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ラクオリア創薬 Research Memo(11):子会社テムリックのTM-411は米国で第2相床試験を実施中

注目トピックス 日本株
■導出済みプログラムの進捗と今後の見通し

5. レチノイン酸誘導体(TM-411)
ラクオリア創薬<4579>が2017年2月に子会社化したテムリックではレチノイン酸誘導体(レチノイド)(開発コード:TM-411、一般名:タミバロテン)を現在開発中だ。これは東京大学薬学部化学講座の首藤紘一(しゅどうこういち)名誉教授が創製したもので、がん領域、特に白血病を主適応症としている。既存薬に比べて化学的安定性、安全性、強い分化誘導活性などに特長がある。国内では東光薬品工業(株)が臨床試験を行い、2005年4月に「再発または難治性の急性前骨髄球性白血病(APL)」の治療薬として承認され、同年6月に「アムノレイク錠2mg」として日本新薬<4516>から発売されている。

テムリックはAPL以外の適応症での医薬品を目指して、TM-411を2004年に導入した。2014年に日本の大原薬品工業(株)に、2015年に米Syros Pharmaceuticalに導出し、それぞれの導出先企業で臨床開発が進んでいる。このうち、特に期待が大きいのが、Syrosで開発が進められている急性骨髄性白血病(AML)と骨髄異形成症候群(MDS)の治療薬としての開発だ。SyrosはTM-411についてAML/MDSのプレシジョン・メディシンとして新薬承認を獲得することを目指している。

プレシジョン・メディシンとは従来型の医療に対立する新しい概念だ。これまでの医療(医薬品開発も同様)は平均的な患者を想定してデザインされたものであり、特に抗がん剤において、“ある患者群においては大変効果がある一方、その他の患者にはほとんど効果がない”という状況が起こっている。それに対してプレシジョン・メディシンは、遺伝子情報の個々の違いを分析して予防や治療を行うというものだ。Syrosが開発した“Gene Control Platform”(遺伝子制御プラットフォーム)に基づき、TM-411が作用するレチノイン酸受容体(RARα)がより強く発現する全体の25%のAML/MDS患者を選別し、そのグループに対して高い効果を発揮することが期待できる新薬として開発を進めている。現在は第2相臨床試験を実施中という状況だ。

さらに、2017年8月23日、同社およびテムリックは、TM-411について、SyrosがFDAよりAMLに対するオーファンドラッグ指定を受けたことを発表した。FDAは、米国の20万人以下の稀な疾病の治療に対する薬剤開発を支援するため、オーファンドラッグ指定を与えており、オーファンドラッグ指定を受けた薬剤が承認された場合は、7年間の市場独占性、要件を満たした臨床試験に対する税額控除、FDA承認申請費用の免除等のメリットを受けることができる。オーファンドラッグ指定を受けたことで、Syrosの米国における臨床試験に弾みが付くことが期待され、今後の動きが注目される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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