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キャンバス Research Memo(3):少数精鋭の創薬バイオベンチャーであるが、他社にはないユニークな強みを有する

注目トピックス 日本株
■会社概要

2. キャンバス<4575>の特徴と強み
(1)基礎研究と臨床開発一体による抗がん剤研究開発ソリューション力
第1の強みは、基礎研究と臨床開発一体による抗がん剤研究開発ソリューション力である。創薬プロセスにおいて、臨床試験で得られた解析データが臨床開発チームから基礎研究チームへフィードバックされ次の研究開発に活かされている。臨床データを基にがん細胞と正常細胞に何が起きているのか解明され新たな気付きや仮説づくりに反映される。その結果、自前で新しい臨床試験計画を立案することができる。そのような創薬プロセスサイクルを俊敏かつ柔軟な形でマネジメントできている。少数精鋭の研究開発エキスパート集団だからこそできることといえよう。

(2)独自の創薬基盤技術(創薬エンジン)を確立、更に進化
第2の強みは、特定領域に絞り込んだ創薬を自社独自の創薬基盤技術(「創薬エンジン」とも呼ぶ)を基に技術とプロダクトの両方を自社で創出できることである。創薬プラットフォームを持たず開発途上の化合物を外部から導入して一定の開発ののちに製薬企業へ導出する企業とは一線を画す。

創薬基盤技術は「細胞表現型スクリーニング」、「化合物の最適化」、並びに「作用メカニズム解析」からなる。

同社独自の創薬アプローチで「大部分のがん細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なること」に着目しており、「細胞表現型スクリーニング」は、フローサイトメーター(分析装置)でDNA量を測定し、細胞群の細胞周期分布分析とその前処理や分析結果に関する工夫・ノウハウを指している。

また、同社では一般的な分子標的スクリーニングと異なり、未知のものを含むさまざまな作用メカニズムの薬剤候補化合物(正常細胞に影響が少なくがん細胞に作用するヒット化合物)を探索している。

「化合物の最適化」は、ヒット化合物の分子構造を少しずつ変化させ、初期スクリーニングで獲得した化合物をより最適なもの(抗がん活性の強いもの、副作用の抑制されたものなど)に改良する技術である。

「作用メカニズム解析」は、最適化へのフィードバック、前臨床試験や臨床試験の設計へフィードバックし成功確率を高めるための有効な技術である。

(3) ビジネス戦略と臨床開発現場を知り尽くした科学顧問のアドバイスと支援
最後の強みは、ビジネス分野、基礎研究分野、臨床分野の第一人者であるスーパー・エキスパートチームを有することである。

<科学顧問会議メンバー>
●Daniel D. Von Hoff, M.D., F.A.C.P.
Translational Genomics Research Institute (TGen) フィジシャン・イン・チーフ、特別教授
Mayo Clinic 教授
Honorhealth Research Institute チーフサイエンティフィックオフィサー
US Oncology メディカルディレクター・オブ・リサーチ、チーフサイエンティフィックオフィサー
元FDA Oncology Drug Advisory Committee (ODAC)メンバー
●Donald W. Kufe, M.D.
ハーバード大学医学部教授
ダナファーバーがん研究所副所長(臨床第1相試験ディレクター及び臨床プログラムリーダー)
●William G. Dunphy, Ph.D.
カリフォルニア工科大学教授、元ハワードヒューズ医学会研究員

同社は2002 年3 月に、社内に「科学顧問会議」を組成した。科学顧問会議(SAB)メンバーは上記の3名であり、組成以来、科学顧問として大きな役割を担っている。Daniel D. Von Hoff 氏は、アリゾナがんセンター教授、前所長であり、アメリカがん学会会長、アメリカがん治療学会会長を歴任した著名ながん研究者である。また、Von Hoff 氏は、これまで20 年以上にわたって200種類以上の抗がん剤の臨床試験に関わってきており、更に、創薬ビジネスの立ち上げにも実績がある。同社では近年、臨床開発に軸足が移り、Von Hoff 氏がメインアドバイザーとなっている。

彼らは、最新の抗がん剤論文に精通し、開発・臨床実務まで豊富な経験と実績を有する抗がん剤研究のエキスパートでビジネスプロフェッショナルである。ネズミの静脈注射での注意点といった細かい実験方法から臨床開発、ビジネスアライアンスに至るまで、持てるすべてのノウハウを同社の研究・開発に注入してきた。また、他の誰もできないことまでアドバイス・支援してくれる。例えば創業間もない頃には、第三者割り当て増資でベンチャーキャピタルに対して、同社の開発テーマの有効性を説き、出資の働きかけを促している。また、有望な欧米大手製薬企業のエグゼクティブの仲介もしているようだ。

これだけのアドバイス・支援できる顧問・アドバイザーを他社で余り見たことがない。少数精鋭の研究者集団である同社には、強力なケイパビリティ(中核組織能力)を担っていると言って過言ではない。

3. 創薬アプローチ

世界の製薬企業やベンチャー企業、大学の研究開発者は、「正常細胞や正常組織に影響を与えずがんだけを殺す方法」の開発実用化を目指し、それぞれの創薬アプローチで取り組んでいる。また、最近では免疫チェックポイント阻害剤をはじめとする免疫系がん治療領域のように、がん患者の余命を延ばすだけでなく、更に治癒まで踏み出す画期的な創薬アプローチが出現してきた。

そのような中、同社は「大部分のがん細胞の細胞周期(細胞分裂に至る過程)が正常細胞と異なること」に着目する独特の創薬アプローチで、この抗がん剤開発競争に挑んでいる。

細胞内で働いている分子を取り出してスクリーニングする「ハイスループットスクリーニング」は敢えて採用せず、細胞の中で起きることはすべてブラックボックスであると考え、生きている細胞の挙動(表現型)に答を訊く「細胞の表現型によるスクリーニング」を行っている。

現在までに有望な標的分子と称されていたものの多くが、その後の科学的知見の増加により次々に脱落し、あるいは期待したような結果を出せないでいる。分子標的薬の全盛時のコンセプトには「多くのがんに何らかの標的となる分子が存在。標的に照準を絞った薬剤を標的の数だけ用意すれば、大多数のがんを特異的に殺すことができる」という考えがあった。いわゆる、「個別化医療」である。しかし、たとえば非小細胞肺がんの遺伝子型分布では、EGFR変異とALK融合の部分が既に標的が発見されているものの、残りの領域(pan-wild type)では特有の薬剤は見つかっていない。その領域では、特定の標的分子からスタートしない同社の創薬アプローチは有効である。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水 啓司)



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