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カルナバイオ Research Memo(1):創薬支援事業、創薬事業ともに増収、17年12月期は2期ぶりに黒字転換へ

注目トピックス 日本株
■要約

カルナバイオサイエンス<4572>は、細胞内のシグナル伝達物質であるキナーゼの働きに着目した創薬及び創薬支援事業を行うバイオベンチャーである。創薬事業では主にがん領域やアンメット・メディカル・ニーズの高い疾患を対象としたキナーゼ阻害薬の開発を行っている。2016年5月に、抗がん剤治療薬候補となるCDC7キナーゼ阻害薬を、米国のバイオベンチャーであるProNAi Therapeutics,Inc.(現Sierra Oncology, Inc.以下、シエラ)へ導出、グローバルライセンス契約を締結した。

1. 2016年12月期はシエラにCDC7キナーゼ阻害薬を導出
2016年12月期の連結業績は、売上高で前期比48.3%減の811百万円、営業損失で423百万円(前期は472百万円の利益)となった。創薬事業でライセンス契約一時金が前期比515百万円減少したほか、創薬支援事業も減収となったこと、研究開発費が増加したことなどが収益悪化要因となった。なお、シエラに導出したCDC7キナーゼ阻害薬は多くのがん腫に効果が期待されるが、膵臓がんやトリプルネガティブ乳がん等の難治性がんを対象に開発を進め、早期承認が可能となるブレークスルー・セラピー(画期的新薬)認定※を目指していく可能性が高い。上市までのマイルストーン総額は270百万ドルとなる。また、上市後のロイヤリティ率は売上高の1ケタ台後半のパーセンテージと見られる。

※ 既に市場に出回っている治療法よりもはるかに治療効果が高い画期的な新薬であるとFDA(食品医薬局)が認定した場合に、通常は臨床試験から承認取得まで5〜6年かかるところを3年程度に短縮することが可能となる制度で、第2相臨床試験の結果を見て承認される可能性もある。2012年より導入され、小野薬品工業<4528>のオプジーボも認定されている。


2. 2017年12月期は創薬支援事業、創薬事業ともに増収で黒字転換見通し
2017年12月期の業績は、売上高で前期比77.4%増の1,440百万円、営業利益で39百万円(前期は423百万円の損失)を見込んでいる。創薬事業でシエラからのマイルストーン収入440百万円が予定されているほか、創薬支援事業も脂質キナーゼ阻害剤に関する大型アッセイキットの受注獲得を主因に増収に転じる見通し。その他の創薬パイプラインでは、大腸がん治療薬候補となるTNIK阻害薬(NCB-0846)について、医師主導臨床試験の検討が進められており、早ければ2018年にも開始される見込みだ。臨床試験におけるヒトでの有効性、安全性のデータを元に、導出活動を進めてく方針だ。

3. 中期経営計画の基本方針を発表
同社は2019年度までの中期経営計画の基本方針を発表した。2017年12月期の連結営業損益の黒字化、複数の創薬パイプラインの導出、導出価値の極大化を目指した自社臨床試験の開始、及び創薬支援事業での安定的な収益確保に取り組んでいく方針だ。臨床試験については前期第2相(以下、PIIa)臨床試験まで自社で行い、導出していくことになる。このため、創薬事業については2018年以降、研究開発費の増加が予想され、業績面ではマイルストーン収入やライセンス契約の有無によって、営業損失に転じるリスクもある。新しい取り組みとして、2017年1月に米国のバイオベンチャーであるEpiBiome,Inc.(以下、エピバイオーム)と共同研究契約を締結した。同社の持つ低分子化合物の創薬技術と、エピバイオームが持つマイクロバイオーム(細菌叢)分野における高度なプロファイリング技術を組み合わせ、細菌性疾病領域での創薬に関わる共同研究を進めていくことになる。当面の業績への影響はないものの、今後の動向が注目される。

Key Points
・キナーゼの働きに着目した創薬事業と創薬支援事業を手掛ける
・脂質キナーゼ関連製品の本格的な収益貢献で創薬支援事業の2017年売上高は初の10億円乗せ
・複数パイプラインの導出と自社臨床試験開始により、導出価値の極大化目指す

(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)



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