三機工業 Research Memo(4):減益となるも売上総利益率は改善し、内容的には好決算
[17/06/27]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2017年3月期の業績概要
(1) 損益状況
三機工業<1961>の2017年3月期(2016年4月−2017年3月)の業績は、受注高185,880百万円(前期比1.4%増)、売上高168,512百万円(同5.8%減)、売上総利益22,538百万円(同1.7%減)、営業利益6,012百万円(同7.6%減)、経常利益6,880百万円(同15.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,698百万円(同11.8%減)となった。
受注高は建築設備、環境システムの大型物件受注により、大幅に増加した前期をさらに上回った。売上高は前期に比べると大型物件の完工高が減少したことから前期比で減収となったが、その結果、次期繰越高は前期末比16.3%増と大幅に増加した。利益面では、過去数年間に実施してきた利益率改善施策の効果によって売上総利益率は13.4%(前期12.8%)へ改善した。このため営業利益は、高水準であった前期は下回ったものの、前々期(2,951百万円)に比べれば依然として高い水準を維持した。経常利益は、前期が特殊要因(持分法による投資利益771百万円を営業外収益に計上した等)であったことから、減益幅は営業利益より大きくなった。前期比では減益となったが、全体的には好決算であったと言える。
同社では売上総利益率が改善した要因として、以下のような点を挙げている。
a) 原価管理の徹底:以前から進めていた社内での原価管理を徹底、これに加え下記取組みにより作業効率が大きく改善したことにより、利益率が向上した。
b) 利益率マイナス要因の減少:業界環境の好転により受注環境が改善し、コストと品質のバランスがとれた受注実態となっている。さらに工程管理を徹底したことから進捗遅れが減少し、特に大型案件での採算性(利益率)が改善した。
c) 現場サポート体制の整備:現場の技術者をサポートするため、2015年4月から調達本部による購買業務支援、同じくサイト業務支援センターによる現場書類関係業務支援、2016年4月から設計支援センターによる設計業務支援のほか、技術エキスパートによる品質監理などを行ってきたが、これらの効果が出始めた(作業効率の向上)。
その一方で販管費は実額で106百万円増加したことから、対売上高比率は前期の9.2%から9.8%へ上昇したが、これは売上高が減少したことによるもので、想定の範囲内であった。
(2) セグメント別損益状況
建築設備事業の売上高は141,567百万円(前期比5.6%減)となった。サブセグメント別では、ビル空調衛生が前期比6.4%減の60,376百万円、産業空調が同5.1%減の49,440百万円、電気が同6.2%減の21,542百万円、ファシリティシステムが同2.0%減の10,208百万円とすべてのサブセグメントで前期比マイナスとなった。ビル空調衛生では大型工事を中心に前期を下回ったが、次期繰越高は60,013百万円と高水準となった。その他のサブセグメントも前期を下回ったものの、前々期(2015年3月期)並みの売上高は確保した。
機械システム事業の売上高は8,192百万円(同11.1%減)、環境システム事業の売上高は18,271百万円(同2.5%減)となった。機械システム事業の売上高が2ケタ減となったのは、前期の大型案件売上高が相対的に大きかったためであり、ほぼ想定内の結果であった。不動産事業の売上高は1,592百万円(同3.9%増)、その他事業の売上高は499百万円(同7.9%減)となり、おおむね計画どおりの結果であった。
またセグメント別の経常利益は、建築設備事業が6,404百万円(同16.8%減)、機械システムは大型工事が一巡したこともあり138百万円の損失(同275百万円の利益)、環境システムが671百万円(同315百万円の損失)となった。この結果、設備工事全体の経常利益は6,938百万円(同9.4%減)となった。前々期(3,073百万円)と比べれば、利益水準は依然として高いと言える。また不動産事業及びその他事業の経常利益は、各々189百万円(同18.8%減)、22百万円(同57.2%減)となったが、これらもほぼ想定内の水準であった。
(3) セグメント別受注状況
建築設備事業全体の受注高は146,612百万円(前期比3.8%減)であった。ビル空調衛生は大型工事受注もあり65,763百万円(同0.6%減)と前期並みを維持した。産業空調は49,823百万円(同5.1%減)と前期比では減少したが、前期の水準が特別に高かったことを考慮すれば、決して懸念するレベルではなかった。ちなみに、前々期の受注高(46,765百万円)は上回っている。電気は21,576百万円(同4.8%減)となったが、傾向は同様で20,000百万円超えの受注を維持していることは評価できる。ファシリティシステムも9,450百万円(同14.6%減)と前期を下回ったが、前々期並みの水準(9,272百万円)は維持した。
