博展 Research Memo(6):2017年3月期は大幅な増収ながら営業損失を計上、外注費の増加等が利益を圧迫
[17/06/22]
提供元:株式会社フィスコ
提供元:株式会社フィスコ
注目トピックス 日本株
■決算動向等
1. 2017年3月期決算の概要
博展<2173>の2017年3月期の業績は、売上高が前期比14.6%増の9,268百万円、営業損失が253百万円(前期は170百万円の利益)、経常損失が262百万円(同161百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が369百万円(同97百万円の利益)と2ケタの増収ながら原価率の上昇や先行費用の拡大等により営業損失に陥った。会社計画に対しても売上高は概ね想定どおりとなったものの、利益面では未達となった。
売上高はすべての事業が伸長した。受注競争の激化やクライアントによる出展計画・規模の見直し等の影響を受ける中で、主力の「展示会出展」が着実な受注を確保したほか、人的リソースを強化した「イベントプロモーション」については、全国規模の体験型イベントプロモーションの受注やイベント来場者向けのデジタルアプリケーションの提供などにより大きく拡大した。ただ、計画に対しては、「イベントプロモーション」が大きく上回ったものの、「商環境」が意欲的な目標に届かなかったことや「デジタル・コンテンツ&マーケティング」も子会社(アイアクト、タケロボ)の立ち上がりの遅れ等により、全体としてはおおむね想定どおりの着地に収まった。
一方、利益面では、収益性の高い「展示会出展」の売上構成比率の低下に加えて、「イベントプロモーション」の拡大に伴う外注費や多様化・大規模化するプロジェクトの管理コストの増加等により原価率が77.3%(前期は75.4%)に上昇した。また、多様化する課題や難易度の高い大規模案件に必要な人材への投資(人件費や人材獲得費)やオフィス環境整備費(人材増に伴う増床等)など受注獲得に向けた先行費用のほか、AIやコグニティブ投資関連費用、戦略的M&A関連費用※などデジタルマーケティング分野への先行投資により販管費が大きく拡大したことで営業損失に陥った。
※スプラシア100%子会社化に伴う費用。
また、アイアクトにかかる「のれん」の一括償却(53百万円)及び無形固定資産※1の減損損失(106百万円)を特別損失に計上している※2。
※1 連結上で認識されているCMS構築関連技術や商標、顧客との継続取引関係等。
※2 アイアクトの現時点の収益性(直近の業績見込みや翌期の事業計画等)を勘案した結果、当初見込んでいた利益計画に及ばないことが明らかになったことから、同社単体におけるアイアクトへの投資額(関係会社株式)について評価損(251百万円)を計上したことに伴うものである。
財務面では、デジタルマーケティング分野への先行投資により「無形固定資産」(スプラシアの連結化に伴う「のれん」の計上を含む)が増加したことなどから、総資産が5,257百万円(前期末比18.0%増)に大きく拡大した一方、自己資本は最終損失の計上により883百万円(同28.8%減)に縮小したことから自己資本比率は16.8%(前期末は27.8%)に低下した。それに伴って、有利子負債残高(リース債務を除く)は2,867百万円(前期末比56.5%増)に増加している。ただ、流動比率は131.8%と高い水準を確保しており、財務の安全性に懸念はない。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は2010年3月期にリーマン・ショック等による景気後退の影響を受けて一度落ち込んだが、その後は7期連続で増収基調を続けている。特に、2013年3月期以降は、景況感の回復など外部環境の好転や新規事業の伸長等により売上高は順調に拡大してきた。なお、2015年3月期第4四半期からは、アイアクトの子会社化により連結決算に移行している。
利益面についても、2010年3月期に営業損失を計上したものの、売上高の伸びとともにV字回復を実現した。ただ、2014年3月期は、今後の売上成長に向けた先行投資的な費用負担が営業利益率の低下を招き、連結決算に移行した2015年3月期以降についても、外注原価率の上昇や成長基盤整備のための先行費用(人材補強費、M&A関連費用等)の増加等により利益水準は低調に推移している。
財務面では、自己資本比率は40%前後で推移してきたが、連結決算に移行した2015年3月期以降は低下傾向にある。また、ROEも同社の収益力の高さを反映して高い水準を確保してきたものの、2014年3月期以降は利益率の低下に伴ってROEも低下してきた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MW>
