ビジョン Research Memo(8):旅行関連サービスプラットフォームを新たな収益柱として育成していく方針
[17/09/15]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■今後の見通し
2. 今後の成長戦略について
ビジョン<9416>は、中期経営計画・目標は公表していないが、「世の中の情報通信産業革命に貢献する」という経営理念に沿って、主要2事業の成長戦略を着実に実行することにより、永続的な成長を目指している。特に、グローバルWiFi事業においては、WiFiルーターのレンタルサービスの高成長が当面続きそうなほか、その顧客基盤を活用したインバウンド需要をターゲットとした企業向けのマーケティング支援サービス、並びに海外渡航中にユーザーが直面する様々な課題を解決するお役立ち情報(メディア)やサービスの提供など旅行関連サービスプラットフォーム事業を育成していくことで、中期的な利益成長を加速化していく戦略となっている。
(1) 旅行関連サービスプラットフォームの取組みについて
旅行関連サービスプラットフォームでは、グローバルWiFi事業の既存顧客基盤を活用してソリューションサービスを展開していく。2017年7月には訪日外国人観光客の需要を取り込みたい企業に向けて各種マーケティング支援サービスを紹介するWebサイト「インバウンド対策ドットコム」をグランドオープンしている。同サイトの中では、訪日外国人客に対して旅マエから旅ナカ、旅アトとすべてのタイミングにおいて確実にリーチ可能なマーケティング支援サービスとして、訪日向け動画メディア「DOGA.TV」やガイドブック「Travel Guide SHINOBI」、サンプリング「NINJA Package」、メール広告「NINJAメール」等を案内している。同社のWiFiレンタルサービスの顧客※に確実にリーチできるため広告効果も高く、顧客数も着実に増え始めている。同社の収益はこれら企業からの広告収入となる。今後はカテゴリーごとに情報サイトをつくり、顧客を提携先企業に送客するサービスなども立ち上げていく考えだ。
※同社のグローバルWiFiサービスの日本における利用者は、2017年1月〜6月の実績で約125万人(2016年実績約192万人)、宿泊数で換算すると877万泊(同1,344万泊)と同社では推計している。
また、同様に訪日外国人向けビジネスを展開する企業に向けて、ウェアラブル翻訳デバイス「ili」を用いたサービス「ili for Guest」も7月より開始している。「ili」は、現在、日本語、中国語、英語に対応しており、ほぼリアルタイムでスムーズな翻訳を実現したウェアラブルデバイスでベンチャー企業の(株)ログバーが開発した。訪日外国人旅行者数は2016年の2,403万人から、2020年には4,000万人に拡大するとの政府目標もあり、今後、「ili」のような高性能かつ超小型の翻訳デバイスの需要も拡大していくことが予想される。
そのほか、企業向けマーケティング支援サービス強化を目的に、2017年8月に韓国最大の海外用WiFiルーターレンタルサービス事業者である(株)ワイドモバイルとともに、中国最大クラスの同サービス事業者である北京環球友隣科技有限公司グループ※でマーケティング支援事業を手掛けるUROAMEDIA Ltd.(香港)の第三者割当増資を引き受けるとともに業務提携を行うことを発表した。今回の資本業務提携の目的は、相互に連携することで魅力的なサービス提供や利用者増を図り、メディア価値の向上につながるシナジーを生み出すことにある。3社が連携することで、互いのWiFiレンタルサービスを利用する渡航者にリーチすることが可能となり、メディア出稿価値が高まることで、広告効果を今まで以上に向上させ、ついては収益増が可能になる。
※中国で海外用WiFiレンタルサービス「環球漫遊 UROAMING」を年間600万人以上に提供している。市場シェアは50%超。
一方、日本から海外に渡航する利用者向けのサービスとしては、「ili」のサービス提供を2017年5月より開始しており、着実に利用客数が増加している。レンタル料金は500円/日で、1ヶ月に1回の利用があれば同社も利益が出るビジネスモデルとなっている。今後はスペイン語や韓国語等の翻訳サービスにも対応していく予定になっており、更なる利用客の増加が見込まれる。また、海外レストランの予約サービスについても無料でのトライアルサービスを開始している。今後も海外渡航者の課題を解決するお役立ちサービスを、M&Aや事業提携なども含めて拡充して行く方針で今後の成長が期待される。
(2) グローバルWiFi事業
グローバルWiFi事業においては、市場を第1ステージ:アウトバウンド(日本から海外へ渡航する人)の展開、第2ステージ:インバウンド(訪日客。海外から日本へ渡航する人)の展開、第3ステージ:海外から海外へ渡航する人の展開、の3つのステージに区分し、各ステージに応じたサービス展開を進め事業規模を拡大していく考えだ。
