イード Research Memo(4):18/6期はCMP事業の収益力回復に取り組み、3期ぶりの増益に転じる見通し
[17/09/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■業績動向
1. 2017年6月期の業績概要
イード<6038>の2017年6月期の連結業績は、売上高で前期比2.9%減の4,399百万円、営業利益で同71.5%減の87百万円、経常利益で同69.7%減の90百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は437百万円の損失となった(前期は143百万円の利益)。CMP事業においてWebサイトのPV数低下により、収益源となるネット広告収入が前期比15.5%減の1,349百万円となったこと、並びに固定資産の除却損を減価償却費として36百万円計上したことなどにより、セグメント利益が同80.4%減の55百万円と大きく落ち込んだことが主因だ。また、特別損失として子会社の(株)絵本ナビに関するのれんの減損損失(296百万円)など、合計で414百万円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなった。なお、絵本ナビについては2015年に子会社化して以降、売上高、利益ともに順調に伸びているが、当初の収益計画を下回っていることから、今回減損損失として計上することになった。
2. 2018年6月期の業績見通しと事業方針
2018年6月期は売上高で前期比横ばいの4,401百万円、営業利益で同26.1%増の110百万円、経常利益で同22.0%増の110百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で50百万円と3期ぶりの増益に転じる見通し。2018年6月期は2期連続の減益要因となったCMP事業の収益力回復を最優先の経営課題として取り組んでいく。具体的には、WebサイトのPV数に依存したネット広告収入中心の収益構造から、360度全方位のビジネス構造へと転換することで、収益力の回復と成長を図っていく。また、メディア運営力を活かしたB2Bビジネス(メディア運営支援事業やECサイトの運営受託事業等)についても、ニーズが拡大していることから再強化していく方針としている。
Webメディアにおける収益構造転換施策は、以下のとおりとなる。
(1) プライベートDMPを活用したデジタルマーケティング支援サービスの強化
同社の主要メディアは自動車やIT、エンターテイメント、教育、セキュリティ等の専門分野に特化したニュースメディアとなっており、アクセスユーザーもこれら業界へ関心度の高い一般消費者や業界関係者となっている。こうしたWebサイトの特徴を生かして、プライベートDMPを活用した各業界におけるデジタルマーケティング支援サービスの取り組みを進めていく。既に、大手広告代理店や大手自動車メーカー等と連携した事例も複数出てきており、こうした事例を横展開していく。
(2) 有料セミナーの立ち上げ
有料のセミナー事業を2018年6月期より新たに開始する。当初は同社が強みを持つ自動車分野からスタートし、軌道に乗ればセキュリティや教育、VR/ARなど市場の関心の高い分野へと展開していく計画となっている。
(3) 有料課金ビジネスの強化
専門性の高いコンテンツや体験を求めるユーザーに対して、有料会員コンテンツを提供していく。2017年春より開始しているアイドルのVRコンテンツ有料配信事業「トキメキメテオ」についてはVRデバイスの普及に伴い、他のエンターテイメント分野やBtoB分野にも展開していく予定となっている。また、ゲームカテゴリーで、コアゲーマー向けメディア「Game*Spark」を2017年7月よりスタート(月額540円)しており、今後も様々なコンテンツの有料化を進めていく計画となっている。
(4) マーケティングオートメーションツールを使った情報発信力の強化
自社開発したマーケティングオートメーションツールを使ってWebメディアの情報発信力の強化や営業力の強化につなげていく。
これら取り組みにより、2018年6月期のCMP事業の売上高は前期比1.2%増の3,688百万円、セグメント利益は同50.2%増の83百万円と増収増益に転じる見通し。ネット広告収入が上期まで弱含む可能性はあるものの、2017年6月期に減価償却費として計上した固定資産除却損36百万円がなくなることや、これら施策に取り組むことにより通期のセグメント利益は会社計画を達成できるものと弊社では見ている。
一方、CMS事業の売上高は前期比2.8%減の841百万円、セグメント利益は同37.0%減の43百万円を見込む。足許の受注は堅調に推移しているが、2018年6月期は会社計画の必達を目指していることもあり、保守的な計画となっている。
3. 地域創生支援事業への取り組みについて
2018年6月期は新たに地域創生支援事業についての取り組みも開始する。2017年7月に資本業務提携を行い連結子会社化したネイティブ(株)の事業がベースとなる。ネイティブは、DMO※と連携しながらWebメディアの開発を通じて地域創生支援に取り組む企業で、ネットイヤーグループ<3622>から2016年に独立したベンチャーとなる。主なWebメディアの開発実績としては、「瀬戸内Finder」「沖縄CLIP」「おっタマげ!淡路島」などがある。
※DMO (Destination Management/Marketing Organization)・・・観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人を指す。
今後は同社が持つメディア運営ノウハウを取り入れながら、ネイティブが培ってきた地域ネットワークを活用した観光情報発信のためのメディア運営支援サービスの提供及び広告・ECプラットフォームを活用した収益化支援サービス等により自走できるメディアの運営を目指していく。また、EC運用ノウハウを活用した地域物産の販売支援や、提携先企業と連携したリアル店舗への納入支援サービスなども展開していく計画となっている。2018年6月期業績に与える影響は軽微だが、地域創生や観光ビジネス支援に対する潜在需要は大きく、今後の成長が期待される事業として注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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1. 2017年6月期の業績概要
