オロ Research Memo(1):クラウド型ERP、デジタルマーケティング支援が事業の両輪
[17/09/13]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■要約
オロ<3983>は、クラウド型ERP※の開発・販売とデジタルマーケティング支援の2事業を行うITベンチャーである。同社の代名詞ともなっているのがクラウドサービスにより提供されるERPパッケージ「ZAC Enterprise」。主に大企業で普及するERPを、中堅・中小企業向けにクラウドベースで実現した画期的な商品・サービスである。デジタルマーケティング支援では、イオン<8267>グループをはじめとする大企業向けに、WebサイトやSNSの構築、システム開発からWeb広告運用までをワンストップで提供する。2017年3月に東証マザーズに上場し、成長を加速させている。開発及び営業の拠点としては、国内5ヶ所、海外7ヶ所、従業員数334人(連結、2017年6月末)の、世界を見据える専門家集団である。
※ERPとはEnterprise Resource Planningの略称で、企業の資産である人・モノ・カネ・情報を 一元管理し、経営の効率化を図るためのツールである。統合基幹業務システム。
1. 事業概要
ビジネスソリューション事業は、主に中堅中小企業を対象に、企業・組織における効率化や生産性向上等の業務課題を解決するソリューション及びサービスを提供する。クラウド型のERPパッケージ「ZAC Enterprise」は企業内における販売・購買・勤怠などの各種業務処理の効率化を支援する統合基幹業務システムであり、多数の業種において必要とされた機能や商習慣に対応するための機能(パラメータ)が日々追加・共有され、システム自身の持続的成長をする点に特長がある。既存顧客からの収入比率が57%(2017年12月期第2四半期)と高く、売上高は安定して積み上がる傾向にあり、導入時のカスタマイズが少ないため収益性が高い。過去3年間、当事業の売上高は順調に成長しており、営業利益率(2017年12月期第2四半期)は35.0%に達する。
コミュニケーションデザイン事業は、主に大企業を対象に組織・企業のコミュニケーション戦略の立案、実行を支援する。市場調査・分析、戦略策定・KPI策定などの上流設計からWebサイトやSNSの構築・運用、Webシステムの構築・運用などの実装、アクセス解析やWeb広告の運用などまでワンストップフルサービスを行うことができる。また、国内のニアショア拠点(宮崎、札幌)、海外のオフショア拠点(中国・大連)と連携してコストマネジメントを強化し、収益性の高い内製体制を構築している点も大企業からの信頼を獲得するポイントとなっている。既存顧客からの運用及びスポット業務が売上構成比で87%を占め安定感がある。過去3年間のコミュニケーションデザイン事業の業績は、売上高は堅調に推移しているものの、営業利益率は振れ幅が大きい。
2. 業績動向
2017年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比18.5%増の1,857百万円、営業利益が同15.0%増の365百万円、経常利益が同2.9%減の347百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同6.7%減の220百万円と増収と営業増益を維持した。売上高はビジネスソリューション事業、コミュニケーションデザイン事業とも順調に推移。特にビジネスソリューション事業において新規顧客獲得が進捗し増収率が高かった。コミュニケーションデザイン事業における外注費の増加、全般的にエンジニアの増員や平均報酬の増加が影響し売上総利益率は1.3ポイント減少。販管費は、管理系人員の増加等で増加するも増収効果が上回り、営業増益を達成した。経常減益の要因は、上場に伴う支払報酬・手数料の発生である。
2017年12月期通期の連結業績は、売上高が前期比9.1%増の3,682百万円、営業利益が同0.5%減の678百万円、経常利益が同5.9%減の664百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.2%減の460百万円と期初の予想を据え置いた。売上高に関しては、上場効果により認知度と信頼性が向上し、引き合いが増える傾向にある。ビジネスソリューション事業、コミュニケーションデザイン事業ともに既存顧客の継続売上の比率が高いため下振れのリスクは低い。売上高の第2四半期進捗率は50.4%であり、堅調に推移する。利益に関しては、上期の一過性の減益要因(特定プロジェクトでの損失、上場関連費用)がなくなり、下期は適正な利益水準に回復すると考えられる。一方で人材不足解消のために外注費等が増えるリスクも存在する。第2四半期進捗率は営業利益で53.8%と好調であり、通期では予想を超えてくることも十分考えられる。
3. 成長戦略
同社では、主力2事業の強みを双方で生かし、最先端技術を活用した新規事業を生み出すことで、安定的急成長を目指している。ビジネスソリューション事業にとっては、コミュニケーションデザイン事業が先行する海外展開を成功させることが大きな市場機会となる。コミュニケーションデザイン事業にとっては、現状の受託スタイルのみならず、提供機能をサービス化することが次の成長機会となり、2事業の相乗効果は潜在的に大きい。また、新たに最先端技術を活用した新規事業を立ち上げることや、上場したなかで資金も潤沢にある財務基盤を生かしたM&Aなども視野に入ってくるだろう。
4. 株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を重要課題と位置付けているものの、株主への長期的な利益還元を実現するため、内部留保を充実させ、積極的な事業展開を行う時期であると考えている。2017年12月期は現時点では配当の予定はない。一方で、同社は更なる社会的信用・知名度の向上や人材確保などにより経営基盤を強化することを目的に、可能な限り早期に東証1部への市場変更を目指すことを宣言している。
■Key Points
・クラウド型ERP、デジタルマーケティング支援が事業の両輪。既存顧客の収入割合が高く、安定成長するビジネスモデルを実現
・2017年12月期第2四半期はビジネスソリューション事業がけん引し増収及び営業増益、経常減益は上場費用が要因