プラント設備事業では、機械システムの受注高は8,130百万円(同21.1%減)となったが、これは前期に大型案件の受注があったことによる。一方で環境システムの受注高は、大型のDBO※案件を受注したこともあり30,626百万円(同56.2%増)と大幅増となった。この結果、プラント設備事業全体の受注高は38,756百万円(同29.5%増)と前期比で大幅増となった。
※DBO(Design Build Operate)とは、設計・建設と運営・維持管理を民間の事業者(同社など)に一括発注する方式で、公設民営の一つの方式。
大型案件(10億円以上)の受注は、計15件、40,057百万円(前期は19件、31,476百万円、前々期は12件、20,619百万円)であった。前期に比べて受注件数は減少したが、金額は増加しており、大型案件の1件当りの平均受注額はここ数年増加傾向にある。
このような状況から、2017年3月期の全受注高は185,880百万円(同1.4%増)と前期比では微増であった。売上高が減少したこともあり、期末の次期繰越高は123,756百万円(同16.3%増)と大幅に増加した。
2. 財務状況
2017年3月期末の財務状況について、流動資産は114,906百万円(前期末比585百万円減)となったが、これは主に売掛債権の減少13,078百万円などによる。固定資産は51,705百万円(同2,225百万円減)となったが、これは主に投資その他資産の減少2,368百万円などによる。この結果、期末の総資産は166,612百万円(同2,810百万円減)となった。
流動負債は66,776百万円(同4,087百万円減)となったが、これは主に買掛債務の減少3,183百万円などによる。固定負債は11,875百万円(同126百万円減)となったが、これは主に繰延税金負債の減少555百万円などによる。この結果、期末の負債合計は80,651百万円(同4,214百万円減)となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加2,727百万円等により、純資産合計は85,961百万円(同1,403百万円増)となった。
3. キャッシュフローの状況
2017年3月期の営業活動によるキャッシュフローは、10,845百万円の増加となったが、これは主に税金等調整前当期純利益の計上7,004百万円、売上債権の減少8,808百万円によるものである。投資活動によるキャッシュフローは1,644百万円の減少となった。財務活動によるキャッシュフローは2,458百万円の減少となったが、これは主に配当金の支払い1,970百万円によるものである。
この結果、2017年3月期の現金及び現金同等物は、前期末に比べて6,686百万円増加し、期末残高は39,187百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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1. 2017年3月期の業績概要
(1) 損益状況
三機工業<1961>の2017年3月期(2016年4月−2017年3月)の業績は、受注高185,880百万円(前期比1.4%増)、売上高168,512百万円(同5.8%減)、売上総利益22,538百万円(同1.7%減)、営業利益6,012百万円(同7.6%減)、経常利益6,880百万円(同15.4%減)、親会社株主に帰属する当期純利益4,698百万円(同11.8%減)となった。
受注高は建築設備、環境システムの大型物件受注により、大幅に増加した前期をさらに上回った。売上高は前期に比べると大型物件の完工高が減少したことから前期比で減収となったが、その結果、次期繰越高は前期末比16.3%増と大幅に増加した。利益面では、過去数年間に実施してきた利益率改善施策の効果によって売上総利益率は13.4%(前期12.8%)へ改善した。このため営業利益は、高水準であった前期は下回ったものの、前々期(2,951百万円)に比べれば依然として高い水準を維持した。経常利益は、前期が特殊要因(持分法による投資利益771百万円を営業外収益に計上した等)であったことから、減益幅は営業利益より大きくなった。前期比では減益となったが、全体的には好決算であったと言える。
同社では売上総利益率が改善した要因として、以下のような点を挙げている。
a) 原価管理の徹底:以前から進めていた社内での原価管理を徹底、これに加え下記取組みにより作業効率が大きく改善したことにより、利益率が向上した。
b) 利益率マイナス要因の減少:業界環境の好転により受注環境が改善し、コストと品質のバランスがとれた受注実態となっている。さらに工程管理を徹底したことから進捗遅れが減少し、特に大型案件での採算性(利益率)が改善した。
c) 現場サポート体制の整備:現場の技術者をサポートするため、2015年4月から調達本部による購買業務支援、同じくサイト業務支援センターによる現場書類関係業務支援、2016年4月から設計支援センターによる設計業務支援のほか、技術エキスパートによる品質監理などを行ってきたが、これらの効果が出始めた(作業効率の向上)。
その一方で販管費は実額で106百万円増加したことから、対売上高比率は前期の9.2%から9.8%へ上昇したが、これは売上高が減少したことによるもので、想定の範囲内であった。
(2) セグメント別損益状況
