日本プロセス Research Memo(2):社会インフラ分野に関わる制御系、組込系システム開発に強みを持つ独立系企業
[17/09/22]
提供元:株式会社フィスコ
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注目トピックス 日本株
■会社概要
1. 沿革
日本プロセス<9651>の創業は1967年6月で、当初は、プラント業界向けのエンジニアリングとコンサルティング、及びシステム開発の業務からスタートし、コンピューターの黎明期からソフトウェア開発に取り組んでいる。
特に強みを持っているのが、エネルギー、自動車、鉄道、防災、情報機器など社会インフラに密接に関わる分野だ。震災に起因するエネルギー問題、地球温暖化による環境問題が生じる一方、モバイル端末の急速な増加に伴い、より高度で多様なサービスが求められており、新たな社会インフラ構築のニーズの高まりから、半世紀にわたって高い技術力を培ってきた同社の活躍する場が広がっている。
「社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」を中期的な経営ビジョンとして掲げ、品質第一のシステム開発を行う。また、「トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス(T-SES)」を基本的な取り組みとして、同社の知見に基づいて顧客を正しい仕様決定に導き、以降完成まで一貫して請け負うことで、顧客の負荷を低減するとともに、同社の顧客に対する付加価値向上を目指している。
2. 事業領域
事業領域は、6つのセグメントで構成されている。以下、それぞれについて解説する。
(1) 制御システム事業
制御システム事業は、エネルギー関連と交通関連の2つの大きなカテゴリーに分けることができる。いずれも、安心・安全が重視される分野であり、顧客から高い信頼を得ないと展開できない分野だ。
エネルギー関連分野では、火力発電所の起動や停止、発電量の制御など難易度の高い監視制御機能の開発、オペレータ用の訓練シミュレーターなどのソフトウェア開発を担当している。一方の交通関連分野では、社会インフラを支える日本の全ての新幹線の高速かつ定刻運行を制御する運行管理システム、首都圏の超過密ダイヤの安全、安心を守る東京圏輸送管理システムや、各地のJR在来線の運行管理システムの開発を行っている。海外から高い評価を得ている新幹線の海外展開として、台湾新幹線の開発にも加わった。
(2) 自動車システム事業
自動車の安全走行の基本は「走る、曲がる、止まる」をコントロールすることは言うまでもないが、同社はステアリング、エンジン、変速機などをコントロールする車載制御システムに長年取り組んできた。このほか、カーナビゲーションやテレマティクスなど車内にインフォメーションとエンターテインメントを提供する車載情報システムの開発などを行っている。
近年では、エコカーへのニーズの高まりによるハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)の増加に伴い、油圧で制御していた機能を電動で制御するシステムの開発も展開している。さらに、得意とする画像処理技術を生かしADAS(先進運転支援システム)の車載カメラシステムの開発にも参画するなど、自動運転の分野で今後の活躍が期待できそうだ。
(3) 特定情報システム事業
画像の歪みを補正するほか、複数の波長で撮影された画像を用いて地表の物質を特定したり、ステレオ視を利用して画像から標高を計算するといった画像処理技術を用いて展開する事業だ。洪水の予測や護岸工事の支援、災害復興支援など、危機管理における重要なシステムとなり、同社の高い技術力を示す事業でもある。
同社は早い段階からこれらの画像処理技術に着目し、宇宙航空関連、防衛関連事業における衛星画像処理システムの開発を手掛けてきた。今後も、より高度な画像利用分野へ展開を図る一方、音声認識技術なども加えて危機管理分野で事業を広げていく。
(4) 組込システム事業
パソコンのオペレーティングシステム(O/S)の開発でスタートした事業だったが、現在では携帯端末や情報家電、デジタル複合機を中心とする製品からよりハードウェアに近いSSD(Solid State Drive)など半導体記憶装置や電子部品の組込ソフトウェアの開発を行っている。
ニーズの多様化や急速な技術革新に対応するため、開発プロセスのあり方や具体的な進め方などの提案を行いながら、顧客が要求するスペックの具現化を実現している。情報家電や電子部品などの組込ソフトウェアは、急速に高機能化、多機能化が進んでいるが、今後はIoT(Internet of Things)の進展やスマートシティ構想などによって、新たな製品分野への拡大が見込まれている。
(5) 産業・公共システム事業
ハードウェアの特性などを理解していないと開発できない制御系、組込系のソフトウェア開発に加え、様々なビジネスアプリケーションの開発も行っている。言わば、各事業の技術の良いとこ取りで、ここ数年成長を続けている。顧客の要望やシステム分野がマチマチなことから、システム化技術や業務知識に加え、顧客との調整力も求められる領域だ。
クレジットカードやICカードを用いた生活の利便性を高めるシステムの開発や、鉄道の券売機、有料道路の料金収受システム(ETC)のソフトウェア開発など手掛ける分野は幅広い。GPSの精度を飛躍的に高める準天頂衛星も同社の応用分野だ。今後も、長年培ってきた制御・組込技術と進化し続けるWeb技術を駆使し、事業拡大を目指す。
(6) ITサービス事業
同事業では、システムの開発・運用環境の構築、ソフトウェアの検証サービス、システムの運用・保守サービスなど、システムに関わるトータルサポートサービスを提供している。事業領域の中でソフトウェア開発がメインではない唯一のセグメントで、主にソフトウェア開発の前後のプロセスなどシステム全体を支える領域だ。
顧客のニーズは「モノづくり」全体をサポートする体制を求める声が強まっているが、そうしたなかで同社は複雑化された開発プロセスをトータルにコントロールする開発環境や運用環境の構築、ソフトウェア検証などの実績を重ねてきた。今後も顧客の「モノづくり」に関わるサービス全般の包括的なサポートを目指していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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1. 沿革