1. 2017年3月期決算の概要
博展<2173>の2017年3月期の業績は、売上高が前期比14.6%増の9,268百万円、営業損失が253百万円(前期は170百万円の利益)、経常損失が262百万円(同161百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が369百万円(同97百万円の利益)と2ケタの増収ながら原価率の上昇や先行費用の拡大等により営業損失に陥った。会社計画に対しても売上高は概ね想定どおりとなったものの、利益面では未達となった。
売上高はすべての事業が伸長した。受注競争の激化やクライアントによる出展計画・規模の見直し等の影響を受ける中で、主力の「展示会出展」が着実な受注を確保したほか、人的リソースを強化した「イベントプロモーション」については、全国規模の体験型イベントプロモーションの受注やイベント来場者向けのデジタルアプリケーションの提供などにより大きく拡大した。ただ、計画に対しては、「イベントプロモーション」が大きく上回ったものの、「商環境」が意欲的な目標に届かなかったことや「デジタル・コンテンツ&マーケティング」も子会社(アイアクト、タケロボ)の立ち上がりの遅れ等により、全体としてはおおむね想定どおりの着地に収まった。
一方、利益面では、収益性の高い「展示会出展」の売上構成比率の低下に加えて、「イベントプロモーション」の拡大に伴う外注費や多様化・大規模化するプロジェクトの管理コストの増加等により原価率が77.3%(前期は75.4%)に上昇した。また、多様化する課題や難易度の高い大規模案件に必要な人材への投資(人件費や人材獲得費)やオフィス環境整備費(人材増に伴う増床等)など受注獲得に向けた先行費用のほか、AIやコグニティブ投資関連費用、戦略的M&A関連費用※などデジタルマーケティング分野への先行投資により販管費が大きく拡大したことで営業損失に陥った。
※スプラシア100%子会社化に伴う費用。
また、アイアクトにかかる「のれん」の一括償却(53百万円)及び無形固定資産※1の減損損失(106百万円)を特別損失に計上している※2。
※1 連結上で認識されているCMS構築関連技術や商標、顧客との継続取引関係等。
※2 アイアクトの現時点の収益性(直近の業績見込みや翌期の事業計画等)を勘案した結果、当初見込んでいた利益計画に及ばないことが明らかになったことから、同社単体におけるアイアクトへの投資額(関係会社株式)について評価損(251百万円)を計上したことに伴うものである。
財務面では、デジタルマーケティング分野への先行投資により「無形固定資産」(スプラシアの連結化に伴う「のれん」の計上を含む)が増加したことなどから、総資産が5,257百万円(前期末比18.0%増)に大きく拡大した一方、自己資本は最終損失の計上により883百万円(同28.8%減)に縮小したことから自己資本比率は16.8%(前期末は27.8%)に低下した。それに伴って、有利子負債残高(リース債務を除く)は2,867百万円(前期末比56.5%増)に増加している。ただ、流動比率は131.8%と高い水準を確保しており、財務の安全性に懸念はない。
2. 過去の業績推移
過去の業績を振り返ると、売上高は2010年3月期にリーマン・ショック等による景気後退の影響を受けて一度落ち込んだが、その後は7期連続で増収基調を続けている。特に、2013年3月期以降は、景況感の回復など外部環境の好転や新規事業の伸長等により売上高は順調に拡大してきた。なお、2015年3月期第4四半期からは、アイアクトの子会社化により連結決算に移行している。
利益面についても、2010年3月期に営業損失を計上したものの、売上高の伸びとともにV字回復を実現した。ただ、2014年3月期は、今後の売上成長に向けた先行投資的な費用負担が営業利益率の低下を招き、連結決算に移行した2015年3月期以降についても、外注原価率の上昇や成長基盤整備のための先行費用(人材補強費、M&A関連費用等)の増加等により利益水準は低調に推移している。
財務面では、自己資本比率は40%前後で推移してきたが、連結決算に移行した2015年3月期以降は低下傾向にある。また、ROEも同社の収益力の高さを反映して高い水準を確保してきたものの、2014年3月期以降は利益率の低下に伴ってROEも低下してきた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MW>