千葉銀行 Research Memo(7):戦略的アライアンスの推進やさらなる営業基盤の拡充により、持続的な成長を目指す
[17/08/03]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■新中期経営計画の概要
千葉銀行<8331>は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「ベストバンク2020 Final Stage−価値共創の3年」を新たにスタートさせた。本中期経営計画は、前中期経営計画で掲げた2020年の目標である「リテール・ベストバンク」グループをつくりあげる総仕上げと位置付けられる。「お客さまとの共通価値の創造」※、「全ての職員が輝く働き方改革の実現」、「持続的成長に向けた経営態勢の強化」の3つの主要課題に取り組むことにより、地域とともに持続的な成長を目指す。
※同行では、「お客さまの課題解決と地域活性化に注力し、それらが当行の成長や健全性維持につながる」という考え方を「価値共創」という言葉で表現している。「お客さま」「株主」「従業員」「地域社会」など多様なステークホルダーとともに、共通価値を創造することで、先進的かつ高い生産性と揺るぎない信頼を確立し、地域とともに持続的な成長を実現する方針である。
1. 計数目標
2020年3月期の計数目標として、「親会社株主に帰属する当期純利益600億円」、「連結ROE7%台」、「連結普通株式等Tier1比率12%台」、「貸出金残高10兆5,000億円」、「預金残高12兆5,000億円」、「グループ預かり資産残高2兆5,000億円」を掲げており、厳しい収益環境の中においても、戦略的アライアンスによるシナジー創出や営業基盤の拡充、新たな価値創造により持続的な成長を目指す方針である。
特に、収益計画については、市場金利の穏やかな上昇を想定するなかで、預貸金残高の拡大と役務取引等利益の積み上げによりトップライン(業務粗利益)の拡大を計画している。一方、経費についても、業務効率化や将来に向けたIT投資等を行いつつ、徹底的なコスト削減※2により現状水準でコントロールする方針である。
※1 貸出金利回りについては、本中期経営計画期間中の底打ち(反転)を想定
※2 「働き方改革による時間外労働時間削減」による人件費のほか、店舗軽量化・他行連携による物件費の削減等
2. 各種施策について
(1) 法人取引
引き続き、事業性評価に基づく取引先企業の本業支援を軸として、資金需要への積極的な対応と課題解決に向けたソリューション提供により法人取引を拡大する。特に、中小企業向け貸出金残高を4兆9,000億円(3年間の平均伸び率5.8%)に伸ばす計画である。
(2) 不動産賃貸業向け貸出
不動産賃貸業向け貸出についても、前述した同行ならではのノウハウやデータベースに基づくリスク管理を徹底しながら、資金需要に積極的に対応する方針である。
(3) 店舗戦略
千葉県を主要基盤としつつ、東京・埼玉・茨城などマーケットポテンシャルが高い成長地域への出店により営業基盤の拡充を図る。特に、戦略的営業地域については、さらに拠点新設を目指すとともに、千葉県内で培ってきた事業性評価に基づく課題解決型の営業活動により、適正な金利水準を確保しながら着実に実績を積み上げていく。また、埼玉については、武蔵野銀行との共同での営業展開を検討しており、首都圏における取引シェアの更なる拡大を目指す。
(4) 住宅ローン
今後もニーズに積極的に対応することにより、住宅ローン残高を3兆6,000億円(3年間の平均伸び率3.1%)に伸ばす計画である。
(5) 無担保ローン
インターネット支店やコールセンターなどの非対面チャネルの整備に加え、効果的なプロモーションを展開することにより、無担保ローン残高を1,700億円(3年間の平均伸び率10.4%)に伸ばす計画である。
(6) グループ預かり資産
「お客さま本位」の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の徹底に努めるなか、本部専門人員の活用や、銀証連携の強化、ちばぎんアセットマネジメント組成ファンドの他行への展開など、本部・営業店・グループ会社一体となった活動により、グループ預かり資産残高を2兆5,000億円(3年間の平均伸び率7.5%)に伸ばす計画である。また、ビッグデータ分析を活用したマーケティングやロボアドバイザーによる運用シミュレーションなど先進的なサービスを導入していく。
(7) グループ会社
引き続き、グループ会社との連携強化に加えて、ちばぎん証券やちばぎんアセットマネジメントを中心にアライアンス各行との提携施策を推進する。具体的には、ちばぎん証券が埼玉県内に拠点を開設し、金融仲介業務を開始するとともに(2017年夏を予定)、武蔵野銀行からの出資受け入れを検討している。また、ちばぎんアセットマネジメントについても、既に武蔵野銀行や北洋銀行から出資を受け入れているが、専用ファンドの展開等を進めていく。
(8) 信託・相続関連業務
