サン電子 Research Memo(3):2017年3月期は新規事業への積極投資など「成長への基盤作り」には一定の成果
[17/07/10]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■決算動向
1. 2017年3月期決算の概要
サン電子<6736>の2017年3月期の業績は、売上高が前期比8.0%増の24,698百万円、営業利益が65.3%減の141百万円、経常損失が221百万円(前期は185百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が581百万円(前期は154百万円の利益)と増収ながら大幅な減益となり、経常(及び最終)損失に転落した。計画に対しても、売上高が超過したものの、各利益では大きく未達となった。
売上高は、フォレンジック(モバイルデータソリューション)の拡大が増収に寄与した。また、M2M(その他)も通信デバイスの売上拡大とBacsoftの連結効果(9ヶ月分の上乗せ)も手伝って、まだ小規模ながら大きく伸びている。一方、エンターテインメント関連は、厳しい市場環境が続く中で減収となったが想定の範囲内である。ただ、売上高全体では計画を超過したものの、モバイルデータソリューションが現地通貨ベース※で未達となったほか、その他(M2M)も計画を下回った。
※海外子会社換算レートは1米ドル=116.49円(2016年12月末)。想定レートは105円であったため、円貨ベースで上振れ要因となった。なお、前期(2015年12月末)の換算レートは120.61円であった。
損益面では、粗利益率の高いモバイルデータソリューションの拡大により原価率が低下したものの、販管費の拡大により大幅な営業減益となった。販管費の拡大は、研究開発費(モバイルデータソリューション、M2M、AR及びVR等)やのれん償却額(Bacsoft)のほか、Bacsoftの連結化による販管費の上乗せ、モバイルデータソリューションの先行費用(拠点増設に伴う費用や人件費等)などによるものである。もっとも、販管費については、AR向けの研究開発費が上振れた以外は、ほぼ想定の範囲内であり、営業利益が計画を下回った要因としては、モバイルデータソリューション及びM2Mの売上高(現地通貨ベース)が下振れたことによる影響が大きい。
また、営業外費用として、持分法適用会社3社による持分投資損失(386百万円)を計上したことから経常損失に落ち込んだ。特に、事業の進捗に遅れがみられるCellomatに係る96百万円の損失が想定外であったようだ。さらには、Bacsoftにかかるのれんの減損損失を含む減損損失(293百万円)を特別損失に計上している。
財務面では、「現金及び預金」の増加等により総資産が前期末比4.1%増の27,316百万円に拡大した一方、自己資本は最終損失の計上により前期末比10.1%減の13,613百万円に縮小したことから、自己資本比率は49.8%(前期末は57.7%)に低下した。なお、「現金及び預金」の増加(前期末比約15億円増)は、前受収益の増加(同11億円増)によるものであるが、これはモバイルデータソリューションの将来に対応するソフトウエア更新料に関する収益のうち、事前に現預金を受け取ったものである。
事業別の業績は以下のとおりである。
1)モバイルデータソリューションは、売上高が前期比20.4%増の14,395百万円、セグメント利益が同92.8%増の903百万円と大幅な増収増益であった。ただ、計画に対しては、売上高が超過したものの、利益では未達となったようだ。売上高では、フォレンジックが大きく伸びている。買い替え需要の先食いによる反動減や米国における予算執行の遅れ等により、前期の業績が一旦後退したものの、それら一過性要因の解消や拠点増設などの取り組みが奏功して、再び成長軌道に戻すことができたと言える。一方、現地通貨のインボイスベースでみると、フォレンジックが前期比30.7%増と伸びているものの、MLCは同16.7%減と縮小するとともに、計画(現地通貨ベース)に対しては両方ともに下回る結果となっている。特に、MLCの縮小(下振れ)は、従来のトランスファーサービスが代替サービス(iCloud等クラウド型のデータ移行サービス)の台頭により需要減となっているうえ、それをカバーする予定であった故障診断サービス(Diagnostics)が本格導入に至らなかったことが影響した。顧客側の効果測定(コスト削減等)や業務フローの見直しなど、セールスサイクル(導入に至るまでのプロセス)に時間がかかっていることが原因となっている。また、フォレンジックについても、主要の米国等では順調に推移したものの、拠点を設立し販売強化に取り組んでいる中国での販売が低調であった。
