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アウトソーシング Research Memo(6):M&Aやオーガニック成長で7期連続の増収、過去最高の営業利益を実現

注目トピックス 日本株
■決算概要

1. 過去の業績推移
2007年12月期からの業績を振り返ると、景気変動の影響を受けながらも、製造工程の外注化ニーズに対応する形で人材提供数(外勤社員数)の拡大を図ってきたことがアウトソーシング<2427>の成長をけん引してきた。営業利益が2009年12月期及び2011年12月期に落ち込んでいるのは、リーマンショック及び東日本大震災のほか、円高の進行による景気後退(国内生産の減少)の影響を受けたものである。一方、2012年12月期以降、同社の業績が大きく伸びているのは、国内メーカーによる海外生産移管や国内産業構造の変化(鉱工業からIT産業や土木建築産業へのシフト)への積極的な対応を図ることにより、「海外事業」や「国内技術系」が順調に拡大してきたことが寄与している。足元では全般的な人手不足感や労働者派遣法改正に伴う規制緩和により人材派遣市場全体が活況を呈しているなかで、同社は景気変動の影響を受けない事業構造への変革を進めることによりオーガニックな成長を実現してきたと言える。

財務面では、M&Aを含めた積極的な投資により有利子負債は拡大傾向にある。特に、2016年12月期は投資総額約430億円のM&Aを実施したことにより、有利子負債残高は大きく拡大し、親会社所有者帰属持分比率も14.2%に低下している。ただ、2017年1月に発行した新株予約権により約100億円の資金調達を予定しており、2017年12月末の親会社所有者帰属持分比率は20%台半ばに回復する見込みである。

2. 2016年12月期決算の概要
「今後の成長が期待できる事業領域及び地域へ、グローバル規模で体制を構築するための先行投資期間」と位置付けられた2016年12月期の業績(IFRS)は、売上収益が前期比66.0%増の134,283百万円、営業利益が同82.3%増の5,672百万円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同74.7%増の3,061百万円と2ケタ増収増益となり、7期連続の増収並びに過去最高の営業利益を更新した。

売上収益はすべての事業が順調に伸びている。特に、海外事業が大きく拡大したのは、前期に進出した欧州及び南米の各企業が期初から寄与したことや、当期に買収した豪州、英国、マレーシアの各企業が新たに上乗せされたことに加えて、各グループ企業間のシナジー創出によるものである(M&Aによる増収寄与は約250億円と推定される)。一方、国内でも、「国内技術系アウトソーシング事業」が独自の人材教育カリキュラムの活用等により伸長したほか、「国内製造系アウトソーシング事業」も「2018年問題」によりPEOスキームへの需要が顕在化しはじめている。また、「国内サービス系アウトソーシング事業」も国内米軍基地向けの事業が順調に拡大した。

また、利益面では、M&A関連費用(約14億円)等により販管費が大きく増加したものの、増収により吸収することで営業増益を確保し、過去最高の営業利益を更新した。営業利益率は4.2%(前期は3.8%)に上昇しており、売上収益の拡大だけでなく収益性も向上してるといえるだろう。

財政状態も、大型M&Aの実施やそれに伴う有利子負債の増加により大きく変化している。資産がのれんの増加を含め89,833百万円(前期末比110.6%増)に大きく拡大した。資本は配当金の支払いや為替換算調整勘定のマイナスにより15,019百万円(前期末比20.7%増)に拡大した。親会社所有者帰属持分比率は14.2%(前期末は26.0%)に大きく低下した。なお、のれん計上額は28,266百万円(前期末比323.3%増)となっている。

営業キャッシュ・フローはプラスで推移した一方、投資キャッシュ・フローは大型M&Aにより大きくマイナスになっており、借入金による財務キャッシュ・フローで賄う形となった。その結果、有利子負債は長短合わせて48,138百万円(前期末比248.44%増)に大きく増加した。

もっとも、前述したとおり、2017年1月に発行した新株予約権により約100億円の資金調達(財務基盤の増強)を予定しており、2017年12月末の自己資本比率は20%台半ばへ回復する見込みである。

