三井化学 Research Memo(9):ビジョンケア材料ではシナジーを本格追求へ。歯科材料は本格成長の準備が整う
[17/07/03]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■三井化学<4183>の中長期成長戦略における事業セグメント別動向
2. ヘルスケア事業
ヘルスケア事業は、2026年3月期において営業利益450億円を目標としている。2017年3月期を起点に2026年3月期までの9年間の営業利益のCAGR(年平均成長率)は18.1%となる。ヘルスケア事業は各製品群それぞれに3つの基本戦略に基づく具体的施策が掲げられている。
(1) ビジョンケア材料の成長戦略
ビジョンケア材料は、プラスチック製メガネレンズ材料(レンズモノマー)市場において世界シェア45%を有している。2000年代に入り、レンズモノマーの製品ラインナップ拡大(同社自身が得意な高屈折率領域から、汎用品の低屈折率領域まで展開)や、レンズに機能を付加するコーティング材・技術の獲得を目指して、様々な企業を買収してきた。
2018年3月期からはこれら子会社群の有する技術を生かして周辺領域での事業拡大や、最終製品評価技術の充実による新製品創出の加速に取り組む予定だ。
(2) 不織布の成長戦略
不織布では、同社はプレミアムおむつ向けの高級・高機能不織布の分野に的を絞って展開しており、その市場では世界シェア60%〜70%を有している。乳児用紙おむつの世界市場の成長率は年6%と見込まれているが人口拡大が著しいアジアやアフリカでの成長率はさらに高いと見込まれている。同社は“需要に応じた能力増強”の実行を成長戦略の核に据えて対応していく方針だ。2018年3月期は四日市の100%子会社で6,000トン/年の増強を行い、国内を70,000トン/年体制に引き上げる計画だ(2017年11月完工予定)。
また、高機能不織布の新製品“エアリファ”の開発に成功した(2017年5月)。これはソフト感と高強度を両立させた中空糸による不織布で、プレミアム紙おむつだけではなくメディカル用途等の新市場展開が期待されている。同社は名古屋工場に15,000トン/年の新拠点設立も決定している(2017年11月完工予定)。
(3) 歯科材料の成長戦略
2018年3月期は歯科材料事業が本格成長を迎える年になると期待されている。同社がHeraeus Kulzerを2013年に買収以来、北米ではビジネスモデルの転換期に当たったこともあり、リストラモードが続いてきた。欧米では義歯の製作の機械化が進んでいるが、Heraeus Kulzerは大型の工場を建設し義歯製作を集中的に引き受けるセントラル方式を志向していた。しかし世の中の流れは、コンピューターの世界でメインフレームからPCへと移行したと同様に、小型の3Dプリンタを各クリニックが導入して自製する方式へと急速に転換が進んだ。同社もビジネスモデルの転換を迫られたが小型3Dプリンタや歯科材料としての専用インクの市場投入が開始され、追撃態勢が整った。
2017年3月期には北米での販売が前期比11%増と底打ち・反転を示した。2018年3月期からは、歯科材料ブランドを“Kulzer”に改め、本格的な成長回帰に挑む方針だ。当面はHeraeus Kulzerの元来の営業地盤である北米と欧州での事業確立を目指すが、中期的には日本・アジア地域での展開も開始してくるとみられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
<MW>
2. ヘルスケア事業
ヘルスケア事業は、2026年3月期において営業利益450億円を目標としている。2017年3月期を起点に2026年3月期までの9年間の営業利益のCAGR(年平均成長率)は18.1%となる。ヘルスケア事業は各製品群それぞれに3つの基本戦略に基づく具体的施策が掲げられている。
(1) ビジョンケア材料の成長戦略
ビジョンケア材料は、プラスチック製メガネレンズ材料(レンズモノマー)市場において世界シェア45%を有している。2000年代に入り、レンズモノマーの製品ラインナップ拡大(同社自身が得意な高屈折率領域から、汎用品の低屈折率領域まで展開)や、レンズに機能を付加するコーティング材・技術の獲得を目指して、様々な企業を買収してきた。
2018年3月期からはこれら子会社群の有する技術を生かして周辺領域での事業拡大や、最終製品評価技術の充実による新製品創出の加速に取り組む予定だ。
(2) 不織布の成長戦略
不織布では、同社はプレミアムおむつ向けの高級・高機能不織布の分野に的を絞って展開しており、その市場では世界シェア60%〜70%を有している。乳児用紙おむつの世界市場の成長率は年6%と見込まれているが人口拡大が著しいアジアやアフリカでの成長率はさらに高いと見込まれている。同社は“需要に応じた能力増強”の実行を成長戦略の核に据えて対応していく方針だ。2018年3月期は四日市の100%子会社で6,000トン/年の増強を行い、国内を70,000トン/年体制に引き上げる計画だ(2017年11月完工予定)。
また、高機能不織布の新製品“エアリファ”の開発に成功した(2017年5月)。これはソフト感と高強度を両立させた中空糸による不織布で、プレミアム紙おむつだけではなくメディカル用途等の新市場展開が期待されている。同社は名古屋工場に15,000トン/年の新拠点設立も決定している(2017年11月完工予定)。
(3) 歯科材料の成長戦略
2018年3月期は歯科材料事業が本格成長を迎える年になると期待されている。同社がHeraeus Kulzerを2013年に買収以来、北米ではビジネスモデルの転換期に当たったこともあり、リストラモードが続いてきた。欧米では義歯の製作の機械化が進んでいるが、Heraeus Kulzerは大型の工場を建設し義歯製作を集中的に引き受けるセントラル方式を志向していた。しかし世の中の流れは、コンピューターの世界でメインフレームからPCへと移行したと同様に、小型の3Dプリンタを各クリニックが導入して自製する方式へと急速に転換が進んだ。同社もビジネスモデルの転換を迫られたが小型3Dプリンタや歯科材料としての専用インクの市場投入が開始され、追撃態勢が整った。
2017年3月期には北米での販売が前期比11%増と底打ち・反転を示した。2018年3月期からは、歯科材料ブランドを“Kulzer”に改め、本格的な成長回帰に挑む方針だ。当面はHeraeus Kulzerの元来の営業地盤である北米と欧州での事業確立を目指すが、中期的には日本・アジア地域での展開も開始してくるとみられる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)
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