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ラクオリア創薬 Research Memo(13):国内市場への導出に向けて差別化要素となるデータが得られるかがカギ

注目トピックス 日本株
■導出候補プログラムの進捗と今後の見通し

2. カリウムイオン競合型アシッドブロッカー/P-CAB(RQ-4/tegoprazan)
前述のようにP-CAB(一般名:テゴプラザン)は韓国のCJヘルスケアに対して韓国、台湾、中国及び東南アジアについて導出済みであるが、日本及びグローバル(アジアを除く)については未導出であり、導出候補プログラムという状況にある。

テゴプラザンについてラクオリア創薬<4579>は、日本での第1相臨床試験を2015年8月に終了させている。同時期にCJヘルスケアが韓国で第3相臨床試験に着手していたため、同社はその進捗を踏まえつつ、日本及びグローバルでの事業展開の可能性を探ってきた。2017年12月期第2四半期までに、CJヘルスケアの初回承認申請が2017年下期に進むことがほぼ確実となったことから、テゴプラザンの導出活動もそれをきっかけに拍車がかかるのではと期待されているのが現時点の状況だ。

P-CABはPPIを置き換えることが期待される存在というのは前述のとおりだが、欧米ではPPIのジェネリック医薬品が伸長している。そうした状況を踏まえれば、グローバル市場よりもまずは日本市場での導出がより実現性が高いのではないかと弊社では考えている(日本でも第一三共のネキシウム®を除く各PPI医薬品に対するジェネリック品は発売されている)。

一方、導出先である医薬品メーカーの立場からすると、最終的に医薬品として上市するまでに必要な研究開発費を十分カバーするためには、年商規模で300億円〜400億円が必要となるとみられる。この数値は国内の医薬品メーカーにとって決して簡単な数字ではない。後述するように国内のPPI/P-CAB市場は1,900億円〜2,000億円程度と推定されるが、ここに割って入って年商400億円規模を達成するためには、適応症に対する効能に加えて、他製品との差別化要素が必要になってくると考えられる。

P-CABのトップランナーである武田のタケキャブ®(一般名:ボノプラザン)は、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の除去において高い効果を示すことから、本来の適応症での処方に加え、ピロリ菌除去市場においても処方を伸ばしている。2016年度のタケキャブ®の売上高は341億円で、前期の84億円から257億円の大幅増収となった。PPI医薬品では最も新しい第一三共のネキシウム®は売上高を伸ばしたものの、タケプロン®とエーザイ<4523>のパリエット®は売上を落としている。

2016年度において、4つの代表的PPIの売上高合計は1,822億円だった。タケプロン®の販売元が2016年度から変更になっているため、この点を補正すると2015年度の4剤の売上高合計は1,718億円となり、2016年度は前年比104億円の増収になった。しかしその中でタケキャブ®は前年比257億円、ネキシウム®は16億円の増収となっていることから、かなりの金額(250億円程度)がジェネリック薬品に流れたことがうかがえる。

テゴプラザンが日本市場向けに導出を果たすためには差別化要素が必要と考える背景には以上のような状況がある。テゴプラザンが主適応症に関して高い有効性があるのは間違いがないが、CJヘルスケアの第3相臨床試験において、差別化要素となるような臨床試験データが含まれているかどうか、大いに注目されるところだ。

テゴプラザンは2017年8月9日の特許査定により、食間伝播性収縮運動(IMC)のPhase III収縮を発生させる全てのP-CABに対して、ヘリコバクター・ピロリ除菌薬と併用投与する薬剤としての権利が認められた。これまでの同社の発明により、P-CABの、胃食道逆流疾患(GERD)、機能性消化不良、腹部膨満感、不快感及び便秘などの消化管運動異常が関与する疾患または症状を改善する消化管機能調整剤、または消化管運動賦活化剤に関する権利が認められているが、今回の特許査定により、IMCのPhase III収縮を発生させるP-CABとヘリコバクター・ピロリ除菌薬との併用剤としての用途がさらに加わったことになる。この特許は日本においてはタケキャブ®を含むすべてのP-CABに対して網をかけられるものだ。武田側も特許侵害は回避する行動をとると考えられるため、今回の特許査定で直ちに同社が財産的なメリットを獲得するわけではないが、テゴプラザンの知的財産を強化することで、同社が目指す差別化要因の1つとして、国内での導出には追い風になると期待される。

(執筆:フィスコ客員アナリスト 浅川 裕之)



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