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テクマト Research Memo(7):中期経営計画最終年度、旺盛な情報セキュリティ需要を追い風に規模拡大

注目トピックス 日本株
■中長期の成長戦略

テクマトリックス<3762>が2016年3月期に発表した中期経営計画「TMX3.0」では、3ヶ年計画の基本方針として「従来のIT産業の労働集約的なビジネスから脱却し、自らITサービスを創造し、ITサービスを提供する『次世代のITサービスクリエーター』、『次世代のITサービスプロバイダー』への変貌を継続する」としている。2018年度3月期がその最終年度となる。数値目標としては、1)年率売上高成長率10%、2)事業規模(売上高)を250億円〜300億円、3)ストック比率50%超の実現、4)売上高営業利益率10%への挑戦、の4指標を掲げている。以下、その事業戦略とオペレーション戦略について、2017年3月期の進捗を検証する。

1. 事業戦略
「基盤事業の収益安定化と成長投資による高収益事業の創出を図り、持続的な企業成長を目指す」
この経営基本方針のもとに、以下の成長戦略を掲げている。

(1) クラウド関連事業の戦略的・加速度的推進
同社では、CRM分野と、医療分野、及びインターネットサービス分野において既にクラウドサービス化を進めている。

以下、同社クラウド関連の個別戦略における進捗を検証する。

a) クラウド事業による収益貢献(医療クラウドの黒字化実現)
中期計画期間中の医療クラウドの黒字化を目標としていたが、中計2年目に達成した。第1四半期において「NOBORI」の受注が遅れたが、その後追い上げて、第3四半期途中の単月ベースで黒字化、通期でも黒字化を達成した。「NOBORI」の契約施設数は17年3月期末時点で累計約650施設となり、期初時点での期末目標600施設を超過達成した。この契約施設数は、クラウドPACS(放射線医用画像管理システム)市場の80%を超えるシェアに該当するという試算もある。また、「NOBORI」に画像を保管している患者数は延べ約15百万人超(2017年3月31日現在)に達し、複数病院受診による重複は一部あると思われるが、日本の人口の約8人に1人がNOBORIにデータを保管している計算になる。一方、「医知悟」の遠隔読影プラットフォームを利用する専門医数は約1,300人(2017年5月15日現在)で、実稼働約3千数百人といわれる専門医の約3人に1人が利用していることになる。CRM分野の「FastCloud」は既に黒字化し、順調に利益貢献している。インターネットサービス分野では、ネットショップ向けサービス「楽楽アイテムマネージャー」のリリースなどを行ったが、新規サービスの投資がかさみ採算性ではやや苦戦した。

b) クラウド事業のプラットフォーム化(多角化)
「NOBORI-PAL」により医療分野でのプラットフォーム化を狙っており、検査予約サービス「TONARI」等の自社付加価値サービスや周辺領域で事業展開をしているパートナー各社より提供されるサービスの拡充を図っており、順調な進捗である。前述の「NOBORI」契約施設数の拡大とあいまって、医療クラウドのプラットフォーム化が進めば、競合他社との差別化がより一層進むこととなる。また、ソフトバンク<9984>と医知悟との連携により病理専門医の遠隔診断業務を支援するプラットフォームサービスの提供を開始した。

c) 海外(アジア)でのクラウド事業の確立
医療分野で中国に合弁会社を設立し、北京大学と病理分野で提携した。CRM分野でASEANトランス・コスモス(タイ)との協業を開始した。アジアを中心とした海外でクラウド事業展開のスタートとなった。ただ、いずれも事業として実を得るまでには、まだ多少は時間を要するものと思われる。

d) その他
クラウド運用の安定化、設備投資の継続により、運用技術は飛躍的に向上・高品質化している。ハイパーコンバージドソリューション「VCE VxRail」、沖縄クロス・ヘッドの「nas2cloud Plus」など、各種仮想化技術の戦略的応用(クラウド・ファーストの実践)についても順調に成果を出している。ビッグデータ解析(データの二次利用)の分野においては、製薬BI(ビジネスインテリジェンス)、予算管理分野を開拓している。

(2) セキュリティ&セイフティの追求
セキュリティ&セイフティは、インターネット時代には不可欠な要素である。あらゆるモノがインターネットによって相互接続されるIoTが浸透し、企業活動や個人の生活のあらゆる局面でインターネットを利用する現代において、その利便性の裏には常に安心・安全に対するリスクが潜んでいる。この社会的な課題を克服するべく展開しているのがセキュリティ&セイフティである。

以下、セキュリティ&セイフティに関連する個別戦略の進捗を検証する。

a) サイバー・セキュリティ対策の高度化対応とワンストップ・サービス化
「Swivel PINsafe」(英国Swivel Secure Ltd.のトークン不要二要素認証ソリューション)、「ProofPoint」(米国ProofPoint Inc.の次世代型メールセキュリティソリューション)、「Tanium Endpoint platform」(米国Tanium Inc.のネットワーク端末脅威対策プラットフォーム製品)、「Votiro Auto Suite for FileZEN」(ファイル無害化自動連携ツール)、「CylancePROTECT®」(AIを活用した次世代アンチウィルス製品)の各ソリューション・サービスの販売・提供を開始し、サイバー・セキュリティ対策におけるサービスラインナップが拡充した。前述のように、政府・自治体、民間、いずれの分野においてもセキュリティ対策強化が追い風となっており、セキュリティ対策関連製品の拡販が今後とも大いに期待される。