高齢化社会に対応した商品の拡充を図るとともに、他行との提携により相続関連業務をさらに拡大する。
(9) 国際業務
今後も資金調達の多様化を図りながら国際業務の拡大を目指す。また、アライアンス各行の取引先企業のファイナンスニーズにも積極的に対応することで収益機会の拡大を図る。
(10) 働き方改革・業務改革
引き続き、働き方改革による長時間労働の是正や業務効率化を推進する。前中期経営計画において実証実験を開始した次世代営業店モデルの効果発現を目指すとともに、融資・ローン業務効率化などにも取り組む。
(11) フィンテック
TSUBASAアライアンス加盟行や「T&Iイノベーションセンター」との連携により、フィンテックを活用した新たなサービスの開発やデジタルバンキングの推進に取り組む。特に、API※共通基盤の構築のほか、AI活用による与信判断モデルの導入なども検討する。
※ Application Programing Interface
外部事業者等が銀行のシステムに接続し、サービスを利用できるようにするためのプログラム
(12) 戦略的アライアンス
「千葉・武蔵野アライアンス」の更なる強化を目指す。アセットマネジメント業務における提携のほか、シンジケートローンの共同組成・顧客紹介、相続関連業務や証券業務における提携など、トップライン収益の拡大を図るとともに、ATMの共同購入や、サブシステム及びバックオフィス、コールセンター共同化などによりコスト削減を目指す。また、「TSUBASAアライアンス」についても、引き続き、IT・フィンテック分野をはじめ、幅広い分野で地域の枠を超えたパートナーシップを深めていく。
弊社では、厳しい収益環境が続くなかで、計数目標達成に向けたハードルは決して低い水準ではないとみている。ただ、同行の場合には、1)地盤に恵まれていること、2)他行にはない強みを持っていること、3)新たな収益ドライバーが軌道に乗ってきたことから、持続的な成長を実現することは可能であると評価している。特に、3)については、戦略的アライアンスにおけるシナジー創出とポテンシャルの大きい戦略的営業地域への展開、手数料収入の積み上げ等による収益力の強化がカギを握るものと捉えている。戦略的アライアンスが加速してくれば、さらに加盟行の参加を促すネットワーク外部性が働く上、同行には専門性を持った人材やノウハウが集まってくる好循環も期待できる。当中期経営計画期間中には、同行の将来像はもちろん、業界再編の方向性もある程度見えてくることが想定され、長期的な視点に立って進捗状況をフォローしていきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
<MW>
千葉銀行<8331>は、2020年3月期を最終年度とする中期経営計画「ベストバンク2020 Final Stage−価値共創の3年」を新たにスタートさせた。本中期経営計画は、前中期経営計画で掲げた2020年の目標である「リテール・ベストバンク」グループをつくりあげる総仕上げと位置付けられる。「お客さまとの共通価値の創造」※、「全ての職員が輝く働き方改革の実現」、「持続的成長に向けた経営態勢の強化」の3つの主要課題に取り組むことにより、地域とともに持続的な成長を目指す。
※同行では、「お客さまの課題解決と地域活性化に注力し、それらが当行の成長や健全性維持につながる」という考え方を「価値共創」という言葉で表現している。「お客さま」「株主」「従業員」「地域社会」など多様なステークホルダーとともに、共通価値を創造することで、先進的かつ高い生産性と揺るぎない信頼を確立し、地域とともに持続的な成長を実現する方針である。
1. 計数目標
2020年3月期の計数目標として、「親会社株主に帰属する当期純利益600億円」、「連結ROE7%台」、「連結普通株式等Tier1比率12%台」、「貸出金残高10兆5,000億円」、「預金残高12兆5,000億円」、「グループ預かり資産残高2兆5,000億円」を掲げており、厳しい収益環境の中においても、戦略的アライアンスによるシナジー創出や営業基盤の拡充、新たな価値創造により持続的な成長を目指す方針である。
特に、収益計画については、市場金利の穏やかな上昇を想定するなかで、預貸金残高の拡大と役務取引等利益の積み上げによりトップライン(業務粗利益)の拡大を計画している。一方、経費についても、業務効率化や将来に向けたIT投資等を行いつつ、徹底的なコスト削減※2により現状水準でコントロールする方針である。
※1 貸出金利回りについては、本中期経営計画期間中の底打ち(反転)を想定
※2 「働き方改革による時間外労働時間削減」による人件費のほか、店舗軽量化・他行連携による物件費の削減等
2. 各種施策について
(1) 法人取引
引き続き、事業性評価に基づく取引先企業の本業支援を軸として、資金需要への積極的な対応と課題解決に向けたソリューション提供により法人取引を拡大する。特に、中小企業向け貸出金残高を4兆9,000億円(3年間の平均伸び率5.8%)に伸ばす計画である。
(2) 不動産賃貸業向け貸出