・2017年12月期の配当は未定。東証1部への市場変更を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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オロ<3983>は、クラウド型ERP※の開発・販売とデジタルマーケティング支援の2事業を行うITベンチャーである。同社の代名詞ともなっているのがクラウドサービスにより提供されるERPパッケージ「ZAC Enterprise」。主に大企業で普及するERPを、中堅・中小企業向けにクラウドベースで実現した画期的な商品・サービスである。デジタルマーケティング支援では、イオン<8267>グループをはじめとする大企業向けに、WebサイトやSNSの構築、システム開発からWeb広告運用までをワンストップで提供する。2017年3月に東証マザーズに上場し、成長を加速させている。開発及び営業の拠点としては、国内5ヶ所、海外7ヶ所、従業員数334人(連結、2017年6月末)の、世界を見据える専門家集団である。
※ERPとはEnterprise Resource Planningの略称で、企業の資産である人・モノ・カネ・情報を 一元管理し、経営の効率化を図るためのツールである。統合基幹業務システム。
1. 事業概要
ビジネスソリューション事業は、主に中堅中小企業を対象に、企業・組織における効率化や生産性向上等の業務課題を解決するソリューション及びサービスを提供する。クラウド型のERPパッケージ「ZAC Enterprise」は企業内における販売・購買・勤怠などの各種業務処理の効率化を支援する統合基幹業務システムであり、多数の業種において必要とされた機能や商習慣に対応するための機能(パラメータ)が日々追加・共有され、システム自身の持続的成長をする点に特長がある。既存顧客からの収入比率が57%(2017年12月期第2四半期)と高く、売上高は安定して積み上がる傾向にあり、導入時のカスタマイズが少ないため収益性が高い。過去3年間、当事業の売上高は順調に成長しており、営業利益率(2017年12月期第2四半期)は35.0%に達する。
コミュニケーションデザイン事業は、主に大企業を対象に組織・企業のコミュニケーション戦略の立案、実行を支援する。市場調査・分析、戦略策定・KPI策定などの上流設計からWebサイトやSNSの構築・運用、Webシステムの構築・運用などの実装、アクセス解析やWeb広告の運用などまでワンストップフルサービスを行うことができる。また、国内のニアショア拠点(宮崎、札幌)、海外のオフショア拠点(中国・大連)と連携してコストマネジメントを強化し、収益性の高い内製体制を構築している点も大企業からの信頼を獲得するポイントとなっている。既存顧客からの運用及びスポット業務が売上構成比で87%を占め安定感がある。過去3年間のコミュニケーションデザイン事業の業績は、売上高は堅調に推移しているものの、営業利益率は振れ幅が大きい。
2. 業績動向
2017年12月期第2四半期の連結業績は、売上高が前年同期比18.5%増の1,857百万円、営業利益が同15.0%増の365百万円、経常利益が同2.9%減の347百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同6.7%減の220百万円と増収と営業増益を維持した。売上高はビジネスソリューション事業、コミュニケーションデザイン事業とも順調に推移。特にビジネスソリューション事業において新規顧客獲得が進捗し増収率が高かった。コミュニケーションデザイン事業における外注費の増加、全般的にエンジニアの増員や平均報酬の増加が影響し売上総利益率は1.3ポイント減少。販管費は、管理系人員の増加等で増加するも増収効果が上回り、営業増益を達成した。経常減益の要因は、上場に伴う支払報酬・手数料の発生である。
2017年12月期通期の連結業績は、売上高が前期比9.1%増の3,682百万円、営業利益が同0.5%減の678百万円、経常利益が同5.9%減の664百万円、親会社株主に帰属する当期純利益が同0.2%減の460百万円と期初の予想を据え置いた。売上高に関しては、上場効果により認知度と信頼性が向上し、引き合いが増える傾向にある。ビジネスソリューション事業、コミュニケーションデザイン事業ともに既存顧客の継続売上の比率が高いため下振れのリスクは低い。売上高の第2四半期進捗率は50.4%であり、堅調に推移する。利益に関しては、上期の一過性の減益要因(特定プロジェクトでの損失、上場関連費用)がなくなり、下期は適正な利益水準に回復すると考えられる。一方で人材不足解消のために外注費等が増えるリスクも存在する。第2四半期進捗率は営業利益で53.8%と好調であり、通期では予想を超えてくることも十分考えられる。
3. 成長戦略
同社では、主力2事業の強みを双方で生かし、最先端技術を活用した新規事業を生み出すことで、安定的急成長を目指している。ビジネスソリューション事業にとっては、コミュニケーションデザイン事業が先行する海外展開を成功させることが大きな市場機会となる。コミュニケーションデザイン事業にとっては、現状の受託スタイルのみならず、提供機能をサービス化することが次の成長機会となり、2事業の相乗効果は潜在的に大きい。また、新たに最先端技術を活用した新規事業を立ち上げることや、上場したなかで資金も潤沢にある財務基盤を生かしたM&Aなども視野に入ってくるだろう。
4. 株主還元策
同社は、株主に対する利益還元を重要課題と位置付けているものの、株主への長期的な利益還元を実現するため、内部留保を充実させ、積極的な事業展開を行う時期であると考えている。2017年12月期は現時点では配当の予定はない。一方で、同社は更なる社会的信用・知名度の向上や人材確保などにより経営基盤を強化することを目的に、可能な限り早期に東証1部への市場変更を目指すことを宣言している。
■Key Points
・クラウド型ERP、デジタルマーケティング支援が事業の両輪。既存顧客の収入割合が高く、安定成長するビジネスモデルを実現
・2017年12月期第2四半期はビジネスソリューション事業がけん引し増収及び営業増益、経常減益は上場費用が要因
・2017年12月期の配当は未定。東証1部への市場変更を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田 秀夫)
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