カルナバイオ Research Memo(8):複数パイプラインの導出と自社臨床試験開始により、導出価値の極大化目指す
[17/04/06]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
3. 中期経営計画の基本方針
カルナバイオサイエンス<4572>は2017年から2019年までの中期経営計画の基本方針を発表した。ポイントは以下の4点となる。第1に、2017年12月期の連結営業損益の黒字化を達成すること、第2に、複数の創薬パイプラインの導出、第3に、創薬パイプラインの導出価値の極大化を目指した自社臨床試験を開始すること、そして最後に、創薬支援事業で安定的な収益を確保していくことを挙げている。
このうち複数のパイプラインの導出については、自社で臨床試験を実施するものについては、現在の開発スケジュールからすると2018年後半から2019年にかけて実現できる可能性がある。一方で、自社臨床試験の実施により研究開発費も2018年以降、増加することが予想される。臨床試験を実施するに当たって開発担当者を1名既に採用しているが、3名程度にまで人員を増員したい考えだ。臨床試験用の薬剤を製造するGMPに準拠した化合物の製造体制の整備にも5億円程度かかる見通しで、2018年は資金需要が一時的に膨らむ可能性がある。このため、2018年12月期はライセンス契約一時金やマイルストーン収入がなければ、再度、営業利益ベースで損失となる可能性もある。ただ、同社の場合、創薬支援事業が安定収益基盤としてキャッシュを生み出すことから、損失が出たとしてもある程度はカバーできる見通しだ。創薬支援事業については今後も年間で10億円規模の売上水準を定着させていくことを目指している。
4. エピバイオームとの共同研究について
同社は新しい取り組みとして、2017年1月に米国のバイオベンチャーであるエピバイオームと共同研究契約を締結した(期間は2年間)。エピバイオームはスタンドフォード大学発のバイオベンチャー企業で、マイクロバイオーム(細菌叢)の解析において、高度なプロファイリング技術を有しており、その技術において業界でも数々のアワードを受賞するなど高く評価されている企業として知られている。
マイクロバイオームとは、体内に棲息する微生物(マイクローブ)の集合体(オーム)の事を指している。代表的なものとして、腸内フローラや腸内細菌叢、バクテリアなどがあるが、全体で100兆もの微生物が皮膚や口腔各種臓器等に棲息している。近年の研究により、これらマイクロバイオームがヒトの健康状態や病気などの症状に深く関わっていることが明らかとなっており、国内外の製薬企業もマイクロバイオーム分野への研究開発投資に注力し始めている状況にある。
こうしたなかで今回の共同研究契約では、同社が持つ低分子化合物を用いた創薬の基盤技術(スクリーニング技術やプロファイリング技術等)と化合物ライブラリー、エピバイオームが持つマイクロバイオームのプラットフォーム技術、プロファイリング技術を共有することで、コレラ、O-157、赤痢等に代表される細菌性疾病領域での新たな創薬開発につなげていくための共同研究を進めていくもようだ。まずは仮説を立てて、検証する段階からスタートするため、当面の業績への影響はないと考えられる。ただ、共同研究の成果は共有となるが、今後、有望な創薬開発につながれば収益面でもプラスになるため、その動向は注目される。
なお、今回エピバイオームと共同研究契約に至った背景としては、同社が2016年2月に米国のインキュベーション施設内に開設した「カルナバイオ C-Lab」の隣に、エピバイオームが入居しており、研究者同士のつながりが深まったことが契機となっている。「C-Lab」開設に当たっての狙いの1つであったバイオテック業界における先進企業とのネットワーク構築が、早速、結果となって表れた事例として評価される。なお、「C-Lab」については現在、常駐で1名+国内からの派遣ベースで1名の常時2名体制で研究開発活動を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
<TN>
3. 中期経営計画の基本方針
カルナバイオサイエンス<4572>は2017年から2019年までの中期経営計画の基本方針を発表した。ポイントは以下の4点となる。第1に、2017年12月期の連結営業損益の黒字化を達成すること、第2に、複数の創薬パイプラインの導出、第3に、創薬パイプラインの導出価値の極大化を目指した自社臨床試験を開始すること、そして最後に、創薬支援事業で安定的な収益を確保していくことを挙げている。
このうち複数のパイプラインの導出については、自社で臨床試験を実施するものについては、現在の開発スケジュールからすると2018年後半から2019年にかけて実現できる可能性がある。一方で、自社臨床試験の実施により研究開発費も2018年以降、増加することが予想される。臨床試験を実施するに当たって開発担当者を1名既に採用しているが、3名程度にまで人員を増員したい考えだ。臨床試験用の薬剤を製造するGMPに準拠した化合物の製造体制の整備にも5億円程度かかる見通しで、2018年は資金需要が一時的に膨らむ可能性がある。このため、2018年12月期はライセンス契約一時金やマイルストーン収入がなければ、再度、営業利益ベースで損失となる可能性もある。ただ、同社の場合、創薬支援事業が安定収益基盤としてキャッシュを生み出すことから、損失が出たとしてもある程度はカバーできる見通しだ。創薬支援事業については今後も年間で10億円規模の売上水準を定着させていくことを目指している。
4. エピバイオームとの共同研究について
同社は新しい取り組みとして、2017年1月に米国のバイオベンチャーであるエピバイオームと共同研究契約を締結した(期間は2年間)。エピバイオームはスタンドフォード大学発のバイオベンチャー企業で、マイクロバイオーム(細菌叢)の解析において、高度なプロファイリング技術を有しており、その技術において業界でも数々のアワードを受賞するなど高く評価されている企業として知られている。
マイクロバイオームとは、体内に棲息する微生物(マイクローブ)の集合体(オーム)の事を指している。代表的なものとして、腸内フローラや腸内細菌叢、バクテリアなどがあるが、全体で100兆もの微生物が皮膚や口腔各種臓器等に棲息している。近年の研究により、これらマイクロバイオームがヒトの健康状態や病気などの症状に深く関わっていることが明らかとなっており、国内外の製薬企業もマイクロバイオーム分野への研究開発投資に注力し始めている状況にある。
こうしたなかで今回の共同研究契約では、同社が持つ低分子化合物を用いた創薬の基盤技術(スクリーニング技術やプロファイリング技術等)と化合物ライブラリー、エピバイオームが持つマイクロバイオームのプラットフォーム技術、プロファイリング技術を共有することで、コレラ、O-157、赤痢等に代表される細菌性疾病領域での新たな創薬開発につなげていくための共同研究を進めていくもようだ。まずは仮説を立てて、検証する段階からスタートするため、当面の業績への影響はないと考えられる。ただ、共同研究の成果は共有となるが、今後、有望な創薬開発につながれば収益面でもプラスになるため、その動向は注目される。
なお、今回エピバイオームと共同研究契約に至った背景としては、同社が2016年2月に米国のインキュベーション施設内に開設した「カルナバイオ C-Lab」の隣に、エピバイオームが入居しており、研究者同士のつながりが深まったことが契機となっている。「C-Lab」開設に当たっての狙いの1つであったバイオテック業界における先進企業とのネットワーク構築が、早速、結果となって表れた事例として評価される。なお、「C-Lab」については現在、常駐で1名+国内からの派遣ベースで1名の常時2名体制で研究開発活動を行っている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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