EMシステムズ Research Memo(4):ストック型ビジネスモデル転換による高い価格競争力などが強み
[17/07/28]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■市場環境と強み
1. 市場環境
2018年4月に予定されている診療報酬改定により、医療費全体の抑制に向けた動きが今後さらに進む見通しである。また、大手薬局によるM&Aの加速や、ドラッグストアの調剤併設店舗の増加により収益性の格差が拡大する環境のなかで、中小薬局は厳しい経営を強いられる状況がさらに継続すると予想される。このため、後発医薬品の使用促進や残薬管理の強化など、薬局の業務効率向上が一層求められるとともに、かかりつけ薬剤師・健康サポート薬局としての機能が求められている。また、厚生労働省により一定条件下で電子処方箋が解禁される一方、クリニックにおける電子カルテの普及率が35%を超えるなど、医療分野におけるICT化が進んでいる。このため、既に様々な地域でPHR、EHRの実証事業に参画しているEMシステムズ<4820>の役割はこれまで以上に重要であると考えられる。
2. 強み
同社の強みの1つは、ストック型ビジネスモデルを確立したことである。薬局向けのレセプトコンピュータが普及し始めた初期段階においてハードのコストが高いオフコンではなく、安価なパソコンをベースとした。オフコンのシステム導入に比べ導入コストが低かったことが優位に働き、薬局市場で約30%強の高いシェアを確保した。加えて、業界内でいち早く売切り制から初期導入費を抑えた従量課金制を採用したため、同業他社製品に比べ価格競争力が高かった。さらに、同業他社が販売代理店制を採っているのに対して、同社は直販が主体の製販一体体制であることもユーザーサポート力の高さを評価される要因として働いている。また、同社の免震性・セキュリティレベルの高いデータセンターにデータを蓄積できる仕組みになっていることも強みとして挙げられる。
医科システムに関しては、後発であるため市場シェアは現時点で2.8%と低いものの、その弱点を逆手に取り、同業他社製品以上の機能を同社オリジナルの「MRN(Medical Recepty NEXT)」を保有する設計になっている。一方、連結子会社化した(株)ユニコン製のユニメディカルは操作性に優れているという特徴があり、これらを併せた品ぞろえという点で診療所・クリニックのあらゆる医師のニーズに対応できるようになっている点が強みである。
なお、同社では薬局及び医科のデータを保有していることにより、ほぼ現状の設備のまま「EHR(Electronic Health Record:医療情報の連携)」が可能である。今後の医療介護連携に生かすことができるほか、厚生労働省がガイドラインを打ち出し、実施解禁となった電子処方箋への対応も、同業他社よりも少ない設備投資で可能と考えられる。加えて、診療所、薬局、介護サービス事業者へシステムを独自に提供でき、2017年3月にリリースした医療介護連携ソリューション「ひろがるケアネット」でこれらのシステムを連携するソリューションを持つ唯一の事業者になったことは、同社の大きな強みとなると思料される。
3. 競合
調剤システムの競合企業はパナソニック ヘルスケア(株)※、(株)三菱電機ビジネスシステムなどであり、電子薬歴システムでは、(株)グッドサイクルシステム、ハイブリッジ(株)、(株)ユニケソフトウェアリサーチなどである。
※2018年4月からパナソニックヘルスケアホールディングス(株)となりました。
医科システムにおいては、電子カルテではパナソニック ヘルスケア(株)、(株)ラボテック、ビー・エム・エル<4694>、(株)ダイナミクス、富士通<6702>、日立メディカルコンピュータ(株)、(株)ユヤマなどが、レセコンではパナソニック ヘルスケア(株)、日本医師会総合政策研究機構、日立メディカルコンピュータ(株)などが競合先である。
介護システムの競合企業としては、(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア<3794>、エス・エム・エス<2175>の介護システム開発企業のほか、富士通、(株)日立システムズ、内田洋行<8057>など大手企業が挙げられるが、実際バッティングするのは(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア<3794>、エス・エム・エス<2175>の3社のケースが大半である。
4. リスク
主要な事業リスクとしては、1)医療保険制度改正とそれに伴うプログラム変更、2)新製品の開発に伴う想定以上のコスト負担の可能性、などが考えられる。
医療保険制度改正は少子高齢化対応により継続して実施されており、薬価差益の減少、患者個人負担額の増加による来院患者数の減少等、改正の内容や規模により、主要ユーザーである薬局や診療所のシステム投資意欲の減退を招く可能性がある。加えて、大幅な医療保険制度改正が行われ、ソフトウェアのプログラムに大量の修正の必要性が生じた場合、そのコスト負担が業績にマイナス影響を与える可能性がある。
さらに、同社は他社との競争を勝ち抜くために、インターネットを利用した調剤レセプト支援システムのネットワークシステムを始め、クリニック・診療所向けのレセコン融合型電子カルテシステムやオプションシステムの開発に注力している。これらの製品がユーザーの満足度を充足できない場合、機能強化のためのコスト負担が収益のマイナス要因となる可能性があるほか、市場シェア低下の要因となり、業績に多大なインパクトを与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山 崇行)