日本プロセス<9651>の創業は1967年6月で、当初は、プラント業界向けのエンジニアリングとコンサルティング、及びシステム開発の業務からスタートし、コンピューターの黎明期からソフトウェア開発に取り組んでいる。
特に強みを持っているのが、エネルギー、自動車、鉄道、防災、情報機器など社会インフラに密接に関わる分野だ。震災に起因するエネルギー問題、地球温暖化による環境問題が生じる一方、モバイル端末の急速な増加に伴い、より高度で多様なサービスが求められており、新たな社会インフラ構築のニーズの高まりから、半世紀にわたって高い技術力を培ってきた同社の活躍する場が広がっている。
「社会インフラ分野の安全・安心、快適・便利に貢献する」を中期的な経営ビジョンとして掲げ、品質第一のシステム開発を行う。また、「トータル・ソフトウェア・エンジニアリング・サービス(T-SES)」を基本的な取り組みとして、同社の知見に基づいて顧客を正しい仕様決定に導き、以降完成まで一貫して請け負うことで、顧客の負荷を低減するとともに、同社の顧客に対する付加価値向上を目指している。
2. 事業領域
事業領域は、6つのセグメントで構成されている。以下、それぞれについて解説する。
(1) 制御システム事業
制御システム事業は、エネルギー関連と交通関連の2つの大きなカテゴリーに分けることができる。いずれも、安心・安全が重視される分野であり、顧客から高い信頼を得ないと展開できない分野だ。
エネルギー関連分野では、火力発電所の起動や停止、発電量の制御など難易度の高い監視制御機能の開発、オペレータ用の訓練シミュレーターなどのソフトウェア開発を担当している。一方の交通関連分野では、社会インフラを支える日本の全ての新幹線の高速かつ定刻運行を制御する運行管理システム、首都圏の超過密ダイヤの安全、安心を守る東京圏輸送管理システムや、各地のJR在来線の運行管理システムの開発を行っている。海外から高い評価を得ている新幹線の海外展開として、台湾新幹線の開発にも加わった。
(2) 自動車システム事業
自動車の安全走行の基本は「走る、曲がる、止まる」をコントロールすることは言うまでもないが、同社はステアリング、エンジン、変速機などをコントロールする車載制御システムに長年取り組んできた。このほか、カーナビゲーションやテレマティクスなど車内にインフォメーションとエンターテインメントを提供する車載情報システムの開発などを行っている。
近年では、エコカーへのニーズの高まりによるハイブリッド電気自動車(HEV)や電気自動車(EV)の増加に伴い、油圧で制御していた機能を電動で制御するシステムの開発も展開している。さらに、得意とする画像処理技術を生かしADAS(先進運転支援システム)の車載カメラシステムの開発にも参画するなど、自動運転の分野で今後の活躍が期待できそうだ。
(3) 特定情報システム事業
画像の歪みを補正するほか、複数の波長で撮影された画像を用いて地表の物質を特定したり、ステレオ視を利用して画像から標高を計算するといった画像処理技術を用いて展開する事業だ。洪水の予測や護岸工事の支援、災害復興支援など、危機管理における重要なシステムとなり、同社の高い技術力を示す事業でもある。
同社は早い段階からこれらの画像処理技術に着目し、宇宙航空関連、防衛関連事業における衛星画像処理システムの開発を手掛けてきた。今後も、より高度な画像利用分野へ展開を図る一方、音声認識技術なども加えて危機管理分野で事業を広げていく。
(4) 組込システム事業
パソコンのオペレーティングシステム(O/S)の開発でスタートした事業だったが、現在では携帯端末や情報家電、デジタル複合機を中心とする製品からよりハードウェアに近いSSD(Solid State Drive)など半導体記憶装置や電子部品の組込ソフトウェアの開発を行っている。
ニーズの多様化や急速な技術革新に対応するため、開発プロセスのあり方や具体的な進め方などの提案を行いながら、顧客が要求するスペックの具現化を実現している。情報家電や電子部品などの組込ソフトウェアは、急速に高機能化、多機能化が進んでいるが、今後はIoT(Internet of Things)の進展やスマートシティ構想などによって、新たな製品分野への拡大が見込まれている。
(5) 産業・公共システム事業
ハードウェアの特性などを理解していないと開発できない制御系、組込系のソフトウェア開発に加え、様々なビジネスアプリケーションの開発も行っている。言わば、各事業の技術の良いとこ取りで、ここ数年成長を続けている。顧客の要望やシステム分野がマチマチなことから、システム化技術や業務知識に加え、顧客との調整力も求められる領域だ。
クレジットカードやICカードを用いた生活の利便性を高めるシステムの開発や、鉄道の券売機、有料道路の料金収受システム(ETC)のソフトウェア開発など手掛ける分野は幅広い。GPSの精度を飛躍的に高める準天頂衛星も同社の応用分野だ。今後も、長年培ってきた制御・組込技術と進化し続けるWeb技術を駆使し、事業拡大を目指す。
(6) ITサービス事業
同事業では、システムの開発・運用環境の構築、ソフトウェアの検証サービス、システムの運用・保守サービスなど、システムに関わるトータルサポートサービスを提供している。事業領域の中でソフトウェア開発がメインではない唯一のセグメントで、主にソフトウェア開発の前後のプロセスなどシステム全体を支える領域だ。
顧客のニーズは「モノづくり」全体をサポートする体制を求める声が強まっているが、そうしたなかで同社は複雑化された開発プロセスをトータルにコントロールする開発環境や運用環境の構築、ソフトウェア検証などの実績を重ねてきた。今後も顧客の「モノづくり」に関わるサービス全般の包括的なサポートを目指していく。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水野 文也)
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