建築設備事業の売上高は141,567百万円(前期比5.6%減)となった。サブセグメント別では、ビル空調衛生が前期比6.4%減の60,376百万円、産業空調が同5.1%減の49,440百万円、電気が同6.2%減の21,542百万円、ファシリティシステムが同2.0%減の10,208百万円とすべてのサブセグメントで前期比マイナスとなった。ビル空調衛生では大型工事を中心に前期を下回ったが、次期繰越高は60,013百万円と高水準となった。その他のサブセグメントも前期を下回ったものの、前々期(2015年3月期)並みの売上高は確保した。
機械システム事業の売上高は8,192百万円(同11.1%減)、環境システム事業の売上高は18,271百万円(同2.5%減)となった。機械システム事業の売上高が2ケタ減となったのは、前期の大型案件売上高が相対的に大きかったためであり、ほぼ想定内の結果であった。不動産事業の売上高は1,592百万円(同3.9%増)、その他事業の売上高は499百万円(同7.9%減)となり、おおむね計画どおりの結果であった。
またセグメント別の経常利益は、建築設備事業が6,404百万円(同16.8%減)、機械システムは大型工事が一巡したこともあり138百万円の損失(同275百万円の利益)、環境システムが671百万円(同315百万円の損失)となった。この結果、設備工事全体の経常利益は6,938百万円(同9.4%減)となった。前々期(3,073百万円)と比べれば、利益水準は依然として高いと言える。また不動産事業及びその他事業の経常利益は、各々189百万円(同18.8%減)、22百万円(同57.2%減)となったが、これらもほぼ想定内の水準であった。
(3) セグメント別受注状況
建築設備事業全体の受注高は146,612百万円(前期比3.8%減)であった。ビル空調衛生は大型工事受注もあり65,763百万円(同0.6%減)と前期並みを維持した。産業空調は49,823百万円(同5.1%減)と前期比では減少したが、前期の水準が特別に高かったことを考慮すれば、決して懸念するレベルではなかった。ちなみに、前々期の受注高(46,765百万円)は上回っている。電気は21,576百万円(同4.8%減)となったが、傾向は同様で20,000百万円超えの受注を維持していることは評価できる。ファシリティシステムも9,450百万円(同14.6%減)と前期を下回ったが、前々期並みの水準(9,272百万円)は維持した。
プラント設備事業では、機械システムの受注高は8,130百万円(同21.1%減)となったが、これは前期に大型案件の受注があったことによる。一方で環境システムの受注高は、大型のDBO※案件を受注したこともあり30,626百万円(同56.2%増)と大幅増となった。この結果、プラント設備事業全体の受注高は38,756百万円(同29.5%増)と前期比で大幅増となった。
※DBO(Design Build Operate)とは、設計・建設と運営・維持管理を民間の事業者(同社など)に一括発注する方式で、公設民営の一つの方式。
大型案件(10億円以上)の受注は、計15件、40,057百万円(前期は19件、31,476百万円、前々期は12件、20,619百万円)であった。前期に比べて受注件数は減少したが、金額は増加しており、大型案件の1件当りの平均受注額はここ数年増加傾向にある。
このような状況から、2017年3月期の全受注高は185,880百万円(同1.4%増)と前期比では微増であった。売上高が減少したこともあり、期末の次期繰越高は123,756百万円(同16.3%増)と大幅に増加した。
2. 財務状況
2017年3月期末の財務状況について、流動資産は114,906百万円(前期末比585百万円減)となったが、これは主に売掛債権の減少13,078百万円などによる。固定資産は51,705百万円(同2,225百万円減)となったが、これは主に投資その他資産の減少2,368百万円などによる。この結果、期末の総資産は166,612百万円(同2,810百万円減)となった。
流動負債は66,776百万円(同4,087百万円減)となったが、これは主に買掛債務の減少3,183百万円などによる。固定負債は11,875百万円(同126百万円減)となったが、これは主に繰延税金負債の減少555百万円などによる。この結果、期末の負債合計は80,651百万円(同4,214百万円減)となった。また、親会社株主に帰属する当期純利益の計上による利益剰余金の増加2,727百万円等により、純資産合計は85,961百万円(同1,403百万円増)となった。
3. キャッシュフローの状況
2017年3月期の営業活動によるキャッシュフローは、10,845百万円の増加となったが、これは主に税金等調整前当期純利益の計上7,004百万円、売上債権の減少8,808百万円によるものである。投資活動によるキャッシュフローは1,644百万円の減少となった。財務活動によるキャッシュフローは2,458百万円の減少となったが、これは主に配当金の支払い1,970百万円によるものである。
この結果、2017年3月期の現金及び現金同等物は、前期末に比べて6,686百万円増加し、期末残高は39,187百万円となった。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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