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1. 市場環境
2018年4月に予定されている診療報酬改定により、医療費全体の抑制に向けた動きが今後さらに進む見通しである。また、大手薬局によるM&Aの加速や、ドラッグストアの調剤併設店舗の増加により収益性の格差が拡大する環境のなかで、中小薬局は厳しい経営を強いられる状況がさらに継続すると予想される。このため、後発医薬品の使用促進や残薬管理の強化など、薬局の業務効率向上が一層求められるとともに、かかりつけ薬剤師・健康サポート薬局としての機能が求められている。また、厚生労働省により一定条件下で電子処方箋が解禁される一方、クリニックにおける電子カルテの普及率が35%を超えるなど、医療分野におけるICT化が進んでいる。このため、既に様々な地域でPHR、EHRの実証事業に参画しているEMシステムズ<4820>の役割はこれまで以上に重要であると考えられる。
2. 強み
同社の強みの1つは、ストック型ビジネスモデルを確立したことである。薬局向けのレセプトコンピュータが普及し始めた初期段階においてハードのコストが高いオフコンではなく、安価なパソコンをベースとした。オフコンのシステム導入に比べ導入コストが低かったことが優位に働き、薬局市場で約30%強の高いシェアを確保した。加えて、業界内でいち早く売切り制から初期導入費を抑えた従量課金制を採用したため、同業他社製品に比べ価格競争力が高かった。さらに、同業他社が販売代理店制を採っているのに対して、同社は直販が主体の製販一体体制であることもユーザーサポート力の高さを評価される要因として働いている。また、同社の免震性・セキュリティレベルの高いデータセンターにデータを蓄積できる仕組みになっていることも強みとして挙げられる。
医科システムに関しては、後発であるため市場シェアは現時点で2.8%と低いものの、その弱点を逆手に取り、同業他社製品以上の機能を同社オリジナルの「MRN(Medical Recepty NEXT)」を保有する設計になっている。一方、連結子会社化した(株)ユニコン製のユニメディカルは操作性に優れているという特徴があり、これらを併せた品ぞろえという点で診療所・クリニックのあらゆる医師のニーズに対応できるようになっている点が強みである。
なお、同社では薬局及び医科のデータを保有していることにより、ほぼ現状の設備のまま「EHR(Electronic Health Record:医療情報の連携)」が可能である。今後の医療介護連携に生かすことができるほか、厚生労働省がガイドラインを打ち出し、実施解禁となった電子処方箋への対応も、同業他社よりも少ない設備投資で可能と考えられる。加えて、診療所、薬局、介護サービス事業者へシステムを独自に提供でき、2017年3月にリリースした医療介護連携ソリューション「ひろがるケアネット」でこれらのシステムを連携するソリューションを持つ唯一の事業者になったことは、同社の大きな強みとなると思料される。
3. 競合
調剤システムの競合企業はパナソニック ヘルスケア(株)※、(株)三菱電機ビジネスシステムなどであり、電子薬歴システムでは、(株)グッドサイクルシステム、ハイブリッジ(株)、(株)ユニケソフトウェアリサーチなどである。
※2018年4月からパナソニックヘルスケアホールディングス(株)となりました。
医科システムにおいては、電子カルテではパナソニック ヘルスケア(株)、(株)ラボテック、ビー・エム・エル<4694>、(株)ダイナミクス、富士通<6702>、日立メディカルコンピュータ(株)、(株)ユヤマなどが、レセコンではパナソニック ヘルスケア(株)、日本医師会総合政策研究機構、日立メディカルコンピュータ(株)などが競合先である。
介護システムの競合企業としては、(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア<3794>、エス・エム・エス<2175>の介護システム開発企業のほか、富士通、(株)日立システムズ、内田洋行<8057>など大手企業が挙げられるが、実際バッティングするのは(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア<3794>、エス・エム・エス<2175>の3社のケースが大半である。
4. リスク
主要な事業リスクとしては、1)医療保険制度改正とそれに伴うプログラム変更、2)新製品の開発に伴う想定以上のコスト負担の可能性、などが考えられる。
医療保険制度改正は少子高齢化対応により継続して実施されており、薬価差益の減少、患者個人負担額の増加による来院患者数の減少等、改正の内容や規模により、主要ユーザーである薬局や診療所のシステム投資意欲の減退を招く可能性がある。加えて、大幅な医療保険制度改正が行われ、ソフトウェアのプログラムに大量の修正の必要性が生じた場合、そのコスト負担が業績にマイナス影響を与える可能性がある。
さらに、同社は他社との競争を勝ち抜くために、インターネットを利用した調剤レセプト支援システムのネットワークシステムを始め、クリニック・診療所向けのレセコン融合型電子カルテシステムやオプションシステムの開発に注力している。これらの製品がユーザーの満足度を充足できない場合、機能強化のためのコスト負担が収益のマイナス要因となる可能性があるほか、市場シェア低下の要因となり、業績に多大なインパクトを与える可能性がある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山 崇行)
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