それぞれの市場規模について見ると、現在の主力となっている第1ステージのアウトバウンド市場については、日本人の海外旅行者数が年間1,700万人程度で今後も安定的に推移していくことが見込まれている。一方、第2ステージのインバウンド市場である訪日外国人旅行者数は2016年で2,400万人を超え、2020年には4,000万人を目指す政府目標が打ち出されており、更なる成長が見込まれる市場となっている。最後に、第3ステージである世界の海外渡航者数の市場規模は2016年で年間12億人規模の巨大市場となっている。
同社の顧客平均単価をもとに算出した各ステージにおける2016年時点での潜在市場規模は、第1ステージで約1,198億円、第2ステージで約1,682億円、第3ステージで約8兆円超となっており、主力のアウトバウンド市場だけで見ても依然、成長余地は大きいと言える。
具体的な戦略として、第1ステージ向けには法人営業を強化することに加えて、第1・第2ステージ向けでは利便性の向上とタッチポイントの増設による顧客獲得を目指す。具体的には受取り待ちの時間ゼロ化を図るスマートピックアップの面展開を進めるほか、観光案内所、空港カウンターの増設、宿泊施設のレンタル拠点化を拡大する。これにより一段の利用者数拡大を図るとともに、メディアサービスやデータ提供サービス、「ili」等の周辺商材を拡充することにより、1回当たり顧客平均単価のかさ上げを図る戦略だ。
一方、第3ステージに関しては、既存進出先である韓国、台湾、米国等で現地需要の取り込みを進めていく方針となっている。最大市場である中国市場に関しては価格競争が激しく、採算性の面から同社は参入を見送っている。また、欧米市場についてはWiFiルーターをレンタルする文化がまだ根付いておらず、競合事業者もほとんどないため、今後いかに需要の掘り起こしを進めていくかが事業拡大のカギを握ることになる。
(3) 情報通信サービス事業
情報通信サービス事業では、顧客企業の成長ステージに合わせ最適なサービスを最適なタイミングで提供するストック型ビジネスモデルを強化していく方針。主要顧客ターゲットはスタートアップ、ベンチャー企業となるが、これら企業が成長していく過程では、最適なソリューションも変化していくことになる。こうしたニーズの変化を的確に捉えてビジネスチャンスにつなげていく。
同社の主要ターゲットとなるスタートアップ、ベンチャー企業は政策による追い風もあって増加基調が続いており、同社にとってはこれら顧客の開拓を進めていくことで着実に事業を伸ばしていく戦略となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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2. 今後の成長戦略について
ビジョン<9416>は、中期経営計画・目標は公表していないが、「世の中の情報通信産業革命に貢献する」という経営理念に沿って、主要2事業の成長戦略を着実に実行することにより、永続的な成長を目指している。特に、グローバルWiFi事業においては、WiFiルーターのレンタルサービスの高成長が当面続きそうなほか、その顧客基盤を活用したインバウンド需要をターゲットとした企業向けのマーケティング支援サービス、並びに海外渡航中にユーザーが直面する様々な課題を解決するお役立ち情報(メディア)やサービスの提供など旅行関連サービスプラットフォーム事業を育成していくことで、中期的な利益成長を加速化していく戦略となっている。
(1) 旅行関連サービスプラットフォームの取組みについて
旅行関連サービスプラットフォームでは、グローバルWiFi事業の既存顧客基盤を活用してソリューションサービスを展開していく。2017年7月には訪日外国人観光客の需要を取り込みたい企業に向けて各種マーケティング支援サービスを紹介するWebサイト「インバウンド対策ドットコム」をグランドオープンしている。同サイトの中では、訪日外国人客に対して旅マエから旅ナカ、旅アトとすべてのタイミングにおいて確実にリーチ可能なマーケティング支援サービスとして、訪日向け動画メディア「DOGA.TV」やガイドブック「Travel Guide SHINOBI」、サンプリング「NINJA Package」、メール広告「NINJAメール」等を案内している。同社のWiFiレンタルサービスの顧客※に確実にリーチできるため広告効果も高く、顧客数も着実に増え始めている。同社の収益はこれら企業からの広告収入となる。今後はカテゴリーごとに情報サイトをつくり、顧客を提携先企業に送客するサービスなども立ち上げていく考えだ。
※同社のグローバルWiFiサービスの日本における利用者は、2017年1月〜6月の実績で約125万人(2016年実績約192万人)、宿泊数で換算すると877万泊(同1,344万泊)と同社では推計している。
また、同様に訪日外国人向けビジネスを展開する企業に向けて、ウェアラブル翻訳デバイス「ili」を用いたサービス「ili for Guest」も7月より開始している。「ili」は、現在、日本語、中国語、英語に対応しており、ほぼリアルタイムでスムーズな翻訳を実現したウェアラブルデバイスでベンチャー企業の(株)ログバーが開発した。訪日外国人旅行者数は2016年の2,403万人から、2020年には4,000万人に拡大するとの政府目標もあり、今後、「ili」のような高性能かつ超小型の翻訳デバイスの需要も拡大していくことが予想される。