イード<6038>の2017年6月期の連結業績は、売上高で前期比2.9%減の4,399百万円、営業利益で同71.5%減の87百万円、経常利益で同69.7%減の90百万円となり、親会社株主に帰属する当期純利益は437百万円の損失となった(前期は143百万円の利益)。CMP事業においてWebサイトのPV数低下により、収益源となるネット広告収入が前期比15.5%減の1,349百万円となったこと、並びに固定資産の除却損を減価償却費として36百万円計上したことなどにより、セグメント利益が同80.4%減の55百万円と大きく落ち込んだことが主因だ。また、特別損失として子会社の(株)絵本ナビに関するのれんの減損損失(296百万円)など、合計で414百万円計上したことにより、親会社株主に帰属する当期純損失を計上することとなった。なお、絵本ナビについては2015年に子会社化して以降、売上高、利益ともに順調に伸びているが、当初の収益計画を下回っていることから、今回減損損失として計上することになった。
2. 2018年6月期の業績見通しと事業方針
2018年6月期は売上高で前期比横ばいの4,401百万円、営業利益で同26.1%増の110百万円、経常利益で同22.0%増の110百万円、親会社株主に帰属する当期純利益で50百万円と3期ぶりの増益に転じる見通し。2018年6月期は2期連続の減益要因となったCMP事業の収益力回復を最優先の経営課題として取り組んでいく。具体的には、WebサイトのPV数に依存したネット広告収入中心の収益構造から、360度全方位のビジネス構造へと転換することで、収益力の回復と成長を図っていく。また、メディア運営力を活かしたB2Bビジネス(メディア運営支援事業やECサイトの運営受託事業等)についても、ニーズが拡大していることから再強化していく方針としている。
Webメディアにおける収益構造転換施策は、以下のとおりとなる。
(1) プライベートDMPを活用したデジタルマーケティング支援サービスの強化
同社の主要メディアは自動車やIT、エンターテイメント、教育、セキュリティ等の専門分野に特化したニュースメディアとなっており、アクセスユーザーもこれら業界へ関心度の高い一般消費者や業界関係者となっている。こうしたWebサイトの特徴を生かして、プライベートDMPを活用した各業界におけるデジタルマーケティング支援サービスの取り組みを進めていく。既に、大手広告代理店や大手自動車メーカー等と連携した事例も複数出てきており、こうした事例を横展開していく。
(2) 有料セミナーの立ち上げ
有料のセミナー事業を2018年6月期より新たに開始する。当初は同社が強みを持つ自動車分野からスタートし、軌道に乗ればセキュリティや教育、VR/ARなど市場の関心の高い分野へと展開していく計画となっている。
(3) 有料課金ビジネスの強化
専門性の高いコンテンツや体験を求めるユーザーに対して、有料会員コンテンツを提供していく。2017年春より開始しているアイドルのVRコンテンツ有料配信事業「トキメキメテオ」についてはVRデバイスの普及に伴い、他のエンターテイメント分野やBtoB分野にも展開していく予定となっている。また、ゲームカテゴリーで、コアゲーマー向けメディア「Game*Spark」を2017年7月よりスタート(月額540円)しており、今後も様々なコンテンツの有料化を進めていく計画となっている。
(4) マーケティングオートメーションツールを使った情報発信力の強化
自社開発したマーケティングオートメーションツールを使ってWebメディアの情報発信力の強化や営業力の強化につなげていく。
これら取り組みにより、2018年6月期のCMP事業の売上高は前期比1.2%増の3,688百万円、セグメント利益は同50.2%増の83百万円と増収増益に転じる見通し。ネット広告収入が上期まで弱含む可能性はあるものの、2017年6月期に減価償却費として計上した固定資産除却損36百万円がなくなることや、これら施策に取り組むことにより通期のセグメント利益は会社計画を達成できるものと弊社では見ている。
一方、CMS事業の売上高は前期比2.8%減の841百万円、セグメント利益は同37.0%減の43百万円を見込む。足許の受注は堅調に推移しているが、2018年6月期は会社計画の必達を目指していることもあり、保守的な計画となっている。
3. 地域創生支援事業への取り組みについて
2018年6月期は新たに地域創生支援事業についての取り組みも開始する。2017年7月に資本業務提携を行い連結子会社化したネイティブ(株)の事業がベースとなる。ネイティブは、DMO※と連携しながらWebメディアの開発を通じて地域創生支援に取り組む企業で、ネットイヤーグループ<3622>から2016年に独立したベンチャーとなる。主なWebメディアの開発実績としては、「瀬戸内Finder」「沖縄CLIP」「おっタマげ!淡路島」などがある。
※DMO (Destination Management/Marketing Organization)・・・観光物件、自然、食、芸術・芸能、風習、風俗など当該地域にある観光資源に精通し、地域と協同して観光地域作りを行う法人を指す。
今後は同社が持つメディア運営ノウハウを取り入れながら、ネイティブが培ってきた地域ネットワークを活用した観光情報発信のためのメディア運営支援サービスの提供及び広告・ECプラットフォームを活用した収益化支援サービス等により自走できるメディアの運営を目指していく。また、EC運用ノウハウを活用した地域物産の販売支援や、提携先企業と連携したリアル店舗への納入支援サービスなども展開していく計画となっている。2018年6月期業績に与える影響は軽微だが、地域創生や観光ビジネス支援に対する潜在需要は大きく、今後の成長が期待される事業として注目される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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