損益面では、先行費用(研究開発費や拠点増設に伴う費用や人件費など)が拡大しているものの、増収により吸収することで大幅な増益を実現した。ただ、前述のとおり、計画に対しては、売上高が現地通貨ベースで未達となったことが影響して、利益では円貨ベースでも下振れる結果となった。
2)エンターテインメント関連は、売上高が前期比11.1%減の8,334百万円、セグメント利益が同44.2%減の652百万円と減収減益となったが、ほぼ計画どおりの結果である。従来の自主規制の影響に加え、伊勢志摩サミットの開催に伴う新台設置の自粛、検定と性能が異なる可能性があるパチンコ遊技機の回収・撤去の影響など、厳しい業界環境が続く中で、ホールにおける投資意欲の減退が同社の業績にも大きく影響し、新機種に係る遊技機部品及びトータルコンピュータシステムの販売減が業績の足を引っ張った。
3)その他(M2M、ゲームコンテンツ、新規事業等)は、売上高が前期比27.7%増の1,968百万円、セグメント損失が640百万円(前期は491百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。また、計画に対しても売上高、利益ともに未達となった。
M2M事業は、前期に買収したBacsoftが期初から寄与したことに加えて、M2M通信機器が施設管理向け及びセキュリティ向けに順調に拡大したことで大きく伸びた。ただ、Bacsoftを中心に展開するIoTソリューション(ソフトウェア)については、長いセールスサイクルやまだ実証実験段階にあるものが多いことから、本格的な業績貢献には至らず、計画を下回る要因となっている。損益面でも、のれんの償却額の増加や先行費用の高止まりやBacsoftの連結化による販管費の上乗せなどにより損失幅が拡大した。
ゲームコンテンツ事業は、前期に販売開始した新規タイトルが好調に推移し、増収を確保したものの、黒字転換には至らなかった。
一方、AR、VR、新規等は、まだ設計・開発段階にあり、開発の本格化や組織強化などに向けた先行費用が膨らんだ。特に、AR技術を活かしたソリューション開発やVR向けゲームコンテンツ開発は、2018年3月期下期でのリリースに向けて最終段階に入ってきた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MW>
1. 2017年3月期決算の概要
サン電子<6736>の2017年3月期の業績は、売上高が前期比8.0%増の24,698百万円、営業利益が65.3%減の141百万円、経常損失が221百万円(前期は185百万円の利益)、親会社株主に帰属する当期純損失が581百万円(前期は154百万円の利益)と増収ながら大幅な減益となり、経常(及び最終)損失に転落した。計画に対しても、売上高が超過したものの、各利益では大きく未達となった。
売上高は、フォレンジック(モバイルデータソリューション)の拡大が増収に寄与した。また、M2M(その他)も通信デバイスの売上拡大とBacsoftの連結効果(9ヶ月分の上乗せ)も手伝って、まだ小規模ながら大きく伸びている。一方、エンターテインメント関連は、厳しい市場環境が続く中で減収となったが想定の範囲内である。ただ、売上高全体では計画を超過したものの、モバイルデータソリューションが現地通貨ベース※で未達となったほか、その他(M2M)も計画を下回った。
※海外子会社換算レートは1米ドル=116.49円(2016年12月末)。想定レートは105円であったため、円貨ベースで上振れ要因となった。なお、前期(2015年12月末)の換算レートは120.61円であった。
損益面では、粗利益率の高いモバイルデータソリューションの拡大により原価率が低下したものの、販管費の拡大により大幅な営業減益となった。販管費の拡大は、研究開発費(モバイルデータソリューション、M2M、AR及びVR等)やのれん償却額(Bacsoft)のほか、Bacsoftの連結化による販管費の上乗せ、モバイルデータソリューションの先行費用(拠点増設に伴う費用や人件費等)などによるものである。もっとも、販管費については、AR向けの研究開発費が上振れた以外は、ほぼ想定の範囲内であり、営業利益が計画を下回った要因としては、モバイルデータソリューション及びM2Mの売上高(現地通貨ベース)が下振れたことによる影響が大きい。
