リアルワールド Research Memo(5):一過性の特殊要因が利益を圧迫するも想定内の進捗
[17/06/30]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 2017年9月期上期決算の概要
リアルワールド<3691>の2017年9月期上期の業績は、売上高が前年同期比1.5%増の2,284百万円、営業利益が同88.7%減の15百万円、経常利益が同77.3%減の31百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同97.6%減の1百万円と増収ながら大幅な減益となった。もっとも、2016年9月期に発覚した不適切な会計処理(収益の期間認識の違い等)の再発防止策等にかかる一過性の要因が利益を圧迫したものの、想定の範囲内とみられる。
売上高は、クラウドソーシングが積極投資と事業成長により大きく伸びた。特に、子会社のリアルキャリアによる在宅ワーカーの獲得が好調であったことに加え、クラウドソーシングとのハイブリッド型の提案が受け入れられたことも業績の伸びに寄与した。在宅ワーカーの稼働社数は半年間で700%増、稼働者数も855%増とまだ小規模ながら短期間で大きく伸びている。
ただ、増収率が緩やかな水準にとどまったのは、クラウドメディアが低調に推移したことが理由である。総会員数が1,018万人(前年同期末比66万人増)と順調に拡大したものの、外部要因として広告出稿量の減少や広告単価の低下が見られるうえ、不正ユーザー対策を強化したことに伴う想定外の副作用(利便性の低下等)により、一時的なアクティブ率の低下を招いたことが直接の原因となった。
損益面では、アクティブ率を高めるためのポイント施策や在宅ワークの立ち上げに伴うコスト要因により売上原価率が若干上昇したことや、販管費が大きく拡大したことが大幅な営業減益を招いた。特に、販管費の拡大は、前述のとおり、前期に発覚した不適切な会計処理にかかる再発防止策(基幹システムの強化による経営基盤整備など)や監査法人の交代に伴う費用の増加が大きく影響している。
また、過去に事業提携の目的で取得した投資有価証券の売却益(18百万円)を営業外収益に計上した。資本効率の視点から低稼働資産を売却し、その資金を今後の成長分野に振り向けることが目的とみられる。
財務面では、総資産が「現金及び預金」の減少等により3,451百万円(前期末比5.6%減)に縮小した一方、自己資本はほぼ横ばいで推移したことから、自己資本比率は26.8%(前期末は25.3%)に改善した。一方、「有利子負債(リース債務を除く)」も1,183百万円(前期末比8.5%減)に削減しており、財務の健全性は高まったと言える。
以上から、上期の進捗を総括すると、1)一過性の要因が利益を圧迫したこと、2)クラウドメディアが伸び悩んだことが業績の足を引っ張る要因となったが、3)注力する在宅ワークが急成長してきたところはプラス要因と言える。特に、同社独自の提案(ハイブリッド型)が顧客企業ニーズにうまくはまってきたところは、今後の成長加速や収益構造の転換(ストック型)に向けて明るい材料である。
2. 2017年9月期の業績予想
2017年9月期の業績予想について同社は、上期実績が計画どおりの進捗であったことから期初予想を据え置き、売上高を前期比13.0%増の5,200百万円、営業利益を同26.3%減の150百万円、経常利益を同30.9%減の150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を30百万円(前期は89百万円の損失)と増収及び営業減益を見込んでいる。ただ、最終損益については、不適切な会計処理の発覚に伴う損失計上から黒字転換となる見通しである。
売上高は、順調に積み上がってきた会員のアクティブ化を図ることや、在宅ワークを含めて需要が拡大しているクラウドソーシングの伸びが増収に寄与する想定となっている。ただ、体制面の強化を優先的に行う方針であり、その影響(業務フローの見直し等に伴う一時的な業務のもたつきや立ち上がりの遅れなど)を慎重に見定める必要があることから、業績の伸びをやや緩やかな水準にとどめていると考えられる。
また、営業減益となるのは、体制面の強化や監査法人の交代に伴う費用を合理的に見積もったことが理由である。
弊社では、足元でのクラウドメディアの伸び悩み(外部要因による広告収入の低迷など)が気になるものの、売上高予想については、上期進捗(通期予想に対して約44%)が順調であったことに加えて、単価の高い在宅ワークが想定以上に伸びてきたことから会社予想の達成は十分に可能であると判断している。
一方、営業利益予想については、上期進捗(通期予想の対して10%)に対して遅れがみられるが、一過性のコスト要因が解消に向かうなかで、在宅ワークの伸びと収益性の改善(パターン化や仕組み化による業務効率の向上等)がどの程度寄与してくるかにかかっているとみている。いずれにしても、今後の収益ドライバーとして期待される在宅ワーク(ハイブリッド型を含む)の動向について注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MW>
