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エニグモ Research Memo(5):2017年1月期は認知獲得を生かした内部施策により大幅な増収増益を実現

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 2017年1月期決算の概要
エニグモ<3665>の2017年1月期の業績は、売上高が前期比45.1%増の4,147百万円、営業利益が同705.2%増の1,768百万円、経常利益が同712.7%増の1,763百万円、当期純利益が1,143百万円(前期は180百万円の損失)と大幅な増収増益となり、大規模な広告費の投入により最終損失となった前期からの黒字転換を実現した。総取扱高も前期比36.2%増の33,277百万円に拡大しており、総取扱高、売上高、利益ともに過去最高を更新している。

主力の「BUYMA」(ソーシャルコマース事業)において、前期のマスキャンペーンにより獲得した認知を生かした内部施策が奏功し、会員数及びアクティブ会員数(アクティブ率)がそれぞれ大きく伸長したことが総取扱高の拡大に結び付いた。なお、会員数は約400万人(前期比33.1%増)に到達するとともに、アクティブ率も22.2%(前期は21.1%)に向上している。また、ARPUについてもほぼ同水準(前期比97.5%)を維持した。一方、「メディア事業」については、2015年2月に買収したロケットベンチャーが展開する女子向けキュレーションメディア「4meee!」、及び主婦・ママ向けキュレーションメディア「4yuuu!」における広告収入が順調に伸びており、まだ小規模ではあるが通期で黒字転換を実現した。

損益面でも、大幅な増収による利益の押し上げに加え、販管費が大きく減少したことから大幅な営業増益となり、営業利益率も42.6%(前期は7.7%)の高い水準にV字回復している。なお、販管費の内訳を見ると、事業拡大に伴い人件費が増加したものの、前期に大規模投入した広告費の水準が常態化したことが販管費全体の大幅な削減につながった。また、「メディア事業」の黒字転換も損益改善に寄与したと言える。

財務面では、大幅な増益に伴う資金流入により「現金及び預金」が増加したことから総資産が5,080百万円(前期末比53.3%増)に拡大した一方、自己資本も内部留保の積み増しにより3,194百万円(同56.0%増)に拡大し、自己資本比率は62.9%(前期末は61.8%)に改善した。資本効率を示すROEも43.7%(前期は7.7%のマイナス)の高い水準に回復しており、財務の状況も優良な状態に戻っている。特に、財務基盤の安定性と資本効率性の高さに加えて、今後の成長に向けた手元資金の確保という3つのバランスがとれているところが、今後の成長に向けて評価できるポイントと言えるだろう。

2. 活動実績
(1) 内部施策の成果
a) 会員獲得施策
2017年1月期は、前期に獲得した認知を生かし、BUYMA認知層へ検索エンジンやSNSを通じた刈り取り広告を展開するとともに、BUYMAの商品情報を生かしたオウンドメディア「POST」、「STYLE HAUS」を通じた会員獲得が奏功し、その結果、登録会員数は前期比33.1%増と想定を上回るペースで拡大した。また、アプリのダウンロード数も右肩上がりに伸びており、有力な会員獲得チャネルになっている。

b) アクティブ率の向上施策
最大のテーマとして取り組んだアクティブ率については、オウンドメディアやアプリ、レコメンドなど複数の接点によりユーザーの回遊性を高めた結果、相乗効果の発現により22.2%(前期は21.1%)に向上した。

c) ARPU(1人当たりの年間購入額)の維持施策
ARPUは、「1件当たりの平均単価」と「1人当たりの平均購入件数」のかけ算に分解できるが、前者については、新規会員の増加等により前期比で微減となったものの、後者が若干増加したことからARPU全体では前期比97.5%とほぼ横ばいで推移した。特に、内部施策によりコントロール可能な後者については、ポイント施策やクーポン施策、まとめ買い施策などに取り組んだ結果、その成果を実現することができた。

(2) BUYMAプラットフォームの進化
規模の拡大とともに、「BUYMA」プラットフォーム自体も次のステージに向けて進化してきた。スタート当初はファッションへの意識の高いF1層(20〜30歳代女性)が中心となってきたが、様々な出品者の参加により多種多様な品ぞろえが実現した結果、男性や10歳代、50歳以上の取扱高が大きく拡大してきた。前期の取扱高で見ると、メンズカテゴリーが74億円(前期比67.8%増)、10歳代が17億円(同87.7%増)、50歳以上が31億円(36.7%増)とそれぞれ大きく伸びている。この背景には、パーソナルショッパー数が9万人超(前期比19.1%増)に拡大したことに加えて、ブランド・メーカーやショップ、専門商社などの参入により、多様なニーズ(これまでの多様性やレア、旬に加えて、定番や在庫、価格、信頼性などに対するニーズ)を満たす品ぞろえが一層充実してきたことが挙げられる。同社では、ターゲットユーザーをこれまでの女性1,000万人(F1層中心)から男女含めた4,000万人(ECでインポートブランド購入検討層)に再定義し、より幅広いユーザーに満足してもらうための施策に取り組んでいる。MDの高さ(幅広い品ぞろえ)やAIの活用(データマーケティング)、補償の充実(取引の安全性)などにより、多種多様なアイテムを洗練された品ぞろえに整え、最適なユーザーへ安心して届けるサービスは、ニッチ(限定的なユーザー)からメインストリーム(幅広いユーザー)へと、次のステージに移ってきたと言えるだろう。

(3) 「GLOBAL BUYMA」の進展
2016年7月から本格的なマーケティングを開始した「GLOBAL BUYMA」についても、会員数が順調に増加し、配送実績も62ヶ国(上期は26ヶ国)に拡大するなど、まだ業績に寄与する規模ではないものの、順調に立ち上がってきた。出品数が300万品を突破すると、オーガニック流入数(※1)は下期前年同期比185.9%増、CVR(※2)は同53.1%とそれぞれ大きく伸びており、確かな手応えをつかんできたようだ。

※1 検索連動型などの広告表示を除いた検索結果からのトラフィック(サイトへのアクセス数)。
※2 流入数に対する購入件数の比率。


以上から、2017年1月期の実績をレビューすると、1)前期に大規模投入した広告費を想定以上の業績の伸びに結び付けたこと(広告宣伝費の収益化)、2)ユーザー層の拡大に伴い、「BUYMA」サービスがニッチからメインストリームへと次のステージに移ってきたこと、3)「GLOBAL BUYMA」が順調に立ち上がってきたこと、の大きく3点を評価ポイントとして挙げることができる。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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