そのほか、企業向けマーケティング支援サービス強化を目的に、2017年8月に韓国最大の海外用WiFiルーターレンタルサービス事業者である(株)ワイドモバイルとともに、中国最大クラスの同サービス事業者である北京環球友隣科技有限公司グループ※でマーケティング支援事業を手掛けるUROAMEDIA Ltd.(香港)の第三者割当増資を引き受けるとともに業務提携を行うことを発表した。今回の資本業務提携の目的は、相互に連携することで魅力的なサービス提供や利用者増を図り、メディア価値の向上につながるシナジーを生み出すことにある。3社が連携することで、互いのWiFiレンタルサービスを利用する渡航者にリーチすることが可能となり、メディア出稿価値が高まることで、広告効果を今まで以上に向上させ、ついては収益増が可能になる。
※中国で海外用WiFiレンタルサービス「環球漫遊 UROAMING」を年間600万人以上に提供している。市場シェアは50%超。
一方、日本から海外に渡航する利用者向けのサービスとしては、「ili」のサービス提供を2017年5月より開始しており、着実に利用客数が増加している。レンタル料金は500円/日で、1ヶ月に1回の利用があれば同社も利益が出るビジネスモデルとなっている。今後はスペイン語や韓国語等の翻訳サービスにも対応していく予定になっており、更なる利用客の増加が見込まれる。また、海外レストランの予約サービスについても無料でのトライアルサービスを開始している。今後も海外渡航者の課題を解決するお役立ちサービスを、M&Aや事業提携なども含めて拡充して行く方針で今後の成長が期待される。
(2) グローバルWiFi事業
グローバルWiFi事業においては、市場を第1ステージ:アウトバウンド(日本から海外へ渡航する人)の展開、第2ステージ:インバウンド(訪日客。海外から日本へ渡航する人)の展開、第3ステージ:海外から海外へ渡航する人の展開、の3つのステージに区分し、各ステージに応じたサービス展開を進め事業規模を拡大していく考えだ。
それぞれの市場規模について見ると、現在の主力となっている第1ステージのアウトバウンド市場については、日本人の海外旅行者数が年間1,700万人程度で今後も安定的に推移していくことが見込まれている。一方、第2ステージのインバウンド市場である訪日外国人旅行者数は2016年で2,400万人を超え、2020年には4,000万人を目指す政府目標が打ち出されており、更なる成長が見込まれる市場となっている。最後に、第3ステージである世界の海外渡航者数の市場規模は2016年で年間12億人規模の巨大市場となっている。
同社の顧客平均単価をもとに算出した各ステージにおける2016年時点での潜在市場規模は、第1ステージで約1,198億円、第2ステージで約1,682億円、第3ステージで約8兆円超となっており、主力のアウトバウンド市場だけで見ても依然、成長余地は大きいと言える。
具体的な戦略として、第1ステージ向けには法人営業を強化することに加えて、第1・第2ステージ向けでは利便性の向上とタッチポイントの増設による顧客獲得を目指す。具体的には受取り待ちの時間ゼロ化を図るスマートピックアップの面展開を進めるほか、観光案内所、空港カウンターの増設、宿泊施設のレンタル拠点化を拡大する。これにより一段の利用者数拡大を図るとともに、メディアサービスやデータ提供サービス、「ili」等の周辺商材を拡充することにより、1回当たり顧客平均単価のかさ上げを図る戦略だ。
一方、第3ステージに関しては、既存進出先である韓国、台湾、米国等で現地需要の取り込みを進めていく方針となっている。最大市場である中国市場に関しては価格競争が激しく、採算性の面から同社は参入を見送っている。また、欧米市場についてはWiFiルーターをレンタルする文化がまだ根付いておらず、競合事業者もほとんどないため、今後いかに需要の掘り起こしを進めていくかが事業拡大のカギを握ることになる。
(3) 情報通信サービス事業
情報通信サービス事業では、顧客企業の成長ステージに合わせ最適なサービスを最適なタイミングで提供するストック型ビジネスモデルを強化していく方針。主要顧客ターゲットはスタートアップ、ベンチャー企業となるが、これら企業が成長していく過程では、最適なソリューションも変化していくことになる。こうしたニーズの変化を的確に捉えてビジネスチャンスにつなげていく。
同社の主要ターゲットとなるスタートアップ、ベンチャー企業は政策による追い風もあって増加基調が続いており、同社にとってはこれら顧客の開拓を進めていくことで着実に事業を伸ばしていく戦略となる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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