主な事業別の業績は以下のとおりである。

「国内技術系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比26.9%増の40,182百万円、営業利益が同55.5%増の2,936百万円となった。技術者不足が顕著なIT産業や土木建築産業を中心として、KENスクールを活用した未経験者を教育して配属するスキームが順調に進捗し、採用コストを抑制しながら採用人数を伸ばすことができた。期末の外勤社員数は6,066名(前期末比1,324名増)に伸びているが、そのうちKENスクールによる教育後配置人数は1,210名(期初計画1,200名)、配置後1年後のキャリアチェンジ人数は749名(期初計画700名)と業績の伸びをけん引している。また、利益面でも、増収効果に加えて、採用コストの抑制等により増益を確保し、利益率も7.3%(前期は6.0%)に改善している。

「国内製造系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比17.8%増の34,608百万円、営業利益が同38.2%増の1,366百万円となった。2つの「2018年問題」により期間社員から派遣活用への転換ニーズが顕在化しはじめるなかで、PEOスキームも伸長し、メーカー直接雇用の期間社員や他社派遣社員の転籍が拡大した。期末の外勤社員数は9,033名(前期末比1,570名増)に伸びているが、PEOスキームによる採用人数は3,430名(期初目標3,000名)に達し、期末の在籍人数も5,519名(期初目標)と当該事業全体の60%超を占めるまでになった。

「国内サービス系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比220.2%増の3,470百万円、営業損失が258百万円(前期は100百万円の損失)となった。米軍基地内アウトソーシングが順調に拡大した。特に、沖縄の各基地に加えて、2015年12月に岩国の米軍基地から受注したことも業績の伸びにつながった。利益面でも、事業拡大により立ち上げ費用を吸収することで通期黒字化を達成した。一方、コンビニ業界向けは、「同一労働同一賃金」※の流れのなかでスキームの見直し等をコンビニ業界とともに進めており、ビジネスモデル修正後に、再度本格参入するようだ。

※いわゆる正規雇用労働者(無期雇用フルタイム労働者)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)の間の不合理な待遇差の解消を目指すものである。2016年12月に政府によりガイドラインが公表された。


「国内管理系アウトソーシング事業」は、売上収益が前期比62.6%増の873百万円、営業利益が同396.7%増の278百万円となった。国内の労働力不足や「2018年問題」による期間社員縮小の代替として、外国人技能実習生の活用ニーズが増加しており、その管理業務受託が拡大した。

「国内人材紹介事業」は、売上収益が前期比58.1%増の1,378百万円、営業利益が同56.4%増の647百万円となった。顧客メーカーの増産に伴う旺盛なニーズへの対応により順調に拡大した。ただ、趨勢として派遣ニーズが強まっているなかで、継続的な事業拡大には限界があるとみている。

「海外技術系事業」は、売上収益が前期比448.5%増の21,022百万円、営業利益が同412.8%増の688百万円となった。前期より進出した豪州及び英国でのM&Aによる寄与に加えて、各グループ企業間のシナジー創出により各国政府機関や地方公共団体からのアウトソーシングが順調に拡大した。

「海外製造系及びサービス系事業」は、売上収益が前期比140.8%増の32,150百万円、営業利益が1,448百万円(前期は、26百万円の損失)となった。アジアでは中国の景気減速を始め各国の景気にやや停滞感があるなかで、日系人材会社としての強みを生かして堅調に推移した。また、前期末に進出した南米、さらには当期にM&Aした豪州、マレーシア、英国の上乗せにより業容を拡大し、利益構造も大幅に強化された。

以上から、2016年12月期の業績を振り返ると、1)世界規模での大型M&Aを複数実施(投資総額約430億円)することで、「先行投資期間」としての成果(今後の成長に向けた足がかり)を十分に残すことができたこと、
2)国内でも独自戦略の進捗により順調に業績を伸ばすことができたこと、3)大型M&Aにかかる費用を業績の伸びで吸収することにより営業増益を確保したこと、の3点に集約できる。すなわち、足元の業績と将来に向けた投資を両立(収益の伸びと先行費用のバランス)しているところは評価すべきポイントと言えるだろう。さらに付け加えると、従来の主力事業であった「国内製造系アウトソーシング事業」の売上構成比率は、PEOスキームにより事業が拡大しているなかでも25.8%(前期末は36.3%)に低下しており、景気変動の影響を受けやすい「製造系アウトソーシング」への依存度を下げる戦略も順調に進展していると言える。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)



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