペシャリティ医薬品の比重が高くなっており、WebMDも製薬企業からの収入では、スペシャリティ医薬品が圧倒的に多くなっている。日本でも今後5年間で200品以上のスペシャリティ医薬品が上市すると言われるなかで、医師向け教育サービスの市場も本格的に拡大していくものと予想される。こうしたなかで、WebMDと提携し、かつ自社でも国内トップの教育用コンテンツの制作能力を有する同社にとっては、業績を拡大していく好機となる。
c) 新規事業(スペシャリティ医薬品、市販後)
スペシャリティ医薬品に関しては、市販後の初期段階において、医師の治療を支援するデータが十分でないことが多い。このため、導入を検討する医師などから臨床データの収集・分析ニーズが高く、製薬企業でもこうした情報を提供していくことが販売促進につながると見ている。特にオンコロジー分野では免疫チェックポイント阻害剤や分子標的治療薬等の登場によって市場が様変わりしており、こうしたニーズが特に強い。
同社で運営する「CareNet.com」の登録会員の中にもオンコロジー分野の専門医師を多く抱えていることから、これら専門医師の治療実態・活動実態をインターネット経由で収集・分析し、その解析結果を製薬企業に提供するサービス(「登録支援・臨床研究支援」サービス)を2017年度より開始する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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