1. 2017年9月期上期決算の概要
リアルワールド<3691>の2017年9月期上期の業績は、売上高が前年同期比1.5%増の2,284百万円、営業利益が同88.7%減の15百万円、経常利益が同77.3%減の31百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同97.6%減の1百万円と増収ながら大幅な減益となった。もっとも、2016年9月期に発覚した不適切な会計処理(収益の期間認識の違い等)の再発防止策等にかかる一過性の要因が利益を圧迫したものの、想定の範囲内とみられる。
売上高は、クラウドソーシングが積極投資と事業成長により大きく伸びた。特に、子会社のリアルキャリアによる在宅ワーカーの獲得が好調であったことに加え、クラウドソーシングとのハイブリッド型の提案が受け入れられたことも業績の伸びに寄与した。在宅ワーカーの稼働社数は半年間で700%増、稼働者数も855%増とまだ小規模ながら短期間で大きく伸びている。
ただ、増収率が緩やかな水準にとどまったのは、クラウドメディアが低調に推移したことが理由である。総会員数が1,018万人(前年同期末比66万人増)と順調に拡大したものの、外部要因として広告出稿量の減少や広告単価の低下が見られるうえ、不正ユーザー対策を強化したことに伴う想定外の副作用(利便性の低下等)により、一時的なアクティブ率の低下を招いたことが直接の原因となった。
損益面では、アクティブ率を高めるためのポイント施策や在宅ワークの立ち上げに伴うコスト要因により売上原価率が若干上昇したことや、販管費が大きく拡大したことが大幅な営業減益を招いた。特に、販管費の拡大は、前述のとおり、前期に発覚した不適切な会計処理にかかる再発防止策(基幹システムの強化による経営基盤整備など)や監査法人の交代に伴う費用の増加が大きく影響している。
また、過去に事業提携の目的で取得した投資有価証券の売却益(18百万円)を営業外収益に計上した。資本効率の視点から低稼働資産を売却し、その資金を今後の成長分野に振り向けることが目的とみられる。
財務面では、総資産が「現金及び預金」の減少等により3,451百万円(前期末比5.6%減)に縮小した一方、自己資本はほぼ横ばいで推移したことから、自己資本比率は26.8%(前期末は25.3%)に改善した。一方、「有利子負債(リース債務を除く)」も1,183百万円(前期末比8.5%減)に削減しており、財務の健全性は高まったと言える。
以上から、上期の進捗を総括すると、1)一過性の要因が利益を圧迫したこと、2)クラウドメディアが伸び悩んだことが業績の足を引っ張る要因となったが、3)注力する在宅ワークが急成長してきたところはプラス要因と言える。特に、同社独自の提案(ハイブリッド型)が顧客企業ニーズにうまくはまってきたところは、今後の成長加速や収益構造の転換(ストック型)に向けて明るい材料である。
2. 2017年9月期の業績予想
2017年9月期の業績予想について同社は、上期実績が計画どおりの進捗であったことから期初予想を据え置き、売上高を前期比13.0%増の5,200百万円、営業利益を同26.3%減の150百万円、経常利益を同30.9%減の150百万円、親会社株主に帰属する当期純利益を30百万円(前期は89百万円の損失)と増収及び営業減益を見込んでいる。ただ、最終損益については、不適切な会計処理の発覚に伴う損失計上から黒字転換となる見通しである。
売上高は、順調に積み上がってきた会員のアクティブ化を図ることや、在宅ワークを含めて需要が拡大しているクラウドソーシングの伸びが増収に寄与する想定となっている。ただ、体制面の強化を優先的に行う方針であり、その影響(業務フローの見直し等に伴う一時的な業務のもたつきや立ち上がりの遅れなど)を慎重に見定める必要があることから、業績の伸びをやや緩やかな水準にとどめていると考えられる。
また、営業減益となるのは、体制面の強化や監査法人の交代に伴う費用を合理的に見積もったことが理由である。
弊社では、足元でのクラウドメディアの伸び悩み(外部要因による広告収入の低迷など)が気になるものの、売上高予想については、上期進捗(通期予想に対して約44%)が順調であったことに加えて、単価の高い在宅ワークが想定以上に伸びてきたことから会社予想の達成は十分に可能であると判断している。
一方、営業利益予想については、上期進捗(通期予想の対して10%)に対して遅れがみられるが、一過性のコスト要因が解消に向かうなかで、在宅ワークの伸びと収益性の改善(パターン化や仕組み化による業務効率の向上等)がどの程度寄与してくるかにかかっているとみている。いずれにしても、今後の収益ドライバーとして期待される在宅ワーク(ハイブリッド型を含む)の動向について注目していきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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