不動産賃貸業向け貸出についても、前述した同行ならではのノウハウやデータベースに基づくリスク管理を徹底しながら、資金需要に積極的に対応する方針である。
(3) 店舗戦略
千葉県を主要基盤としつつ、東京・埼玉・茨城などマーケットポテンシャルが高い成長地域への出店により営業基盤の拡充を図る。特に、戦略的営業地域については、さらに拠点新設を目指すとともに、千葉県内で培ってきた事業性評価に基づく課題解決型の営業活動により、適正な金利水準を確保しながら着実に実績を積み上げていく。また、埼玉については、武蔵野銀行との共同での営業展開を検討しており、首都圏における取引シェアの更なる拡大を目指す。
(4) 住宅ローン
今後もニーズに積極的に対応することにより、住宅ローン残高を3兆6,000億円(3年間の平均伸び率3.1%)に伸ばす計画である。
(5) 無担保ローン
インターネット支店やコールセンターなどの非対面チャネルの整備に加え、効果的なプロモーションを展開することにより、無担保ローン残高を1,700億円(3年間の平均伸び率10.4%)に伸ばす計画である。
(6) グループ預かり資産
「お客さま本位」の業務運営(フィデューシャリー・デューティー)の徹底に努めるなか、本部専門人員の活用や、銀証連携の強化、ちばぎんアセットマネジメント組成ファンドの他行への展開など、本部・営業店・グループ会社一体となった活動により、グループ預かり資産残高を2兆5,000億円(3年間の平均伸び率7.5%)に伸ばす計画である。また、ビッグデータ分析を活用したマーケティングやロボアドバイザーによる運用シミュレーションなど先進的なサービスを導入していく。
(7) グループ会社
引き続き、グループ会社との連携強化に加えて、ちばぎん証券やちばぎんアセットマネジメントを中心にアライアンス各行との提携施策を推進する。具体的には、ちばぎん証券が埼玉県内に拠点を開設し、金融仲介業務を開始するとともに(2017年夏を予定)、武蔵野銀行からの出資受け入れを検討している。また、ちばぎんアセットマネジメントについても、既に武蔵野銀行や北洋銀行から出資を受け入れているが、専用ファンドの展開等を進めていく。
(8) 信託・相続関連業務
高齢化社会に対応した商品の拡充を図るとともに、他行との提携により相続関連業務をさらに拡大する。
(9) 国際業務
今後も資金調達の多様化を図りながら国際業務の拡大を目指す。また、アライアンス各行の取引先企業のファイナンスニーズにも積極的に対応することで収益機会の拡大を図る。
(10) 働き方改革・業務改革
引き続き、働き方改革による長時間労働の是正や業務効率化を推進する。前中期経営計画において実証実験を開始した次世代営業店モデルの効果発現を目指すとともに、融資・ローン業務効率化などにも取り組む。
(11) フィンテック
TSUBASAアライアンス加盟行や「T&Iイノベーションセンター」との連携により、フィンテックを活用した新たなサービスの開発やデジタルバンキングの推進に取り組む。特に、API※共通基盤の構築のほか、AI活用による与信判断モデルの導入なども検討する。
※ Application Programing Interface
外部事業者等が銀行のシステムに接続し、サービスを利用できるようにするためのプログラム
(12) 戦略的アライアンス
「千葉・武蔵野アライアンス」の更なる強化を目指す。アセットマネジメント業務における提携のほか、シンジケートローンの共同組成・顧客紹介、相続関連業務や証券業務における提携など、トップライン収益の拡大を図るとともに、ATMの共同購入や、サブシステム及びバックオフィス、コールセンター共同化などによりコスト削減を目指す。また、「TSUBASAアライアンス」についても、引き続き、IT・フィンテック分野をはじめ、幅広い分野で地域の枠を超えたパートナーシップを深めていく。
弊社では、厳しい収益環境が続くなかで、計数目標達成に向けたハードルは決して低い水準ではないとみている。ただ、同行の場合には、1)地盤に恵まれていること、2)他行にはない強みを持っていること、3)新たな収益ドライバーが軌道に乗ってきたことから、持続的な成長を実現することは可能であると評価している。特に、3)については、戦略的アライアンスにおけるシナジー創出とポテンシャルの大きい戦略的営業地域への展開、手数料収入の積み上げ等による収益力の強化がカギを握るものと捉えている。戦略的アライアンスが加速してくれば、さらに加盟行の参加を促すネットワーク外部性が働く上、同行には専門性を持った人材やノウハウが集まってくる好循環も期待できる。当中期経営計画期間中には、同行の将来像はもちろん、業界再編の方向性もある程度見えてくることが想定され、長期的な視点に立って進捗状況をフォローしていきたい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田 郁夫)
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