b) 設計、構築、保守、運用・監視サービス、自動化のバリューチェーン実現
NOC(ネットワークオペレーションセンター)/SOC(セキュリティオペレーションセンター)による保守・運用で、「∴TRINITY for BIG-IP マネージドサービス」など製品販売に加えた保守・運用サービス体制の拡充を行い、獲得案件に対する一気通貫のバリューチェーンが確立した。

c) IoT(Internet of Things)時代の組込みソフトウェアの機能安全実現
第2四半期までは円高による企業の投資意欲の陰りが懸念されたが、第3四半期以降の円安傾向で改善の兆しが見られた。長期的にはテストツール・分析ツールなどの拡販は伸長するものと予想される。今日、組み込みソフトウェアと言えば、情報家電、カーナビ、OA機器や携帯電話などだけでなく、自動車、医療機器、ロボットなど、より高度な安全性やセキュリティが求められる機器が急増している。各業界における規格準拠(自動車ISO26262、電気・電子機器関連IEC61508、医療機器IEC62304、など)のコンサルティングのニーズもある。

2. オペレーション戦略
上記の中核的事業戦略を効果的に実現するために、以下の定性的なオペレーション戦略を策定し推進している。直ちに売上高や利益などの業績に直結する事業戦略だけでなく、長期的な事業を推進していく基盤づくりを行うという点で、同社の堅実性が表れている。以下、個別戦略の進捗を検証する。

(1) コストダウンによる高収益化
オフショア開発の積極的活用による原価低減については、ベトナム、中国でのオフショアの取り組みを推進し、オフショア開発プロセスが確立された。本社機能の集約によるオペレーションの効率化については、本社統合、名古屋営業所、仙台営業所の移転、大阪支店を西日本支店と改称して移転することで実現した。人員の単調増加を要求しないビジネスモデルへの転換については、ストックビジネスの拡大(前記ストック比率の向上)で着実に進捗している。

(2) パートナーとのアライアンス強化
医療分野で、ソフトバンク、北京大学との業務連携を実現した。まだ業績に貢献するまでは多少時間を要するかもしれないが、将来的な可能性を探るスタートとなった。また、CRM分野では、日本ユニシス及び日本電気とコンタクトセンターCRM製品「Fastシリーズ」の販売代理店契約を締結、LINE<3938>とLINE活用の法人向けカスタマーサポートサービス「LINE Customer Connect」の提供、(株)BEDOREが提供するAI対話エンジン「BEDORE」と連携したAI顧客サービス・ソリューションの提供、ASEANトランス・コスモス(タイ)との協業、などを開始した。ハードメーカー及び販売代理店、ソフトウェア・サービス提供者など、様々なパートナーと多角的な連携ができている。

(3) 直販力強化、官公庁需要の深耕
自治体向けセキュリティ関連案件は大手システム・インテグレーター等経由の間接受注で案件獲得できているが、直接入札は不調だった。規模の拡大を図る上で、当面は大手販売店経由の間接販売が中心となるが、同社は、今後とも直接受注を拡大すべく、体制面での強化を図るとしている。2017年3月期はファイル無害化連携ソリューションについて官公庁関係で実績を伸ばした。今後は文教系や金融系への展開もあるとしている。

(4) ダイバーシティの推進による戦力強化
同社は人数の公表はしていないが、新卒採用で女性、外国籍者、及び障害者の採用拡大を行い、多様な人材によって社内の活性化を推進するとしている。

(5) 企業集団としてのブランドの強化
2016年9月に同社Webサイトのリニューアルを実施し、会社紹介映像などを作成している。また、泉岳寺の駅構内に同社広告を掲載している。同社の事業は、基本的にはBtoB(Business to Business:企業間の取引関係)の形態が主体である。しかし、今後の事業拡大には、知名度及び企業イメージ向上も必須として広告宣伝によるブランド強化を図っている。

3. トピックス
2017年3月期における同社グループが実施した事業活動のうちから以下3点を紹介する。

(1) 医療分野でソフトバンクと業務提携(2016年10月)
ソフトバンクと提携し、医知悟が開発した専用通信機器「iCOMBOX」を用いた遠隔病理プラットフォームの提供を開始した。医療機関と遠隔地の病理医をネットワークで接続することで、深刻な病理医不足を解消できる。医知悟は放射線分野で既に高いシェアを獲得しているが、さらに病理分野への展開を図ることで、医療分野での更なる事業拡大が期待できる。

(2) AIを活用した次世代アンチウィルス製品「CylancePROTECT®」の販売開始(2017年2月)
米国のCylance®,Inc.の「CylancePROTECT®」の販売を開始した。巧妙化、高度化するサイバー攻撃に対し、AIを活用した機械学習技術とアルゴリズムにより、新種のコンピュータウィルスでも検知し、防御することができる。情報セキュリティに関するニーズが官公需・民需ともに高まる中で、製品ラインアップを拡充することで、更なる事業拡大が期待できる。

(3) LINEが提供する「LINEカスタマーコネクト」の販売パートナー契約を締結(2017年4月)
LINEが提供する「LINEカスタマーコネクト」の販売パートナー契約を締結した。「LINEカスタマーコネクト」はLINEを介して、AIや有人によるチャット対応や音声通話対応など、状況やニーズに応じた適切なカスタマーコミュニケーションを実現するサービスである。同社では、AIを活用した新しいサービスの開発を進めており、今後は様々な応用分野への展開が期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 山田 秀樹)



<NB>

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