また、営業外費用として、持分法適用会社3社による持分投資損失(386百万円)を計上したことから経常損失に落ち込んだ。特に、事業の進捗に遅れがみられるCellomatに係る96百万円の損失が想定外であったようだ。さらには、Bacsoftにかかるのれんの減損損失を含む減損損失(293百万円)を特別損失に計上している。
財務面では、「現金及び預金」の増加等により総資産が前期末比4.1%増の27,316百万円に拡大した一方、自己資本は最終損失の計上により前期末比10.1%減の13,613百万円に縮小したことから、自己資本比率は49.8%(前期末は57.7%)に低下した。なお、「現金及び預金」の増加(前期末比約15億円増)は、前受収益の増加(同11億円増)によるものであるが、これはモバイルデータソリューションの将来に対応するソフトウエア更新料に関する収益のうち、事前に現預金を受け取ったものである。
事業別の業績は以下のとおりである。
1)モバイルデータソリューションは、売上高が前期比20.4%増の14,395百万円、セグメント利益が同92.8%増の903百万円と大幅な増収増益であった。ただ、計画に対しては、売上高が超過したものの、利益では未達となったようだ。売上高では、フォレンジックが大きく伸びている。買い替え需要の先食いによる反動減や米国における予算執行の遅れ等により、前期の業績が一旦後退したものの、それら一過性要因の解消や拠点増設などの取り組みが奏功して、再び成長軌道に戻すことができたと言える。一方、現地通貨のインボイスベースでみると、フォレンジックが前期比30.7%増と伸びているものの、MLCは同16.7%減と縮小するとともに、計画(現地通貨ベース)に対しては両方ともに下回る結果となっている。特に、MLCの縮小(下振れ)は、従来のトランスファーサービスが代替サービス(iCloud等クラウド型のデータ移行サービス)の台頭により需要減となっているうえ、それをカバーする予定であった故障診断サービス(Diagnostics)が本格導入に至らなかったことが影響した。顧客側の効果測定(コスト削減等)や業務フローの見直しなど、セールスサイクル(導入に至るまでのプロセス)に時間がかかっていることが原因となっている。また、フォレンジックについても、主要の米国等では順調に推移したものの、拠点を設立し販売強化に取り組んでいる中国での販売が低調であった。
損益面では、先行費用(研究開発費や拠点増設に伴う費用や人件費など)が拡大しているものの、増収により吸収することで大幅な増益を実現した。ただ、前述のとおり、計画に対しては、売上高が現地通貨ベースで未達となったことが影響して、利益では円貨ベースでも下振れる結果となった。
2)エンターテインメント関連は、売上高が前期比11.1%減の8,334百万円、セグメント利益が同44.2%減の652百万円と減収減益となったが、ほぼ計画どおりの結果である。従来の自主規制の影響に加え、伊勢志摩サミットの開催に伴う新台設置の自粛、検定と性能が異なる可能性があるパチンコ遊技機の回収・撤去の影響など、厳しい業界環境が続く中で、ホールにおける投資意欲の減退が同社の業績にも大きく影響し、新機種に係る遊技機部品及びトータルコンピュータシステムの販売減が業績の足を引っ張った。
3)その他(M2M、ゲームコンテンツ、新規事業等)は、売上高が前期比27.7%増の1,968百万円、セグメント損失が640百万円(前期は491百万円の損失)と増収ながら損失幅が拡大した。また、計画に対しても売上高、利益ともに未達となった。
M2M事業は、前期に買収したBacsoftが期初から寄与したことに加えて、M2M通信機器が施設管理向け及びセキュリティ向けに順調に拡大したことで大きく伸びた。ただ、Bacsoftを中心に展開するIoTソリューション(ソフトウェア)については、長いセールスサイクルやまだ実証実験段階にあるものが多いことから、本格的な業績貢献には至らず、計画を下回る要因となっている。損益面でも、のれんの償却額の増加や先行費用の高止まりやBacsoftの連結化による販管費の上乗せなどにより損失幅が拡大した。
ゲームコンテンツ事業は、前期に販売開始した新規タイトルが好調に推移し、増収を確保したものの、黒字転換には至らなかった。
一方、AR、VR、新規等は、まだ設計・開発段階にあり、開発の本格化や組織強化などに向けた先行費用が膨らんだ。特に、AR技術を活かしたソリューション開発やVR向けゲームコンテンツ開発は、2018年3月期下期でのリリースに向けて最終段階に入ってきた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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